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進め、異世界土木隊 ~我らの前に道はない。我らの後ろに道ができる!~  作者: 南野 雪花


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第21話 アメリカと日本みたいな関係


 遅くとも翌朝と言っていた国王への謁見だが、なんとその日の夜に実現した。

 あしょろ時間で午後八時である。


 普通だったらそんな時間に謁見などありえない。

 しかし、夕刻に王城の前庭で開催された石をまっすぐに置けるかなゲーム大会で、国王カルマーンが俄然あしょろ組に興味を募らせた。


 すぐにでも呼んでこい、という話になったそうである。


「ていうか、またあれやったのかよ」


 茜は笑っているが、測量の大切さを説くときマーリカはこの方法をよく用いるのだ。


 モタルでもザンドルとその部下たちにやらせているし、単純なゲームとしてもけっこう面白いし。

 今回もその例にならっただけだ。


 たった三百メートルほどの距離でも、ぜんぜんまっすぐ置けない。

 前に置いた石を確認しながら進んでいるにもかかわらず。


 家臣たちの有様を尖塔から眺めて笑っていたカルマーンだが、じっさいに自分でやってみて難しさを体感した。


 そして恐怖したのである。

 いまある街道が、このようにてきとうに進んでいるのだとしたら、一体どれほどの距離をロスしているのか、と。






「立ったまま御意を得ます。カルマーン陛下。わたくしどもの国であるニッポンには片膝をつくという習慣がないもので、ご無礼をお許しいただければ幸いです」

「よい。風習の違いを咎めるのは蛮人の振るまいというものだからな」


 田島の口上に、カルマーンが鷹揚な笑みで応える。

 宮廷での作法が判らないため、日本で上位者と接するときのように振る舞って良いかという話を、あらかじめマーリカを通して了承してもらっている。


 このあたりの根回しは田島の得意技で、だからこそ茜は安心して委ねることができた。


「わたくしは田島アトム。こちらはあしょろ組土木の代表者である足寄茜ですが、なにぶん若輩のため、わたくしが受け答えする無礼もお許しください」


 うむと頷くカルマーン。

 六十代半ばの彼としても、睦言ならともかく天下国家の話を小娘としたいとは思わない。


「献上されたグンテなるグローブ。予も気に入ったぞ。アトム」

「恐縮にございます」


 田島が深く頭を下げた。

 ついついノリで複製してしまったが、貴人にプレゼントするようなものではまったくないのである。


 せめて自分の作業用のグローブを複製すれば良かった。あれなら一双千円くらいしたやつだし、あんまり使ってないから汚くないし。

 などと、どうでも良いことを考えてしまう。

 中古品を渡すというのも失礼の極みだが。


「地図も素晴らしかった。あれにどんどん新しい情報が描かれていくと思えば、わくわくしてくるな」


 国王が笑う。

 これは本心からだ。

 きちんとした縮尺で作られた地図など、世界のどこを探しても存在しない。


「卿らの実力も判った。そこで、ひとつ仕事を頼みたいと思っているのだ」

「は」


 田島と茜が頭を下げる。

 もちろん判っていたことだ。

 ルマイト王国の主要街道を整備せよ、という仕事がくるだろうと。


 大仕事である。

 とうてい、あしょろ組土木一社だけで完遂できるようなものではない。

 しかし、受けることを茜たちは決めていた。


 国王からの依頼を断ったらどんな不利益があるか判らない、というのもあるが、道を延ばしていけば地球に帰還する方法も見つかるかしれない、という思いもある。

 確率が高いとはいえないだろうが、サリーズに籠もってつらいよう帰りたいようと泣いていたって事態が好転するわけがない。


「まずは、コロナドまでの街道を整備して欲しい」

「陛下……それはちょっと……」


 マルザインが苦言を呈する。

 茜と田島は、意味が判らずにきょとんとしてしまった。

 難しい仕事なのだろうか。


「宗主国から押しつけられている案件でな。もう何年も手つかずのまま放置されているのだ」


 カルマーンが言い、ちらりと横を見た。

 侍従らしき人物が頷き、説明を始める。


 ルマイト王国は独立国であるが、残念ながら小揺るぎもせずに立っているわけではない。

 オルライト王国という大国の傘下にあるのだ。


 属国というわけではないので貢ぎ物などは求められないが、それでもいろいろと言うことはきかないといけないのである。

 それ知ってる、アメリカと日本の関係だな、と田島は解釈した。


 そしてコロナドは人類の砦で、魔の領域ににらみをきかせている。ここを管理するのも世界の守り手を自称するオルライトの崇高な義務なのだそうだ。

 ただ、ものすごい辺境なのである。


 辺境じゃなくて首都の目の前にそんなものがあったら、その国は滅亡まで秒読み段階だろうからそれは仕方がないが、そのど辺境の砦までの街道を整備するよう、ルマイト王国は何年も前からせっつかれているのだ。


 砦を守る騎士団には補給も滞りがちだから、街道を整備して人類を守る一助となれ、と。


「オルライトのマーチス左大臣の言い分は、理に適ってはいるのだがな」


 ふうとため息を吐くカルマーン。


 魔王を筆頭としたモンスターたちは人間にとって天敵だ。

 絶対に共存できるような類ではない。

 それに対する備えをオルライト王国だけが背負うというのは筋が違う。


「我が国の領土が最もコロナドに近いのも事実だしな」


 


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[良い点] クロスオーバーしてる!
[気になる点] ぼちぼち地図(ポンチ絵)が欲しいかも
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