#39
町に到着。真っ直ぐ食料品店に向かう。
ふと店近くの路上で籠を持ち花を売る、6歳位の女の子がいたので1束買う。これはラベンダーかな?鑑定するとラベンダーと出る。まぁ何かに使えるだろうと収納にしまう。
店に着くとバターとチーズはないかと聞くとバターは午前中でいつも売れ切れる、明日の午前中の早いうちならあると言う。チーズはあると言うので買う。どちらもヤギの乳から作ったものだ。
何気に店内を見ているとあれっ?という物を発見。これってヤシの実?ココナッツじゃないか?と店の者に尋ねると行商人が安く珍しいと言うだけで仕入れてきたが売れ残ったので、ただ同然で引き取ったそうだ。
12個のヤシの実全てお買い上げ。これでココナッツミルクとココナッツオイルが出来る。
さて明日朝また来よう。
離れに戻るとラッシュボアのバラ肉の塊を出して綺麗に水洗いする。綺麗になったら水を拭き取りフォークで穴を開ける。そこに塩を揉み込んで、
「錬金!」これで1週間塩漬けしたのと同じようになる。錬金便利。
それを今度は水に付けて塩抜き。これも、
「錬金!」ハイ、終わり。2〜3時間かかる塩抜きがあっと言う間。何か本職の錬金術師にそんな事に使うなと怒られそう。でも便利なんだからしょうがない。
魔導コンロの上に鍋に水を入れて湯を沸かす。沸いたら塩抜きしたラッシュボアのバラ肉を入れて1時間程茹でる。
茹で上がった肉の表面の水分を拭き取ったら水魔法で軽く表面を乾燥させる。表面に艶が出たら止める。
外に出て地面に魔導コンロを置いてフライパンを乗せる。そのフライパンにオークの木と思われる木のチップを入れて加熱。煙が出てきたらフライパンの上に魔力で燻製機を模して作成して、同じく魔力で作った網に乗せて燻す。30分燻したらラッシュボアベーコンの完成だ。収納しておく。
次はボールに小麦粉、アケビ酵母、甜菜砂糖、塩を入れて混ぜる。纏まったら小麦を少し机の上に撒く。その上で捏ねていき十分捏ね終わったら寝かしておく。
30分程経つとハルが館から帰って来た。
寝かして置いた物を3等分して2つは収納する。丸く伸ばしていき、オリーブオイルを表面に塗る。その上にケチャップ、乾燥バジルの粉末、ニンニクパウダーを混ぜたものを塗る。
またその上から細かくカットしたチーズをたっぷりと掛けて、薄くスライスした玉ねぎとゴロっとカットしたラッシュボアベーコンを乗せる。
竃に火をつけて竃の上に魔力でオーブンを作り400℃まで温度を上げる。鑑定で400℃に上がったのを確認したら、オーブンの中に入れて焼く。周りが焦げてきたところで出してピザの完成だ。
ピザを6等分に切り分けて皿に置いて机の上に出す。ガラスコップに氷を生成して水を注ぎ風魔法で炭酸化する。そこにライムを絞る。完成だ。
向かいの席にハルを座らせて、さぁ実食だ。
一切れ手に取り口に運ぶ。
熱々だ。口に入れて噛む。噛みきれないチーズが伸びる。落とさないように伸びたチーズを口に入れる。
ピザソースのケチャップの酸味、ニンニクの風味、バジルの香りがブワッと口の中に広がり塩気の効いたチーズがアクセントとなり、そこにラッシュボアのベーコンの焼けて香ばしくカリカリなった歯触りと、肉汁にスモークの香りと塩気が混じり旨みを増す。更に焼けた玉ねぎの甘みが加わりそれが一体となって口の中を蹂躙する。
旨すぎるぞ!なんだこれは!前世のピザを完全に凌駕している。至宝の逸品だ。
ハルを見ると涙を流しながら目を瞑り食べている。気持ちは分かるが泣かないでくれ。頼む。
3切れとも食べてしまいもう少し食べたい気持ちがあるが、今回は我慢しよう。まだ材料はある。
最後に炭酸ライムを飲んだら夕食を終わりだ。ご馳走様でした。
その後は風呂沸かして入りサッパリして就寝だ。
魔力枯渇して寝ます。おやすみなさい。
「お呼びですか?アリオナ様」
「おお、カルか済まんな。遅くに」アーナンテ辺境伯は手を止めて扉の方へ向く。
「いえ大丈夫です」と扉を閉めながら部屋に入る。
「実はなマリスの件だが少し予定を早めようと思う。4月だ。4月の初めには新たな開拓村の開拓へと向かってもらう」
「やはり帝国の密偵ですか?」
「そうだ。どこで漏れるか分からんからな。モラニデから遠ざける」とカル爺を見る。
「では人員はどういたしますか?」
「カルは当然として本人にも確認を取るが騎士アルカスとマルスを付けようと思っている。あと兵士が5人だ」
「では名誉男爵の件も?」
「ああ、そうだ。開拓村へ派遣する際にマリスへ授ける。後は開拓民を6家族だ。開拓当初は他に騎士を2人付ければ周辺の魔物は2週間程で片付けられるだろう」
「そうして頂けるとありがたいです。では私とアルカス、マルスと兵士はマリス様の配下で宜しいですか?」
「勿論だ。マリスを支えてやってくれ。他には身の回りを世話をする者をまだ見習いだが2人つける。1人はもうマリスの元で世話を開始している。問題ないだろう」
「それでは私の方からアルカスとマルス、兵士にそれとなく伝え聞いておきます」
「頼んだぞ、カル」
「はっ!畏まりました」と部屋を出ていく。
「少し早いがやむを得まい」とアーナンテ辺境伯は呟く。
お読みいただきありがとうございます。
明日からは1日1話に戻ります。
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