馬の俺はお嬢さんを乗せて優雅に去っただけなんだが…俺は普通の馬じゃなかったらしい
俺は馬。名前はエディ。
とあるご令嬢に飼われている金のたてがみの白い馬。それが俺だ。
そんな俺は元は人間であったのだが所謂異世界転生をし、生まれたのは長閑な牧場ではなく森の中で、仔馬時代に主人であるお嬢さんに拾われて、彼女の専用の愛馬として日々お嬢さんを乗せている。
人間時代どんな人間だったかはよく覚えてないが今の俺は馬なのでそう問題ではないだろう。
あぁ誤解しないでほしいのだがお嬢さんは乗馬は好きだがじゃじゃ馬ではなくお淑やかな所謂素敵なレディだぜ。
お嬢さんの家は俺を放牧して育てられる程大きな庭を持っている程なのだからかなり裕福で位が高いお家なのだろう。
馬から見てもお嬢さんはご令嬢と呼ばれる程のお人なのだ。
そんな俺のお嬢さんは馬の目から見ても素敵なお嬢さんだ。
優しく品のあるレディだし、この家の人達も品の良い人ばかりで雰囲気もいいのだから俺は好きだ。
お嬢さんの次に乗せていいのはお嬢さんの弟である坊ちゃまだな、その次に奥様と旦那様だ。
後はお嬢さんが心を許すメイドさんくらいだろうか。
あぁでも怪我人や急病人がいたっていうなら話は別だ。俺はすぐに乗せるよ、それくらいは元人間としての良心がある。
そんな素敵なご主人様達の家にいる俺はお嬢さんがいつも金のたてがみを整えてくれてるから綺麗な馬だと自他共に言われる程の毛並みを持ってるぜ。
それに力も強いんだ、旦那様と奥様の二人が乗っても俺は速く走れるぜ?すごいだろ?
デートに行くなら俺にお任せを!ってやつだな。
さて、自己紹介を終えての今なのだが…俺は今胸騒ぎがして仕方ない。
今日はお嬢さんは舞踏会に行ってて俺は放牧された庭を一頭で散歩してたんだが…どうも嫌な感じがする。
実は俺の嫌な勘ってのはよく当たるんだ。
前に庭師の爺さんの病気も気付いたし、旦那様が出かける時に事故が起こるのも当てた。
ちなみに爺さんをこの家かかりつけの医者に無理矢理つれていって早めに病気を診てもらったから、今も元気に木を整えているし、旦那様は俺が必死に止めるのを不審がって出かけるのをやめたら、なんと出かけ先の道中が雷で突如大木が倒れていたらしい、出かけずにすんだから五体満足で怪我無しですんだとか。
そんなよく当たる予感に居ても立っても居られずに俺は屋敷の塀を飛び越えてお嬢さんのいる城へ向かってまっしぐらに向かった。
仕事中の兵士さんには悪いが俺の大事なお嬢さんの危機かもしれないんで通るのを許してくれよ。
街を駆け、門を飛び越えて城の中へ、お嬢さんの気配はこの城の庭みたいだな。
庭なら城の中の綺麗な床に泥をつけなくてすんでよかったぜ。
俺は勢いをつけて庭へ飛び込めば…庭のパーティー会場で、中央でお嬢さんが膝を崩して泣いてる。
おいおいおい…嫌な勘が当たってしまったか?どういう事だと問い詰めたいが馬の俺には事は分からないし言葉も通じない。
でも出来る事はある、お嬢さんをここから連れ出すことだ。
さぁ、普段の様に俺にお乗り、お嬢さん。
「エディ…?」
お嬢さん、涙を拭いて、いつもみたいに俺に乗っておくれ。
こんな嫌な気配のする所さっさと出ようぜ。
俺はお嬢さんを優しく頭で立ち上がらせて乗るように伝える。
お嬢さんが泣きながら俺の首に顔を押し付けてるけど、俺としては早くここを出ていつもの笑顔なお嬢さんが見たいんだぜ。
「な、なんでここに…」
おや?こいつは…お嬢さんの旦那になるとかいう王子様の男じゃなかったか?
少々気難しい性格というか思い込みの激しい王子様だったが素直なお人だったから嫌いではなかったのだが…今日はどうした?
