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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
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迷宮クズたわけ

どっかのアホがお触れを出した。


 迷宮へと潜り魔除けを取り戻したものには思うがままの報酬を与えると。




 バカ共釣られて迷宮いった。迷宮に飲まれてバカ共死んだ。




 俺も釣られてパーティ組んで迷宮行ったが追い剥ぎにあって全滅だ。 




 パーティメンバーの偽善者クソ侍も無愛想なクソ戦士も貧乳クソ僧侶も何考えているかわからんクソ魔術師も巨乳のクソ司祭も死ね。




 目の前でナイフを振り上げるみずぼらしい男もお触れを出したクソ王もくたばれ、死ぬ直前脳内に浮かんだクソ共全員の顔面につばを吐いた。


 そして俺は死んだ。








 はずなのだが俺はまだ生きている。




 目の前には俺のパーティメンバーにしてリーダー気取りの金髪偽善者を始めとしたクソ共。


 俺だけでなくこのクソ共もなんで生きてるんだ?




 頭に靄がかかったかのような不快な感覚がして何も考えられない。




 とりあえずクソ共を適当に言いくるめ、パーティは地上へ帰還した。






 寝床にしている馬小屋へと帰った後も脳がボケてるような感覚は続いていた。




 とにかくまずは情報を整理だ。


 まず俺は誰だ?盗賊だ。




 戦士となるには腕力が足りず魔術師となるにはおつむが足りず僧侶となるには信仰心が足りないため消去法に盗賊となったカスだ。




 手先の器用さと演技力には定評があるもののそれ以外のスペックの低さと性格の終わり具合にも定評がある。




 大陸最強最悪の戦士にして大盗賊であるクソ野郎のとばっちり(詳細は省く、あまりにも辛いので)をうけて元いた国を叩き出されて今は流浪の民だ。




 元役者志望の好青年を今の目の死んだクズに変えたのは6割くらいあのカスのせいだ




 あいつは大陸最強の大魔法使い【賢者】と戦って以降行方不明らしいがそのまま野垂れ死んでいて欲しい。




 そもそもここはどこだ?


 迷宮都市リノレガミン。


 この大陸最強の軍事国家にして迷宮という大陸唯一の特殊地形を擁する国。




 迷宮の特異現象であるレベルアップと迷宮から取れるマジックアイテムのお陰で前からひっきりなしに人間は来ていたが、ここの領主である狂王トルバーがうっかり配下の魔術師に魔除けという最高峰のマジックアイテムを取られる醜態を晒して、取り返すようお触れを出してからは報酬目当てに世界中から冒険者という名のろくでなしが集結する地獄だ。




 


 竜から小動物に至るまで人を容易く殺す力を持ち、宝箱にすら致死性の罠が仕掛けられ深層には大悪魔や地獄の生命体、魔神が跳梁跋扈する。




 その上魔除けを所持している配下の魔術師とはこの大陸最強の個人戦力。【賢者】ワルドナ




 踏破不可能とまで言われているのも頷ける。




 


 なぜ俺はここに来た?


 名誉、金、地位、酒池肉林を求めてだ。




 ちゃんと覚えてる。俺は正常だ。


 確認終わったらもうやることはない、


 明日はまたクソ共と顔を合わせなくてはいけないからとっとと寝よう。





 翌日俺は役立たずのチンカスパーティと面を突き合わせることとなった。




 パーティメンバーはまず目の前の偽善者金髪侍。


 追い剥ぎ戦では人を殺すことににビビってなんの戦力にもならなかったカス




 人から虫まで殺すのをめちゃくちゃ嫌がる癖して魔物は平然と殺せる偽善者野郎。




 正直こいつの全てが気に入らない。




初対面でいきなり、服装から見て盗賊君はスラム街出身?安心してくれ、僕はスラム街出身の人とかにも偏見無いからさ!とか善意100%の笑みでほざきやがったから嫌い。




 




ナチュラルにデリカシーとか配慮とかの機能が終わってる。こいつのつけたパーティ名【黄金の剣】にはあまりのダサさでドン引きしたし顔が無駄に良いのもクソだ。




この国の出身のボンボンであるこのカスは両親が病死してから妹と二人で生きてきたが、この度のお触れを聞き国のために立ち上がったそうだ。




 その次に貧乳僧侶


 こいつは追い剥ぎ相手にしょっぼい回復使って死んでた。




 金髪偽善者侍の妹であり金髪偽善者と同じく美形であり神秘的な雰囲気だ。しかしクソ。




 顔は素晴らしく良いが断崖絶壁みたいな貧乳という時点でクソだ。




 それ抜きでもまあまあダメ人間であり侍に介護されてないと何しでかすか分からん。




命の危険があるから来るなとなんどもなんども侍に言われていたそうだが兄さんの介護が無ければ私は野垂れ死ぬとか絶叫するこのアホに根負けして侍も連れて行く事を決意したらしい。




 初顔合わせの自己紹介タイムで自分の良いところを聞かれた時に顔!以上!とかほざいたところからこいつは俺の中で触っちゃ行けない枠に入れられてる。




 次にドワーフ戦士のおっさん。流れの傭兵




 こいつはひたすらに無愛想、最低限の関わりしか持とうとしない。




 しかし契約通りの事をするがそれ以上はやらないというドライな姿勢はまあまあ人間らしくて好感が持てる。




 追い剥ぎ戦では唯一まともに戦えてたのも好印象だ




 お次は無口な魔術師。黒髪黒目の没落貴族。




 




追い剥ぎ戦では俺が殴ったほうがまだダメージ出るんじゃねえかというショボい火花を三回撃っただけで死んだカス。




あまりにも喋らない、関わらないため何を考えているのか全く分からん。





 


 後は巨乳司祭




 こいつだけ明るく人当たりがよく常識的とやたらまともな人格してるためなんでこんな迷宮に潜っているのか全く分からん。




酒池肉林、国、介護、金、地位と迷宮に潜る動機がわかりやすい他の面子と違いこいつが迷宮潜る意味とか全く分からん。




この酒場でも店員から客まで全員に好感を持たれている。




店長にチンカス呼ばわりされた俺やナチュラルに冒険者を見下す発言をして総スカン食らった侍と比較すると酒場での扱いに天地の差がある。






 戦闘では魔術師未満の攻撃魔法で賑やかしだけして死んでた。役立たず。




 


 最後はこの俺様。




 人格は今までの文章でわかってもらえたと想う




 追い剥ぎ戦ではクソの役にも経たなかった




 そりゃもう、全く




 以上が俺様が所属するクソパーティ黄金の剣の名誉あるエリートメンバーだ。




 一番クソなのは酒場の連中でマシな奴らを集めてこのレベルということだ。

■■■■

前言撤回だ。




 こいつら普通に強い




 侍は戦士の近接戦闘能力と魔術師の黒魔法行使能力を併せ持つがその分器用貧乏なため弱い職業らしい。




 らしいと言うのは眼の前の侍が明らかに異次元の戦闘力を持っているからだ




 侍は人間相手でなければアホみたいに強い。




 コボルトを3体まとめて斬撃でふっとばし、スライムを魔術師の火花とは比べ物にならない上位火炎魔法でまとめて火柱に変え、挙げ句の果てには真空波で敵グループをまとめて殲滅する。




 まるで御伽噺の英雄だ、俺とは文字通り次元が違う。


 


 侍が異常すぎるため霞んでいるが戦士の戦闘能力も安定して優秀だ。




 敵を後衛に行かせないようブロックし一瞬の隙をついて手足を破壊しスリングでの投石までこなす。




 前衛として90点の戦闘能力を安定して出してくれる。


 


 僧侶貧乳も回復術方面は回復量が少なすぎて戦闘中使うのはキツいが、力は戦士に匹敵する程度にはあるようで、戦士に足を潰された相手を仕留める、後衛の肉癖となるなど技術が無いなりに頭を使って動く。




 迷宮では前衛は三人までと言うのがセオリーになっている。




 前回まではその理由が全くわからなかったが今なら分かる。




 こいつらの戦いに俺が割って入っても邪魔になるだけだろう。




 また前回は戦力外だった魔術師が大幅に強化されてるのも嬉しい。




 魔術師が新たに覚えたのは睡眠魔法。


 習得の容易さに反して効果があまりにも凶悪なため迷宮外でもかなりの知名度を持つ魔法だ。




 効果は睡眠効果のある霧を発生させる。




 効果範囲が広く抵抗は困難。




 同程度のレベルの相手でも9割方戦闘不能にできる。


 戦力外だったこいつが複数戦強敵戦での切り札となったのは大きいだろう





 司祭は…まあ乳がデカいから良いか。


 一応こいつの鑑定と言うアイテムの識別能力は有用だ。





 俺は戦闘に限っては前衛に入れば足手まとい、後衛では戦線に干渉できないと全くの役立たずであった。




宝箱の鍵開けとマッピングくらいしかできてねえ。 




 迷宮の魔物の群れは宝箱や迷宮の扉近くに巣を作ることが多い。


 理由は単純にそれらの近くに人間が集まるから。




 人間を殺すのを食欲性欲睡眠欲以上の生理的欲求として持つ魔物にとってほっといても人間を集めてくれる宝箱は有益な餌だ。




 そして宝箱自体も迷宮の悪意に染まり罠を持つ。




 それらの罠に対抗するため感覚と手先の器用さに長けた盗賊をパーティに入れるのは常識となっている。




 自分で言うのも何だが俺には盗賊の才能があるかもしれない。




 実際10連続で罠を解除しそこそこ有用そうなアイテムも見つける事ができた。




 また、マッピングも重要だ。




 歩いただけで地図を書いてくれるような便利なマジックアイテムも魔法も持たない俺たちはいちいち方眼紙に手書きで地図を書き込まないと行けない。




 嫌いなやつを褒めるのは嫌だが侍の探知魔法もマッピングには有益であった




 ともかく俺たちの快進撃は止まらない!迷宮踏破も意外と簡単に達成できるだろう!




 そう思った直後に俺たちは全員死んだ。


 理由は俺が宝箱の爆弾処理に失敗したから。


 死に戻りで蘇生できたとはいえなんで一度ミスっただけで全滅する罠が一層にあるんだよ、頭おかしいだろ




 


 次の日目が覚めたら更にレベルアップが起きてレベルが3に上がっていた。




 迷宮都市の特異現象レベルアップには2つの効果がある。




 1つ目は筋力、生命力、知能等の生物としての基礎性能が迷宮の生物を殺せば殺すほど強化される効果。




 2つ目はそれぞれの職業に対応した能力の強化。


 戦士ならさらに身体能力が更に上がり魔法使いなら新たな魔法を覚え盗賊なら今まさに俺に起こっているように感覚が強化される。




 今までの視界は目が腐っていたと思える程に視覚は強化、聴覚は隣の宿の受付での会話が聞こえ、触覚に至っては触ってないものでも一センチ以内まで手を近づければ触ったかの様な感覚が得られるようになっている。またこの範囲内に入っているものの構造を理解し分析できるようになっている




 最後の触覚拡張には領域と名をつけた。




これを成長させれば宝箱や敵の内部構造を解析できるような気もしている。




 そうなればやりたい放題だ。内部構造把握できてる宝箱など恐るるに足らず、敵の内部構造も把握できれば急所攻撃や敵の筋肉の動きを読んで先読み回避など攻防に渡って活躍できるだろう。




 取らぬ狸の皮算用かもしれないが、それでもできるという確信がある。




 これはすげえ。


 レベルアップを求めて大挙してクソ共が押し寄せる訳だ。




 実際このリノレガミンが最強の軍事国家である理由もここでレベルアップをした兵士を使っているかららしい。




 またもともと俺がいた国でも強化された犯罪者はそこそこはびこっていた。




 しかしそれでも絶大な効果に見合うほどには地上にはレベルアップした人間は存在しない。




 レベルアップして外に出ようという目的を持っているやつであろうと迷宮に魅入られ大体は死ぬからだ。




 そこそこ強くなって地上に戻り優雅な生活を送るという目的が貴重なマジックアイテムとさらなるレベルアップという目的にすり替わってしまい、迷宮通いを辞められないものに迷宮は牙を向く。




 どんなに強化されようとも迷宮に潜る限り死からは逃れられない。




 大陸最強と呼ばれた平均レベル14のパーティ、白銀の盾が迷宮のたった二層で消息をたった様に




 そしてこの日俺は迷宮の最悪の悪意を身を持って味わことになる。

■■■■

昨日と同じ様に一階の相手を蹴散らしていると、この先へ絶対進むなという張り紙を発見、警告を無視して俺たちはその先へいった。これがそもそもの間違いだった。




 シュートと呼ばれる落とし穴にはまり3層までぶち込まれた、その直後エンカウントしたのはブレスという特殊能力をもつ小型竜【ガスドラゴン】




 魔術でも物理攻撃でもないこの特殊攻撃は今までの前衛が生きていれば後衛は安全という常識を打ち壊した、後衛含めたパーティ全員を焼き払う範囲攻撃であった。




 一斉掃射されたブレスによって俺と司祭と魔術士は消し炭になった。全身の血液が一瞬で沸騰して蒸発する痛みはただただ痛かった。孤独が一番苦しいとか目的を持てないのが一番つらいとか言うボケがいるが人間の最大の苦痛は痛みだ。




一番つらいことに痛み以外の事挙げるボケは一度でいいから全身の血液が沸く体験をしろ。もう二度とそんな舐めたことは言えなくなる。




そして俺は死んだ。




 死に戻り後別のルートを進むも次にエンカウントしたのは【ゾンビ】。




 こいつの基本的な戦い方は一層の敵に毛が生えただけだがこいつの攻撃を喰らうと麻痺するのが脅威だ。




 麻痺というとこいつの脅威を正確に表せてないか。


 一度食らったら治療するまでそのまま、なお俺たちにダンジョン内で治療する手立ては無い。




 実質的な即死攻撃だ。




 こいつに麻痺させられ黄色い吐瀉物を吐き出そうにも体が動かず吐き出せず窒息死したのは最悪の経験だ。




 早速2回死んだ俺の前に現れたのは【クリーピングコイン】




 単体ではブレスを吐くこと以外大した脅威ではないが、30体を超す大群で徒党を組んで飛び出して来やがる。




 開幕30連続ブレスでじっくりじっくりレアステーキの様に焼き上げられたことはなかなか経験できない思い出だ。


 二度としたくないが。




 その上俺の死に戻りは死ぬ直前に戻る能力のためシュートされる前に戻ろうと自殺を何度もしても痛いだけだ。




 何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も焼かれ切られ焼かれ焼かれ殴られ焼かれ窒息し焼かれ焼かれ焼かれ焼かれ焼かれ突かれ焼かれ切られ焼かれ焼かれ焼かれ焼かれたことを俺は一生忘れることはないだろう。




俺様のきらきらおめめを熱した鉄の棒の様な爪でぐりぐりと掘られ痛みで気を失っては痛みで覚醒するのを繰り返したり、衝撃でドロドロになった体のモツをずるずると魔物に吸われたり死ねないギリギリの外傷を負うのが本当に本当に辛かった




 逃げ出そうと自殺をしても死に戻りで戻される、仲間をほっておいて逃げ出そうとしても扉近くの魔物の群れに殺される。




 本当に生まれてきたことを後悔した。




 反則級の能力を得て喜んでいた自分を脳内でボコボコに殴りつけた。




 それでも地獄は終わらない。




 その上対人戦まで何度もやらされる羽目になった。




 その中で経験したのは俺のチンカスほどの良心ですらそれなりにキツイ出来事ひとごろしだった。




 その内に心が折れた。


もうダメだイカれちまう。


 俺という人間が溶けて消える








 ふざけるなよ。なんでこの俺様が迷宮とかいうゲロカスファッキン無機物如きに屈さなければなんねえんだ。


 恩はどんなに大きくても三秒で忘れるが仇はどんなに小さくても絶対に忘れないクズとまで言われた俺の本気悪意を見せてやろう

■■■■

まず初めに対処し始めたのはガスドラゴン、何度も焼き殺されてわかったのだがこいつのブレスは威力にムラがある。




 それに気がついた後観察しつつ二三回死んでみると外傷がついている個体程ブレスの火力が低い。




 体力が減っているのがブレス威力低下につながるのではないかと推測してパーティに伝えてみたところ、戦士がスリングショットで、侍が真空波でブレスを吐こうとしているやつを集中的に殴る戦法になった。




 結果ブレスの脅威が一瞬で死ぬレベルから時間をかけてレアステーキにされ運が悪ければ死ぬぐらいの脅威に変わった。




 クリーピングコインは個々は恐ろしく打たれ弱く電撃への耐性もないことに気づいた。




 魔術師の電撃魔法が特攻レベルに有効であることも。




 広範囲に電撃を飛ばすこの魔法は範囲だけは優れているが威力は火花以下という使い所の難しい魔法であった。




 はっきり言ってしまえばゴミ。




 しかしクリーピングコインに対してはゾッとするほど有効。




 寒気がするほど効率的にクソコインの命を奪い取った。




 一番厄介だったのはゾンビ、こいつは長らく有効な戦法が見つからず麻痺させられない方法がないか、火炎やらなんやらの有効な黒魔法はないか等探していたが1000回目あたりのループで僧侶が謎の光柱を発現して消し飛ばしていた。




 その後500以上のループを重ねて解析してみたところその能力は亡者に憐れみをかけて天に帰ることを祈り、動かぬ死体へと戻す特殊技能だ。




 アンデッドを還すことからターンアンデッドと名付けたこれをループ毎に僧侶と司祭に教えゾンビへの対策も盤石になった。




 対策をゴリゴリに立てた事によって迷宮内での黄金の剣の動きは格段に良くなった。




 帰還が夢でなくなるほどに。




 それと同時にパーティメンバーの本性も大体分かってきた。




 侍は独善的で傲慢なまあまあカスな人間ではあるものの本当に善良な人間になろうと必死な人間であった。




 パーティ全滅直前だろうが内蔵が飛び出し両目が潰れようが自分以外に生き残りがいる限り必死で足掻く。




 俺も何度も死にものぐるいになったこいつに庇われ命を助けられた。




 まあ結局俺が死んでるんだから役立たずだが、恥を知れ。




 遺言で英雄になりたかったとか言い出してるのもまあまあウケる。大人になれよ。




 後は戦士だ。




 こいつは基本自分が最優先だが契約を自分の命以上に大切にするためものすごく使い勝手が良かった。




 ドライなものの最低限の情はあるようで恩を売れば文字通り死んでも返してくる。




 それを利用して危険地帯への偵察に何度も送り込んだりできたので便利だった。




 僧侶はこの階層で意地汚い、なんか体臭が酸っぱい、メンタルが弱すぎるとか知りたくない要素がポンポン飛び出してきたので記憶から消している。




 頭から下をブレスで黒焦げにされた時、私の乳がなくなっちまったとか言い出し始めたときはもうマジでこいつだけ置いて行こうかと本気で考えた。そもそも元からないだろお前。




 こんなんでも知能自体は高いのか1を言っただけで10を察して俺の思い通りに動くのが質が悪い。あと侍と同じく内蔵飛び出しても他者が生き残っている限り立ち上がる。




 魔術師は今まで無口だったのは貴族のボクチンがこんな下賤の民なんかと喋れるかみたいな思考が理由だったらしい。




 それでも俺が有能なリーダー(に見えるぐらいループを繰り返してそう見えるように演技をした)だと分かると下民にも劣る俺は一体何だとか暗いモードに入ってるのは受けた。




 そこに優しい言葉をかけて即懐柔、多分俺があってきた人間の中でも一番チョロいぞこいつ。




 司祭はもともとなんでこんなところに来てるのかわからないといったが危機的状況にて異常なまでの自己犠牲精神があると分かった。




 なんか今までの罪がどうだとか自分はもう長く生きたからあなた達は生きてくれとか自分の中の闇がささやくとかなんとか言っていたがなにいってんのかわかんねえよ、馬鹿にもわかるように話せクソボケ。




