#69
10月も半ばを過ぎると収穫祭をした。今季の収穫も豊作となった。一部はすでにヨネンに売り捌いている。
初めて参加の開拓民も多いのでどうなるかと思ったがなんとかなったようだ。騒ぐがお行儀が良い。一番騒いでいたのはガロン達だが奥様方に怒られていた。
開拓民の中から4人程の兵士希望者がいて受け入れた。次男や3男の13〜15歳の男子だ。スグロやダン、マズが後輩が増えて喜んでいる。マッキの息子2人も順調に兵士としてキャリアを積んでいる。アルスは見習い騎士から準騎士とした。
ここライデンは魔導機などは充実しているがそれを扱う人員がいない。そこが弱点と言える。騎士は5人、兵士はあと20人は欲しい。領地が増え分散すればするほどこの人数では厳しい。
もう少し開拓民を増やそうか?父上に相談だ。できればその中から今回のように希望者がいてくれれば良いのだが。気長に待ちたいが帝国との争いが近い。出来れば来年頭にもお願い出来ればなんとかなるか?ヨネンにも声をかけて希望者を連れて来てもらおうか?ヨネンが連れてくる人員はある程度信用できるからな。そういえばまだヨネンは来ないな。
数日するとヨネンが護衛の冒険者の他に10人以上を引き連れて訪れる。ヨネンを出迎える。
「ヨネン、今回は遅かったな」
「はい、遅れて申し訳ありません。今回は辺境伯様より人を預かりましてその準備に手間取りました」と辺境伯からの手紙を渡される。
その手紙には元アーナンテ領の兵士家族の2家族でライデンへの移住とライデンでの兵士採用希望と書いてある。その息子達4人も兵士希望だとか。ありがとうございます、父上。やはり父上は的確にこの領の弱点を見抜いているな。本当に助かる。
その2家族の移住と兵士希望も了承してサバスに長屋へと案内させる。そこにヨネンが、
「マリス様、あとこの2人ですが見習いの錬金術師です。こちらも引き取っていただければと」と言ってくる。そこには12〜14歳位の男女2人がおどおどしながら立っている。
「ああ、分かった助かるよ」とこちらはハルに兵士の独身寮に案内させる。
「あとなヨネン、お前の目に叶った兵士希望者を集めて欲しいんだ。できるか?」少し考えてヨネンは、
「はい、お任せください」と快諾。
数日するとヨネンは4台の荷馬車一杯の荷物を積み、辺境伯様への手紙を受け取り戻っていった。
新たに加わった2家族は元兵士家族ということもありカル爺やアルカス、マルスや初期からいる兵士達とも面識があり直ぐに馴染んだ。その子達4人も見習い兵士として訓練に参加している。
これで少しだが思い描く編成を組めそうだ。これから作り出す魔導機も開発段階に入っても良いかもしれない。
11月も終わりになる頃にライズの大型工房を訪れると大分はっきりと形がわかるようになった。
その全長は75m、前後についている巨大な翼は翼幅55m、全高は20m。胴幅は8mの巨大な姿だ。その巨体は全て魔導ジュラルミンに覆われている。前後の翼の先は下に折れてその先に車輪がついている。まだ、ついていないが翼の翼端に同軸二重反転ローターが前後それぞれに合計4基つく。
前の翼の胴寄りには推進用の魔導モーターと8枚のプロペラがつけられる予定だ。これが前の両翼に1基づつの2基。胴側面前側には乗降用ハッチ。後部には荷物搬出用の大型ハッチが装備されている。
前後翼と胴体には重量軽減が付与されている。前後両翼に2つづつで合計8箇所と胴部は胴部下部の前部、中央部、後部と両側面前後に合計7箇所の総合計15箇所に取り付けてある。
燃料魔石は10MPの物が4つで1組で4組が取り付けられている。1組4つから同時に魔力が消費され4つの魔石から魔力がなくなれば次の組へと切り替える仕様だ。
制御用の魔晶石は中級下位の物を使用。念の為に補助用の低級中位魔晶石が1つ取り付けられている。
現在は内部の作成をしていて外側は塗装するのみとなっている。最前部にある操縦席から制御用の魔晶石を経由して一番遠い同軸二重反転ローターは距離にして90m以上あるのでその配線だけでも時間がかかる。更に4つのローターを同期させて制御するとなると調整も難航が予想される。
武装に関してはまだ考えていない。
12月の終わりにテスト飛行を予定しているが間に合うかギリギリだ。12月中旬に動作テストを行うのでその時に間に合うかわかるだろう。
12月に入ると各家庭では新たに導入された魔導ストーブで暖を取るようになった。これは魔力補充サイクルシステムが確立された為に各家庭に導入した。1台の魔導ストーブから各部屋にダクトを伝い暖かくする。薪を消費しないエコなシステムだ。
将来的には他領にも売るつもりだ。このシステムに使われている魔法陣は失われた魔法文字を使っている為に模倣することは出来ない。ライデンの独占だ。
ポセイドでは予定通りに大型魔導機の4つの同軸二重反転ローターの同調テストが繰り返されて調整されている。ロブ達から順調に進んでいるという報告があった。
12月中旬ポセイド。
大型工房の扉が全開になり、トラッターで大型魔導機が引き出されてきた。
その姿を見つめる騎士や兵士から驚きの声が上がる。まだ塗装前の銀色の機体に陽光が当たり輝く。何か威厳のような物を感じる。
機体側面ハッチから乗り込む。今回も1人で操縦だ。
操縦席に座り魔銅操縦桿に手を置く。さぁ始めよう。
同軸二重反転ローター4基の魔導モーターを始動。徐々に回転を上げて行くとヒュンヒュンと言う音からヒューンという音に変わる。更に回転速度を上げるとフワッと浮き上がる。1m程浮き上がる。その状態を維持。
問題がないことを確認。更に上昇する。10、15、20mで高度を維持。これも問題無し。一度着陸する。ゆっくりと降下して着陸。
ロブ達が機体に駆け寄り点検を行う。機体が大きいので1時間かかる。次のテストはカル爺が行う。そのカル爺はニコニコだ。
1時間が経つと点検が終わりカル爺が乗り込む。少しするとローターが回り出して機体が浮上する。外からみると圧巻だ。これほどの大きさの物が宙に浮いている姿は凄い。
徐々に上昇して500mまで高度を上げて高度を維持。ここまでは順調だ。更に高度を上げ始めた。1000mまで上昇した所でまた高度を維持する。ここでテスト終了だ。徐々に高度を下げて着陸する。問題無くテスト終了。
カル爺が降りてきて興奮しているようだ。終始笑顔。
次が10日後。推進用プロペラを回しての飛行試験だ。
楽しみでしょうがない。
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