なんでそんな嫌なものをくっつけた女の隣にいるんだ…嫁にするならお嬢さんのような綺麗な空気の人にしときな。
そんな嫌なものを持ってるやつは大抵いい人間と言えないぜ。
俺はふんっと鼻を鳴らしてお嬢さんの婚約者を見るが隣の女性はなんとまぁすごい汚いものをくっつけてるなぁ。
この汚いのは俺の持つユニークスキルみたいなもんで俺だけに見えるんだけども人を見るにはいいスキルだ。
こいつは嘘や欲望とかにまみれていたり、まぁ…人様の前では大声で言えないような事をしてる人に多いやつなのよ。
しかしこの女全身汚いのにまみれてて吐き気してくるぜ…。
こんなばっちいのがいるところは早く離れようお嬢さん、ほら早くお乗りなさいな。こんなところにお嬢さんはいてはいけねぇ。
お嬢さんを鼻で背に乗れと催促すれば漸くお嬢さんは背に乗ってくれた。
「うん、帰ろうエディ…迎えに来てくれてありがと…」
何を言うんだお嬢さん、俺はあんたの馬だぜ?どこまでも乗せるさ!さぁ旦那様達のいる家に帰ろう!
俺はお嬢さんを乗せて意気揚々と庭を出ようとするが立ち塞がれる。
「ま、待て!どこに行く!」
「ちょ、待ちなさいよ!」
げ、お嬢さんの婚約者と嫌な空気の女が近づいてくる!!
婚約者の方はともかくお前は来るな女!!汚らわしい!!こっちに来るんじゃない!お嬢さんにその臭いのが移るだろうが!
俺が怒鳴れば二人は怯えて立ち止まったのでこの隙に俺は来た道を戻るように駆けた。
でもお嬢さんが乗ってるから帰りは少しスピードを落として、綺麗なドレスを着た嬢さんに似合う様に優雅に帰ろうな。
城の門をくぐって出れば門番の兵士さんは俺とお嬢さんにびっくりした顔してたけど、ごめんな!お嬢さんを迎えに来たんだってわかってくれよ。
「エディ…あなた馬じゃなかったの…?」
うん?なんのことだいお嬢さん?俺は只の馬だよ。
君を小さな頃から乗せてる白いお馬さんさ。
俺は何処か変なお嬢さんを乗せて城下町を駆けた。
何だか今日の足は軽やかに感じるし、どこまでも行けそうな気がする不思議な気分だ。
家に戻れば旦那様も奥様もびっくりした顔をしてたけど俺はお嬢さんを送り届けられて満足だ。
お嬢さんが家に戻って嫌な予感も消えたので小屋に戻って寝るとしよう!
俺はなんだか騒がしい家の人達を置いて小屋に戻って寝た。流石に城と屋敷まで往復したのは疲れたからな!
朝、目を覚ませばお嬢さんが俺のブラシを持って小屋へ入る所で、俺はいいタイミングで起きたらしい。
お嬢さんは俺に朝の挨拶をして俺を撫でてくれると首に抱きついてきた。
きっと昨日の嫌な事がまだ響いてるのだろう、俺は馬だからわからんがお嬢さんが幸せになるなら馬なりに協力するぜ?
そんな思いで一鳴きすればお嬢さんは俺の耳の下を優しく撫でた。
ブラッシングを終えて、さて今日はお嬢さんを乗せてどこにいこうかと思ってたらなんだか家の中が騒がしい。
朝から騒がしいなんて何事だ、危険が迫るならお嬢さんを乗せて逃げるが嫌な予感はしないので事件ではないと思うのだが…。
お嬢さんを気にしつつ、騒ぎの音を聞いていると庭に多くの人間が出てきた。
なんだお前らお嬢さんに何かするなら蹴りとばすぞ。見る限りいい服を着てるので偉い人間のようだが俺は敵には容赦しないからな。
「いた!アリコーンだ!!」
「本当に存在していたのか…!」
人間達は俺達を囲み始めたので威嚇も込めて唸ればお嬢さんが大丈夫と首を撫でてくれてるがお嬢さんに近づくなら許さないぞ。
足踏みもしてれば旦那様が俺達の間に入って人間達を下がらせた。手間をかけさせてすまない旦那様…。
「エディを刺激しないでくれ!エディは俺達家族以外に近づかれるのは嫌いなんだ!」
「特に娘には一番懐いてます…娘に近づくのもおやめください」
奥様も俺達とやってきた人間達の間に入ってくれている。
急にやってきてなんだと見ていれば人間達はあわあわと取り乱し始めた。
一体何なんだ、観察する目で見てくる気持ち悪い奴らめ。
「エディ、大丈夫よ…うちの子です、寄越せというならお引き取りを」
「いえいえいえ!そんなことしません!!アリコーンに認められている者を引き離すなんて!!」
「我々はアリコーンの存在を確認しに来ただけです!!」
さっきからアリコーンってなんだ?俺のことか?馬だぞ俺は。
「やはりまだ若い個体のようですなぁ、角と羽が短いのでまだ青年期に入ったばかりでしょうか…」
「しかし、白いアリコーンとは…神々しい姿ですなぁ」
「やはり王子が言った不貞などあり得ませんな、アリコーンに認められている乙女ですからね」
なんだこいつら、人をさっきから…お嬢さん、俺は馬だろ?白いお馬さんだよなぁ?