 後日この意味が分かったが相当混沌とした過去持っていたぞこいつ







 しかしかなり良いところまで行った回で俺を残してパーティが全員死亡俺一人だけ残して戦闘が終了した。




 俺が死ぬ直前に戻るという死に戻り能力の特性上この状況になると自殺しても仲間が生きていた頃まで戻れない。




 この後俺がどうやって帰還したかは語りたくもない。




 ただ一つ言えるのは体感で5年かかったということだけだ







 迷宮からの帰還後アホどもの死体✕5を担いで寺院に向かう。




 迷宮内で死んだ場合魂が肉体に残るため寺院へ行けば蘇生できるのだ。




 いくつかデメリットは存在するが。




 1つ目は寺院のクソ共に払う喜捨代が高い(喜んで払ってないのに喜捨って何だよ)事。




 大体1000ゴールドあれば一ヶ月遊んで暮らせるのだが今回の蘇生にかかる費用は5人分で計1500、今までのパーティの稼ぎのほぼ全額だ。




 2つ目は蘇生は確実ではないこと。侍以外の4人は割とあっさり蘇生したが侍は灰と化した。




 蘇生に失敗して灰となった人間は次の蘇生でよみがえれなければこの世から完全に消滅する。


 その上灰からの蘇生は料金が二倍になるとかいうクソ制度もついてやがる。




 まあ迷宮外なら一発で死んでいるような外傷を受けても二回も生き返るチャンスがあると考えればまだ全然良いか。




 最悪侍が死んでもその瞬間俺が切腹して死に戻りで時間を戻せばなんとかなるため大した問題ではない。




 そんな事を知らない他の連中が緊張しまくってる中二回目の蘇生によって侍は生き返った。




 なんか必死で俺が運んできた事とか、この回、こいつの目線で見れば俺が常に最適解の指示を出す天才に見えていたこととか、俺が私物の防具売っぱらってまで助けた事とかを見て君を勘違いしてた。




 君こそヒーローだ。君のようになりたい。ヒーローになるために学ばせて欲しいとかほざき始めた。




 正直生まれてきて一番笑ったかもしれん。




 ヒーローという言葉から最も離れてる人間だろ、俺




 蘇生した発言の臭い兄と物理的に臭い妹が抱き合って再開を喜んでいる中、俺は寺院を去った。まだやることはいくらでもあるからだ。





 その後他の連中が休んだりしてる間もボッタクリクソ商店と交渉をしたりターンアンデッドの復習をさせたり他の奴らの新魔法を確認したりとやることが多すぎて結局俺が寝れたのは脱出の3日後だった。クソッタレ。




 トドメに俺が必死で後始末している事も知らずに色街行っていた糞侍と不審者扱いされ逮捕されて俺の仕事を増やした糞僧侶のバカ兄妹を頭の中で張り倒す。




 マジなんなんだてめえらはよぉ…

■■■■


再びの地下三階。




 レベルアップで強化された侍が真空波を三連続で放ち上位火炎魔法と氷結魔法を併用し敵の集団を瞬く間に殲滅する。




 こいつやっぱおかしいわ、なんで物理最強が魔法まで最強なんだよ。




 戦士の成長は侍に比べれば地味だが迷宮で手に入れた真っ二つの剣という新装備が強い。




 今までゾンビを一撃では倒せなかったときもあったが新装備と戦士の成長で確実に一撃で倒せるようになったのだ。




 結局のところ迷宮での戦闘はやられる前にやって敵の頭数を減らすということに落ち着く。




 先手を取って良い攻撃が決まればガスドラゴンの大群ですら無傷で殲滅できるのだ。




 相手を確実に一撃で倒せるようになる事により得られる圧倒的なアドバンテージは迷宮に潜った経験のある人間にしか分からないだろう。




 俺達の不意をついて飛び出してきたゾンビが戦士を麻痺させる。




 その瞬間弾丸の様に飛び出した俺がゾンビの喉元の柔らかい肉を掻っ切る。




 地獄のループで何度も何度も戦ったおかげでこいつらの急所は丸暗記している。




 更に俺の周囲50センチまで拡張された領域がこいつらの体の構造、及び急所を教えてくれるおかげで非力な俺でもこいつらを一撃で仕留められる。




 盗賊の仕事は戦闘中棒立ちするのではなく前衛がやられたらすぐに飛び出して戦線を崩さないようにすることだとあの地獄で学んだ。




 何度も何度も死んだものの死に戻り中に学んだ戦闘経験は無駄ではなかった。




 冒険者の基本生活が三日に一度八時間程迷宮に潜るのが基本のこの街では戦闘経験だけで言えば侍含めたこの町のどんな冒険者よりも多いのだ。




 絶望的な戦闘センスの無さを異常な戦闘経験年数で補っていけている。




 その直後司祭と僧侶からターンアンデッドが飛び生き残りも魔術師の上位火炎魔法で消し炭に変わる。




 この上位火炎魔法は例のゴミみたいな火花魔法のワンランク上の魔法だが威力は別次元。




 ちゃんとまともに攻撃魔法として機能してくれる。




 侍みたいな例外はいるが基本物理攻撃だと一回の攻撃に付き一体倒していくのが基本になるためまともに使える範囲攻撃というだけで強い。




 その後僧侶から飛んだ麻痺解除呪文により戦士が復活。ゾンビにトドメの一撃を繰り出した。




 その後も醜い巨大蛙【ブリーブ】を侍と魔術師の合体上位火炎魔法が消し炭にし、


 新たに睡眠魔法と回復魔法を覚えてまともに戦力にカウントできるようになった司祭がドラゴンフライを睡眠魔法でダウンさせる。




 そこに突っ込んだ戦士と僧侶が一瞬で地面に落ちたドラゴンフライをミンチに変える。





 毒虫が群がって不定形の人間の様な形になった【ポイズンミスト】を戦士が盾を持ってタックルで吹き飛ばし生き残りも俺がスクロールで起動した爆炎で吹き飛ばす。




 そんなこんなしてる内に僧侶が麻痺を食らった。


 仕方ない。僧侶、直してやってくれ。返事が無い。


 そういや麻痺してんの僧侶じゃん、あれ、直せるやつ全滅か?




 僧侶が麻痺したことで今日の戦闘は終了した。


 なんとも締まらない終わり方であった


 しかしこの戦いで俺たちの名前は迷宮都市の新星として轟き始めた。


 それと同時に厄介な連中に目をつけられることにもなってしまったが。





 次の日の迷宮探索では追い剥ぎに目をつけられたため対人戦が勃発。




 今度は侍も人間を殺す覚悟を決めてきたようだ。




 戦闘開始直後に俺はあの地獄で何度もやった通りに魔術師の睡眠魔法の詠唱と手振りを模倣。それと同時に戦士達の隙を見せて相手を引き付ける技術も模倣する。




 俺の知る限り最も恐ろしい魔法は半径八メートルを火柱で焼き尽くす上位火炎魔法でも文字通り死ぬほど苦しい氷結魔法でもなく魔法としては最下層、第一位階に位置する睡眠魔法だ




 迷宮潜ったばかりのペーペーパーティでも先手を取って一発睡眠魔法を打ち込めば今の俺たちですら殺しうる。




 習得が恐ろしく簡単な割に効果が絶大なことからクズ共が好み、犯罪に良く使われるため周辺国家では迷宮外で睡眠魔法を使うだけで死罪になる。





 あまりにも人を殺すのに都合のいい性質から人を殺す魔法と呼ばれている。




 強力すぎるため世界中の魔術師が一致団結して対処法を練ったので、地下4階に潜るレベルの冒険者には対策を立てられてるため無力。しかしそれでも間違いなくこの階層での戦いでは最大の脅威だ。




 ともかく敵パーティからは俺が今その最大の脅威である睡眠魔法を打つように見えているだろう。




 血眼で発動前に俺を殺そうと敵戦士が突っ込んでくる。




 そこに何度も何度もやったように短剣を併せ喉を掻っ切る。何度も戦ったため急所がわかるのは魔物だけではないのだ。




 何度も何度も体感した最悪の感覚が手に伝わる。




 あのループで磨いたクソみたいな技術は俺より遥かに強いであろう戦士の命をたやすく奪った。




 その後も敵の睡眠魔法の詠唱を僧侶が沈黙魔法で妨害し、前線をくぐり抜けて魔術師へと迫った俺が喉を掻っ切る。




 こちらの司祭、魔術師の睡眠魔法が飛ぶ。侍と戦士が暴れる。戦闘は終了した。




 危なげなく勝利こそしたがそれと別の問題が発生している




 侍、僧侶、司祭はゲロ吐いてるし魔術士と戦士も青い顔をしている




 こういうとき、無駄に罪悪感を感じないからクズで良かったと思う。




 いや、ちょっと辛えわ







■□■□




 次の日も探索は特に危険もなく終わったのだが


 死ぬほど重い雰囲気になってしまっていた。


 くらい雰囲気を消すのとここ来てから全員働き詰めであったため休息と宴会を提案した。





 魔術師の宿泊している宿が一番良いところだったので色々持ち込んで宴会開始




 侍、戦士、司祭の持ってきた手料理はどれもかなり出来が良かった。




 なんであんなしみったれた酒場で毎食飯食ってるのか理由が分からない程度には。




 魔術師が持ち込んだ飯も高いのか普通に美味かったが僧侶がカツカレーチャーハンラーメンとかいう豚の餌を持ち込んだときはうっかりキレそうになった。こいつ本当に人間か?




 酒飲んで悪酔いした侍は昨日のアレは正当防衛だと何度伝えても罪悪感に苦しんで、もっと良い方法を取れば殺さずに済んだんじゃないかとかそんな簡単に殺しが正当化されて良いはずがないとかうるせえ。




 マジ面倒くせえなこいつ。




 アプローチを変えて、殺しちまった物は仕方ない、自分が死ぬその時まで罪悪感を忘れずに苦しむことが唯一の供養だ、俺も一緒に死ぬまで苦しむからとか言って誤魔化した。なんか琴線に触れたらしく泣いてた、ウケる。




 酒で僧侶もウザ絡みモードに入って死ぬほどウザい。なんでこんなのが神に使えてるんだ。


 冗談はその平原みたいな胸だけにしろ。




 そんなこんなしている内に宴会はお開きになった




 この1日である程度の心の傷は消え再び迷宮に挑む活力は湧いたようだ。




 明日はもう少し深いところまで潜ろうと思う。

■■■■

盗賊として宝箱の解錠をするならやり方は様々。開けると紐が切れて爆発する仕掛けなら紐を新たな紐で繋いで固定する。





 爆発機構自体を破壊する。




 紐を切るための刃自体を取り除く。




 それらの技術を駆使して宝箱の罠を破壊することに盗賊は誇りを持っているのだ。


 もちろん俺も。




 それを魔術師が教えて欲しいと言ってきた。




 なんでも二人で罠の識別をすれば正確性が上がるからだとか。




 黒魔法使いとしては侍に劣り司祭には白魔法の有無と鑑定能力で劣る以上もう一つ特殊技能を身に着けておきたいとのこと。




 下民よりも使えない今の立場を辞めたいとのこと。




 俺としても解錠の確実性は上げておきたいのでただで使える奴隷が増えるのは大歓迎だ。




 魔術師は地頭が良いのか飲み込みが異様に早い。




 利用する駒が増えたら良いかなくらいの気持ちで始めたがつい教えるのに熱中してしまった。




 代わりに色々と魔術師に魔術の事について教えてもらった。




 魔術は回復系の白魔術と攻撃系の黒魔術の二系統、各系統ごとに7位階に分かれている。のが基本だがこれはあくまでも戦闘に特化した魔術に限った話であり魔術士がいつも探索で使っているような清潔な水を出したり長い間残る焚き火を出したりするのは含まれていない。




 個人武力ならこの大陸最悪最強と言われている【賢者】ワルドナもこの戦闘外の魔法に長け、性転換やら麻薬精製やら洗脳やらの変な戦闘外魔術を大量に作りエグい人体実験をやっていたらしい。




 また一部の魔術士は戦闘魔法7位階すら超えた魔術やら黒白の基本系統に含まれない魔術も使えるらしい。





 口から火を吹いたり水流の刃を呼び出すのが通常の系統外魔術だが八位階以上の系統外魔術は超位魔術と呼ばれる。





過去の魔術が遥かに進歩してた世界においては星すら一撃のもとに貫き破壊する15位階魔術すら存在していたらしい。








 系統外魔法はとにかくカッコイイ上に力ある魔術師の特権であるため真似してオリジナル系統外魔術(笑)を作るアホが定期的に湧く。




 それらは系統内魔術に勝てるところがほぼ無いゴミであり、系統内魔術は強いからこそ系統化されているということを理解してない超級のアホが使い手のため湧いたところですぐ死んで消えるそうだが。




 そもそも戦闘系魔法は系統内だけしか使えなくても強くなれる事はワルドナが証明している。




 なかなか有用な情報が聞けた上系統内魔術も全て知れたのも良かった。




 非常に有益な時間だった。





 しっかしこいつ魔術の話になるといつも早口になるよな

■■■■

俺は弱い。




 死に戻りにより、迷宮都市に於いて戦闘経験のみであれば誰にも負けないはずなのに侍どころか戦士と比べても弱すぎる。




 盗賊という半非戦闘員の職業であるため責められるいわれは無いがもう少しは強くなりたい、強くなるべきだ。





 というわけで参考のために俺が質問できる中で最強の人間、侍になぜそんなに強いのか聞いてみたがすげえ答えが帰ってきた。




侍いわくやり方は簡単、まず才能を持って生まれる。




 才能持って生まれることに成功したらひたすら鍛錬だ。




 鍛錬量で負ければ無才の人間に負けることもあるが誰よりも努力すれば才能の差で絶対に勝てる。




 時間は一緒何だからひたすら集中、戦闘時でも成長のためにやれることはいくらでもある。とほざいてた。




 暇な時間を全て鍛錬に捧げるのなんて当たり前の生活を送っている人間なんてゴロゴロいる。




 そんな必死な人間との競争を勝ち抜くにはそれ以上に必死になって時間当たりの効率を上げるか才能の暴力でなんとかするしかないとのこと。




 まず才能持って生まれるの何て狙って出来ねえよボケカスとか色々とツッコミどころはあったがこの後も鍛錬について語る侍の言葉には努力する他者への敬意が滲み出ていた。




 それ以上に自身の才能と努力への誇りが滲み出ていたが。




 この後もグダグダ語る侍から話を聞いていたものの結局俺の強化には役立ちそうな話は無かった。




 言うまでもなくあらゆるベクトルにおいて俺の才能は無い。




かと言って努力するのも嫌だ




 血を吐き泥をすする様な鍛錬は余計な苦労をせず楽してクレバーに生きるという俺の理想のスタイルからもかけ離れている。




何より俺が全身全霊を持って鍛えたところで侍のような努力する天才にはかなわない、




 もっとお手軽に強くなれる奥義とか教えろよ、使えねえな。











 次の日の酒場で魔術師が地下一階にまだ探索してないところがあると言い出した。どうやら探知魔法で探ったところ新たな探索箇所を見つけたらしい。




 そこにあったのは訳の分からない言葉がと


書かれた像。




 調べたところ湧き上がるような不浄な気配。


 出現したのはゾンビらしき謎の影。




 ゾンビに似ているがそれとは別種のようだ。いや、いまは別の問題がある。




 本能のすべてが告げている、こいつは俺の同族ゴミクズだと。




 侍がいつも通り突撃して斬撃を放つ。しかしゾン腐った体からは想像できないほどの加速でゾンビもどきは回避した。侍の斬撃を躱すやつが一層にいるのか!?




 俺は警戒レベルを最大にしろと叫ぶ。




 司祭僧侶のターンアンデッドが飛ぶがあっさりレジスト。





追加で放たれた魔術師の火炎も掻き消される。まるでこの世に魔術自体が存在しなかったかのように。




 魔術無効化とかいう新能力持ちを一層で見ることになるとは。




 本当にこいつこの階層に存在して良い敵じゃないだろ。




 5層のやつが紛れ込んできたのか?




こんなふうに不測の事態で鍛え上げられたパーティですら死ぬからここは悪意の迷宮なのだ。




 強化された俺の知覚能力でもギリギリ認識できる程の速度で俺の前に飛び出してきたゾンビもどきを前に俺は死に戻り後の事を考えていた。




像を調べることで出現するなら余計な事せず抜ければ良いだろと。




 しかし次の瞬間俺に訪れた感覚は軽い痛みだけであった。




 あれ?もしかしてこいつ火力は低いのか?




 火力が低いとわかってからは侍が超速度に適応し攻撃をクリーンヒットさせる。魔術師が有機物の動きを鈍らせ無機物を腐食させる暗黒魔術にて足を奪い止まったところを全員でボコボコにする。俺が糸を使って罠を張り超高速移動を封じる等、超回避への対策をすることで時間はかかったが倒せた。




 俺達はほぼ無傷だった。




 再び像を調べたところまたもや出現。




しかし一戦目と同じように張り倒す。




 レベルアップの元になる魔力が大量に俺達の体に染み込む。




 あれ、ここ稼ぎ場として良くね?




 そこで俺は三秒で考えた泣ける創作エピソードを言ってこの真の勇士は死ぬことを望んでいる。俺達の手で救済を与えようとか言った。




 侍僧侶司祭のマヌケトリオは泣いてた。




 戦士魔術師は俺が嘘ついてると察したようだが黙ってた。




 ともかくここは絶好の狩場なのだ。


 モンスター相手と言えども死んでは蘇り死んでは蘇りの地獄の責め苦を与えるのは善人にはきついだろうが俺様の嘘のおかげで嬉々としてゾンビもどきに地獄のループを味合わせてる。




 殺し、蘇らせ、焼き殺し、蘇らせ、切り殺し、蘇らせ、刺し殺し、蘇らせ、焼き殺し、蘇らせる。




 おれ以上のクソ野郎は俺よりも苦しんでくれ。


 具体的に言うとあの二層での地獄のループで味わった苦痛全てを味わってくれ。




 俺様ですらこんなに苦しんだんだからそれ以上のクソ野郎はもっと苦しまないとだめだろう。




 え?こいつクソ野郎だっていう根拠はお前の勘以外にないだろって?




