２、復讐の材料
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☆佐藤梓サイド☆
お兄は浮気されたショックで寝込んでしまった。
私は悔しさゆえにギリギリと歯を削れるぐらいに食いしばる。
そして親指の爪を勢いよく齧った。
それから盛大に溜息という感じで息を吐く。
「だけどやっぱり腹立たしい。...どうしてもそうしか思えないな」
そんな事を呟きながら私は眉を顰める。
復讐なんてしなくても地獄に落ちるとはお兄は言った。
だけどそれが全てか？
私はどうにも許し難い感じだ。
「どうしたら...良いのか」
そう思いながら私は洗濯物を畳みながら考える。
だけど...お兄が「復讐は良くない」と言っているし。
そうなると...あ。そうだ。
あるじゃないか。
ありったけの復讐ができる方法が。
「...私達が幸せになれば良いんじゃないかな」
そんな事を思いながら私はガッツポーズをする。
そうか身近にあった。
そういう感じで全てをやれば良いのだ。
それで十分な復讐になり得ると思う。
「そうなると私がお兄と付き合えばいいのかな？」
その様な事を考えながら私は二階を見る。
それからゴクリと喉を鳴らしてからそのまま二階にゆっくり上がる。
そしてドアをノックせずに中に入る。
スースーという寝息をたててお兄は寝ていた。
「...可愛いなぁ。私のお兄は」
そう呟きながら私はお兄の手を摩る。
するとお兄は「う、うーん。スヤスヤ」と言った。
私はその言葉にまたゴクリと唾を飲み込む。
この愛しい...顔がたまらない。
だけど襲うのは良くない。
「...じゃあせめて手の甲にキスをしても良いよね」
そんな事を言いながら私はお兄の手の甲にキスをした。
それからお兄の髪の毛を櫛でとかす様に指に伝わらせる。
私は告白したけどお兄はどう受け止めたかな。
もしかして別の意味に捉えられたかもしれない。
だけどそれで今は良しとするか。
告白はしたし。
「...お兄。私は昔から貴方が好きだよ。...そう。私達は赤ちゃんの頃から互いを知っているんだから」
そんな浮気したクソッタレに負ける筈が無い。
そもそも私はお兄があの女と付き合うのを大反対した。
だけどお兄は付き合ってしまった。
だけど今、ご破産したからクレジットは０だ。
私が奪っても構わない。
「...」
「スースー」
私は手を握りながら顔を近付けていく。
段々その顔はお兄の顔に近付く。
そしてキス...といった所でインターフォンが鳴った。
私は「ちっ」と言いながらインターフォンを覗く。
そこには宅配があった。
「このタイミングとか」
そんな事を言いながらも荷物を受け取る。
それから私は宅配を開けてみる。
そこにはみかんがぎっしり詰まっていた。
単身赴任中の母親と父親から寄せられたものだ。
「...しかしお母さんと竜さんも大概だよね。年頃の私達を残して行っちゃうなんて。まあ良いけど。私がお兄を独占出来るし」
そう呟きながら私はニヤッとする。
それから私はみかんを片付けてから顔を上げるとお兄が降りて来ていた。
間に合わなかったな。
私はそう思いながら舌打ちしながらお兄に笑顔になる。
「宅配便が来なかったか？」
「みかんだね。お母さんと竜さんから」
「みかんの時期は若干ズレてないか？」
「ハウスミカンだって」
会話をしながら居るとお兄は寝ぼけまなこを擦りながら「なあ」と聞いてくる。
私は「何？お兄」と聞いてみるとお兄は「さっきの言葉は何だったんだ？俺が好きって言葉」と聞いてくる。
私は「ああ。それはお兄がお兄として好きだよって話だよ」とニコッとする。
「じゃあ他意は無いんだな？」
「無いよ。...私はお兄が好き。味方って事」
「そ、そうか。だったら良いんだけど」
「どうしたの？お兄？」
「いや。何だかむずかゆかったからな」
「ああ。ゴメンね。深い意味は無いんだ」
まあ正直意味はある。
それはお兄が異性として好きという点だ。
私はお兄が心から大好きだ。
浮気された今。
私にもチャンスが巡って来たという事だ。
「お兄。私の容姿はどうかな」
「...？...そういえば髪を結んだのか？ツインテール？」
「元からしてみたかったからね。ツインテール。お兄がエロゲ好きだから」
「ばぁ！！！！？」
「この髪の毛はエロゲのキャラの髪形だよ」
「何で俺がエロゲ！？それを知っている？！」と赤面で慌てるお兄。
ほらね。
私はお兄を何でも知っている。
お兄の好きなキャラクターもエロゲも何もかも。
癖も何もかも。
だからこそ浮気した屑には負けない。
そう思いながら私は歪んだ笑みを浮かべる。
「...私のお兄だからだよ」
そう言いながら私はお兄の手を触る。
そして決意を新たにした。
横取りしても良いよね。
お兄を。
そういう感じでだ。
.....。