お嬢さんにそう目で訴えればお嬢さんは俺の首を嬉しそうに撫でている。
「エディがアリコーンだったなんて気づかなかった…ずっと私を守ってくれてたのね、ありがとうエディ」
え?お嬢さん?
俺はお馬さん…だよね?
「まさか森で拾ったエディがアリコーンだったとはなぁ…」
「賢いお馬さんだとばかり思ってたけど…聖獣だったのなら納得だわぁ、いつも我が家を守ってくれてたのね!昨日のお礼に美味しい人参を仕入れてもらってるから少し待ってて頂戴ね」
だ、旦那様ぁ!?奥様!?
聖獣ってなに!?人参は嬉しいけども!
「エディ、可愛い角と羽生えたね!綺麗でかわいいよ!」
角!?羽!?どうりで朝から額と背中がかゆいと…いや、今の俺にそんなのが生えてるのか!?
俺は馬じゃないのか!?
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私とエディの出会いは今でも覚えてる。
森にピクニックに来てたけども私は森の中で迷ってしまったの。もうお父様にもお母様にも会えないんだわと泣いていた時に前の茂みからひょこっと顔を出して現れたのがエディだった。
私が泣いてると気付くとどうしたの?と顔を覗き近くの綺麗なお花をむしって持ってきてくれたりとあの頃からとても賢かったエディに私は涙がいつの間にか止まって、一緒に森を歩いたの。
エディは森の中を探すお父様達の所まで私を案内してくれたのだけど、私が別れを惜しんでまた泣いてしまうとついてきてくれた。
そして私の白いお馬さんとして我が家に来てくれたエディは私にとって大事なお馬さんになったの。
いつも話を聞いてくれたり、悲しい事があったら何処かへ乗せて連れていってくれたり、時には私が泣き止むまで傍にいてくれたエディを私はとても可愛いがったし大事に育てた。
だから毎日ブラッシングするのも苦じゃなかったし、乗馬で散歩するのも洗ってあげるのも全然嫌じゃなかったの。
そんな私を皆不思議そうにしてたけど、家族はエディは素敵なお馬さんだからみんなで可愛いがったし、時たまエディがお父様達のデートを手伝ってくれてるし、弟も優しいエディが好きだから気にもしなかった。
年頃になってお洒落も恋の話も好きだけどエディの事は変わらず好きだったから他の子よりもお洒落に疎かったのは事実。
でも友人達もエディの事を知ってるし、時たま迎えに来てくれるエディを見て羨ましがってる時もあったわ。
学校まで迎えに来てくれるエディに乗って屋敷に帰ってるから私の呼び名は白馬姫だけどエディに乗ってのあだ名だし、そこらの男達よりも乗馬は上手だと思うからその呼び名は嫌いじゃないわ。
だってエディは他のお家のお馬さんよりも早くて力強いんだから何か言われても全然悔しくないわ!逆にエディよりも綺麗で早くて賢いお馬さんなんて私見たことないもの!
そんなエディに乗れる私に相応しい名前とも思ってるのよ!
でも婚約者の王太子殿下様は違ったみたい。
エディに乗る私を昔はかっこいいと言ってくれたし、一緒に乗ったりしてたけど…最近は野蛮とかと馬鹿にする。
でも私はエディに乗るのはやめたくなくて無視してたけど…学園のパーティーの際に婚約破棄を言われて私は自分は間違っていたのかと泣きそうになった、でもエディは絶対に悪くない。
だって学業も作法もこの国の為に必要な知識も全て頑張って優秀な評価も貰えるように頑張っていたのに…と思ったらエディの事じゃなかった。
不貞?私が?どう見てもあなたの方なのに証拠があるってどんな証拠なのと言えば王太子殿下の隣にいる男爵令嬢が私が不貞をしているのを見たと証言した?