 舐めるなよ、俺のクズ発見力を。




 同族嫌悪から派生したクズ探知の精度は今のところ100%だ。




 こればかりは善人に対していくら説明しても理解してもらえないだろう。俺たちがあなた達のことを理解するのが困難なようにあなたたちも俺らの事を理解するのは困難なのだ。




 まあ今回は実際にクズだったから許してくれ。





 後でわかったことだがこいつの名は宮廷魔術師にして魔法の先生でもあるマーヴィー。




平民でありながら王に取り立てられた魔術師ワルドナに嫉妬して散々最悪な嫌がらせをしていたらしい。




 中でもひどいのはワルドナの妻を毒で流産させた挙げ句、それを詰められたら一族皆殺しにされたのかってレベルで被害者ヅラし始めた事だ。




 暴走する正義ガーとか加害者の立場で言えるのすげえよ、俺にも真似できねえ。




 その結果ブチギレたワルドナに不死化させられ迷宮に縛られ死ぬこともできない状態にされて今こんな事になっているようだ。


 ざまぁ


 明日も狩りに来てやろう。

■■■■

マーヴィー先生をリンチに併せ続けることでレベルが8に上昇した。




 その結果俺の領域は自身の周囲4メートルまで展開できる様になった。その上領域内に入り込んだ対象を解析するだけでなく舐めたり嗅いだりしたような感覚まで得られるようになった。




 宝箱の解析やセクハラには4メートルもあれば十分(つーか これが限界)使えるだろう。


 戦闘に流用するのはもう少し範囲が欲しいが、それでも思い描いていた攻防への応用にも使えそうだ。




 それと同時に身体能力自体もレベル3程度の戦士レベルにはついた。領域による急所看破能力、攻撃察知能力と組み合わせれば前線でも戦えるだろう。




 麻痺持ち相手だと僧侶が麻痺するとやばいのでゾンビ等には僧侶の代わりに俺が前線に出たほうが良いかもしれん。





 侍もレベル8にまで上がったことで化け物度が増した。もうまともな方法でこいつを倒せる魔物は4層より下にしか存在しない。




 戦士もいつも通り順当に強化されている。


 地味だが大幅にレベルが上がったことで更にるように動きが良くなった。


 レベルが上がったことと模倣のおかげで近接戦の事についてもある程度わかったつもりだが戦士侍の戦闘技術は俺の遥かに先を行く。


 こいつなら能力上昇を十全に扱いこなすだろう。





 司祭は相変わらず微妙な成長だ。睡眠魔法と回復だけで一定の働きはできるからあまり問題はないが。




 魔術師は新たに窒息魔法を習得した。


 超広範囲の弱い敵を即死させるこの魔法は範囲の広さも効く相手の多さも優秀だ。なんと3層までのアンデッド以外の相手全てに効く。この調子だと4層以降の相手にもある程度効きそうだ。


 ともかく3層までなら先手を取ってこれを打つだけで勝ちが確定するのは本当に偉い。




 僧侶の新魔法でめぼしいのは上級回復魔法、解毒魔法、結界魔法あたりか。


 上級回復魔法はそろそろ通常回復魔法じゃ回復量が足りなくなってきたのでちょうど良いタイミングで覚えてくれたなとは思う。


 解毒魔法も今まで使っていた毒消し(侍が大量に持ってた)の消費を抑えられるのは良い。


 結界魔法は周囲に敵の攻撃を弱める力場を貼る魔術だが効果は正直言ってかなり微妙。しかし効果時間がかなり長いのでお守り程度にはなるはずだ。


 蘇生魔法も覚えたそうだが蘇生確率が絶望的で使い物にならないとのこと。実質死体に上級火炎魔法うって灰にしてるのと同じとまで言っていた





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 本日は2層探索


 出現したのはかわいいうさぎ。


 侍も司祭も僧侶もかわいいとか言ってニッコニコでのこのこと突っ込んで言ってしまった。


 この悪意の迷宮でかわいいだけの生物が出てくるわけ無いだろ。




 俺は全力で戻れと叫んだがもう遅かった。


 うさぎの噛みつきで侍の首が飛んだ。


 クソッたれ、アホ、ボンクラ、マヌケ、思いつく限りの罵倒を唱えながら俺は自殺する。




 時間を戻した後に全力で忠告した結果、外見に油断して殺されることはなくなったがクソうさぎは油断してなくても強い。


 耐久火力速度全てたいしたことないものの攻撃を首辺りに喰らうと首が飛ぶ。笑えるほどあっさりと。何度も何度も首が飛ばされた結果、ものすごい勢いで回る視界にも慣れた。




 それと同時に非力なこいつらが人間の首を跳ね飛ばすからくりも分かった。こいつら俺の領域みたいなのを展開してどこをどうすれば効率良く首をはね飛ばせるかの最適解を導き出している。




 これをパクれれば俺も似たような首はねをできるのではないかと思いこいつら相手に何度か試してみたが、筋力と領域の精度が足りずできなかった。


 レベルで強化されても俺の筋力は無い。


 レベルアップとかでなんとかできるようになるかもしれないが今のところは無理だ。




それでも覚えたいのには理由がある




 当たり前のことだがほぼ全ての生物の弱点は首だ。


 


そして心臓をくり抜かれても5分程度は生存する化け物だらけの迷宮においてもそれは変わらない。




どうやら魔力というものは脳で扱うもののようなので、肉体と脳が切り離されると体の魔力を制御できずに肉体が地上の生物並みに弱体化するので首をはねられると深層の魔物でも即死するそうだ。




 そして急所攻撃込みでも戦士や侍に劣る俺が深層で戦力となるには攻撃力を補うなにかが必要だ。




 肉体の耐久性を無視し即座に死に至らしめる首刎ね《クリティカルヒット》はそれになる。


習得さえできれば侍に次ぐパーティのエースとなれるだろう。




他に低い戦力を補う手段が思いつかない以上習得は常に視野に入れておこう。




その日母さんの夢を見た。おれを女手一つで育ててくれた人、神よりも尊い俺よりも尊い唯一の人




俺と違い倫理観がまともだった母さんからは色々な事を教えてもらった




人を三人殺すと地獄行きだとか清く正しく生きていれば必ず最後は報われるだとか。




結局人を三人どころでない程度に殺している連中は今も楽しくこの世を謳歌している。そして俺が9歳の時に清く生きていた母さんは病気でボロ雑巾の様になって死んだが。


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この大陸の強者を4人上げろと言えばといえば間違いなく【白銀】【剣聖】【賢者】【盗賊王】になるだろう。




 白銀は以前言った最高の冒険者パーティ【白銀の盾】のリーダーであるレベル15の君主の異名。


 君主という職業は戦士と僧侶の合いの子みたいなクラスだが侍ほど中途半端でないためかなり強力。その上こいつは専用マジックアイテムの効果で即死を始めとする状態異常への耐性と自動的に傷が癒える自己再生能力も兼ね備える。


 直撃すればどんな魔物でも即死させる必殺技【退魔の剣】まで持っていたらしい。なんでこいつ二層で行方不明になってるんだ?




 【剣聖】はお触れを出した馬鹿、狂王トルバーの事だ


 レベル21の侍。白兵戦においては間違いなく大陸最強。


 全ての系統内黒魔術を使える。


 白魔法を全く使えない欠点があるがそれを魔除けで補っていたため無敵だった。




 【賢者】は魔術師ワルドナ、単体戦力にて大陸最強。


おれたちが打ち倒し魔除けを強奪しようとしている男のことだ。


 昔は民の事を心底大切に思っている軍属の魔術師であった。しかしあまりにも他人に同情しすぎるあまり色々と考えすぎて狂った。


 戦争をなくし平和な世界をつくるために、全ての人間を麻薬付けにし洗脳し快楽を貪るだけの物体に変えるのが目標。


 悪い意味の合理性が遺憾なく発揮され魔除け関係なく世界の敵と化している。




 思考回路もそうだが魔術もヤバい。


 黒白問わず全ての戦闘型系統内魔術を使える高レベルの戦士というだけでも恐ろしいがそれ以上に恐ろしいのが戦闘外系統外魔術。


 麻薬精製、性転換、洗脳から魔除けの作成までやれることが異様に多い。こいつと戦うのは戦闘力もそうだが敗北したら何をされるか分からないのが何よりも怖い。




 盗賊王、こいつは俺もよーく知っている。まずは最悪な人間を思い浮かべてみよう。そしてそいつを10倍凶悪にしてみよう。その想像が子供の遊びにしか思えなくなる悪党がこいつだ。




 盗賊とはいうが職はレベル17の戦士であり、ワルドナとの戦闘で行方不明になったものの未だにこいつへの恐怖は大陸に染み込んでいる。




 そして今戦っているのがこいつの側近であったレベル13の侍である男。アーダン、そしてその一行。なんの因果が知らないがパーティ構成は俺たちと一緒だ。




 こいつら御主人様が行方不明になったあと落ちぶれ単なる追い剥ぎにまでなったようだ




 


 領域での間合い管理により四人目の前衛として働ける様になった俺が敵盗賊に突っ込む。 


 敵盗賊の斬撃を僧侶を模倣し短剣で受け止めて戦士を模倣し切り返し侍を模倣して切り裂く。


 領域も併用し急所を切ったことで敵の盗賊はあっさりくたばった。




 いくら俺に模倣する能力があっても侍の全ての技術をコピーするのは身体能力が違いすぎて無理だ。戦士の模倣もかなりきつい。ので基本的には僧侶を模倣し技術が必要なら戦士に切り替え、侍のコピーはここぞというところで使うことで戦闘力を補っている。




 お互いの一行の睡眠魔法の詠唱をお互いの一行の沈黙魔法が妨害する。


 お互いの戦士がぶつかりあい高レベルな近接戦を繰り広げる。


 何故か硬直して動きが停止しているこちらの司祭以外のお互いの戦力は互角のようだ。


 侍枠と盗賊枠を除いて。




 言いたくないがアーダンは強い。侍ですら押されている。盗賊を倒してフリーになった俺も援護に入ったが領域をフル活用しても有効打を与えるイメージすらわかない。


 そうこうしている内に侍が両腕を飛ばされた。


 今まさにトドメをさされようとしている




 侍は嫌いだし幸せになってほしくはないがそれ以上に、大嫌いなクソ野郎によって殺されるのはもっと見たくない。


悪人ごときが善人より幸せに生きるなんて許されない(俺様は例外)。お前クソクズによって蹂躙されて良いほど悪いやつでは無いだろ。




 その瞬間時間が停止した。頭の中を死に戻りで見てきたいくつものビジョンが駆け巡る。その中のボーパルバニーの跳躍を模倣し突撃。


 奴がターゲットを俺に切り替える。その瞬間侍が口で咥えた刀でアーダンの利き腕を跳ね飛ばした。




 その隙に俺の首をはねたときのボーパルバニーの攻撃を完璧に模倣する。




 俺の刃が奴の首の細胞と細胞の隙間に最適な角度で突き刺さる。相手も必死で逸らそうとする。移動する首の最も弱いところに斬撃を合わせていく。




 過剰な集中で脳が焼ききれそうになる。首を切られながらも奴が突き出した剣が俺の心臓に突き刺さる。命が失われる感覚があるが関係ない。剣を相手の首の最も脆いところに最適な角度で併せ続ける。もっと先へもっと前へ。




 アーダンの首が跳ね飛ばされた。ほかでもない俺の手によって。レベル13の侍をレベル8の盗賊が仕留めたのだ。

■■■■

戦闘は終了した。




 戦士は順当に勝利していた。




 魔術師は沈黙魔法で魔術を封じられた後でも俺が教えた簡単な近接戦の技術を使い敵魔術師を斬り殺していた。




 僧侶も敵僧侶を撲殺し俺の心臓も修復した後兄さん兄さん言って泣きながら侍の腕を治療してる


 敵司祭は何か死んでた。




 あの瞬間超集中状態に入り、最適解を取ることで奇跡的にボーパルバニーの首はねに近いことを行ったがもう現在の筋力では二度と同じことはできないだろう。奇跡は何度も起きないから奇跡なのだ。




 しかしこれで分かった。俺も首はねはできると。


 安定してうつには盗賊の筋力では馬力が足りず戦士に転職しようものなら領域が使えなくなって急所攻撃ができなくなるため本末転倒。




 しかしこの迷宮に存在する無数のマジックアイテムの中には筋力を跳ね上げるものだってあるはずだ。もしくは筋力が戦士並になるほど高いレベルになるのでも良い。とにかく安定した首はね能力さえ手に入れば俺の戦闘能力は跳ね上がる。侍と並んで戦えるほどに。






 これで殺した人数は三人か。


 母さん曰く殺した人間が三人になるとそいつは地獄送りになるらしい。




 これで俺も地獄送りだな。




かすかな胸の痛みとともに自嘲する。




 中途半端に善意が残っている自分の半端さに腹を立てつつもこの不快感がかろうじてこいつらと同じ側に行かぬよう踏みとどませてくれているのだろう。




 そして俺がこう感じているということは他の連中はそれ以上に辛いだろう。酒で全部忘れるか?




 人殺すたびに宴会やるのはもはやキチガイだとは思うがこうでもしないとやってられん。宴会やるのが満場一致で決定した。




 宴会までに司祭は魔術師と魔法の訓練を行い、僧侶と侍の兄弟は買い出し、俺と戦士は今後の方針を相談していた。




 戦士は学の無さは所々から伝わってくるものの、頭の回転自体は早く相談相手としては最適だ。




 善人が聞けば嫌がりそうな話を堂々と話せるのもでかい。




 魔術師でも良かったのだが奴はところどころ抜けているところがある。




 こいつはパーティ結成から今に至るまで安定して無愛想だが、だからこそ信頼できる。


 方針を語るのは3時間ほど続いた。




 





 今までの文を読んでもらえれば分かると思うが基本的に俺は他人に興味がない。


 自分と関わりがあれば多少の興味が持てるのだが他人同士の関係なんか死ぬほどどうでも良い。




 それは今までそういう描写がほぼ無かったことからわかってもらえると思う




 それでも最近になって少しずつだが他人同士の関係に興味が持てるようになってきた。




宴会中はとりあえずリーダーポジの威厳もどきを保ちながら適当にご機嫌をとるつもりだった。




 侍の戦闘力を絶賛したところ、確かに僕は超強い、おまけに超絶顔も良い、実家も金持ちだし、高度な教育も受けてる。おまけに妹も可愛くて優しい…アレ、もしかして僕恵まれ過ぎてる?これはもうなんかの罪に当たるのではとかほざき始めたのではっ倒したくなった。




 妹の顔を絶賛したところ、確かに私は超可愛い、おまけに超絶強い、実家も金持ちだし、高度な教育も受けてる。おまけに兄もイケメンで優しい…アレ、もしかして私恵まれ過ぎてる?とか抜かした上に【かわいくってごめんね!】とかいうオリジナルソング歌い始めたのでこいつもビンタしたくなった。




 この後も続く宴会中の侍と僧侶のクソアホブラコンシスコン兄弟によるコントみたいな奇行やら、司祭と魔術師が弟子と師匠みたいになっていることとか戦士と侍がタッグを組んで色街に突っ込んでいった話とか司祭と僧侶がいっしょに温泉いったという話とか魔術師が僧侶に告白して振られた話といったたわいも無い話をした。




 何度か頭の血管が切れそうになったが他人同士の関係を知って楽しむことができた。




壊れちまった俺がまともな人間らしく過ごせた本当に楽しい宴会だった。

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瞬く間にレベル8、一般的にはネームドと呼ばれるレベル帯まで到達し迷宮都市において裏社会の王となっていたアータンを討伐した俺達の名声は迷宮都市に轟いた。




 ネームドクラスまで上がった冒険者は一個小隊に匹敵する戦力だ。


ネームドクラスまで上がった冒険者は一個小隊に匹敵する戦力だ。この迷宮都市でもネームドは冒険者全体の5%程度しかいない。




 本来何人もの犠牲を出しながら5年程迷宮に潜り続ける事でやっとなれるのがネームドだ。




身一つでどんな国にも受け入れられるしここで迷宮探索をやめても食うのには困らないだろう。




 そんなネームドに潜り始めて犠牲者もなく三ヶ月まで上り詰めた俺達の成長速度は異常だった。




ここらで引退してもそれなりに良い暮らしはできる程度には強くなったし迷宮探索をやめる事も選択肢に入ったが他の連中はワルドナを倒すまでやめる事は考えてないらしい。




司祭、侍、僧侶はともかく現実主義で家を再興させるのが目的の魔術師と老後の資金を貯めるのが目的の戦士まで引退しないのは意外だった。




何故かと聞いてみたが人格はともかく能力は超一流のメンツが揃っているのだからやれるとこまでやってみたい。特にあの金髪兄ちゃんの戦闘力とお前の指揮能力は異常。俺達に夢を見せてくれたのだから最後まで導いてくれ。


とのことだ。




なんども死に戻りを繰り返した中の良かった結果のみを観測しているから俺が有能な指揮官であると誤解しているのか。





まあ良いか、せっかく有能な手駒と死に戻りがあることだし俺も行くとこまで付き合ってやろう。








 本日の戦闘は4層で行った。


 この階の強敵と言えば空駆ける亜竜【ワイバーン】




 摂氏2000度に及ぶブレス、飛行能力による圧倒的アドバンテージ、馬鹿力に加え毒による二次被害までついてくる物理攻撃。




 そんなのが俺たち以上の数で出現するのだ。




 単体で強いやつが徒党を組んでんじゃねえぞ殺すぞ。




 そう思ってる内に5回死に戻りする羽目になった。




 しかしこいつは窒息魔法が有効なのを発見してからはただのカモとなった。


 先手取って侍か魔術師が動けば全て終わるのだから。


 しかしこいつも弱い敵判定なのか、窒息効く以外弱い要素ゼロなんだが。




 後は【ファイヤージャイアント】


 炎をまとった5メートル程の巨人。




 こいつは見た目はワイバーンより強そうだがかなりと弱い。




 巨体であるもののその肉体にはレベルアップによるブーストがかかっていない、でかいだけのレベル1の人間と同じでくのぼうだ。




 その上火炎も摂氏100度という四層に潜る冒険者にとっては虚仮威しみたいなものだ。


 


 おまけに炎使いなのに炎への耐性がない。摂氏500℃しかない上位火炎魔法程度の熱でも死ぬ。情けねぇなと思ったが普通は体温の5倍の温度をぶつけられたら死ぬか。




 普通の人間なら200度近い炎をぶつけられるようなものだ。




 こういう事を考えるとき俺も普通に人外になってしまったと感じる




 しかし四層最下層の戦闘力に反して倒したときに得られる魔力は4層で最上位。何度もこいつをターゲットにした狩りを行った結果、俺達は平均レベル10にまで上がった。こいつで稼ぎを行うのは本当に美味しい。




 逆に最悪な稼ぎ効率を持つのは目の潰れた不気味な二足歩行生物【ナイトストーカー】




 こいつの戦闘能力はファイアジャイアント以下なのだがレベルドレインという特殊能力が最悪だ。


 この特殊能力が発動するとレベルが下がる。


 冒険者は一レベル上げるだけでも血を吐き泥を啜るだけでは足りず、更に多くの血を吐き泥を啜るような経験をしているのにこいつはそのレベルをたった一回の攻撃で吸い取ってきやがる。


 はっきり言って迷宮内最悪の魔物だ。




 俺はレベルを吸われても即座に死に戻りすれば問題ないが一般の冒険者にとってはドラゴン以上に戦いたくない相手であることは疑いようがない。






 後印象的な新顔と言えば【レッサーデーモン】


 か。


 マーヴィー先生が使っていた魔力結界にてこちらの魔術攻撃を一定確率で無効化してくる。




 我がパーティ最強の攻撃魔法である侍と魔術師による合体融合氷炎魔法【メ◯ローア】ですら無効化されたらなんの影響も及ぼさない。




 魔術師の天敵と言っても良い凶悪な特殊効果をもつ怪物だ。




 その上そこそこ能力の高い魔法使いでもある上、対魔法使いの基本戦術である先手をとって沈黙魔法を掛けるのが通用しづらいのがきつい。




 他には毒と音と炎の三種のブレスを使い分ける【キメラ】


 体内の石を超高速で射出することでブレスのような攻撃をしてくる巨大な牛モンスター【ゴーゴン】が新顔か。こいつらも強い。


 キメラとゴーゴンの融合ブレスで一度死ぬ羽目になったからな。




 しかし戦利品も美味い。


 いくつか鎧を新調できた上に窒息の指輪という起動することで窒息魔法を発動する凶悪な一品も先日入手した




 そして本日も戦利品を手に入れた


 いつも通り俺と魔術師が罠を特定し俺が罠を解除する。その後は司祭に回して鑑定結果を待つ。




 鑑定していた司祭が大喜びしていた


 盗賊君前からこういうの欲しがっていただろと言いながら教えられた鑑定結果はまさにおれが理想とするものだった。




 アイテム名は【盗賊の短剣】


 盗賊向けの武器としては間違いなく最高峰の性能を誇る短刀だ。




 所有者の意志に応じて形を変化させる付与効果があるため一瞬でレイピアの様に伸ばし擬似的な飛び道具のようにしたりメリケンサックの様な形に変化させて敵の攻撃を流したりしても強い上、シミターやトライデントの様な特殊な武器の形に切り替え厄介なところに急所がある敵に対応する、相手の体内に突き刺したあとめちゃくちゃに変形させて相手の体内をぐちゃぐちゃにする。等発想次第でいくらでも応用が効く武器だ。




 応用性は地獄のループにハマった際に大きな力となるだろう。なんせ考える時間がいくらでもあるのだから。




 また武器としてだけでなくピッキングツールとしても最高の性能だ。水を武器内に取り込んで宝箱の奥深くに潜む火薬にかけてしけらせるなど通常ピッキングツールでは不可能なことができる。




 上記のメリットが霞むくらい素晴らしいのが能力を解放することで所有者を忍者に変える効果があること。




 忍者とは戦士と盗賊の合の子の様な職であり、冒険者の職業8つの中で最もレアだと言われている職業だ。


 戦力を落とさずパーティに鍵開け要因を入れられるため強力な職業だが、致命的にレベルアップが遅いというデメリットがある。


 しかしこれを使えば話は別だ。




 レベルアップの速い職業でレベルを上げてから能力解放すればデメリットをある程度ふみ倒し高レベルの忍者となれる。




 まさしく俺が求めていたものだ。自分の事の様に喜ぶ司祭とともに喜びのダンスを踊った。いい大人が何やってんだ、恥ずかしくないのかとか言われそうだが俺の生き様の方が100倍恥ずかしいので許して欲しい。




 しかしこれはレベルをできる限り上げてから使ったほうが良いな。




 使うのは最下層、5層に突入するほど成長してからにしよう。


■■■■

最悪だ。


 またあの地獄のような死のループを味わうのか。


 現在起こっているのは4層のモンスター配備センターという魔物のたまり場からモンスターが大脱走して起きたことによる魔物の大暴走、通称スタンピード。




 それにより4層がモンスターで埋め尽くされている。




 10歩歩けば戦闘が始まり戦闘開始後1分も経てば他のモンスターの一行が乱入してくる地獄だ。死に戻りでスタンピード発生前に戻ることもできない。




 侍が仕留めたファイアジャイアントの死体にワイヤー化させた盗賊の短剣を射出し突き刺す。


 それを戦士、侍、僧侶のゴリラ軍団に振り回させて敵集団に投げ込ませる。特大のハンマーの様になった炎の巨人は見事にレッサーデーモン複数体を押しつぶし殺害した。


 油断しているところに飛びかかってきたゴーゴンの攻撃を回避し前衛達の後ろに引っ込む。


 そうしている内に良い攻撃を僧侶が食らってしまった。




 ああ、クソ!


