#38
雑貨屋に着くとラッシュボアの魔石とラックバードの魔石を売る。お金を受け取ると次は食料品店に向かう。その途中、
「マリス様!」と声を掛けられる。騎士アルカスだ。アルカスの後ろには兵士が2人いる。多分巡回中なのだろう。
「ああ、アルカスか巡回中か?」
「ハイ、そうです」とにこやかに答える。「マリス様はどちらへ」
「俺はこれから食料品店に行くところだ」
「そうですか、お気をつけて行ってください。最近、人が増えたせいもあり少し治安が悪くなっています」
「そうなのか?ああ、気をつけるよ」と手を振り食料品店を目指す。
ピコンとマップが反応。見てみると敵対赤表示が2つ。なんだ?と敵対赤表示のいる場所へと行くと食料品店の店前で男2人が食料品店の店員に何やら話しかけている。
見つからないようにさりげなく2人を鑑定すると・・・・!!
ウルーク帝国の密偵だ。何しに来たんだ?うん?そうか、この間の戦争か!
来た道を戻りアルカスを探す・・・いた!
「アルカス!」と呼ぶとアルカスは振り向いて、
「どうしましたマリス様」
直ぐに駆け寄り耳打ちすると、
「!!、わかりました」と一緒に密偵のいるところまで急ぐ。良かったまだ食料品店にいるようだ。2人に近づくとアルカスは話しかける。
「申し訳ないが2人に聞きたいことがある」とアルカスが声をかける。その間に密偵の後ろに回り込む。
「なんでしょうか?」和やかに対応する密偵。いかにも行商人な雰囲気を出している。もう1人も笑みを絶やさない。
「2人は何処から来たのか?」
「あっしらは王都からきやした。行商人でさぁ。新しく辺境伯領になったと聞いて何か良い商売がないか聞いて回っていたところなんでして」
「お前もか?」ともう1人に聞く。
「ハイ、そうです。元々知り合いなんですが、たまたま偶然ここで搗ち合いましてね」と和やかに話す。見たかぎりは怪しい所はないが。その後ろから、
「オジサン達、嘘はいけないよ。ウルーク帝国の密偵さん」と言うと、
「「!!」」2人は動揺する。それを見たアルカスは、
「2人とも詰所に来てもらおうか?」というと2人は突然その場から逃げようとするが、マリスは咄嗟に密偵2人の足元に魔力の壁を出して2人を躓かせるとバランスを崩した2人の上から魔力の壁を押し当てて転ばせる。
そこにアルカスと兵士2人が押さえつけて拘束する。なんとか拘束から逃れようとするが完全にアルカスと兵士に掴まれて身動きできない。すると・・・
「グゥ」と2人は呻いたかと思うと口から泡を出して絶命。奥歯か何かに毒を仕込んでいたのだろう。服毒自殺だ。徹底しているな。
その後、荷物を調べたが身元を証明するような物や怪しい物は持っていなかった。
このことは直ぐに辺境伯様に知らせると巡回する人員を増やし、今回マリスが能力で見つけたということで協力することとなった。
10日程、騎士たちと一緒に巡回に同行して密偵を探した。初めの5日間で2組4名の密偵を見つけ拘束したがいずれも捕まると直ぐに服毒自殺をした。
10日経ち、もう見つからない事からマリスはお役御免となり解放された。
これで済んでくれれば良いのだが、まぁ定期的に町に来て警戒しよう。
今日はもう午後だ。ハルは館へと行っている。何をしようか。
そうだ、あれを作ろう。
大きなボールを用意してそこに水を入れて塩を溶かす。そこに手を当てて、
「錬金!」
錬金術で塩水から苛性ソーダを取り出して収納。出来た苛性ソーダを魔力球の中に収納から入れて二酸化炭素を反応させると・・・重曹が出来た。直ぐに収納。
錬金術便利。
ボールを取り出す。そこに重曹、小麦粉、卵、少量の甜菜砂糖、マヨネーズを入れて混ぜる。
魔導コンロにフライパンを乗せて火に掛ける。フライパンが温まってきたらオリーブオイルを適量垂らす。
そこにボールから混ぜ合わせた物をフライパンに入れて焼いて行く。
きつね色に焼き目がついたらひっくり返し蓋を閉めて蒸し焼きにする。しばらくするとホットケーキの完成だ。
皿に乗せてさぁ実食だ。
まずはハチミツをたっぷりかけてナイフで切り分けて食べる。
切り分けたホットケーキをフォークで刺して口に入れる。うん、美味い。
マヨネーズが効いているのかしっとりぷっくりと膨らんで弾力がありハチミツの甘さとハチミツから香る花の香りが鼻を抜けて味を引き立たせる。成功だな。
昼食もしっかり食べたのだが完食してしまった。久々のスイーツは格別だ。
一つ残念なのはバターがない事だ。
そうだ思い出した。密偵を見つけた日は食料品店にバターやチーズが無いか確かめに行こうとしてたんだ。忘れてたよ。
うん。まだ時間はあるな、町に行こう。
お読みいただきありがとうございます。
誤字報告ありがとうございます。毎度のことながら助かります。
感謝とお詫びに今日はもう1話を17:00に投稿します。
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