馬鹿馬鹿しくて顔を覆ってしまってたら泣いてると騒がれたけど、もう色んな事が馬鹿らしくて本当に涙が出た時いつも聞いている蹄の音が聞こえた。
まさかと顔を上げたらパーティー会場の城の庭に白い馬が駆けてきた。エディだ。
「エディ…」
エディは私を見るとすぐに傍に来てくれてぶるると優しく私の背を鼻で撫でて慰めてくれるように自分の方へ私を寄せた。
どうやってきたのかわからないけど、エディは何かあるといつも教えてくれる不思議なお馬さんだった。
庭師のお爺さんの病気も見つけ、お父様がある日出かける際に必死に止めた…そしたら翌日お父様が出かけようとした所の道中に雷がおちて大木が倒れていたと聞きお父様の命の危険をエディが察知したんだって私達は思っている。
そんなエディはきっとこの事も分かって来てくれたのだろう、屋敷から城まで距離はあるのに来てくれたエディに感謝しながら首に顔を寄せれば、早く乗れと鼻で押されてしまう。
きっと早く出ようと言ってくれてるのね、そうと分かれば私はエディの背に乗った。
エディは私が乗るとすぐに庭から出ようと動く。
どこかいつもより優雅な動きに見えて、本当に白馬の王子様が来てくれたのかと思ってしまい何だか笑えて来た。
そんな私達の前に王太子殿下と男爵令嬢が立ち塞がるけどエディは一鳴きした。
まるで来るな!というように鳴くエディの額から小さな角と背にも小さな翼が生えてきた。
「エディ…?」
エディの姿が変わった。
それに驚いているとエディは二人が尻もちをついて驚く隙に庭から出て優雅に駆けた。
私は走るエディの上で学園で習ったある日の授業にて出た内容を思い出す。
≪馬の体に角が生えた聖獣がユニコーン、翼が生えた聖獣がペガサス…そしてその角と翼の両方を持ち合わせた聖獣がアリコーンである≫
≪ユニコーンもペガサスも希少な聖獣だが、アリコーンは存在は認識されているが見たという記録がない伝説の聖獣だ≫
走るエディの綺麗な毛並みを分けて生える角と走る度に少し羽ばたくように動く翼。
まさか、エディが聖獣だったなんて信じられる?私ずっといたのに気づかなかった。
でも、今ならわかる…エディがすごく賢くて不思議なお馬さんだったのはエディがアリコーンだったからなんだって。
エディと駆ける町が何だかいつもと違く見える。
変わらない道、風景なのに何だかとても神聖なものに見えてしまうなんて私って単純なのね。
端から見たらドレス着た女と翼と角がある馬が街を駆けてるなんてすごい光景。
なんだかおもしろくて笑ったらエディもヒヒンと声を上げた。
きっと笑ってくれてるのかな。
屋敷に帰った私達をお父様達は驚いてたけど、エディは私を下ろしてお父様達に渡すと流石に疲れたのかいつもの小屋に戻っていった。
エディの姿に驚いてるお父様達にパーティーで起きたことを説明すればお父様は怒ったけども、エディのお陰で私の不貞は虚偽だとすぐに晴らされると言った。
「エディがアリコーンであるのならば不浄ある者は近づけないからね、そんなエディが乗せて駆けたのならそれは嘘だとすぐに判明する」
「アリコーンは聖なる馬、様々な不浄を払うとされる神聖な馬です…でもエディがそうだったなんて分からなかった…」
お母様が不思議な事もあるものね、というけれど本当にそうだと思う。
だって白いお馬さんとして森で出会って、一緒に十数年も暮らしているのにアリコーンだったなんて知らなかった。
角も翼も昨日までなかったからってのもあるけど賢いお馬さんで済ませてた私達って全員天然な家族なのかしら。
翌朝、あのパーティーでアリコーンが現れたことが報道され、またいつの間にか撮られていたのかエディにまたがり街を駆ける私の写真が一面にあった。
また、アリコーンにまたがった私を不浄扱いした王太子とあの男爵令嬢の発言には信頼性がなく、それどころか何故か聖女候補になってる私を貶めようとし、自分の不貞を正当化させるための陰謀だったというゴシップのような記事で書かれ…私は呆れたし、お父様達も首を横に振って呆れる。
「聖女候補なんて初めて聞きましたわ」