 俺は短剣で自身の喉を突き刺し自殺する。その結果僧侶が攻撃を食らう直前に巻き戻る。


 前のループで僧侶にいい攻撃を叩き込んだ相手を睡眠魔法の込められたスクロールで眠らせる。


 その瞬間眠った相手を僧侶が叩き伏せものいわぬ肉塊に変えた


 ホッとしたのも束の間、レッサーデーモンが氷結魔術の詠唱を始めているのが見えた。


 即座に侍に放り投げてもらいワイヤーの様に射出した盗賊の短剣を縮めて接近しつつ良い感じのところで短槍に変化。領域を併用して喉の脆いところをくり抜き物理的に黙らせる。




 ああまた味方が良い攻撃を受けちまった。自殺!巻き戻し!カバー!




 こんな面倒な作業を行ってでも各戦闘を体力魔力の消費なく終わらせないとどうしょうもない。




 とにかくとにかく敵の数は多い。




 ワイヤーをワイバーンに射出、突き刺さったところで戦士に思いっきり引かせ亜竜を地面に叩き落とす。


トドメを刺そうとする俺に迫るナイトストーカーを司祭が眠らせ魔術士と侍の合体凍結魔法が即座に氷塊に変える。


 とにかく敵の数が多すぎて紙一重の戦いになっている。お互いがお互いをフォローする高度な連携が取れるようになってもなお地獄。




 ワイバーン撃破後即座にキメラとレッサーデーモンの集団が出現。


 キメラの火炎袋を領域で探知。


 その後火炎袋周辺をパイルバンカー化させた盗賊の短剣でぶち抜き火炎袋を露出させる。




 露出後即座に戦士と侍が蹴りで吹き飛ばし司祭の火炎魔法が火炎袋に命中。誘爆し爆弾の様になったキメラが爆ぜる。キメラの爆発に巻き込まれたレッサーデーモンも爆ぜる。やっと倒したと思ったら新たに現れたキメラとゴルゴンが合体毒炎ブレスを吐こうとする。司祭、侍、魔術師が全員睡眠魔法を撃ち込んで眠らせたが


横から突っ込んできたワイバーンを盾状に変化させた盗賊の短剣で受け止める。即座に魔術師の窒息魔法が飛びワイバーンを絶命させたがワイバーンの第二陣が突っ込んでくる


 窒息の指輪の力を開放し即座に対応したのは良いが更にその後ろからナイトストーカーが飛び出してくる。




 こんな感じの戦いを俺達は一時間近く続けていた。俺は死に戻りがあるから体感1ヶ月程度。しかもこれで詰められた階段までの旅程は一割程度。敵が多すぎてまともに移動すらできないのだ。


 極限まで体力と魔術を温存するために俺の自殺回数は10000に届こうとしている。


 パーティの連中の疲労もやばいが俺の精神もやべえ。




 ああ、仕方ない。


 発狂するよりマシか。


 俺は盗賊の短剣の効果を発揮する事を決意した。

■■■■

最悪だ。


 またあの地獄のような死のループを味わうのか。


 現在起こっているのは4層のモンスター配備センターという魔物のたまり場からモンスターが大脱走して起きたことによる魔物の大暴走、通称スタンピード。




 それにより4層がモンスターで埋め尽くされている。




 10歩歩けば戦闘が始まり戦闘開始後1分も経てば他のモンスターの一行が乱入してくる地獄だ。死に戻りでスタンピード発生前に戻ることもできない。




 侍が仕留めたファイアジャイアントの死体にワイヤー化させた盗賊の短剣を射出し突き刺す。


 それを戦士、侍、僧侶のゴリラ軍団に振り回させて敵集団に投げ込ませる。特大のハンマーの様になった炎の巨人は見事にレッサーデーモン複数体を押しつぶし殺害した。


 油断しているところに飛びかかってきたゴーゴンの攻撃を回避し前衛達の後ろに引っ込む。


 そうしている内に良い攻撃を僧侶が食らってしまった。




 ああ、クソ!


 俺は短剣で自身の喉を突き刺し自殺する。その結果僧侶が攻撃を食らう直前に巻き戻る。


 前のループで僧侶にいい攻撃を叩き込んだ相手を睡眠魔法の込められたスクロールで眠らせる。


 その瞬間眠った相手を僧侶が叩き伏せものいわぬ肉塊に変えた


 ホッとしたのも束の間、レッサーデーモンが氷結魔術の詠唱を始めているのが見えた。


 即座に侍に放り投げてもらいワイヤーの様に射出した盗賊の短剣を縮めて接近しつつ良い感じのところで短槍に変化。領域を併用して喉の脆いところをくり抜き物理的に黙らせる。




 ああまた味方が良い攻撃を受けちまった。自殺!巻き戻し!カバー!




 こんな面倒な作業を行ってでも各戦闘を体力魔力の消費なく終わらせないとどうしょうもない。




 とにかくとにかく敵の数は多い。




 ワイヤーをワイバーンに射出、突き刺さったところで戦士に思いっきり引かせ亜竜を地面に叩き落とす。


トドメを刺そうとする俺に迫るナイトストーカーを司祭が眠らせ魔術士と侍の合体凍結魔法が即座に氷塊に変える。


 とにかく敵の数が多すぎて紙一重の戦いになっている。お互いがお互いをフォローする高度な連携が取れるようになってもなお地獄。




 ワイバーン撃破後即座にキメラとレッサーデーモンの集団が出現。


 キメラの火炎袋を領域で探知。


 その後火炎袋周辺をパイルバンカー化させた盗賊の短剣でぶち抜き火炎袋を露出させる。




 露出後即座に戦士と侍が蹴りで吹き飛ばし司祭の火炎魔法が火炎袋に命中。誘爆し爆弾の様になったキメラが爆ぜる。キメラの爆発に巻き込まれたレッサーデーモンも爆ぜる。やっと倒したと思ったら新たに現れたキメラとゴルゴンが合体毒炎ブレスを吐こうとする。司祭、侍、魔術師が全員睡眠魔法を撃ち込んで眠らせたが


横から突っ込んできたワイバーンを盾状に変化させた盗賊の短剣で受け止める。即座に魔術師の窒息魔法が飛びワイバーンを絶命させたがワイバーンの第二陣が突っ込んでくる


 窒息の指輪の力を開放し即座に対応したのは良いが更にその後ろからナイトストーカーが飛び出してくる。




 こんな感じの戦いを俺達は一時間近く続けていた。俺は死に戻りがあるから体感1ヶ月程度。しかもこれで詰められた階段までの旅程は一割程度。敵が多すぎてまともに移動すらできないのだ。


 極限まで体力と魔術を温存するために俺の自殺回数は10000に届こうとしている。


 パーティの連中の疲労もやばいが俺の精神もやべえ。




 ああ、仕方ない。


 発狂するよりマシか。


 俺は盗賊の短剣の効果を発揮する事を決意した。

■■■■

スタンピードから帰還後俺達の平均レベルは12になった。




 白銀の盾の平均レベル、通称マスターレベルの一つ手前だ




 ドヤ顔をしている僧侶が新規習得したのは第六位階快癒魔術。回復系統最高の魔術にして白魔法最強の魔術(魔術師談)




 発動すると死を除いたあらゆる体の不具合を取り除く。




 毒も麻痺も失血も部位切断も全て無かったことになり完全に健康な状態になる。




 戦闘中に回復魔法を使うのは下手中の下手だがこれだけは別だ。




今までの戦闘には役に立たない程度のしょぼい回復魔法ですら俺達の生命線となっていてくれていた。




こんな反則級の回復魔法を覚えてくれた時点でこのダンジョンの最下層、賢者ワルドナの居城、第五層の突破も目前であろう。




 後は半殺魔術




 対魔術結界で無効化されない限り相手を即座に半死半生の状態にする魔術。




 これだけ聞くと強そうだが弱い。




 というのも一手で相手の動きを完全には止められないのが問題だ。




 一撃で無力化できない限り反撃でこちらに壊滅的な被害を与えてくるのが深層の魔物だ。




ナイトストーカーとか魔術師系統の敵とかナイトストーカーとかナイトストーカーとか見れば分かるように基本的に敵の行動を許しては行けないのだ。




一手使っても誰も無力化できないのが確定しているこの魔術はクソだ。




 そもそも俺も侍も戦士も腕力技術力首はねで擬似的な即死攻撃を使えるし実質即死魔法みたいな睡眠魔法もある。




使うことはほぼ無いだろう。




 後は真空魔術。真空の刃を持って敵を切り裂く攻撃魔術。火力は十分、詠唱速度も範囲も優秀なのだが快癒魔術と使用回数が共通のため使うことは無い。






 最後は帰還魔術




 街に帰還する魔術。




ただしスッポンポンで




 発動しただけで憲兵に連行されるこの魔術は俺を大いに悩ませた。




 以前白銀の盾が唱えたことがあったそうだがその際パーティのイケメンリーダー【白銀】のあだ名が3日くらい【うんこカス】に変わったらしい。




 ピンチに追い込まれ唱えたが最後、期待の新星パーティのゲリラストリップショーが始まる。




嫌だ。




俺様のクールなイメージが崩れる上に司祭のマッパが見れる以外に良い点が無い。




後ついでに装備を失う。




ぶっちゃけ装備あんま関係無い後衛組とかオーラで盗賊の短刀作り出せる俺なら問題ないが戦士と侍の大幅な弱体化とか痛すぎる。




 こんなんでも効果自体は優秀かつ俺の死に戻りループをカットできる素晴らしい魔法なのが質が悪い。





 対して侍、魔術士の黒魔法でめぼしいのは




 上位凍結魔術。純粋な威力によって第四層までの相手全てを即死させるこの範囲魔術はある意味快癒以上に役に立つかもしれん。




 後は窒息魔術のマイナーチェンジ版魔術、


 圧縮窒息魔法と対不死窒息魔法。




 圧縮の方は弱い奴以外にも通用する窒息魔法。


 これからの事を考え侍、司祭と共同開発したらしい。




 窒息魔法の最大の強みである範囲の広さを犠牲にしているから微妙だとは思うがとりあえず適当に絶賛しておく。




 対不死窒息魔法はまんまだ。




 窒息という形を持って即死させるのが窒息魔法のためそもそもアンデッドには効かない。その欠点を僧侶との協力研究で補ったのがこれだそうだ。




 ターンアンデッドで良くねって言いかけたが魔術士が使えることに意味があるのだろう、多分




 最後に未完成の禁術。




 ■■■魔術。




 これは後で話す。




 神の定義を覆すから教会とか寺院に敵対視されてたり曰く付きの割にぱっと見の効果が地味だったりするし冒険者にとってはでかすぎる代償を支払ったりするが間違いなく最強の補助魔法だ。

■■■■

これからの決意とかここまでこれたことへの感謝とか仲間への称賛とか絆()の再確認とか今どき流行らないしょうもない掛けあい(侍主導)後に意気揚々と5層に突入。




 直後お散歩中のワルドナに出くわした。


 こんなことってある?


 戦ってみた結果結論から言うと大陸最強の評価に違わない。


 


こいつ魔術師のくせに普通に侍と戦士と僧侶が束になってかかっても素手でインファイトして押し切れるほどに強い。




 圧倒的な戦士としての実力を見せつけた上奴が使用してきたのは【領域】




 俺にだけは察知できる全身を舐め回されるような不快な感覚が全身に伝わる。




 俺を上回る領域展開能力と俺を遥かに上回る身体能力で持って俺は一瞬で首をはねられた。




 その上こいつは何体かの魔物と融合しているようでナイトストーカーの手やらワイバーンの爪やらゾンビの爪やらに身体の一部を変化させる能力がある。当然の如く麻痺やら毒やらレベルドレインまで扱う。


 


 体の一部を赤竜にかえて火炎ブレスまで放つ。


本当に人間かよ。




魔物への変身能力を活かし触手をワイヤーの様に放ち距離詰めや拘束に使ったりもしてくる。俺も盗賊の短剣で似たようなことができるが明らかに奴の方は極めて練度が高い。




 盗賊の短剣二刀流とオーラの外套を作り出した完全武装の俺をワイヤーもどきで拘束してハンマーみたいに振り回して戦士を爆散させたのは一周回って笑った。




 すげえ、体感一時間で1000回は死んでいるぞこんなハイスピードで何度も殺されることは無かった。しかもこいつまだ魔術を使ってない




 死に戻りループを使った圧倒的な試行回数で即死を押し付けようにもこいつの魔除けの即死効果無効効果がこれを阻む


首はねへの最適解ルートを魔除けが結界で防護しているのでまともに攻撃通らん。




 魔除けさえなければループを利用し10000回くらい挑めば首はねて俺達が勝っていただろうがそんな簡単に逆転を許すようなら大陸最強とは呼ばれていないだろう。




 結局奴が魔術を使ったのは侍がかなりいい攻撃を入れた回のみ。たった一度だ


 奴が唯一使ったのは系統内魔術最強の攻撃魔術。




黒系統第7位階【核撃魔術】




 異世界から持ち込まれたという最強最悪の兵器を模倣した炎を越した熱エネルギーが放たれた。


 基本的に迷宮の壁や床はレッサーデーモン等とは比較にならないほど高い対魔術耐性を持つのだがそれを貫通し壁や床にもダメージを与えるほどの攻撃であった。




 侍だけはギリギリ生き残ったようだがかなり強くなったはずの俺たち五人はたった一撃のもと灰と化した。




 クソッタレ!パワーアップイベント挟んだらしばらくは無双回だろうがよ!




 結局最後は逃げ切れたし何かループ内の会話で司祭が俺の国のクソッタレ【盗賊王】であった事が発覚したりと色々としれたのは良かったが。




そのおっぱいで元男とか嘘だろお前。あまりの衝撃にとばっちりの恨みもすっ飛んだ。




 え?そんなのどうでも良いからどうやって逃げ出したかだけ教えろ?


 言いたくない。


 言えるはずがない。


 俺のあだ名が【期待の超新星】、【白銀の後継】から【変態全裸粗チン大王】に変わったことから察してくれ。

■■■■

最終層への初めての侵入時はワルドナにボコボコにされたが、それでもこの短期間で最終層に入れた。




迷宮解放後最終層までたどり着けたパーティは俺たちで23組目。結構多いとは思う。しかし20組はこの階層で消息を絶ち一組は引退、残りの一組は白銀の盾だ。




 たどり着くのとは比べ物にならないほど踏破するのは難しい。




 それでもワルドナ以外の敵とはすぐにレベルアップと新たなマジックアイテムの入手でなんとかなる気がしていた。なんたって俺達は白銀の盾ですら到達に二年かかった最終層へ一ヶ月でたどり着いた超新星黄金の剣だ。最悪俺が体感10年くらい死に戻りしたらなんとかなるだろう。そう思っていた。しかし俺達はこの階層と10ヶ月程向き合う羽目になる。




 五層の探索初めて三日目、


 俺達は死に戻りと敗走を繰り返していた。


 基本的なモンスターは四層までとそこまで変わらないが5層になって追加された奴らが化け物だらけ。


 5層追加敵と接敵したら逃げるということを徹底しなければ生き残れない。




 その代わりにマジックアイテムの性能は桁違い。今までのマジックアイテムは盗賊の短剣と窒息の指輪以外はぶっちゃけ地上の技術でもそんな苦労せず再現できるものばかりだ。しかしこの階層では三種の神器と呼ばれる魔除け級の反則アイテムが存在する。その上敵から吸収できる魔力量も桁が違うためレベルアップもガンガンできるだろう。




 要は超ハイリスクハイリターン。辛いがそれに見合う見返りがあるというのはワルドナという大陸最強の存在を打ち倒そうとする俺たちにうってつけだ。最高の訓練場となるだろう。




 そう思っていた俺を殴りたい。


 五階層は超超超超超ハイリスク過ぎてリターンが全く釣りあってない。


 最大の理由は戦闘力最強の魔物【グレーターデーモン】でもなく地獄の道化師【フラック】でもなく核撃魔術を扱いこなす魔神【マイルフィック】でもなかった。


 最悪の魔物【ヴァンパイア】


 このボケカスのせいだ




 こいつの最大の脅威はレベルドレイン。ナイトストーカーと同じ能力であるがこちらは複数レベルを下げてくる。そのためいくらレベルアップ用の魔力をためてもこいつの引っ掻き一回ですべてが霧散する。一ヶ月かけて稼いだレベルアップのための稼ぎが一瞬で消失するのはまさしく地獄だろう。死に戻りでレベルドレインを踏み倒せる俺でも誰か一人でも引っ掻かれた時点で自殺を強要される。




 その上こいつはレベルドレイン意外カスなナイトストーカーと違って普通に強い。魔術へのそれなりに高い抵抗に加えゾンビと同じく麻痺能力を持つ。単純な身体能力でもレッサーデーモンよか強い。




 そんな奴らが複数群れて現れるのだ。


 強いやつが徒党を組んでんじゃねえぞ殺すぞと何度も言った恨み言が漏れる。




 7体で現れたこいつらの不意打ちで全員麻痺させられた結果最終的に俺はレベルが0になるまで殴られた。レベル0になると全身の構成物質が徐々に崩壊して遺体すら残らず消滅し死ぬということがわかっちまった。




 10回戦闘すれば内1回はこいつらと戦わなくてはならない程遭遇率が高いのも頭おかしい。


 他の五層到達連中はマジでこいつの対処どうしてたんだ?




