エイプリルフール、大嘘つきはすこぶる陽気に笑い転げた
……今日は、エイプリルフール。
年に一度の、うそをついてもいい日。
常日頃、嘘はよろしくないものだと、ついてはいけないものなのだと、悪印象がのさばっているが、今日だけは明るく楽しくうそがつけるので、かなり…うれしい。
昨今においては、企業が率先してうそをつき、民衆を楽しませるパターンが少なくない。
こんな商品があったら愉快だろうな、こんな企画があったら驚くだろうな…、うそを活用して【ありえない】を視覚化し、世間を賑わせている。
些細なうそが、こんなにも人々を楽しませるのだ。
わかりきっているうそなのに、こんなにも人々を笑顔にするのだ。
うそはいけないものだという認識がまかり通っている現代において、うその有用性をしみじみと感じさせてくれる、心温まるエピソードであると言えよう。
楽しいうそなら大歓迎、そういう認識が増えている。
うそもまた、人生を豊かにするものだと気づいている人が増えている。
うそ、うそ、うそ、うそ・・・うそにまみれて、愉快に笑う。
うそ、うそ、うそ、うそ・・・うそを楽しみ、明日を迎える。
うそ、うそ、うそ、うそ・・・うそをついていい日にうそをつかずに、明日を迎える人もいる。
うそ、うそ、うそ、うそ・・・うそをついていい日も、うそをついていいとされない日も、うそをつく人がいる。
……明日からまた、うそが疎まれがちな日々が始まる。
うそをつくたびに、胸が痛むだろう。
うそをつかれるたびに、心が痛むだろう。
うそをつかなければいけなくなるたびに、気持ちが沈むだろう。
うそをついてしまったと思うたびに、自身の在り方に疑問を覚えるだろう。
うそが悪いものだという認識は、僕の繊細な心を…蝕むのだ。
僕は…、うそをつかなければ、生きていけない。
良い人だと思われるために、嘘は有用だからだ。
スムーズな人間関係を持続させるために、嘘は必須だからだ。
自分の決断を正当化するために、嘘は不可欠だからだ。
嘘は僕にとって……、平穏無事に生きて行くために、なくてはならないものだから。
明日からまた一年、嘘にまみれた日々が始まる。
うそをついていい日は、もう、間もなく…終わってしまう。
苦悩に満ちた日々が、また…始まってしまうのだ。
僕はちゃんと…、過不足なく、怪しまれる事なく、うそをつき続けることができるだろうか。
……いや、できるだろうかじゃ、ダメだ。
僕は、しっかり、きちんと、万全の態勢で…うそをつき続けなければならないのだ!!
「ねえねえ見て!!!これ…ちょ~おもしろいの!!異次元人チャンネルだってー!!ウフフ…キャハハ……!!!」
「あはは、何これ!!すごく面白いね!!でも作り物にしてはうまくない?ップ!!ぎゃは、ぎゃはははハハハ!!!」
並々ならぬ決意を胸に…、僕は一生懸命、笑うのだった。