「最近のゴシップは…なんとまぁ…」
「でもこれでもし王太子様が何か言ってもどうとでも返せますわ」
「少なくともエディに関しては真であるとすぐにわかるでしょう…ほらお客様ですわね」
執事が迎えにいったけど私はそろそろ日課であるエディのブラッシングに行かねばとここはお父様達にお願いしていいかと聞けば、昨日の功労者を綺麗に梳いてあげておくれと父は笑い、エディへのご褒美にいい人参を仕入れてもらわなきゃねと母も笑った。
弟はすでに準備をしてくれており、いつものブラッシング用具を私に手渡してくれる。
本当にエディに甘い家族ね、私も含めて。
まぁ大事な家族ですものね。
私が庭のエディ用の小屋に入れば今起きたのかショボショボと目を瞬きさせているけども、私に気付くと挨拶の頬擦りをしてくれる。
昨日のこともあり首を撫でればエディは機嫌よく鳴いた。
そんなエディにはやはり昨日の夜に見た、小さな角と翼が生えており翼はひょこひょこと少し動いている。
私はブラッシングを終えて、散歩に行くためエディの手綱を引いて歩いているとエディが屋敷を見て耳を向けている。
きっとエディの事を見に来た聖堂の人達の声が聞こえるのだろうかなんだか警戒しているのか私を守るように傍にいた。
きっと昨日のこともあるから私を守ってくれてるのね。
大丈夫よとエディの首を撫でていたんだけどエディに気付いたのか聖堂の人達が出てきたから私を守るように前に立つ。
「エディを刺激しないでくれ!エディは俺達家族以外に近づかれるのは嫌いなんだ!」
「特に娘には一番懐いてます…娘に近づくのもおやめください」
お父様達が間に入ることでエディは落ち着いたけど、まだ警戒してるのか足踏みしてるわ。
ここは私がしっかりしないと。
「エディ、大丈夫よ…うちの子です、寄越せというならお引き取りを」
「いえいえいえ!そんなことしません!!アリコーンに認められている者を引き離すなんて!!」
「我々はアリコーンの存在を確認しに来ただけです!!」
よかった、エディを渡せなんて言われたら私すぐにエディに乗って逃げようと思ってたの。
でも聖獣といえるアリコーンがここにいてもいいなんて少し大丈夫かしら?私はエディと離れるなんて嫌だけど。
「やはりまだ若い個体のようですなぁ、角と羽が短いのでまだ青年期に入ったばかりでしょうか…」
「しかし、白いアリコーンとは…神々しい姿ですなぁ」
「やはり王子が言った不貞などあり得ませんな、アリコーンに認められている乙女ですからね」
そう、エディは昨日私を守ってくれた。
エディのお陰で私にかけられていた容疑は全て晴れた、特に不貞なんてアリコーンが許すわけないから傍にいないはずだって。
それに昨日の事だけじゃない、ずっとエディは私達を守ってくれたわ。
「エディがアリコーンだったなんて気づかなかった…ずっと私を守ってくれてたのね、ありがとうエディ」
私が改めてそういえばお父様達もエディを優しく撫でた。
「まさか森で拾ったエディがアリコーンだったとはなぁ…」
「賢いお馬さんだとばかり思ってたけど…聖獣だったのなら納得だわぁ、いつも我が家を守ってくれてたのね!昨日のお礼に美味しい人参を仕入れてもらってるから少し待ってて頂戴ね」
「エディ、可愛い角と羽生えたね!綺麗でかわいいよ!」
エディは耳をパタパタさせてた。
そんなエディは今日も可愛いお馬さんをしてるけど昨日と違う羽と角がある。
エディ、私の大事なお馬さん。
あなたが角が生えてても、翼が生えてても私にとって大事な、可愛いお馬さんよ。
この後あの元婚約者が突撃してきたり、聖堂からいつのまにか聖女扱いされてエディと一緒に聖堂に連れていかれたり、偶然黒馬に乗った隣の帝国の皇帝様と出会い一目ぼれをされたりと色々あるけど…。
「エディ、乗せて頂戴!」
≪了解だお嬢さん!≫
聖獣の力が目覚めたのかいつのまにか話せるようになったエディに乗って私は華麗に逃げるのでした。
≪お嬢さん、あの皇帝様ならお相手としていいんだぜ…?≫
「まだエディと野原を駆けまわりたいから嫌!」