 しかし四層でもナイトストーカーとかいうゴミがいた代わりに格好のカモであるファイアジャイアントがいた。




 それと同様にこの階層にもカモがいる


 名は【フロストジャイアント】


 五層追加組で例外的に唯一強くない敵だ。


 氷をまとった5メートル程の巨人。


 こいつは見た目はヴァンパイアより強そうだがかなり弱い。




 巨体であるもののその肉体にはレベルアップによるブーストがかかっていない、でかいだけのレベル1の人間と同じでくのぼうだ。




 その上冷気もマイナス100度という五層に潜る冒険者にとっては虚仮威しみたいなものだ。


 


 おまけに氷使いなのに氷への耐性がない。摂マイナス200℃しかない上位凍結魔法でも死ぬ。ファイアジャイアントとほぼ同じ、殴ってるだけで倒せる相手だ




 しかし五層最下層の戦闘力に反して倒したときに得られる魔力は五層で最上位。その上ドロップ品も優良だ。




 何度もこいつをターゲットにした狩りを行った結果、俺達が入手したのは【カシナートの剣】


 切断の魔術がかかった刀身は魔術へ耐性がない物質ならば鋼鉄ですら一刀両断にする。




 起動せよ《エクスペールギースキー》と言う事により刀身が回転する効果もあるためかき混ぜ機としても使える一品だ。




 これを使って侍が作成したケーキは大好評であった。甘いものをあまあまさんと呼び異常に好む僧侶はもちろん、甘いもの嫌いそうな戦士からも絶賛されていた。世の中に蔓延る甘いもの好きアピールするゲボカス側溝クソビッチと甘いもの好き好きアピールに弱い脳みそ全身チンカス海綿体クソ男のせいで男が甘いもの好きと言うのは公言しづらい世の中だが俺も甘党だ。無駄に旨いケーキは五層で折れそうになった心を癒やしてくれた。




しかしホントこいつ何でもできるな。

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ジャイアント、古代の地上における支配種族。しかし現代の迷宮内ではレベルアップができないという迷宮において致命的な欠点を持った種族。




 ウドの大木、サンドバッグ、アイテム袋、カモなど散々な呼ばれ方をしている残念な連中だが例外がいる。




 名は【ポイズンジャイアント】


 特にこれといった脅威となる行動を持たない巨人族ではあるもののこいつは例外的に竜の息吹に匹敵する攻撃力の毒ブレスという脅威的な行動を持つ。




 これだけの威力のブレスを撃つために体も血も猛毒がパンパンに詰まった毒袋のような構造をしているため下手に切りつけても猛毒の返り血に拠って切りつけた側が死んでしまう




 身体能力もレベルでのブーストを受けられないという欠点を補うための徹底的な筋力強化により四層の連中と同レベル程度にはある。




 徒党をくみ不意を突き先制ブレスによっていくつものパーティを潰してきた暗殺者。


 不意をつかれれば全滅必至の怪物


 それがこいつらポイズンジャイアントだ、




 しかし脅威度は五層追加敵の中で間違いなくしたから数えた方が早い。




 理由は窒息魔法が効いてしまうから。




 外部的な要因でいくら強化されてもこいつは迷宮の弱者、巨人族。




 弱者と判定したものを即死させる窒息魔法によってあっさり死ぬ。




 奴らもそれを理解し不意打ちからの瞬殺を心がけているようだが不意打ち受けなければ負けない時点で五層の生物としては生温い。




 そして例によってこいつも倒すことによって得られる魔力は桁違いだ。




 不意打ちを領域で探知しパーティに伝える、その直後魔術師と侍が即座に窒息魔法で殲滅した結果今までで最高の魔力吸収ができた




 全員がレベル13、通称マスターレベルとなるのも近い。




 13という数字は実質的な人類の最高レベル。そしてワードナ討伐に最も近いとされていた白銀の盾の一般メンバーの平均レベルと同等だ




 これ以降レベルアップ効率はガタ落ちするのでこれより上のレベルにはワルドナや【白銀】、【狂王】みたいな人間やめてる化物超越者しかなれない。




 マスターレベルとなった人間は超越者を目指してそのまま戦い続ける、もしくは転職により職業を変えできる事を増やす事によってより強くなれる。




 転職についてはややこしいため一旦省略するが要は戦士の様な物理職は超越者コース、魔術師みたいな魔法職は転職コースを進んだほうが強いということを覚えておけば良い







 レベル13が区切りになっている理由はもう一つある。このレベルの魔術師僧侶は職に対応した全ての系統内白黒を使えるようになるからだ。




 黒魔法最高ランクである核撃魔術の凶悪さはワルドナに食らった事で身をもって知っている。


 あれを俺達も使えるようになれば爆発的な強化が望める。




 核撃魔術は対魔術結界が不得手な人間相手には反則級の効果を発揮するがもはや魔術結界を持ってて当然となってる五層の上澄みの奴らには単なる強い魔法どまりだろう。




 しかし五層の奴らの取り巻きとして出てくる雑魚共を一掃できるのは魅力的だ。


 本格的に五層を攻略する際の生命線となるだろう。




 帰還後僧侶に呼ばれ鍵開けのレクチャーをする羽目になった。




こいつは町のネズミ捕り用の毒餌を拾い食いして寝込んだり、ちょうちょ追っかけて隣町まで行ったりクサれボッタクリクソ寺院で暇な時働いていたりと行動だけ見ればホームラン級のアホだが魔術師と同じく恐ろしく飲み込みが早い。




 手駒のご機嫌取りくらいの気持ちで教えていたが土が水吸うように知識を吸収してくれるのはやはり快感だ。魔術師に教えていた時のノウハウも絡めて教える事に熱中してしまった。




 その結果僧侶が編み出したのは罠鑑定魔術。今まで罠鑑定は俺と魔術師の二重チェック方式でやっていたが100回に一回程度はどちらもミスをする時がある。


そしてその一回のミスは致命的なダメージをパーティに与える。そのため罠対策をどうするかが俺と魔術師は話し合っていたのだが意外なところから解決法が飛び込んできた。精々利用させてもらおう。





馬小屋で寝ていたときに僧侶から聞いた寺院での噂話を思い返す。


ワルドナの過去に何があったのかを。

■■■■

東の果てにヒイズル国という鎖国国家がある。


 マスターレベルの忍者と侍が100人以上存在し世界最高の魔剣鍛造技術を持つ国家だ。




 これだけ聞けば世界最強の軍事国家なのではと思うし実際に短期戦では超強い。




 しかしこの国は宗教観がイカれてるので極端に白魔法使いが少ない。長期戦に異様に弱いので国家の武力は中の上止まりだ。




 そしてこの国はワルドナの生まれ故郷でもある。




 奴はかの国の高位貴族の家に生まれた。


 その上生まれながらにして金髪侍すら超す異常な暴力の才を持った天才であった。




 黒魔法と侍、忍者への抜群の適正があるのはもちろんだがヒイズル人としてはかなり希少な白魔法の才を持っていたため奴が白魔法使えると知った際には家中大喜びだったらしい。





 奴は天賦の暴力の才に反して虫を踏み潰せば罪悪感で3日は泣き止まない、近所のガキに殴られては泣いて逃走(殴ったガキは後で処された)、痛みにも極端に弱いと精神面において戦士としてやっていける要素が皆無であった。




 それでもなんとかワルドナは成長していったが貴族の家の出であるため何回も戦争に駆り出された。




 殺すのも傷つけるのも傷つけられるのも大嫌いな奴にとって地獄のような経験だっただろう。




 戦争を憎んだワルドナは20年間くらいかけて色々と戦争無くそうと頑張っていたみたいだがまあことごとく失敗したようだ。




 その結果奴はがっつり病んで誰も傷つかないためには片っ端から洗脳すれば世界は平和!麻薬で脳みそぶっ壊せばみんな幸せ!というクソみたいな結論に達した。




 達するだけならともかく広域洗脳の魔術ブッパして周辺国家を大変な事にしたため国外へ追放、なんだかんだで狂王に拾われ今に至るというわけだ。




そして奴が目をつけたのは古代に存在した系統外魔術の■■■■■■魔術。




 広範囲に麻薬に似た成分を散布し最高の快楽を与え死んでいないだけの生命にさせる魔術。




 これを受けた相手は快楽のあまり体のあらゆる水分を放出して干物の様になりながら満面の笑みを浮かべて寿命がくるまで生きてんだかしんでんだか良く分からんゴミとして過ごす。




 元々は未来予知の能力を持ちあらゆる攻撃を回避する魔物に対抗するために作られた魔術らしい。




 その魔物は未来予知により探知した快楽に抗えずに自らこの魔術を受け無力化された。




 ともかく奴の目的は魔除けの解析、人体実験によりこれを習得、その後地上の人間を麻薬煙によって飼い殺しにすることだ。




 恐らく普通に生きた場合の幸せの総量よりも麻薬煙で生ける屍になった場合の幸福の方が多いのだし問題ないと思っているのだろう。




 実際5層でワードナに殺された冒険者達の何名かは蘇生され生ける屍に改造されている。


 司祭も元々はその内の一人だったようだ。







改造される前の司祭は盗賊王であった。





 本物の悪党の悪は脳に宿るのか、魂に宿るのか、記憶以外のすべてを破壊すれば悪性は消えるのかという実験の結果無事ほぼ別人に変えられた司祭




 それでも司祭は快楽地獄を自身の意思で断ち切りワルドナを止める奴を探していたとのこと。




 以前のワルドナとの戦いでもワルドナは思うところがあったらしく悪性に打ち勝ったことへの称賛、実験協力への感謝、もう一度殺してより強力な麻薬天国に漬けるという宣告などをしていたが攻撃は極力控えていた。




 司祭もワルドナの考えは一部共感できる、できてしまう。その考えを否定する何かが欲しいと感じて今も戦い続けると言った。





 それに対し最悪のクズの盗王ですら断ち切れる程度のカスみたいな快楽なんて意味が無い。少なくとも魔術の不安定さというリスクを背負ってまで欲しいものではない。




 色町行って旨い物食って上等な宿で寝るほうがよっぽど確実な幸せだとか言ってみたら司祭は大笑いした。




 こいつもまあまあチョロいなとか思いつつご機嫌を取ってみたのだがその中で君は本当に良い人だねと言われた。




 あんな雑な演技すら見破れずよりによってこの俺を良い人認定とか眼球にガラス玉入っているか脳みそにうんこ入っているんじゃねえのかよこのおっぱいと馬鹿にしていたらもう既に俺の本性を奴が知っている様な事をほのめかされた。




司祭は話を続ける。




 過去の司祭の所業に比べれば今の君の悪性なんて可愛いもの、昔の私…いや俺が盗賊君の立場だったら小国一つ落として地獄に変え、やりたい放題している。




 迷宮に潜るのを辞めればどんな組織のボスにでもなれる暴力を手に入れてもなおしょぼい事しかやらないし根本的に君は貧乏性でアホなんだろう。と言われた。褒められてんのか貶されてんのか分からん。

■■■■

うちの弁当当番はそれぞれ交代でやっている。


 黄金の剣は俺も含めて全員料理が得意だ、得意な奴とものすごく得意なやつしかいない。




 料理は侍が一番上手い。時点で司祭。





 僧侶ちゃんのお料理教室とか言ってとんかつチキンカツカレーなるゴミを作ってた僧侶ですら真面目にやれば料理は上手いのだ。


 真面目にやれないから僧侶なんだが。





 今日の弁当担当は俺だった。


 出汁がしっかり効いていて美味いだの繊細な味だの割と評判だ。司祭の作った飯の次に美味いとか言われた時は小躍りした。




 食い方のきれいな侍、魔術師、司祭、戦士に食べてもらえるのは悪い気分ではない。大切に作った芸術作品に敬意を持って向き合って貰ってる気がするからだ。食い方がくっそ汚い僧侶も美味しい美味しい言いながら食ってくれるのでそこまで不快でない。




 他人の為に無償で何かしてやるのは大嫌いだが何かをやって称賛を受け取るのは大好きだ。




 まあ何が言いたいかと言うとこいつらに飯を作るのも称賛込みならなんだかんだ悪くないと思ってしまった。




 他人に何かして良かったと思えるのは何年ぶりだろうか。




 一昨日の朝から徹夜で仕込みをやって作っただけの事はある。




 司祭にそういう無駄に勤勉なとこも君の良いところだよとか言われたが褒められてんのかこれ?





 それはそうと今日も楽しい迷宮探索だ。




 第五層での新規敵との戦いを避けた俺達にレッサーデーモンの上位火炎魔法が今放たれようとしている。




 それに対し俺は悪魔を盾代わりに突撃させる。領域で敵の構造を把握するのと自由自在に操れる盗賊の短剣を組み合わせた新たな技能、マリオネット。




 盗賊の短剣を糸状にして敵の体の脆いところに入れ操る技能。




 通常であれば操る暇があるのならさっさと殺したほうが良い結果になるのだが対魔術結界持ちを操る場合は別だ。




 人と魔物の戦力的な意味での最大の違いは魔法への耐性だろう。




 こちらの魔法はなんだかんだで魔物の対魔術結界を突破できず思うように効果を発揮しないことも多いが敵の魔法は素通しだ。




 俺達が上位凍結魔法を二発打ったところで敵集団を半分倒せれば上出来だが敵が上位凍結魔法を使ってきた場合一発で半壊、二発で侍が以外全員死ぬ、三発喰らえば全滅する。




 最終目的である魔法使いワードナへの対策のために魔法への対抗策を考えるのは必須だ。




 その対策の一つとして思いついたのが対魔術結界持ちを肉壁にする方法。レッサーデーモン程度の戦闘能力なら俺のマリオネットが通用するので肉壁として突撃させてみた。




 結果は大成功、レッサーデーモンの放った上位火炎魔法はこちらのレッサーデーモンの体に吸い取られるようにして消滅した。 




 この分なら対ワルドナ戦で大量の肉壁を引き連れれば奴の核撃魔術を無効化するのも可能だろう。




 定期的にボコボコにしているマーヴィー先生も肉壁としては理想的だ。簡単に操れるほど弱く魔術結界は上質、何より使い潰しても欠片も罪悪感がわかない。





 あいつはレベルアップに使ってよし肉盾に使ってよしと本当に便利だ。




 そんな事を考えていたら戦闘が終了していた。


 今回の戦利品は【回復の指輪】


 指にはめるだけでじわじわと傷が言えていく一品だ。




 化け物じみた戦闘能力を持つが回復能力を持たない侍にもたせて完全無欠の前衛にしても良いし司祭の貧弱な耐久能力を補わせても良いだろう。




 最初はそこそこ便利なマジックアイテムだなと思っていたのだが、これを侍が装備して傷が完治したら戦士に渡す、戦士も完治したら僧侶に渡す、といったようにパーティで使い回すことでノーコストで全員の傷を完全に癒やせる反則級のアイテムであった。




 三種の神器ですら無いアイテムですらこれかよ、三種の神器とかマジでどういう性能しているんだ。

■■■■

いつも通り馬小屋で目覚める。 


以前司祭に、昔の私が盗賊君程の暴力を所持しているのだったら小国一つ落として地獄に変えてでもあらゆる快楽を貪っている。




しかしそれだけ強くともなおしょぼい事しかやらない君は根本的にアホで貧乏性なんだろう。と言われた事を思い出す。




 そうだよ、高いところのベットとか体に合わなすぎて寝るたびに老化が進んでいるようにしか思えねえんだよ。




 侍や魔術師の部屋に転がり込んでタダ宿を取ろうとしたこともあるんだがこの問題があってすぐ馬小屋生活に戻った。




 その上侍の部屋いたときはスラムのガキに金掴ませて大量に買い込ませた限定プリンを同じく侍の部屋に転がり込んできた僧侶に全部食われたのも最悪だった。




 思い出しただけでキレそうになってきた。


 クソみたいな気分で迷宮探索の準備をした。


 


 迷宮最強の魔物は誰だと思う?最強生物金剛龍帝の眷属たる龍種、【レッドドラゴン】か?核撃魔術すら扱いこなす異界の魔神【マイルフィック】か?それとも俺を超す領域の使い手の地獄の道化師【フラック】か?




 迷宮五層の冒険者は絶対に口を揃えて言うだろう【グレーターデーモン】だと。




こいつは筋骨隆々の大悪魔。筋肉に反して上位凍結魔法を得意とする魔術師タイプの悪魔である。




 上位凍結魔法がどれほど人間にとっての脅威になるかは既に話したが、一発喰らえば半壊、二発で超越者の領域に達した奴以外全員死ぬ、三発で確実に全滅だ。




 当然上位凍結魔法使いのこいつも強い。魔法を止めるには基本的に発動前に殺す、睡眠魔法を使う、沈黙魔法を使うの三種だがこいつはほぼ確実にこちらの魔術を無効化する最高性能の対魔術結界を持つ。




魔法への耐性に限ればワルドナすら凌駕している。




 よって対処法は行動する前に武器でぶっ殺す一択だがこいつは肉体もマスターレベルの戦士級だ。


 一撃で殺すなどカシナート持った侍ですら厳しい。




 グレーターデーモンが亜音速に達する突きを繰り出す。




それに対応した侍が腕を正面からカシナートで貫く。




直後に侍が起動せよと叫ぶ。主の命を受けたカシナートは高速回転を始めた。突き刺さった部位を回転で破壊しつつ体勢まで崩すつもりだ。




 その意図を理解した大悪魔が即座に腕を切り落とし後ろに引く、そのまま魔術の詠唱を始めた。絶対にあれを発動させるな!俺の絶叫とともに前衛達が飛び出す。




 俺はニヤリと笑い魔術師の第六位階魔法、最強の補助魔法と呼ばれる■■■魔術を模倣し唱える。その瞬間魔術の詠唱をやめたグレーターデーモンが目の色を変えて飛びかかってきた。




 そうだよなあ、これ発動させちまったら魔術なんて意味ないもんなあ、偽物だけど。




 音を置き去りにして飛びかかってきたグレーターデーモンを領域で探知。超高速で襲い来る麻痺と毒の追加効果を持った呪爪を紙一重で回避しつつ首はねを仕掛ける、失敗。




 しかし首元に食い込んだ盗賊の短剣を紐のように切り替え首を締める。首を締められねじ切られそうになった状態でもグレーターデーモンは止まらない。




 パーティ最高の回避能力を持つ俺でも紙一重で回避するのが精一杯の体術を打ちながら再び魔術の詠唱を始める。


 戦士、僧侶、侍のゴリラ組が走ってきているが間に合わない。




 司祭魔術師はこいつ相手だと役に立たないし死に戻り確定だな。




 そう思ってたら戦士の投げた手斧がグレーターデーモンの顔面に突き刺さる。詠唱がわずかに崩れる、遅れる。しかしまだ足りない。その直後詠唱が止められた。原因は司祭の沈黙魔術。




 奇跡的にグレーターデーモンの対魔術結界を貫き沈黙魔術を通したのだ。




 ゴリラ組が駆けつけてきたので全員で力を併せて首を締めている紐を引っ張る。もう一手でもこいつに行動させてはいけない。




 全員必死になって紐を引っ張りグレーターデーモンは首をはねられた。




 こんだけ苦労して一体仕留めるのがやっとだった。なんでここにルビを振ったのかは勘が良い上に顔も良い皆様ならわかるだろう。ともかくこの戦いではグレーターデーモンの脅威を一割も表せてないのだ。魂に刻みつけられ分からされた大悪魔の脅威は後日言うことにする

■■■■

迷宮の魔物の中で最強の種を決めろと言われたら筆頭は悪魔だろう。


高い魔術抵抗力、凶悪な魔法。美しさすら感じてしまうほど人類を殺すのに最適化されたこの種族が対人においては迷宮最強だ。




 対人以外なら核撃魔術使いの【マイルフィック】が含まれるアンデッドも強いだろう。




 正直迷宮の龍種がこいつらに勝てる点はブレス吐けることのみだ。そのブレスも威力は上位凍結魔法以下だ。




 それでも世界最強の種族はと言われたら間違いなく龍となる。世界最強の個が龍だったといったほうが近いかもしれない。




 そいつ一体が龍の評価を引き上げている。


 そいつの名は【金剛龍帝】


 たった一体で過去の人類の9割を喰い荒らした化け物。




そこらのチンピラですら上位凍結魔法を使えるほどに魔法の発展していた過去の世界で世界全ての魔術師の命と引き換えに放たれた月すら滅ぼす第15位階の魔術【月光殲滅】で封印するのがやっとだった正真正銘の怪物だ。




 喰らった物の能力をコピーする能力を持ち、物理攻撃はこの世界そのものを歪め、魔法は時間すら支配し、ブレスは概念すら殺し尽くしたと言われる真正の化け物。




金剛騎士と呼ばれる自身の7割程度の戦闘力の眷属を3体まで呼び出す特殊能力まで持っていた。




 これでもまだ発展途上だったのが心底恐ろしい。喰えば喰うほど強化されるこの化け物はまだこの世界のどこかに封印されているらしいがそんなワルドナ超えの化け物と戦うつもりは無い。


 凡人の俺は凡人にできる事をするだけだ。




 眼の前にいるのはその化け物の眷属、龍種の【ドラゴンゾンビ】【レッドドラゴン】




 どちらも迷宮の龍種最強種であり迷宮最強のブレス能力がある。そのレッドドラゴンは魔法まで使いこなす強敵だ。




 いつもは出会ったら即逃げ出す枠に入れていたもののマスターレベルの直前となった俺達の能力が通用するかの腕試しに使っている。




 前衛は先手を取り一撃で魔術抵抗持ちの敵を殺す。




 黒魔法使いは先手をとってそれ以外をまとめて殺す。




 白魔法使いは死者が出ないようにしつつ先手をとって殺すという迷宮戦闘の基本に立ち返った結果たった4回全滅しただけで勝利できた。




 何と言ってもカシナートの剣の効果がでかい。これ一本で確実に殺せる敵のラインが大幅に上がる。




素でも大体の相手を殺せる侍ではなく最近戦闘で遅れを取り気味の戦士にカシナートを渡した結果侍、戦士、俺がそれなりに多くの種類の敵を一撃で仕留められる様になった。




 その結果ある程度五層の敵にも対応できるようになった。




 10回戦えば9回は全滅か敗走だったのが8回に変わる程度には。




 そうこうしているうちに宝箱の鍵が空いた。


 中身はなんだこれ、よろい?




