#84
4月になると農作業が始まる。
ガロンとダロスが乗るコングが大きな鍬を肩に担いで農地へと向かう。鍬?いつ作ったんだ?その後ろをユーボⅡ4機が続く。
騎士・兵士待機所に行くと待機所前の広場でコング2機が格闘演習をしている。搭乗者はアルカスとマルス。マルスが搭乗している機体はカル爺からのリクエストに答えた形で追加した機体だ。
今行っている様な対2脚魔導機の対策の一環だ。
今回は格闘戦だが剣や槍、盾を使った模擬戦も行っている。搭乗者も今回はアルカスとマルスだが騎士全員が搭乗して訓練をしている。
やはり3mを超える物体が身体でぶつかりあう姿は迫力がある。それにしてもコング頑丈だな。そこにカル爺が近づいてくと、
「マリス様、あと2機程コングお願いできませんか?」と聞いてくる。思わずウンと言ってしまった。カル爺によると帝国戦の際にユーボを1台積んでいく予定だが、ユーボ1台よりコング2台の方が良いのではと言う事らしい。爆弾の換装などコングを使えば楽だと言う。まぁ、そうだよね。ユーボと同じような作業できるしね。
そういう作業用でもう少し小さい2mの物なんてどうだろうか?兵士も運用可能ならば汎用性が高いと思うんだけど。それだと魔導外骨格で十分か。
まぁ、コングを使いたい気持ちもわかるからなぁ。まだ時間はある。考えよう。
その日の夜、ハルに一言少し出るとだけ言って外に出る。収納から試作型軍用2脚魔導機を前庭にだす。
乗り込んで起動。光学迷彩と消音を掛ける。
領主館敷地からゆっくりと歩いて出てライズ方面へと向かい外壁と堀を飛び越える。
ライズ方面へと走り新たに追加した重量軽減の魔法陣により補助コアのプラクリスで機体10箇所に魔法陣を展開して重量を軽減する。マザーコアの指令でジェットスラスターを噴かして空中へと舞い上がる。飛行前方に魔力障壁を空力を考えて展開。
細かくスラスターで姿勢を制御しつつ体制を整えると、アフターバーナーを模した魔法が発動してドンッと言う音と共に加速して上昇。上空の雲を突き抜けてボフっと雲上へと姿を現す。
月明かりが雲上を照らしその上を機体が飛ぶ。速度は時速900㎞を超える。
魔力残量を見ると今の消費量なら回復量と釣り合う計算だ。それでもキングラプターと比べても消費量は多い。
更にアフターバーナー点火。加速と共にシートに体が押し付けられる。速度は時速1100、1200を超えてドンっと言う衝撃と共に音速を超えて時速は1300㎞を記録。
そこから速度を落としながら高度を下げつつライデンに戻るコースをとる。
今の機動で回復量を上回ったか、魔石の追加が必要だな。基本的に飛行出来るような形をしていないから魔力消費量が多い。
これで魔導ジェットを作成する道筋が出来たと思えば良いかな?ただまだ投入は早い。コングでさえも早いと思っている。
さて帰投だ。
5月になると少し雨の日が多くなるが今日は快晴。今はポセイドにいる。今回は魔導多脚兵員輸送機1機と多脚榴弾砲魔導機2機にコング4機、上空にはランナー1機が飛び、海岸線を南方面へと探索へといく。今回は俺は同行しない。
カル爺以下の騎士・兵士により探索を行う。何かを見つける必要はなく運用試験の一環だ。
コング2機を先頭に器用に岩場を超えていく。その後ろに多脚榴弾砲魔導機2機が続き、その後ろに魔導多脚兵員輸送機が続く。殿にコング2機。
2泊3日の予定だ。
この3日間は誰もいない事をいいことにポセイドで試作型軍用2脚魔導機を弄っていた。専用の30㎜機銃を作ったり。バックパックを装備して換えの弾倉を装備したり、手榴弾を作ったり、フラッシュバンを作ったり、高周波振動ナイフを装備したり、中隊長機だと言ってツノを付けたりとしていた。
機能も追加、魔導長距離通信機やナイトビジョン、試験中の射撃補助システムなどなど楽しんだ。そんなこんなで3日が経つとカル爺達がポセイドに帰ってきた。
よく見ると魔導多脚兵員輸送車の上に何やら括り付けてある。なんだろう?
カル爺がにこやかに話してくれた。どうやら小型の地竜ではぐれらしい。いつもなら逃げているところ、コング4機で斬りつけて榴弾砲で牽制。何発かが頭に当たり傷つきよろけた所をカル爺が乗るコングで首を切り落としたとか・・・。あんた達何をやっているのですか。これで俺たちはドラゴンスレイヤーだと?!
違うぞこれは龍ではなく竜だドラゴンではない。カル爺は分かっていたらしく苦笑。素材は良いらしく肉も美味いとか。
ふむふむ今日の夜は宴会決定だな。竜肉祭りだ。
兵士達がナイフに魔力を纏わせて風魔法を付与して地竜を解体していく。やはり通常のナイフでは地竜の皮に傷をつけるのも大変だとか。
切り分けられた肉をドンドン収納へと仕舞っていく、すでにハル達には連絡済みでライデンでも準備が進んでいる。
皆んなウキウキで作業。解体し終わると急いでライデンへと帰る。
ライデンに着くと収納から肉を出してハル達に渡す。皆んな笑顔だ。
騎士と兵士は風呂へと入りさっぱりしたら宿の食堂へと集まる。今回の功労者カル爺の音頭で宴会が始まる。
とりあえず男衆は腹を満たしたら2階の酔っ払いルームへと移動して飲み始める。そこに女衆が作ったおつまみが運ばれてドンチャン騒ぎ。
端に座りみんなが楽しそうに飲んでいるのを眺めているとカル爺が向かいに座る。
「どうしたカル爺」
「マリス様、明日ご報告しようと思ったのですが今少しですが報告しようと思います」と真剣な顔のカル爺。
「どうだった?」
「今回の探索であれらの魔導機の有用性が分かりましたし連携の訓練にもなりました。あとはコングですが軍用で無いとはいえ、かの大陸では冒険者でも使っていた意味がわかりました。あれは凄いです。攻撃力に防御力にスピードとどれをとっても生身では到達できないレベルのものです。あの通り弱っていたとはいえ地竜の首をスッパリです」とカカカと笑う。また真剣な顔に戻ると、
「マリス様、騎士全員の数を揃えましょう。これは切り札となりえます」と真剣な目で見てくる。
「そうだな明日時間はあるかカル爺」
「大丈夫です」
「見せたいものがある」
お読みいただきありがとうございます。
明日からは1日1話に戻ります。
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