#43
マリス達は何事も無く伯爵領を後にしてアーナンテ領へと帰還。ことの次第をアーナンテ辺境伯へと報告。アーナンテ辺境伯は急いで書を作成して王都へと使者を出して王国へと報告した。
これにより伯爵は王都へと召還される。
トリスタニア王国王都王城謁見の間。
「ノキアノス伯爵前へ」と宰相が告げる。ノキアノス伯爵は前へと向かうと跪き言葉を待つ。
「ノキアノス伯爵よ、アーナンテのアルニア名誉男爵と揉めたそうだな?」と王は声をかける。
「はい、名誉男爵が失礼な態度を取ったため私の長男と決闘となりました。そして卑怯な手を使い長男が殺されたのであります」
「ふむ。聞いている話と違うな。どうだ宰相」と宰相に話を向ける。
「王国の手の者の調べでは話は逆で失礼な態度を先にしたのは伯爵の嫡男で決闘も卑怯な事に6歳の名誉男爵に対して20人の正規騎士と嫡男の21人で行ったと調べがついております。これには多くの住民の証言もあり間違いないかと」
「そういうことだ。伯爵申し開きはあるか?アーナンテからも苦情が届いておる」
「ううっ」と伯爵は言葉に詰まる。何か言葉を発しようとした時被せるように、
「それにな伯爵、伯爵領内は今暴動で荒れているそうではないか。どうしてだ?」
「それはその・・」としどろもどろとなる。
「民に必要以上の税を課しているというではないか。なぜじゃ?」そこに宰相が、
「こんなものが見つかったのだが申し開きはあるか?」と一通の書を差し出す。それを開いて読んだ伯爵は、
「こ、これはなんでここに・・イヤ違います」と言うが、
「帝国と繋がっていたとはの。連れて行け」と近衛騎士が伯爵を連れ出す。
「帝国め、厭らしい手を使ってくる。いや、違うなこれは逆に好機かもしれん。宰相・・」
もうすぐ4月という日にマリス達はコルニデ村へと向かう準備をしていた。今回第一陣で向かうのはマリス、カル爺、アルカス、マルス、アルス、ハル、サバスと兵士5人に応援の騎士2人で向かう事になる。荷馬車2台と騎馬5騎での出発となる。荷馬車の御者は兵士が務めてマリス、アルス、ハル、サバスと残りの兵士は荷台に乗る。他にも食料や野営道具や開拓用の農機具も積まれている。
そんなことをしていると王都から使者が訪れて王よりの書簡が読まれる。内容はノキアノス伯爵家の取り潰し、それに伴う領地分配というものだった。今回の分配では先の戦争での褒賞という意味合いもあり、現隣子爵領全てをアーナンテ辺境伯へ、タラノイア子爵は伯爵領都を含んだ領地を他の子爵と伯爵領を分割する形で領地替えとなった。これには実質の領地加増となり誰も不平を言う者がなく、領民も善政を敷く領主が治めるとあって期待に満ちていた。
今回の事でアーナンテ家は旧タラノイア子爵領都へと移り辺境伯領を治めることとなった。そんな中4月に入りマリス達はまずはコルニデ村へと向かう。
旅程は順調に進みラノイズ村で1泊して翌日にはコルニデ村へとたどり着いた。そこで翌日は休憩に当ててその次の日から新たな開拓村へと繋がる道を作ることとなる。
マリスはまず魔力の回転する刃で木を切り倒していく、その切り倒した木を兵士と馬車で片付ける。騎士達5人は周辺の魔物の徹底した間引きを行なっている。
ある程度木を切ったら切り株周りの土を土魔法で柔らかくして魔力で包み引っこ抜く、引っこ抜いた切り株は兵士達が片付ける。こんな方法で毎日200m程を切り開いていく。これはかなりの速さである。これには兵士達も音をあげて6日に1日休みとした。5月には5㎞程進み、10月頭にはコルニデ村から30㎞に到達。周囲を確認して川などがあることからここに開拓村を作る事に決定した。
そこから10日程で一辺が500mの場所を作り、その端から50m内側に幅3m深さ3mの堀を周囲に掘った。コルニデ村へと繋がる道側に丸太で簡易の橋を掛ける。
堀は土魔法で石に加工して最終的には水を溜められるように加工。その後にまずは魔の森側の堀内側に高さ3m、厚さ30㎝の石壁を土魔法で立ち上げる。
兵士達はマリスが加工した木材で簡易な小屋をいくつか建てて仮の住居とした。
更に10日掛けて周囲全てを石壁で囲う。コルニデ村へと繋がる道側に石で堀を渡る橋を掛けて木材を加工して大きな馬車2台通れる門扉を取り付けた。その横には人1人が通れる扉も設置。通常はこちらを使う。魔の森とは反対側にも門扉を設置。これは馬車1台が通れる程度とした。勿論、人用の扉も設置。石で橋をかける。将来的にこちら側に農耕地を広げる予定だ。
これでとりあえずの防備が出来た。ここから村の中を整備していく。
コルニデ村側の門から石通りを作成。開拓村中心からややコルニデ村よりに円形の広場を石畳で作成。そこからコルニデ村とは反対側の石壁へと石通りを作成。この広さは馬車3台分の広さとした。更に広場から魔の森と反対の壁まで馬車2台分の広さで石通りを作成。魔の森の反対側道沿いに開拓民の住居を作成する。4人家族を基本にして5戸繋がった長屋を6棟作る。計30家族が住める。
長屋は、石で下水道を作成してその上に石で土台を作っていく。これは全て土魔法で行っている。そこに風魔法で加工した木材を組んで作成。壁の中には錬金術で加工した木を段ボール状にして重ねた物を入れて断熱と防音とする。屋根は片勾配として一気に土魔法で薄い石で加工して防水とした。
基本は3LDK+1として台所と水洗トイレを設置。入り口と反対側に大きなガラスのついた窓も取り付けた。勿論、雨戸も装備。屋根裏部屋をプラス1として多目的に使えるようにする。ストーブも設置各家庭から煙突が出ている。
水は基本的に生活魔法の飲水で賄える。各家庭の台所に2つ口魔導コンロを設置した。
魔の森側でコルニデ村側の壁付近に騎士が待機する施設を土魔法で作成。2階建として2階から通路を使い外壁上に移動が可能とした。その近くの門横、魔の森側に石で6mの物見台を作成する。ここは屋根も作成して夜間や雨の日にも対応できるようにした。
11月半ば過ぎに開拓民の第一陣が到着。6家族だ。すでに完成している長屋に案内して住まわせる。概ね好評のようだ。
広場から魔の森反対側の外壁に向かう長屋の道を挟んだ向かいに領主館を作る。ここは大きく敷地を取り石壁で囲い、緊急時の場合には敷地内に避難した住民を保護できるようにする。
外壁に繋がるように石壁で敷地を囲う。壁の厚さは30㎝で高さも3m。壁で囲うと頑丈な門扉を作成。馬車2台分だ。横には人用の扉も設置。
館は2階建で土魔法の石で作成する。1階は玄関、執務室、書庫、台所、応接室、風呂、食堂、物置を作成。2階は住居スペースで全9部屋で大部屋が2つで6人×2で使用する。マリスの寝室が1つに個室が5部屋。物置1つ。
そんなこんなで年末になった。まだまだ作らなければならないものが多い。駆け足だがなんとか住めるようにはなった。ひと段落だろう。
さて来年はどうなる事やら。
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