 それを鑑定した司祭が絶叫した。


 三種の神器【君主の鎧】だと

■■■

君主の鎧、【白銀】の装備にして白銀の異様な戦闘力の要因の6割を占めていた規格外のマジックアイテム。




 効果は即死とレベルドレインという最悪の追加効果二つに対する耐性付与、魔除けに匹敵する自動再生能力の付与、即死攻撃【退魔の剣】の習得の三種。 もちろん防具としての効果も迷宮最高峰。本当にとんでもないマジックアイテムを引いてしまった。パーティも大騒ぎだ。普段冷静な戦士や魔術師も興奮を隠せていない。




 本当に素晴らしいのだがたった一つ問題がある。うちのパーティにこれを装備できるやつがいないということだ。




 ともかくこれをどう活用するかを帰って一晩寝てから話し合うこととなった。




 次の日の朝俺達は全員レベル13になっていた。マスターレベルだ。全員マスターレベルのパーティは白銀の盾が失踪して以降初となる。




 魔術師も僧侶も全ての系統内魔術を習得した。新たに覚えた黒魔術は核撃魔術、転移魔術、■■■■魔術の三種でありどれも恐ろしく優秀だ。




 今回の一番の目玉である【核撃魔術】の恐ろしさはワルドナやマイルフィックに使われていやというほど知っている。




 打たれれば一発で侍以外死ぬ。


 たまに侍ごと死ぬ。




 範囲も威力も上位凍結魔法の倍、最強の系統内攻撃魔術という異名に違わない反則級の魔術だ。


 対魔物戦では対魔術結界に阻まれて、敵に使われた時ほどの効果は発揮しないだろうがそれでも結界さえ抜ければグレーターデーモンですら一撃で灰だ。




 これが使えるおかげでレベル13は【マスターレベル】とされ、レベル12以下とは別物として扱われるのだ。実際対人ではこれ一発で方がつく




 【転移魔術】も恐ろしく便利だ。


 座標を設定しその地点に転移する。


 睡眠魔法の比では無いほど地上において猛威を振るった魔法だが長くなるため省略する。




 迷宮内でも強力だが五層の大部分に転移防止の結界が貼られているので即座にワルドナ前に転移、不意打ち後即転移でバックレとかができないのが残念だ。




 五層においては単なる移動魔術でありそれより上でも下でもない




 しかし今までは五層の探索をするために一層から四層を通り五層の探索が終わったらまた一層から四層を戻らなければならなかったが、これのお陰で即五層探索、終わったら即帰還ができる。




 描写を省いていたが五層に向かうまでにボーパルバニーに首をはねられた事やらナイトストーカーにレベルドレイン喰らうことが10回くらいあったためそれを無くせるのはでかい。




 これ一つで誇張抜きで五層の探索効率が10倍になる。




 【■■■■魔術】は大いなる■■に嘆願し奇跡を起こす魔術だ。




 起こる効果は本物の白魔法。


 魔術結界含めたあらゆる障壁を無視して強制的に沈黙させる魔術やパーティの死者を確実に蘇生させる魔術など既存の白魔法とは一線を画す。




 それもそのはず、白魔法は真なる白魔法を模した模造品に過ぎないのだから。寺院はこれを隠してこそいないもののこの事実は敵視しており白魔法で大いなる■■に接続できないか色々とやっているようだ。




 しかしこれにはレベルを捧げるという特大の代償がある。




 セルフレベルドレインという特大の代償と教会に敵視されていることのせいで禁術と呼ばれ、よほどの事が無いと使われない魔術だ。




 しかし、ワルドナとの絶望的な差を埋めるのにはこれほど適している魔術はない。最終兵器としてせいぜい役立たせてもらおう。




 それに対し白魔術はなんというか…微妙だ。


 雷を呼び出す上位雷撃魔術と上位蘇生魔術。




 上位雷撃魔術は核撃魔術に見劣りするし上位蘇生魔術も蘇生率が多少上がっただけの対味方用火葬魔術であるため微妙。いや弱いわけではないんだが…もっとこう、なんか無かったか?




 そしてマスターレベルになっても司祭は第四位階までしか魔術を使えない。産廃職と言われるのも当然




 まあいい、これで以前から考えていたことができる。


 転職やるぞ。

■■■

職業を変えて新たな力を得る転職のルールは二つ。


 1つ目は前職から引き継ぐのは魔法の習得と戦闘経験のみ。


 戦士職で培った能力はほぼ受け継がれないということだ。




 2つ目はある程度の能力がなければ転職できない職がある。


 迷宮潜りたてなら侍、忍者、君主、司祭に転職するのは難しいがマスターレベルに達した俺達には関係ない。




 基本的に成長するまではなりにくい侍、忍者、君主になるか魔法職経由で戦士系職になり魔法も物理もいける職になるのが基本だ。


 そうでないなら転職なんかせず超越者ハイマスターを目指したほうがよっぽどいい




 そしてそれぞれの転職先だが俺は忍者のままだ。


 消去法でなった盗賊及び忍者だが今はこれが俺の天職だと感じている。


 たとえ俺に力があろうがよく回るオツムがあろうが高い信仰心があろうがなんだかんだで盗賊か忍者になっていただろうなと確信できる程度には。




 金髪侍も俺と同じく侍が天職と感じているため転職するつもりは一切ない模様。




 司祭も転職する気は無い模様。たとえ戦力外一歩手前でも一人は鑑定要員が必要な以上転職しないほうが貢献できると思っているようだ。




 反対に魔術士は忍者志望らしい、何でも魔法使いとしては打ち止めな以上新たに力を得る必要がある、俺に鍵開けを習っているから盗賊系職は都合が良い。忍者には無駄に面倒見が良い優秀な先輩がいるから習熟も早いだろうとのこと。


 あまりにも真顔で話すので俺が褒められている事に気づかんかった。




 戦士も侍になるようだ。


 最近前衛としての役割を果たしきれて無いと思っていたことと単純物理攻撃オンリーのスタイルではいつか限界がくると悟って侍に転職するのを決意したらしい。正直職人気質のこのジジイがあっさり新しい職に乗り換えるとは意外だった。




 僧侶の転職先は君主だ。【白銀】に憧れを持っていたこいつは君主の鎧を着て白銀ごっこを始めるつもりのようだ。動機は意味分からないが君主の鎧を有効活用できるのは良い、こいつも前衛としては物足りない戦闘力になってきていたので良い転職先だとは思う。




 後者三人が訓練場で転職の準備を勧めている間に転職しない組で今後の事を話し合った。


 転職したらマーヴィーボコってレベルあげようとかレベル1でレベルドレイン喰らったら消滅するから当分四層より下行くのやめようだとか転職連中のフォローに関することがほとんどだった。




 しかし俺のパーティへの印象も変化している。


 侍に対しては初対面のときに感じていた嫌悪感がだいぶ薄まってきている。


 偽善的な面も傲慢さも全て自覚したのか発言の臭さが薄くなり割とゲスな発言が飛び出すようにもなってきたのが大きな理由だろうが、自分の悪性を受け入れ自分を悪人だと思いつつも本物の善人になれるように必死な姿に0.0000000000000000000000000000001ミリくらいは俺も感化されてしまった。


いつの間にかこいつに親友認定されていたのは最悪だったが




 司祭も俺を善人扱いしてきた時点で頭に脳の代わりにうんこ詰まってるおっぱい扱いしていたのだがまあ昔のこいつのやらかしに比べれば俺は相対的に善人なのだろう。




 こいつ曰くいくらでも悪事を働けるのにそれをせずしょぼいことしかしないから盗賊君は善人だ、とのことだがそんな適当な理由で俺を善人認定しないでくれ。他人を傷つけないから善人というのなら人類の99%は善人だ。他人を傷つけないだけでなく他人の幸せを願って初めて善人になるのだ。マイナスを作らないのとプラスを作るのは全く違う。


 そこで意見の相違があるものの元クズと現クズどうし話が通じることが多く、善良な人間でありながら俺の拒否反応が出ない数少ない人間だ。俺にとばっちりを与えてしまったことへの誠心誠意込めての謝罪を受けたがまあそれは今更どうでも良いだろう。




 そうこうしているうちに転職組が帰ってきた。全体的に5歳くらい年を取ったようなやつれようだがこれ後でなんとか治るよな?

■■■

この世界には英雄と呼ばれる存在がいる。


 この大陸の四強【白銀】【狂王】【賢者】【盗王】




【気】なる特殊技能を備えた最強の侍。




【真空波】という必殺技にて大悪魔殺しを成し遂げた忍者。




 迷宮保険屋にして最強の君主にして■■の王。




 世界最強の忍者と呼ばれるヒイズル国の商家の娘




 俺ですら憧れを抱く(盗王除く)偉大な先輩達だ。


 神話や英雄譚の登場人物であり遠く及ばない存在だ。




 しかし俺達はこの日偉大なる先輩方の領域に一歩だけとはいえ足を踏み入れたのだ。






 新生黄金の剣において最も成長したのは君主に転職した僧侶だろう(面倒なので転職しても転職前の名前で呼ぶ)。




 今までは前衛としてギリギリのラインの戦力であり麻痺の対策として後衛に下げられることが多かったものの転職による能力上昇に加え君主の鎧の力で俺を越して侍に次ぐ戦力となっている。




 何と言っても君主の鎧が強い、強すぎる。搦手を持たない相手であれば圧倒的な防御性能と回復性能による異様な耐久力でねじ伏せられる。搦手も耐性付与能力で大部分は無効化できる。先手必勝一撃必殺を絶対の摂理とする迷宮戦闘において長期戦を可能にする規格外の装備だ。まさに鉄壁。




 ワルドナの所持する魔除けも、味方と認識したものへの即死攻撃等への耐性付与、持続回復付与、物理魔法両面への耐性付与と規格外の性能だったがそれにまさるとも劣らない。




 もとから技術以外はそれなりに優れていた僧侶の身体能力に無敵の鎧が加わりどつきあいにおいて異様な力を発揮している。




 しかし真に恐れるべきはこれの装着による特殊攻撃【退魔の剣】




 極限の集中状態に入って神に祈りを捧げつつ起動せよ《エクスペールギースキー》と唱える事で剣に光が宿る。




 その状態の剣で切りつけられた生物は問答無用で爆散する。




 要は俺の首はねみたいなものだ。




 成功率は俺のよりも低い上魔除けで即死を防ぐワルドナには効かないだろうがそれでも規格外の効果だ。




 忍者となった魔術師も負けてはいない。




 俺のように前衛の後ろに潜みヒットアンドアウェイをする技術もない、領域も未完成、オーラでの盗賊の短剣作成能力も未熟と近接戦闘に限ったら俺の劣化に近いがこいつは剣圧という特殊技能を侍に頼み習得していた。




 要は剣振ったら飛び道具が出るアレだ。




 剣圧を使って後方から援護射撃しているだけでも役に立つ上に俺の指導によりメキメキと力をつけている。




 俺に近い戦力の忍者となるのも遠くは無いだろう。




 そうなった場合核撃魔術が使える俺に近い戦力という俺の存在価値を脅かす化け物が完成するのだがそのときはその時だ。






 最後は侍となった戦士。




 こいつは大した魔術は使えるようにいなかったが睡眠魔法の使い方が上手い。




 核撃魔術を覚えられないものだと割り切って睡眠魔法を使いこなす方面にシフトしたようだ。




 また、【気】なる目に見えないエネルギーを扱い始め剣圧を飛ばしたり劣化版領域とも言える探知能力を発現させる、複数名の敵をまとめて切れるようになるなどやれることが大幅に増えた。





 上記の強力な転職組を入れた新生黄金の剣は五層の新規敵相手にもある程度抗うことができている!




 この分ならそう遠くないうちに五層の踏破も可能だろう!




 そう思った直後に俺達は全滅した。理由は俺が罠の対処ミスってテレポーターで石の中にぶち込まれたこと。




 なんで罠のテレポート先に石の中があるんだよ。


 頭おかしいだろ。

■■■

テレポーターによって壁の中にぶち込まれたがなんとか死に戻りには成功した。




 壁の中に閉じ込められ餓死するまで動けないと分かった時には血の気が引いた餓死した場合餓死する直前に死に戻る→餓死を繰り返すからだ。


 半分不死の俺を殺す数少ない手段だ。





 流石にそうなるわけにはいかないので変幻自在の盗賊の短剣を体内に入れめちゃくちゃに変形させ自身の体内をずたずたにして死ぬことができたが追い剥ぎ共に襲われた時以上の恐怖を感じた。




 迷宮を出ると歓声。


 俺達はマスターレベルに異様な速さで上がったことにより白銀の後継とまで言われリノレガミン最高の冒険者パーティと呼ばれるようになった。




 金髪侍が主体となって追い剥ぎ等によってピンチに追い込まれた他パーティを助けていたことも大きいだろう。




 他の追い剥ぎパーティに対しては実力差が開いていたこともあって睡眠魔法を使おうとしているアホな追い剥ぎの喉を潰して迷宮の外に半死半生の状態にして投げ捨てたり、侍が威嚇して全力で遁走させたりと殺さず追い払えたのも精神衛生上良かった。また迷宮で似たようなことしているのを見かけたら殺さざるを得ないが




 ともかく善良、美形、有能と三拍子揃った金髪侍にはファンが大量についている。


 中には一度追い払った追い剥ぎすらいるらしい


 本人もまんざらではないようで鍛錬の合間を縫って自伝を大量に売っているようだ。




 俺達も貰ったがその日のうちに戦士は便所紙、魔術士は紙飛行機、俺は着火剤にした。伝記を書いて身内に配るとか恥という概念無いのか。あるわけ無いな、あいつは。





 侍ほどでは無いものの僧侶にもファンがついている。そんなにあの貧乳がいいのか、そもそも貧乳が好きだというやつは貧乳が好きなのではなく貧乳と言われて恥ずかしがる女が好きなのだ。




 そのためこいつのファンは全員サディストの変態クズだろう。地獄の業火で焼き払われろ。




羨ましい羨ましい、俺もファンがいっぱい欲しい。もっとチヤホヤされて褒められて承認欲求を満たしたい。そもそもなんだ結局顔かよ。




 僧侶とか中身まあまあアレなのにあの人気かよ。人間顔じゃないだろ、しかし心で勝負するのは俺にとっては顔以上に絶望的だ、もっとこう、耳の形の綺麗さとかで人を判断して欲しい、それなら勝てるから。




そう思っていたら僧侶からすごい顔をしてると言われた。てめえのせいだろ、燃やすぞ。






 人気に関して圧倒的なのは美形の侍兄弟だが他のやつにもファンは多い




 魔術士は貴族とパイプを持ち始め子爵の地位を得て、戦士も傭兵たちの間で伝説となり英雄譚に歌われるようになった。


 司祭は近隣住民ほぼ全員から好感を持たれている。




 俺だけスラムのガキ共しかファンがいねえ。




 ガキ相手だったら王様になれると思ってスラムのガキに食糧を差し入れたり人生論を伝記にして配布したりしたのだが3日で完全に舐められチンカスと呼ばれるようになった。




 スラムのガキ以外の住民が俺の事を語っているときがあるが遠くからヒソヒソ言っているためどうせ悪口だろう。




 ファンの格差に嘆きながら今日も楽しい迷宮探索




 核撃魔術を何回か使わせてみせた感想だがイカれている。




 グレーターデーモンにはろくに効かないものの


 それ以外の五層新規敵に対してすらそれなりの効果を発揮する。




 特に有効なのは竜種だ。誇張抜きでこれ一発で竜の大群が全滅する。




 術への耐性をほぼ持たないという欠点がある竜種に対してはまさしく無敵の術。




 対強敵用としては魔術結界に弾かれ普通に強い止まりの術だが、これの真価は探索の効率化にある。




 今まで逃げるしか無かった竜の大群を一瞬でレベルアップ用の魔力と宝箱の山に変換できる上、雑魚散らしとしては最上位の性能を誇るこの魔術のお陰で探索効率は一切の誇張抜きで10倍になった。




 マスターレベルとその他を区別する最大の理由と言われるだけのことはある。




 また退魔の剣の検証ができたのも大きい。




 マジでこれはグレーターデーモンにも効く。




 運良く一体でいるグレーターデーモンの不意を突き戦士か気の刃にて四肢を吹き飛ばし俺がマリオネットで拘束できた事がある。




 その後、僧侶の刃に宿った燐光が大悪魔に命中。欠片すら残さず爆散させた。




 燐光付与は成功率が低い上に付与にもそれなりに時間が必要だがグレーターデーモンにすら通るのは偉い、ワルドナに通用しないという欠点があるものの探索で使えるだけで有用だ。探索を効率よく進め、強くなりワルドナに通用する力に変えればよいのだから。

■■■

今日も今日とて迷宮に潜る。




 出くわしたのは魔神【マイルフィック】




 悪魔みたいな外見なのにアンデッドなのとかレベルドレイン持ちだとか魔術抜きでも侍並みに強いのかよとか色々言いたい事はあるが最も重要なのはこいつが【核撃魔術】の使い手であるということだ。




 核撃魔術は龍に対して強いと言ったがそれ以上に強いのは対人間に対してだ。




 黒魔術に関してならワルドナ級のこいつはワルドナを抜けば単体最強の魔物と呼ばれている。




 いつもはこいつはポイズンジャイアントを引き連れているだけなので取り巻きを一掃することは容易だったが今回は違う。竜の大群、レッサーデーモンの大群、そしてグレーターデーモン一匹。最悪の戦いだ。




 しかし魔術師が次に唱えた魔術が全てをひっくり返した。




 戦闘開始直後に飛んだのは魔術師の【核撃魔術】ではなく■■■■魔術であった。■■に接続した魔術師によって発現した真の白魔法は第十位階、絶音魔術。




 発動者に敵対したもの全てが魔術を使えなくる最強の対魔術呪文。




 敵対者そのものでなく敵対者の周囲の音を断つ事で魔術を無効化するため対魔術結界が意味を成さない。対ワルドナ用の切り札。




 代償として魔術師のレベルが1下がってしまうがこいつらを皆殺しにして取り戻せば良い。




 呪文を止められ困惑している敵に飛んだのは侍の核撃魔術。




 超越者ハイマスターとなったこいつもついに核撃魔術を習得した。もうこうなると完全に化け物だ。竜が灰と化す。




 ハイマスターと化して未来予知に近い精度で敵の動きを観察できるようになった俺の領域がグレーターデーモンの未来の動きを読む。右手のスティレットでいなす。




左手の鎌を振るいグレーターデーモンの細胞と細胞の隙間に通す。




超感覚で細胞単位まで見れるようになった俺には細胞の隙間という耐久力ではどうしようもない死のラインが見える。




首を跳ねる。




 俺の首はね率もハイマスターになって6割程度まで上昇している。物理攻撃も10秒先の未来を読めるようになった俺にはほぼ当たらない。




 俺に物理攻撃を当てることができるのはワルドナとマイルフィックくらいしかいない




 ハイマスター化したのは司祭もだがこいつはまだ微妙だ。そう遠くない未来に快癒魔術と核撃魔術を両方使える化け物になるとは思うのでそれまでの辛抱だ




 侍と戦士による気の範囲攻撃がレッサーデーモンを一掃する。




 これで終わればかっこよかったのだが相手は最強の魔神【マイルフィック】




 魔術を止められても強い。




 マリオネット化した生き残りを突撃させてみたり体内に盗賊の短剣をぶち込んでめちゃくちゃに変形させたりと色々とやったのだがこの状態からでも皆殺しにされたりレベルドレイン食らったりして仕留めるのに体感1週間かかった




 最終的に侍が一刀両断に絶ち俺が首を跳ね僧侶の退魔の剣が爆発させた。どれが魔神の命を奪ったのかは知らんが一応は魔神を始末した。

■■■

今日も地上での楽しい生活だ。




 レベルで圧倒的な強化がされる迷宮において地上での鍛錬は迷宮内で役に立つのか?答えはイエスだ。




 一階や二階の敵ならレベルでのゴリ押しが通じるもののそれ以降の魔物はやれる範囲の限度までレベルを上げたうえで技術を身に着けた奴ばっかりだ。一、二レベル高かろうと技術が伴ってなければ絶対に負ける。死に戻りの中でそれは散々体感した。そのため高位の冒険者ほど必死になって地上でも鍛錬を重ねるのだ。最後は灰になり鍛錬がすべて無駄になると思っても。


 侍も、僧侶も、戦士も、司祭も、魔術師も全員必死になって鍛錬している。




 ワルドナ戦では死に戻りを連打して体感何年経っても仕留めて帰るのだ。こいつらと違って才能もない努力もしない、なんの取り柄もないクズが捧げられるのは死しかないのだから。








 迷宮4強と呼ばれる五層の魔物達がいる。


 ワルドナを除けば間違いなく迷宮最大の脅威だと断定できる具現化した死。


 大悪魔【グレーターデーモン】




 核撃魔術使いにしてワルドナ級の黒魔術士。


 単体最強の魔神【マイルフィック】




 迷宮最強の猛毒精製能力を持つハイマスター忍者級の領域の使い手。


 地獄の道化師、【フラック】




 悪性に目覚めた君主の成れの果て。


 金色の魔人【レイバーロード】




 今でこそ20%ぐらいの確率で勝てるが5層潜りたての頃はこいつらに遭遇することが死を意味した。


 今でもこいつらと戦うのは避け、ドラゴン等の狩りやすい相手を狩っている。しかし英雄譚でもそうだが大体どんな作品でもドラゴンは最終的にカモとかかませになるよな、ガチの最強ポジションについてるやつなんて金剛龍帝しか知らんぞ。なんでだ?




