#71
あと数日で年が明ける。年末だ。
今日は大型魔導機の飛行試験の日だ。朝からポセイドに来ている。
大型工房の扉が開き中からトラッターに引かれて大型魔導機がゆっくりと引き出されてくる。朝の透き通った陽光に照らされてその銀色の機体が輝く。
引き出された機体をロブ達は最終点検を始める。今日は飛行試験なので慎重に行動しているのだろう。
30分ほどすると鍛治師・錬金術師達が集まり問題がない事をロブに報告していく。それを聞いたロブが近づいてきて、
「マリス様、お待たせしました。準備完了です」
「了解した」とマリスは機体側面ハッチから乗り込んで行く。
ハッチを閉めて操縦席に座りベルトをする。魔銅操縦桿を握りしめて4つのローターの魔導モーター始動を魔晶石に指示。ヒュンヒュンヒューンとローターが回り始める。
『マリス様、こちら観測体制完了いたしました。いつでも大丈夫です』と念話通信機からロブの声が聞こえる。
「これから飛行試験に入る」と念話で告げる。
ローターの回転数を上げていくと機体が浮かび上がる。スーっと5m程浮上。機体に似合わず軽快な動きだ。
更に回転数を増して上昇。高度200mでホバリング。安定している。ここから試験だ。
まずは前後左右斜めに機首方向を変えずにスライドさせる。順調に全方向へスライドさせる。合格だ。かなりスムーズに移動できる。元の位置に戻り、高度を上げて行く500mの所で、
「こちらマリス、推進プロペラを回す」と念話通信で告げる。
推進用プロペラを回転させるとブーンと音がする。徐々に回転数を上げていくと前進し始める。更に回転数を上げて速度を上げていくと4つのローターは回転数を下げて揚力のみ発生させる回転数となる。
ここからの操作は翼により行う。機首を上げて上昇していく600、650、700、800、1000、1300、1600、2000、2500、3000、4000、5000、6000、7000、8000、10000、11000、13000、15000m。高度15000mが計算上の限界だ水平飛行にする。時速は500㎞。
気密処理されているので機内の気圧変化もない。もう少し上昇できるようだが今回は辞めておく。機首を下げて下降。8000mの高度を維持しながら飛ぶ。15分程飛行したらポセイドに戻る。
ポセイド上空でローターの回転数を上げてプロペラを停止。ゆっくりと垂直に下降していく。正確に着地地点に降りる。ローターを停止させてベルトを外して機体から降りる。
それを見たロブ達が機体に取り付き点検を始める。
「マリス様、どうでしたか?」とは見ていたカル爺だ。
「ああ、問題ない。かなり安定して飛べる。想定以上だな」
「そうですか。次に乗るのが楽しみです」とニカッと笑う。30分で点検が終わり問題が無い事が確認できたので今度はカル爺が乗りテスト飛行を行う。カル爺は足取り軽く機体に乗り込んで行く。
少しするとローターが回り始めて上昇していく。少しホバリングした後に前に進み始めて速度を上げて飛行していく。あっと言う間に見えなくなった。
「マリス様、どうでしたか?」とロブとアッカだ。
「そうだな。全てが想定以上の性能だ。EOとは比べ物にならない位に安定している」
「そうですか」とロブとアッカは顔を見合わせて嬉しそうに笑う。
少しするとカル爺が操縦する大型魔導機は戻って来て着陸する。機体から降りてきたカル爺は満足そうだ。最高速は余裕を残して時速850㎞になった。まだ速度は出そうだが、もしもがあるといけないので想定速度限界で辞めたとカル爺は言っていた。
もう少し速度が出るのか、音速は超えないだろうが900㎞/h付近までは出そうだな。凄い機体だ。
次はロブ達や騎士、兵士を乗せて遊覧飛行だ。操縦はカル爺だ。
機体内は2層になっていて1層目は貨物層でトラッターや魔導兵員輸送車、ユーボなどを運べる。4〜5台は積める計算だ。後ろの大型ハッチから出し入れする。
2層目は最前部が操縦席。その後ろが設備は何もないが兵員が待機する空間となる。簡単に200名は乗せられるだろう。今後つける設備にはトイレ2つに簡易キッチン、3段ベッド、座席だ。長期飛行も想定している為にベッドも用意する予定だ。
30分程の遊覧飛行を終えると皆んな楽しそうにワイワイと感想を言い合っている。
内部装備が完成すれば長期飛行テストを行う。これは来年1月後半に予定。日数は3日間を考えている。テスト先は海上。島でも発見すれば積んで行く予定のユーボⅡと魔導兵員輸送車で降りて探索する。
楽しみだ。
ロブとアッカにはランナーのローターを折り畳める様に改造を指示。意図が分かったのか快く応じてくれた。
ライデンに戻り領主館の執務室でカル爺と大型魔導機の長期飛行テストの予定を話し合う。
行く人員は俺、カル爺、アルカス、マルスに兵士が3人にハルを連れて行く。ハルは浄化が使えるのでシャワー等がついていない機体の中では必須と言える。今度シャワールームも考える。
積んで行くのは念の為に10日分の食料と魔導兵員輸送車にユーボⅡ、バイク3台に改造が間に合えばランナーも1機積んで行く。
ハルとサバスを呼んでテスト飛行の話をすると了承を得られた。若干サバスも行きたそうな顔をしていたが、残って他の人員を見なければいけないので気を引き締めていた。物理的にハルから。
騎士と兵士にもこの後、カル爺が説明に行く。
アルカスとマルスには時間があれば大型魔導機の操縦訓練を行ってもらう。これはカル爺に頼めば良いだろう。
いつまでも大型魔導機と呼ぶのはアレなので名前を決めた。
“キングラプター“ KR1-01
特に意味は無い。カッコ良さそうな感じだから・・・・。
そんなこんなで今年も終わりです。
良いお年を。
お読みいただきありがとうございます。
誤字報告いつもありがとうございます。助かっています。
感謝とお礼を兼ねて17:00にもう1話投稿します。
少しでもおもしろいと思っていただけましたら、ブクマ、評価をお願いいたします!




