第3話 紫のライラック 恋の芽生え
私は飛んだ。はずだった。
あれ?足が動かない。
「なんでよ。動いてよ!なんで、なんで!?」
「ビビりだから。」
「え?」
後ろを振り向くと、飛山くんがいた。
「お前は飛べないんだよ。臆病で弱っちいから。」
「飛べるもん。」
飛ぼうとした。でも飛べない。
「諦めるんだな。ほら、帰るぞ。」
飛山くんが私の手を引っ張る。
私は手を振り払った。
「やめて。帰りたくない。」
「なんでだよ。」
「価値がないから。」
「はあ?」
「だから、私には生きてる価値がないの。」
「確かに。」
「納得するな!普通否定するだろ?」
私は飛山くんを軽く叩いた。
飛山くんが、見た事のない飛びっきりの笑顔で言った。
「へへっ。お前、価値あるよ。俺、今楽しい。」
「え?」
びっくりした。
だって、初恋の人と似てたから。
嬉しかった。ちょっとドキッとしたし笑
「ふーん。ありがとう。」
「じゃ、戻るぞ。」
「…戻りたくない。」
私は下を向いて言った。
「…じゃ、サボるか!」
「え?」
飛山くんが私の手を引っ張って走っていく。
「ちょっと待って?サボるってどーゆうこと!?」
「どーゆうことだろーねー。」
「はあ?授業は!?」
「うるさいなあ。」
私たちは走っていった。
「そして輝くウルトラソウル!ヘイ!♫」
「よりによってなんでカラオケー?」
「いいじゃん楽しいんだからさ!あ、お前も歌えよ!」
「え〜無理無理。恥ずい。」
私は大の音痴だ。絶対にやだ!
「好きな曲は?」
「え?うーんっと…ユイカさんの、好きだからかな。」
「へー、じゃあお願いします!」
曲のイントロが流れる。
「はあ?もう!」
「かっこいいから好きなんじゃない。好きだからかっこいいんだよ。♬」
「おーうまいやん。」
2番の歌詞が始まる。
「かわいいから好きなんじゃない。好きだからかわいいんだよ。」
飛山くんが歌う。なぜかドキッとした。
私たちはカラオケを楽しんだ。
「あ〜楽しかった。お前歌うまいな。」
「飛山くんも、上手だった。」
結局私はあの後たくさん歌ってしまった。でもなんか気持ちが晴れた気がする。
「あ、頭にゴミついてる。」
飛山くんが私の頭を触る。
キスしてしまいそうな距離だった。
心臓が破裂しそう。バクバクする。
「顔、赤いよ?」
「、っ。こっち見ないで。」
電車がくる。
「乗るか。」
「うん。」
椅子に2人で座る。
距離が近い。心臓の音、聞こえてないかな?
急に肩に体重が掛かる。
横を見ると飛山くんが寝ていた。
どきどきして、なんだか恋してるみたい。
「好き。」
飛山くんの耳元でさ囁く。
寝ているから聞こえてないはずだ。
私は今飛山くんに恋してるんだ。
「飛山くんが好きです。」
そう言ったとき、飛山くんの手が少し動いた気がした。
ユイカさんの好きだからは私も好きなんですよー
ムラサキのライラックの花言葉は「恋の芽生え」です。