#98
6月になると帝国に潜入しているクロイから連絡。兵士の移動が始まったようだ。
移動し始めたのは北端の領からで物資も大量に運んでいるらしい。6月中旬になると帝都近辺の領からも兵が帝都に集まり初め、進行準備が進む。
7月、とうとう兵士が旧ダイノス王国とトリスタニア王国国境へと兵士が集まり出し、王国も諸領へ参集するように下知が下される。
アーナンテもコング4機とトラッターや魔導バイクで騎士や兵士が国境へと向かって行った。その一行にアルニアから2人が密かに同行している。
アーナンテ勢が国境へと着くとそこにはトリスタニアの各領の軍勢が参集しており、その数は約5万、これから更に増えて最大6万5千程になる予定だ。まだ、参陣していないのは王国西勢である。所謂、宰相派の軍勢だ。
対する帝国側には、すでに8万の軍勢が対陣しており更に続々と数が増えている。
辺境伯は陣を敷くと本陣の天幕へとアルヴィンと共に入っていく。中に入ると1番奥に今回の総大将となる王の弟のトリスガ公爵が座り、その手前に諸将が並んで座っている。
「おう、良く来たなアーナンテ」と気安くトリスガ公爵はアーナンテ辺境伯へと手を挙げる。それにより諸将は天幕入り口へと一斉に振り向く。
「トリスガ様、只今参陣しました」と辺境伯は答える。
簡単な申し送りが済むと諸将は自陣へと帰っていく。本陣天幕には公爵と辺境伯が2人で話をする。アルヴィンは天幕前で控えている。
「アーナンテよ、王からは計画は聞いている。予定通りか?」
「はい、アルニアはもうすでに動いています。それに今回は帝国の動きを阻害と遅延させる為の手をこれから行います」
「ほう、それは?」
「アルニアからの者が2名ついて来ています。この者達がこれから帝国陣へ向けて阻害行為を実施します。それは・・・・」
アーナンテ陣に異色の2名がいる。その2名はアルニアから従軍して来た者だ。
ケイトとノルンの姉弟だ。2人は体全体を覆うフードの付いた黒色のローブを纏う。
ノルンは肩に魔導銃を担ぎ、ケイトは小さな荷物を担ぐ。辺境伯が陣に戻ると2人へ目配せをすると2人はトリスタニア王国陣より後方200mにある丘を目指す。
丘に着いた2人は適当な場所にシートを引き準備を始める。ノルンが準備をしている最中はケイトが周囲を警戒。
ノルンは肩に掛けていた魔導ライフルを肩から降ろすと折畳んでいたバイポッドを展開して地面に設置する。
ケイトは設置された魔導ライフルの横に銃弾が入ったボックスを置くと魔導フィールドスコープを覗き帝国陣内を覗く。
その間にノルンは周囲に認識阻害と遮音の結界装置を設置し起動して魔導ライフルが設置してある場所へと移動。
ノルンは一息吐くと魔導ライフルを伏せて構えて魔導スコープを覗く。
「姉ちゃん、準備は良いよ」
「あいよ」と気軽に答えるとフィールドスコープを覗きターゲットを選定する。
「まずはこいつかな」と魔導フィールドスコープでマーキングしたデータをノルンが覗く魔導スコープへとマーキングデータを送る。
「了解、ターゲットを確認」とボルトハンドルを起こしてロックを解き、そのままボルトを引く。そしてボルトを前方へ押す事により薬室に弾を装填。ボルトハンドルを倒して薬室を閉塞する。
深呼吸してトリガーに指を掛ける。一拍の後にトリガーを引く。
ドンっと言う衝撃と共に弾丸が飛び出してターゲットの眉間を撃ち抜く。
ケイトは魔導フィールドスコープを覗いて音速を超えた弾丸が空中を飛ぶ際に残す蒸気の跡を追跡して確実にターゲットの眉間を弾丸が貫いた事を確認。
「次いくよ」
「了解」と次々に相手の指揮官と思われる者たちを狙撃していく。
ここ帝国側本陣には皇帝自ら参陣していた。そこに伝令が飛び込む。
「お、お知らせします」
「何事だ!落ち着け」
「は、はい!現着したばかりのマドリア男爵、リード子爵が倒れました」
「何だと!何があった!」
「わ、わかりません」
「直ぐに調べて報告しろ」
「はい!」と伝令は転げそうになりながら駆けていく。
「どう思うか?」と横にいる参謀に声をかける。
「分かりませんが王国の仕業かと」
「そうだろうな」と苦々しい顔をする。
「次いくよ。今度はオークね」とターゲットデータを魔導スコープに送るとブッとノルンが吹き出す。
「姉ちゃん、冗談はやめてよ。もうオークにしか見えないよ」と肩を震わせる。
「早くしなさいよ!」と背中を叩く。
「痛いよ姉ちゃん!」と狙いを定めてトリガーを引く。ヘッドショット。
「次はゴブリンね」とデータを送るとまた、ブッと吹き出す。
「もう姉ちゃん。勘弁してくれよ」とトリガーを引く。
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