#86
6月になると雨の日が多くなって来た。去年はあまり降らなかったな。
今日はライデンの工房で魔導軍用2脚魔導量産試作機を作成している。ここまでで骨格は完成していて、魔銅布や外骨格を取り付けていく。
部材は出来上がっているので取り付けていくだけなので直ぐに出来た。外装も出来上がっているので、それも取り付けていくだけ。これも直ぐ終わった。基盤も取り付けられているがサブコアは量産機は6コア。量産機には空を飛ぶ機能は省いたので大丈夫だろう。
但し、スラスター機能は装備。跳躍の補助や高高度から落下時の速度とショックを軽減できる。キングラプターからの降下を想定している。
装備は魔導魔法攻撃システムはそのまま装備。剣は実剣。その他にも槍や盾も用意した。基本装備も魔導長距離通信機、魔導空調も装備されている。パワーもコングと比べて2倍となる。
光学迷彩や消音機能は省いた。必要になれば魔法陣を追加するだけなので慌てなくても良い。
全高は4m。色は基本白に胴部ハッチは黒でスタイルは騎士だ。ショルダーアーマーは少し角張張り出している。そこの前部にここアルニアの家紋を黒で入れる予定。何かカッコ良い。左手に長い盾を持ち、剣を地面に刺して柄を右手で押さえて立つ姿は凛々しく気品がある。中々良く出来た。
銃火器も用意したがこれらはまだ良いだろう。火器管制システムの魔法陣はまだ入れていない。似たようなシステムの魔導魔法攻撃システムがあるから良いだろう。
出来上がったのでカル爺を呼ぶともう目が輝き少年のようだ。これは量産試作機なので量産時にはカル爺専用機を作る。
1時間ほど使い方をレクチャーして乗ってもらう。もうねカル爺が暴走気味。もう待ては聞かないみたい。
駐機姿勢の量産試作機に乗り込んだカル爺はハッチを閉めて起動させる。ウィーンと小さく唸ると顔部に目に相当する光球が現れる。それが上下左右に動く。それがひと段落すると立ち上がり各部を確かめるようにその場で動く。
外装に魔力障壁が展開されて魔力循環が強くなっていく。顔部の光球の色がピンク色に変化魔法攻撃モードになったのだろう。モノアイみたいでカッコ良い。それが元に戻り。工房の扉へと歩き出す。
扉の前にいくと丁寧に扉を開けて外へと踏み出す。外に出て雨空とはいえ外の光に照らされると機体に当たる雨が飛沫となって全体が霞む。少し雨足が強くなって来たようだ。
その立つ姿は幻想的ですらある。現実感が薄い。非現実的な絵面だ。ファンタジーだなファンタジー。ああ、そうかここはファンタジー世界か。納得。
試作機は背中腰部に装備された剣を抜く。ヌラーと滑らかな動作で引き抜かれた剣は鈍く銀色に光り、いかにも斬れると主張する。魔力が纏われているだろうその剣は薄い緑に発光。
徐に上段に構えて振り下ろす、音速を超えるかのようなその剣速は衝撃波を生み出して周囲の雨を弾き飛ばす。ピタッと地面スレスレに止まった剣を中段に構えて突きを繰り出す。これも俺だから見えるが普通は見えないだろう。それからいくつかの構えから剣を幾度か振り、満足いったのか剣を収めて工房の中に入ってくる。
駐機姿勢をとりハッチを開けると停止。カル爺が笑顔で降りてくる。
「これは凄いものですな」と機体に手を当てて見上げながら言う。
「そうか良かったか?」
「それはもう」と満足そうな顔。
「この機体の調整が終わったらカル爺専用機を作るよ」と気軽に言うと、
「本当ですか?」と真顔で答える。
「もちろん本当だ。その時は専用機だから要望を言ってくれ」
「よろしくお願いします」と満面な笑顔なカル爺。良かった良かった。
「コイツのテストは任せる」と言って領主館へと戻る。
領主館へと入ると、
「お帰りなさいませマリス様」とハル達が出迎えてくれる。
「ハル、牛乳はあるか?」
「はい、今日の朝に届いた分がございます」とハル。
「厨房に出しておいてくれるか」
「はい、畏まりました」とハルは厨房へと向かう。
ゆっくりと厨房へと向かうと何故か侍従、侍女達が集まっている。まぁ、気にしない。
収納から木のボールを用意して、小麦粉、甜菜砂糖、溶き卵を入れて混ぜる。そこに牛乳を少しづつ入れて混ぜ合わせる。
最後にオリーブオイルを入れて混ぜたら休ませる。
休ませた物をもう一度かき混ぜる。よく混ざったら魔導コンロの上にフライパンを出してオリーブオイルを適量垂らして中火の火で熱する。余分なオイルを拭き取ったらお玉で木のボールから掬いフライパンの上に流し入れる、直ぐにフライパンを傾けて全体に広がるようにする。
生地が乾いて来たら串で端をめくって裏返す。弱火にして30秒程焼き火が通っていたら完成だ。
これを見ている人数分繰り返し作る。作り終われば収納に収納しておく。
もう1つ木のボールを出す。そこに牛乳をたっぷりと入れる。木のボールに入れた牛乳を魔力で包む、錬金術を使い油脂分だけを抽出。残りの物は収納しておく。
ボールの中の油脂分に甜菜砂糖を入れて魔力で包む。
魔力でホイッパーを再現して角が立つまで泡立てる。程よい状態になれば生クリームの完成だ。
収納から先ほど焼いた生地を出して生クリームを乗せて包む。
クレープの完成。
人数分用意して、ハーブ茶も用意したら皆んなで食べる。
クレープを紙で包んで手に持って口に持って行き食べる。柔かな生地と程良い甘味を感じ、噛むと間に挟まった生クリームがはみ出て口の中に広がる。生クリームの滑らかな甘味と生クリーム特有の風味が広がって生地の味と合わさり極上のスイーツとして完成。美味しい。前世で特に何も考えずに食べていた物が、異世界ではこれ程の味となる。旨い。
周りを見るとハルを含めた皆んなは、目を剥き美味しい美味しいと食べている。良かった口に合ったようだ。
ハルはハルでメモを取りながら、次は自分で再現して作るつもりなんだろう。目が真剣だ。侍女たちの目も真剣にクレープを観察している。ハルには、これに果物を入れても美味しいと教えておく。色々試して、ここライデンの名産になれば良いな。
魔導ホイッパーでも作るかな。油脂分の分離器も必要か後で作ろう。
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