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WORLD 1-3 : 誰が殺した?

「誰がやるって、言い出しっぺのあんたがやるべきだろ。社長さんよ」


 先程ゲームをプレイしていた大男が死体を跨いで山岸に近付いた。山岸は一歩後ずさるが、鋭い目で大男を睨みつけた。


「お前は……人を死なせておいてなんの葛藤も責任もないのか?」


「俺を責めるのか? 何もしないクズどもの代わりに俺は動いた。褒められる事があっても責められるいわれはないぜ」


 言葉に詰まる者。俯く者。

 そんな中、一人の女が立ち上がった。

 緑色のメッシュを入れたボブ髪で、小柄な子だ。


「何か文句あるのか? あ?」


 大男が睨みつける。彼女はまじまじと彼の顔を見てから言った。


「別に。ただ、絶対に褒めないよ。あなたは一人の命を奪った」


 そう言って彼女は奥へ引っ込んで行った。


「気が付かないものね……」


 去り際に彼女はポツリとつぶやいた。


 大男は舌打ちをする。


「俺はなんとしても10億を手にしなきゃいかんのだ。邪魔するやつは容赦しない」


 ざわつく空気の中で、俺はぽつりと呟いた。


「……死んだのは、プレイした奴じゃなかった」


 数人がこちらを見る。


「『* SELECT DEATH PLAYER』って表示されていたのを覚えているか?」


「画面表示を信じるなら………このシステムはプレイヤーが誰を殺すか選べるってことになる」


 空気が張り詰めた。緊張と沈黙が走る。


「つまり、あんたが……あの男を選んで殺したってことか?」


 誰かが言う。


「違う! 俺は何も選んじゃいねえ!」


 大男が怒鳴る。だが、周囲の視線は冷たい。恐怖と怒りが入り混じった瞳が、彼に突き刺さる。


 山岸が大男を指差して言った。


「じゃあ、どうしてあの男だった? たまたま? ランダム? それとも……自動で選ばれるように見せかけて、操作してたんじゃないのか?」


「ふざけんな!」


 大男が山岸に詰め寄ろうとした瞬間、静かに声が響いた。


「あんたらバカね。バカでむさい男ばっか。カウントがあったの忘れた?」


 一斉に視線が向くと、後方から現れたのは一人の女だった。

 フード付きのジャケットに、無造作なポニーテールを後ろに流している。


「10,9,8って」


 場が静まり返る。


「つまり、10秒以内に死ぬ人を選ばないとランダムで死ぬシステムなのよ」


「みろ! 俺のせいじゃねぇだろ!!」


 大男が叫ぶ。


「うるせーよ。汗臭いんだよ、あんた」


 女が一蹴した。


「……てめぇ。舐めてると女でもただじゃおかねーぞ」


 大男が女の胸ぐらを掴む。しかし、彼女は動じない。


「やめろ!」


 俺は叫んだ。


「その女は……プロゲーマーだ! そうだろ?」


 場にざわめきが走る。


「男の人権がどうとか言って炎上した……。でもゲームは上手いはずだ」


 彼女はコントローラーの前に立った。


「24番、アヤノ。ゲームは得意。少なくともあんたらよりはね」


 場が静まり返る。


「何? 女がゲームするの珍しい?」


 アヤノは強気に言う。


「あぁ、あとソレ、誰かどけてくれない? 邪魔だから」


 彼女は横に転がる死体を指差した。

 しかし、誰も動かない。


「………私が、やろう」


 山岸がゆっくりと立ち上がった。

 首の無い死体を持ち上げ、見ないようにしながら隅に引きずっていく。


「これで言い出しっぺの責任は取れたろ」


「じゃあ、いくわよ」


「待て!」


 アヤノの指がボタンに触れる直前、俺は静かに言った。


「あんたは誰が死ぬか、10秒で決められるのか?」


 しかし、彼女はボタンを押した。


「やられなきゃ良い話よ」


『WORLD 1-1 ザンキx97』


 死のゲームは続行される…。

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