 いつも通りドラゴンを狙い核撃魔術で灰にしていたら二本目のカシナートを入手した。


 幸先良いなと思っていたら追加で新たに入手したのは


 三種の神器の一角、【手裏剣】


 ヒイズル国製の最強の短剣。


 即死、レベルドレインに対する耐性付与効果、カシナートすら凌ぐ切れ味に加え、所有者から離れても、起動せよ《エクスペールギースキー》と唱えると手元に戻ってくる効果もある。




 まさに君主の鎧や魔除けに匹敵するアイテム…のはずなんだが正直微妙だ。


 いつでもどこからでも変幻自在の盗賊の短剣を出せる俺にはあまり必要ない。


 片手が手裏剣で埋まっているとその手から盗賊の短剣を出せないので戦い方が大幅に狭まる。


 手元に戻ってくる効果を使って何か良い使い方がないか試してみたが結局オーラ武器以外を使わない似非徒手空拳で戦うのが一番良いと言う結論が出ただけであった。




 耐性効果は優秀なので対ヴァンパイア、ボーパルバニーへの防具としては悪くないとは思ったが結局使わないことにした。




 オーラ製盗賊の短剣を使った戦い方に慣れてない魔術師ならデメリットがあまり無いのでこいつに使わせることにする。




 ホクホク顔の俺達の前に奴らは現れた。




 以前ワルドナを抜けば迷宮最強の個はマイルフィックだといったことがある。それでは迷宮最強の群は?眼の前に現れたグレーターデーモンの大群によって魂が焼き切れるほどにその答えを教えられることとなった

■■■

単体で強い奴が徒党を組んでんじゃねえ殺すぞ。迷宮に潜って数千数万回唱えた怨嗟が漏れる。


 グレーターデーモンは単体ですら凄まじい強敵だ、この大陸の迷宮内を住処とする生物の中で単体性能でグレーターデーモンを凌ぐ奴はマイルフィックとワルドナしかいないだろう。




 そんな奴らが七体も寄り集まって出現するのは流石に頭がイカれてるとしか思えない。





 ためらいなく同種族で徒党を組むし不利になれば特殊能力で仲間を呼び出す、不意打ち騙し討ちも常套手段。


 強者は姑息な手を使わないという、弱者の甘えに忖度する必要など無いと言わんばかりに。




 強い奴らにそれをやられたら弱者はどう立ち向かえば良いのだ。




 人間と同じくこいつらは群れで過ごすのを前提として繁栄し、俺の死に戻りなんて目じゃないほどの長い時間をかけて群れとしての効率的な行動を編み出しているので、群れると爆発的に能力が向上する。




 その上相手の中に頭のいい奴らが混ざっていたおかげで何度やっても真っ先に魔術師を狙ってくる。


 絶音魔術という唯一と言っても良い大悪魔に対する対抗手段を持つ魔術師を。




 


 魔術師を上位凍結魔法で殺されながらも極限の集中の中繰り出された俺の短刀がグレーターデーモンの首をはね僧侶の退魔の剣がグレーターデーモンを爆散させる、侍のカシナートが一刀両断に断つ。これで残り一体と思っていたらまたグレーターデーモンが呼び出される。




 死に戻りを繰り返すことで上振れさせた最高の結果を出してもそれ以上にグレーターデーモンが増殖するスピードのが速い、残りの4体が新たに4体のグレーターデーモンを呼び出した。俺はマリオネットによりグレーターデーモンを突撃させ敵グレーターデーモンを抱えさせ上位凍結魔術を受け止めさせようとするが4体の大悪魔の放つ上位凍結魔法を止めきることはできず砕け散った。




 その後も死闘を繰り広げたが負けてばかりだ。


体感7年が経過した。一体何があったかを語っても単なる不幸自慢になるので省略する。一つだけ言えることとしては正攻法でこいつらを倒すのは不可能。




 なので正攻法以外の手を使う。




 


 俺の高い演技力を活かしものすごく相手を馬鹿にした動きをしながら思いつく限りの悪魔に対する罵詈雑言を絶叫しながら突撃する。


悪魔の悪意と嘲りに満ちた目に新たに宿るのは憤怒と不快感。我ながら凄まじい悪口のセンスだ。クズで本当に良かったぜ。


飛んできた爪に飛び乗りすれ違いざまに首をはねた。大悪魔の攻撃の照準が一瞬だけ俺にズレた。


 その一瞬があれば十分だ。




 超高速詠唱により魔術師が■■■■魔術を詠唱する。


 もう今から上位凍結魔法を唱えても■■■■魔術の発動のほうが先だろう。


しかし大悪魔は凶悪な性能を誇る超身体能力がある。




 魔法のみのもやしとは違うのだ。近くの大悪魔が魔術師に飛びかかる。




 魔術師に爪が突き刺さるその瞬間グレーターデーモンの首が宙を舞った。


 凶悪な性能を誇る超身体能力があるのは大悪魔だけではない。


 俺の付きっきりの地獄の訓練によりマスターレベルの忍者まで達した魔術師もまた魔法のみのもやしとは違うのだ。




 手裏剣でグレーターデーモンの首を跳ねたその態勢のまま絶音魔術が発動する。







 絶音魔術の何が良いって場を対象に取った魔術のため新たに呼び出された大悪魔にも沈黙効果が適用される事だ。


つまりまた呼び出されてもそいつ等はそこまでの脅威になり得ない。




 これで大悪魔の最大の武器を封じた。これで五分五分の勝負だ。




 新たに悪魔が呼び出されるであろう場所を未来予知レベルまで達した領域を持って感知後、前衛に伝える。新たに飛び出してきた悪魔は即座に侍にみじん切りにされ戦士に四肢を跳ね飛ばされた。


 悪魔共を足場に飛び越え飛び越え司令官役の悪魔の下へ向かう。司令官が物理攻撃を放つものの盗賊の短剣を変化させたマントで受け流す。未来予知を駆使し紙一重で躱す、基礎的な速さで単純に躱す。


 いくらグレーターデーモンといえども俺に物理攻撃を当てるなんて不可能だ。司令官役の悪魔の首が飛んだ。その瞬間その首を蹴り飛ばし司祭に飛びかかった悪魔の横っ面にぶつける。


 命中、悪魔が呻く。


 その一瞬の隙を逃さずに魔術師が首を跳ね飛ばした。




 僧侶と侍の兄弟が退魔の剣と純粋暴力によって2体のグレーターデーモンを同時に爆散させる。


 攻撃魔法への耐性以外に欠点のない侍と悪魔への特攻効果を持つ君主の鎧を装備した僧侶のコンビだ。魔術さえ封じてしまえばこうなるのは目に見えてた。グレーターデーモンの反撃こそ凄まじかったものの司祭と僧侶の的確な回復がグレーターデーモンが優勢になるのを許さず追い詰める。


 魔術師と侍の合体核撃魔術が魔法への抵抗を貫き一体のグレーターデーモンを灰へと変えた。




その後も増え続けるグレーターデーモンに苦戦したものの無事に戦闘が終えられた。




 俺は第二層以来の死に戻り地獄を味わったが結果だけ見れば圧勝、終わってしまえば今までとは比較にならないほど大量の魔力を吸収できた。





 しかし戦利品はそれの比較にならないほど良かった。




 三種の神器最後の一つ、村正だ。



■■■

入手したのはヒイズル国製の最強の魔剣、村正。


 効果は2つのシンプル極まりない効果。


 万物切断、破壊不可。




 たった二つの効果で究極の魔剣と呼ばれたそれはまさしく規格外の剣だった。





 とりあえず侍に持たせ帰り道で試し切りを刺せてみたが恐ろしい性能だ。




 装備した君主の鎧によりグレーターデーモンすら凌ぐ超耐久力を誇る魔人、レイバーロード。村正はそいつを豆腐の様に切り裂いた、君主の鎧もろとも。




 その後も核撃魔術もろともマイルフィックを切り裂きグレーターデーモンを3体まとめて一刀両断に断ちフラックを領域もろともまとめて切り捨てる。




 この大陸に存在する生物で村正を持った侍に切られて即死しないのはワルドナくらいのものだろう




 帰還後大量の魔力でレベルが大幅に上がる。俺達は平均レベル17までになった。




 司祭も核撃魔術と快癒魔術の両方を習得しやっとこさまともな戦力になった。ここまでマジで長かったぜ。




 黄金の剣の全員が戦力となった。そろそろやろう、ワルドナ討伐を。




 突入直前に侍が拳を差し出してきた。




 頼むよ、僕のヒーロー。




 まあこれで最後だ、乗ってやる。




俺も拳を差し出して合わせる




 頼むぞ俺の英雄。




 あまりにも臭過ぎて全身に蕁麻疹が出たがこのアホは適当に煽てておけば良い働きをするから良しとしよう







 はるか遠くにいるワルドナと目が合う。ワルドナは唱えた。起動せよ《エクスペールギースキー》と。




 地面から大量のバンパイアが召喚される。その中でも明らかに雰囲気が違うバンパイアが一体いる。バンパイアの王、バンパイアロード。ただでさえ厄介なバンパイアのレベルドレイン、麻痺を強化し黒魔術まで使えるようになった化け物。


 ワルドナだけでなくこいつも相手にするのか。




 ワルドナは戦闘が始まった途端詠唱。それに加え腕にマイルフィックの顔を4つ産み出し詠唱させた。核撃魔術を。




 五重詠唱クインティプルキャスト、核撃魔術。




 はるか昔に存在した第9位階魔術、【太陽現出】。


 太陽が出現したのかと思えるほどの熱を発する、核撃魔術すら凌ぐ破壊魔法。




 失われたこの魔術をワルドナは核撃魔術を並行して五つ発動させる事で再現した。迷宮に太陽が出現したかの様な光によって俺達は灰すら残さず消え去った。




 何度戦っても奴は真っ先にこれを叩き込んでくる。




 何度も炎に焼かれるのは二層で体感した。


 懐かしいな。あの地獄で俺は強くなることができた。もう一度味わいたいかといえば全くそんな事は無いのだが。 


 これは一瞬で体が消し飛ぶためなにも苦痛が無いのが救いだが。




 開幕出落ちを防ぐため俺のマリオネットによるグレーターデーモンの肉壁、魔術師の系統外魔術による対魔術結界付与などこの日のために準備した対策を総動員した。とにかく俺と侍か魔術師か司祭さえ生き残れば良い。




 俺が死んだらダメなのは死に戻りで太陽現出前に戻されるから、侍も魔術師も司祭も死んだらダメなのは次の手が使えなくなるからだ。究極の蘇生魔術、再臨魔術を。




 溜め込んだ魔術対策の全てを使った。




 時間が歪み空間が弾けるような熱が放たれる。




 かろうじて死んでないだけの俺と四肢を消し飛ばされた侍だけが残る。しかしこれでも上出来だ。




 死に体の侍が唱えたのは■■■■魔術。


 その■■■■魔術により発動したのは再臨魔術。




 使用者が味方と認識したものを5人まで確実に蘇生した後に使用者含めた全ての味方に快癒魔術をかける最強の蘇生術。




 蘇生により死にかけの俺も侍も灰となった戦士僧侶もこの世から消滅した魔術士司祭も完全な状態で蘇生する。




 ワルドナですら一日に9回までしか使えない核撃の使用回数を5回使って生み出すのが太陽現出だ。




 もう奴は二度とあの規格外魔術を使えない。絶音魔術で魔術を封じてしまえば互角以上に戦えるはずだ。




 そう思っていたらいつまでも絶音魔術が発動しない。




 ワルドナが絶音魔術を使用しこちらの■■■■魔術を止めていた。格下相手に一切ためらい無く禁術まで使うのか。グレーターデーモンとは別ベクトルの容赦のなさだ。




 死に戻りして時を戻した結果絶音魔術の発動は止められたが、腕を竜の大群に変えて■■■■魔術使いを集中攻撃してくるおかげで侍も魔術士も司祭も詠唱に時間がかかる■■■■魔術を発動できない。




 侍が斬りかかりワルドナを両断するものの人間離れした生命力を持つワルドナは即死しない。




 流石に村正に2連続で切られたら死ぬのだろうが即座に白魔術で治癒しながら生やしたワイバーンの翼で上空に撤退する。




 侍の村正、絶音魔術という二つの脅威をしのぎながらも戦士、俺、僧侶の攻撃をいなし続けるのは異常な戦闘の才を持つワルドナだからこそできることだろう。




 俺も魔除けの強奪、破壊によりワルドナに首はねが通るようにできないか色々と試しているが魔除けの強奪されないという特殊効果により強奪は不可能。




 盗賊の短剣を大剣サイズまで拡張しながら僧侶の退魔の剣と同時にぶつけても破壊は不可能だった。





 一瞬の隙をついて侍が放った核撃魔術がヴァンパイアを殲滅する。バンパイアロードだけは生き残っていたが半死半生だ。




 侍の村正もえげつないダメージを与えているものの全力で侍から逃走しつつ村正のダメージを白魔法で癒し、他の連中を先に潰す戦法を取っているワルドナを殺しきるには至っていない。




 そうやっているうちにジリ貧になって全滅してしまった。





 


 その後も体感60年程死に続けた。なんで俺こんなに必死になっているんだ?




 この旅はハッピーエンドでなければならないからだ。




 悪党ですら人生においてハッピーエンドを迎える事があるこの世界で、侍、僧侶、司祭、ついでに魔術師と戦士のような善人達がハッピーエンドを迎えないのならこの世はイカれている。




 母さんが死んだ時のようにこの世のイカレ具合を認識させられるぐらいなら何度だって死に続けてやる。クソったれな世界に唾を吐きかけてブチ犯してやる。






 何度も死んでやっと掴んだ上振れ回で俺は模倣する、絶音魔術の詠唱を。




 ワルドナの目が驚きに染まる。即座にフラックを模した猛毒を放つ触手が襲いかかってくる。




 その一瞬の隙を突き、侍の村正に僧侶が手を当て退魔の剣の効果を付与する。




 侍の村正に極光が宿る。そのまま侍の村正が魔除けもろともワルドナを一刀両断に断ち、村正に宿った燐光が即死耐性アイテムを失ったワルドナを爆散させた。




 死に戻りで今までとは比較にならない地獄を見た、長かった、壊れてしまうかと思った。それでも俺達の勝利だ。やり遂げたのだ。


 しかしふと嫌な予感が浮かぶ




 死にかけのヴァンパイアロードが何かを唱えている。そいつを止めろと魔術師が今まで最も必死の叫び声を上げる。




 ヴァンパイアロードが唱えているのはこの場では最も唱えられたくない魔術。■■■■魔術だ。




 これから再誕魔術につなげられたら全てが終わる。




 頼む、失敗しろ、どうかこれで終わってくれ。しかし俺の日頃の行いが悪かったせいか奴の再誕魔術によって蘇生してしまった。ワルドナが。




 不意打ちで放たれた核撃魔術が侍と僧侶を戦闘不能に追い込む。




 魔術師がヴァンパイアロードの首を跳ねるのを横目に全身全霊を持って俺がワルドナに飛びかかる。




 蘇生したワルドナが大量のグレーターデーモンの顔を腕に出現させる。




 ゼロ距離で唱えられたそれは四重詠唱クワドラブルキャスト上位凍結魔法。氷結地獄がゼロ距離で俺に放たれた。




 俺は死んだ、また巻き戻るのか。あの地獄に。しかし巻き戻る直前俺に飛んできた物があった。司祭の上位蘇生魔術だ。




 蘇生した。死ぬ直前の体に力が戻る、ワルドナの首を跳ねようとして止まった体に命が宿る。




 文字通り全身全霊を持ってワルドナの首を跳ね飛ばそうとする。




 それに即座に対応したワルドナが俺以上の速さと領域の質を持って俺の首を跳ねようとする。このままだと俺が先に首を跳ねられる




 その時戦士が肉癖となりワードナから俺を庇った、戦士の手首が跳んだ。


 


 侍も、僧侶も、魔術師も、戦士も、司祭もやることをやった。俺もやることをやろう。




 侍にヒーローと呼ばれた事が頭に浮かぶ。




 この瞬間だけはまるで本当にヒーローになったようだ。




 生涯最高とも言える次の一撃は今まで最高の角度、速度、威力を伴ってワルドナの首を跳ね飛ばした。


■■■

ワルドナ撃破の翌日俺達は魔除けを取り戻した叙勲式の会場にて英雄パーティとして面を突き合わせることとなった。





パーティメンバーはまず眼の前にいるアーサー。金髪偽善者侍。95%聖人5%クズの英雄。




うちのパーティのエース。ワルドナ戦では村正と核撃魔術により準MVPとも言える大活躍を成し遂げた




人から虫まで殺すのをめちゃくちゃ嫌がる上魔物も平然とは殺せなくなった偽善者野郎。根っこの根っこ部分だけは誰よりも優しい男。




今でも正直こいつの全てが気に入らない。しかしまあ名前を覚えてやってもいいかな程度には印象は良くなった。




あの戦い以降自力で退魔の剣を使えるようになり白魔法まで使えるようになったとのこと。




やっぱこいつ化け物だ。








 その次にスヒリア。元貧乳僧侶にして現貧乳君主




 こいつは快癒魔術で戦線を支え続け盾役として仲間を守り退魔の剣でワルドナを粉砕した。




 侍の妹であり神秘的な雰囲気を持つ女だ




 他の連中への印象は全体的に良くなったもののこいつがヤバイ奴という印象は今でも一切変わってない。




 まあまあなレベルのダメ人間であり侍に介護されてないと何しでかすか分からん。まるで成長していない。




立って歩け、前へ進め。あなたには立派な乳首がついてるじゃない。


という貧乳に向けた言葉があるがこいつは乳首すら陥没しているため後ろに進むことしかできない、哀れ。







 次にグレゴリー。ドワーフ戦士から侍になったおっさん




 こいつはひたすらに無愛想、最低限の関わりしか持とうとしない。ただひたすらにドライだ




しかし恩を売れば何が何でも返してくるドライとは言い難い一面もあり、まあまあ人間らしくて好感が持てる。




後半は実力不足だったがワルドナ戦では最後の最後で最高の活躍をきめてみせた。





 お次はソーン。元無口な魔術師にして現饒舌な忍者




核撃魔術、■■■■魔術、首はねの三種を駆使しパーティの中核を担っていた。




 アーサーとは別ベクトルの傲慢な人間であったものの、今では俺を師匠と仰ぎ司祭を自分以上の魔法の天才だと認める等傲慢さはなりを潜めている。プライドの高さが義務感や向上心にも繋がっているため良い成長を遂げたとも言えるのではないだろうか。







 




 後はチェイニー。巨乳司祭




 こいつだけ明るく人当たりがよく常識的とやたらまともな人格をしている。あの盗賊王がこんな善良な生命体になったのは本当に信じられん。




俺の悪性を誰よりも理解しながらも離れずにいてくれたのは感謝してやらんこともない。




君のクズな面は君の母さんが死んでからの苦痛から逃げるために産まれたのでは?こんなにクズな自分なら不幸な目に合うのも仕方ないと納得するために。


とか言われたのは頭に残っている。






 戦闘では最後の最後にかけた蘇生魔術により俺を蘇生させるというファインプレーを成し遂げた





 




 最後はこの俺様、オーエン。




 オーエン・ホークウィンド。




 人格は今までの文章でわかってもらえたと想う




 ワルドナ戦ではワルドナにトドメを刺す大金星を成し遂げた文句なしのmvpだ




 以上が狂王に謁見した黄金の剣の名誉あるエリートメンバーだ。





 この後もワルドナを蘇生させて和解したり、勇者なる謎の職業に覚醒したアーサーとともに魔王なる化け物を倒したり、ニールダの杖とか言うマジックアイテムを巡る騒動に巻き込まれたり、最終的に金剛龍帝を撃破するなどと色々とやったがそれは別の機会に語らせてもらうこととする。





 ともかく以上が俺達の魔除け奪還までの顛末だ。


 これにて終幕。


 観衆オーディエンスの皆様には限りない感謝を。




 迷宮にてクズのたわけがお送りしました。


■■■

ワルドナとの激戦、及びに叙勲式から一ヶ月が経った。




 




 今は何をやっているかって?悪魔退治だ。




 




 ワルドナ撃破後も迷宮には脅威が残ってる。




 




 魔界と現世を繋ぐゲート、及びにそこから呼び出される【グレーターデーモン】だ。




 




 叙勲式を終えて正式にクソ王の近衛兵として雇われた俺達はゲート破壊の命を受けて迷宮に通っている。




 




 ここで質問だが悪魔から人間はどう見えているのだろうか。




 




 




 答えは醜く愛らしい虐待用ゴミ糞袋だ。




 




 ペットの様に可愛らしい外見で汚え醜い生々しい生殖行為によりその数を増やす。




 




 中途半端な知能や情動を備え、悪魔ともある程度の会話が可能。




 




 迷宮の驚異を軽視して全滅したり、悪魔との力の差を理解出来ないほど頭が弱いことが多い。




 




 身体能力は高くなく、悪魔を含めた他の多くの魔物には為すすべもない。しかも偶に悪魔にすら嫌悪感をいだかせるほどの悪意を撒き散らす。これが悪魔の人間への認識だ。




 




 




 




 人の悪性をありったけ詰め込んだ言語を解する可愛らしい虫




 




 悪魔が人間に対して感じる感覚はまさにそれだ。




 




 可愛らしい見た目から繰り出される一挙一動から漏れ出す悪性は同族嫌悪を酷く煽り立て、下等だと見下している対象が自分たちの真似事をしている生理的嫌悪感は攻撃性を酷く刺激してくる。




 




 可愛らしい外見と愛らしい仕草は弱くて可愛らしい対象に対する破壊衝動、通称キュートアグレッションを駆り立てる。




 




 




 自身らよりも遥かに弱いくせに自身らに意気揚々と歯向かい、いざ叩き潰せば最高のリアクションを取る。




 




 




 




 それゆえ悪魔は人間をひたすら傷めつけて殺す。できる限り面白いリアクションを引き出すため徹底的に嬲り虐待死させるのだ。




 




 




 




 




 




 悪魔に友好的なら苦しませず殺す




 




 悪魔に中立的なら苦しませて殺す。




 




 悪魔に歯向かえば殺さない。寿命で命尽きるまで地獄を見せる。




 




 




 




 




 長くなってしまったがまとめると二つ。




 




 基本的に相容れない。




 




 負ければ地獄。




 




 そんな悪魔達がボロ雑巾のように蹂躙されている。




 




 




 金髪偽善者侍、本名アーサーの核撃魔術+退魔の剣+村正の融合剣技、【約束されし退魔の剣】によって消し飛んでいく。




 




 3週間前までは■■■■魔術からの絶魔絶音により魔術を封じて近接組が一体一体一撃で倒すという戦法により大悪魔狩りを行っていた。




 




 しかしもう最近はめんどくさくなり化け物と化したアーサーが突っ込み全てを粉砕するという雑な戦法を取るようになった。




 




 ワルドナ戦で実力不足を痛感したらしく更に異常な鍛錬を積んだ結果アーサーはワルドナ級の怪物となっていた。




 




 死に戻りによる無限試行回数で即死を押し付ける俺も大概だがこいつは本当におかしい。




 




 続いて侍アーサー、魔術師ソーン、司祭チェイニーによる融合核撃魔術によって出現したのは太陽。大悪魔掃討で大幅に強化された俺達はワードナの奥義とも言える魔法【太陽現出】すら三人がかりであれば使える様になったのだ。




 




 そして奴らは異界の最強兵器、核すら凌ぐ破壊のエネルギーを魔界へのゲートの中に叩き込む。門の中のグレーターデーモン諸共魔界の門は焼き払われて消滅した。




 




 これ俺いる?




 




 




 ◆◇◆◇




 




 悪魔掃討後に戦士と魔術師と酒を飲んできた帰りに…いや、この言い方はやめよう、グレゴリーとソーンと酒を飲んできた帰りにそれは起こった。




 




 酒の席自体は楽しかった。




 




 ドワーフ戦士のグレゴリーは老後の金金言いまくっていたのでジジイだと思っていたが普通に若かったのが判明した。




 




 ソーンの没落理由がソーンの親父が自分の領地の村娘に手を出そうとする→村娘の家族に拒否される→親父がキレて村娘の家族を皆殺し→復讐者となって帰ってきた村娘に親父が拷問拷問拷問の末に殺害→家焼かれてソーンが路頭に迷うという親父クソだなとしかいえないものだと分かったりと色々あった。




 




 しかしソーンが「父さんはマジでクソだった。師匠のようになんだかんだで立ちションぐらいしかできないショボいクズと違って地獄に行くべき人間だ。それでも大切な父親だった、だったんだよ」と消え入りそうな声で言っていたのは妙に印象に残った。




 




 俺ですら母さんにとっては大切な息子だったのだ、どんなクズでも家族に対してはまともな面を見せたりするのだろう。




 




 しかし、まあ、アレだ。




 こんな月並みな事は言いたくないのだが俺はあの地獄の死に戻り生活で多少はこいつらにも興味が湧いてきてる、湧いてきてしまってる。




 




 こんなの俺じゃねえ。他人に無関心でみんな俺のための道具だと思い手のひらで転がすのが俺だ、俺なのだ。他者への興味とかいう善なる異物が精神に入って来るのが怖くてたまらない。




 




 俺が俺であるための冷酷さ、狡猾さ、酷薄さに異物が入り込んで別のものに変わってしまってきているからだ。 




 




 




 




 そう思いながら帰宅している時に感じたのは心臓への激痛。




 




 原因は分かっている。




 




【ジロウ】だ




 




 遥か遠くの土地から流れ着いたから人が作り上げた中毒性だけいっちょ前の豚の餌。




 




 朝飯昼飯抜いてこれを寝る前に二つ食い何故か訪れる眠気と共に爆睡するのがマイブームだった。




 




 アーサースヒリアチェイニーの間抜けトリオだけでなくソーングレゴリーからすら散々健康に悪すぎるからやめろと忠告されていたが美味いものは美味いし安眠できるしやめられなかった。そのつけがここで出た。




 




 とにかく近くの医者へ行こう、回復魔術使えないとこういうとき不便だ。クソッタレ!夜だからどこの町医者も空いてねえ!




 




 一応一つだけ頼れるところがあるが…まあ背に腹は変えられねえ…行くか…




 ◆◇◆◇




「こんばんわ!私の大陸一愛くるしいお顔を見て癒やされていってね!!」




 




「貧乳で-5点奇行と奇声で-60点顔が良すぎる+5恒河沙点!スヒリアちゃん最強!!」




 




 スヒリアの部屋を訪ねたら開幕これだ。




 




 本当に今年成人する女の発言か?




 




 魔術師ソーンなんて「スヒリア今年20になるのか、人間でいったら7歳くらいか」とか言ってたな。 




 




 仮にも一度告った相手に対して言う言葉ではない。




 




 戦士グレゴリーに至っては「人間に似てるアレ」呼ばわりだ




 




 




 




 こんなんでもスヒリアは町医者程度にはなれる程度の医療知識をたった1年で身につけた正真正銘のエリートだ。魔術ではどうにもならない病気への知識もちゃんとあるだろう




 




「オーエンさん。いくら超越者といえど健康に気をつけないと。健康面の被害は戦闘力じゃどうにもならないんだよ。いくら強くて食べなければ餓死しちゃうのと一緒。薬は出しとくけどまだ20代なのに血がドロドロになってて」




 




 この俺様が非の打ち所のない正論で殴られてる?




 




「血糖値スパイクって言って体が悲鳴を上げているのを」




 




 特大ピザ2枚食った挙げ句馬車の中でゲロにしてぶちまけたこのバカに?




 




「おーい、きいてるー?オーエンさんー」




 




 新築建てた知り合いに祝福の歌(歌詞に借金地獄というワードが15回出てくる)送ってたこのアホに?




 




「兄さん以上の私専用介護要員さん〜私のお話聞いてね」




 




 休暇で海行ったとき突如何の前触れもなく海に放尿していたこの◾◾◾に?




 




 俺は理不尽な現実を受け入れられなかった。倒れた。




 




「ぎゃああああ!大丈夫!?オーエンさん!」




 




 ◆◇◆◇




 目覚めると誰かに背負われていた。ああ、このおっぱいはチェイニーだな。




 




「君が倒れたと聞いて飛んで来たんだ。流石にスヒリアちゃんの部屋に置いとく訳にもいかないし家まで送って行くよ」




 




 ああ、頼むわ




 




「クダンさんとこの馬小屋で良いかな」




 




 んにゃ、あっちの豪邸向かってくれ、クソ王からもらった金で新しく買ったんだ。何だったら入っても良いぞ、そして立派な家だと感動し褒めて崇め奉れ。




 




 こんな調子でしばらくくだらない事をボツボツと話した。




 




「オーエン君、なんか…変わった?」




 




 話のネタがつきかけたころチェイニーがポツリといった。




 




「オーエン君ちょっと前まではみんなの名前すら興味無さそうだったよ。誰が何を話したかもろくに興味無さそうだったし。多分脳内では私達のこと役職とか職業とかで呼んでたんじゃないかな。」




 




 キッショ、なんで分かるんだよ。




 




「それでも今は違うだろ。ちゃんと心の中でも人を名前で呼んでる、ちゃんと人のセリフを覚えていられる。ちゃんと他人を愛せるし他人に愛される人間になれる。」




 




 まあお前らから見れば体感1年程度の付き合いだが死に戻りを繰り返したお陰で俺の視点では1世紀間の付き合いだ。流石に体感100年一緒にいれば多少の情は湧く。あくまでも多少止まりだが。




 




「なるほど!で本音はどうなのかな」




 




 ああ言ってやる、母さん死んで以降俺の周りにいた人間はクズだらけだった、そいつ等に比べればお前らは全然マシだ、うざったい偽善者もド級の貧乳ド貧乳の狂人も無愛想な似非ジジイも傲慢な貴族もどきも元男の詐欺おっぱいもな!これで満足かよ!




 




「満足♡」




 




 やっぱ叙勲式のあと酔っ払ってこいつとアーサーに死に戻りの事教えたのは失敗だった。




 「私思うんだけどさ」




 何だよ




「君多分自分でも気づいてないだろうけど相当信賞必罰という思考が強いんだよね」




 何だよいきなり




「多分君が悪党を自称するのも自分がこんなに悪い人間だから不幸な目にあって当然だと思っていたいからじゃないかな」




 ……




「君は間違えなくクズだし善人と言えるかも相当怪しいけど悪党ではないよ、絶対に」




 俺の新たな家についた頃ふとチェイニーが口を開いた




 




「前から聞きたかったんだけど私達を救うために100年も戦い続けてくれたの何でなの?」




 




 他人を利用するならには手間をおしむなと言うのが母さんに教えてもらった事だからだ。




 




 お前らを利用する以上それ相応の手間をかけるのは当然の事だろう。




 




 完全にお前らを駒として利用している以上100年程度死に続けるくらい最低限の誠意だろう。最低限以上の誠意を見せるつもりは毛頭ないが。




 




 善人が悪人よりも報われない末路をたどるのが嫌だからだというもっとも大きい理由は秘密にしておいたが。




 




 それを聞いたクソおっぱいは大爆笑し始めた。




 




「ああそうだ。」




 




「さっき真っ当に愛されるし愛せるといったがそれは少し齟齬があったよ。もう愛されてるよ、オーエン・ホークウィンド」




 




 誰にだよ、母さん死んだしもうそんな奴いねえだろ。マジで脳みそまでおっぱいでできてんのかこのカス




 




 ◆◇◆◇




 




「オーエン君の様な僕を偽善者として扱う人間に会わなければ今頃悪人だったら殺してもなんとも思わない様なクズになっていた。」




 




 アーサーとの墓参りで奴はそんな事を言った。こいつが毎月殺してしまった全ての生物に祈りを捧げ墓参りに来ているのは知っている。ぶち殺した追い剥ぎから踏み潰してしまった虫、もはや5桁に達する程撃破したグレーターデーモンまで含めた全ての生物に。




 




 




「初めて僕が人殺しをしたあの日の宴会のこと覚えてるかな?正直こいつ人殺した日に宴会やるとか頭おかしいのかとか思っていたけどあの日君に殺した相手の事を死ぬまで忘れるな、罪悪感で死ぬまで苦しめと言われたお陰でまだ僕は人間でいられている。本当にありがとう。」




 




 あんとき適当に言った事をまだ真に受けてんのかよこの間抜け。




 




「あそこで君に殺しと向き合う様に言われてなければ殺しの罪悪感から逃げるために殺しを正当化し続ける化け物と化していたよ、間違いなく。そして完成するのはあらゆる責任から逃れ他者を踏みつけても自分を正当化する底なし沼の様な怪物。自分の事だからいやというほど分かるんだ。」




 




 殺した相手の事をこの後に及んでグダグダ気にしているやつがそんなのになるわけ無いだろう。




 




 俺は魔物とか悪魔を殺したことに関しては忘れてるし罪悪感もほぼ無い。




 




 お前のヒーローはそんなクズなのだ、そいつより遥かにまともな倫理観があるお前がそんな事になるわけ無いだろう。と適当な事を伝える




 




「ありがとう…本当に…」




 




 その後もぐだぐだとこれからどうするのか話していたがいきなりなんか語り始めた、




 


「死に戻りの件といい僕が色街でやらかす度に尻拭いすることといい君には一生かかっても返しきれない大きな恩がある。君前に善人の定義の一つに他者に手間をかけるのを惜しまない事を挙げただろ、その点では君に勝てるやついないよ」




 その程度の手間はお前という最高の駒を制御できることに比べれば大した問題でもないだろ




「ぶっちゃけ黄金の剣のメンバーみんな思っているんだけど君は損得勘定の天秤が狂ってるんだよ」




 は? 




「クレバーに自己中心的に立ち回っているつもりだろうけど君は他者から1利益を貰えばそれを10もらったと勘違いするし他人にかけた手間が10でも1だと勘違いするんだ。




はっきり言って君からもらった恩は僕の素晴らしい活躍考慮しても僕の返した利益と釣り合わない」




「だからこそ誰よりも強くなるよ、君がかけた手間に恥じないよう、君の最高の駒になれるようにね」「僕は君にとっての英雄なのだから」






 そしてアーサーは真剣な顔になって話を続ける。




 




「【魔王】というかつてこの大陸を滅ぼしかけた悪魔の王を知っているかい」




 




「【アークデビル】通称【魔王】が蘇った」




 




「かつて神に与えられた武器防具と共に【魔王】を滅ぼした伝説の英雄【勇者】の後継者に選ばれたので僕は【魔王】討伐の旅に行かなくてはいけない、ついてきてくれるかい?僕のヒーロー」




 




 




 ◆◇◆◇




 その日の夜俺は奴についていくか死ぬ程悩んでいた。




 




 俺一度きれいにハッピーエンドで終わった劇が続編でバッドエンドになるの大嫌いなんだよ、まさに蛇足ってやつだ。




 




 




 ハッピーエンドで終わったら続編含めてハッピーエンドにしろ。




 




 ハッピーエンドで終わったワードナ討伐という物語が崩れるのは絶対嫌だがそれはそれとして豪邸まで買って死ぬまで金、名誉、酒池肉林に溺れる準備したんだぞ。




 




 これ以上冒険も労働もする必要ないのに何で世界如きなんぞを救う旅なんかにいかなくちゃいけねえんだ。




 




 そんなのクールにクレバーに最低限の労働で美味しいところだけ享受するという俺のライフスタイルに反する。




 




 何よりも死ぬより苦しい痛くて辛くてきつい死のループをもう体感したくねえ。




 




 




 




 頑張れ俺の悪性。利己性で俺様のチンカス程の良心を打ち破るのだ!




 




 




 ◆◇◆◇




 善性に負けたクソッタレ。




 




 色々と考えていたがそれでも善人には悪人より幸せになって欲しい、もちろん俺様は例外的に善人よりも幸せになるのが大前提だが。




 




 決まってしまったものは仕方ない、一週間かけて街を出る準備とクソ王への挨拶を済ました。そして迎えた出発の日、最後だから挨拶くらいしていくか。




 




 向かったのはスラム街のガキ共のところだ。




 




 ヒイズル人のウシノスケとか言うクソガキ、ガキ共のリーダーにガキ共を呼ばせ2つだけ伝える




 




 掃除と管理をしっかりするなら俺の豪邸に住ましてやる。




 




 ああそうだ冒険者にだけはなるんじゃねーぞ。あんなもんキ◯ガイにしか務まらないからな。




 




「嘘つけ!お前はともかくお前のとこのリーダーのアーサーさんみたいなカッコいい人ががキ◯ガイな訳無いだろ!あとあのおっぱいのでかいチェイニーとかいう人だって立派な人だって聞いたぞ!」




 




 そいつ等も昔はまあまあアレだったぞ。




 




「あっ!あとスヒリアさん!あんな神秘的で美しい人をキ◯ガイ呼ばわりとか許さねえぞ」




 




 あいつは今でも現役バリバリなんだよ!




 




 ついキレてウシノスケにほじった鼻くそバズーカを叩き込んでいたら他のガキどもも参戦してきたため鼻くそ飛ばし大会が始まった。




 




 ガキ共との騒乱が終わった頃ウシノスケが何か渡してきた。




 




「チンカス、これやるよ」「お前がどっかいくって聞いてみんなで金出して買ったんだ」「なんだかんだでお前にはその…世話になったしな」「勘違いするんじゃねーぞ、バーーーーーーーカ!」




 




 そう言ってクソガキ共のリーダーはどっか行っちまった




 




 




 渡された物を見てみたが起動せよと唱える事で第一位階の【祝福魔術】なるゴミ魔術を発動する短剣だ。いらね、次の街で売っぱらうか。




 




 近くによったついでに寝床にしていた馬小屋を貸してくれてたクダンとか言うババァにも声をかける。




 




 未来予知の能力を持った魔物と人間のハーフ、いわゆる半魔のため酷く差別的な扱いを受けていたらしいがそれ故に差別意識のない俺の事を気に入り寝床を貸してくれていた。




 




 まあ実際のところ俺は自分以外の全ての人間を等しく見下し差別しているため結果的にフラットな目線になっているだけだが。




 ババァは告げる




「運命だろうと摂理だろうと貴方を縛ることはできない。」




 実体すら持てないものに俺が縛られるわけ無いだろう。




 




「あなたの死に戻りの力は過去の魔術師達の金剛龍帝を倒して欲しいと願った執念そのもの、後世に託した願いの結晶。あのアーサーという勇者様に宿るはずだったもの。どうかあなたに祝福を、全能者様wizardry」




 




 いっちいち言うことが抽象的で良くわかんねえんだよなこのババァ




 




 まあ良いや、背を向けつつ右手を挙げた。あばよ。




 




 待ち合わせの門に向かう、行く気があるのならここにこいと言われていたのだ。




 到着するとアホどもが雁首揃えていた。




 




「最高の暴力!最高の顔に最高の才能!最高の妹!最高の仲間!最高の親友!おまけに勇者の資質まで!どれだけ僕は恵まれてるんだ!グヒヒ!」




「兄さん、でっかい鼻くそ取れたよ!あっ!オーエンさん!」




「ほら、やっぱりきた、オーエン君アホだし結局何だかんだ理由つけて来ると言っただろ」




「マジかよ、後これ俺等もいかないとダメか?」




「でもあのクズオーエンでさえ行くって言ってるしな…」




 




 いつも通りの奴らに俺もいつも通りのクズとして向かい合う。




 




 ここからの話は省くが何だかんだでハッピーエンドで終わったとだけ言っておく。




 




 繰り返しになってしまうがオーディエンスの皆様に限りない感謝と祝福を。そしてハッピーエンドを。迷宮にてクズのたわけがお送りしました。




□□□□

ここまで読んでいただきありがとうございました。

60000字近いこの作品を完結まで見届けていただいた事には感謝しかありません。

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