#31
アラームの音で起床。短剣を持ち外で型をなぞりながら振るう。ふぅ〜、大分寒くなってきたな。20分程素振りをしたら離れに入り顔を洗い朝食を食べる。
今日は出かける前に館へ寄る。館に入りハルの様子はどうか聞くと昨日からすでに館で寝泊まりしていて侍女長から厳しい指導を受けているという。
ハルは孤児院で読み書きと簡単な計算、孤児院での共同生活で清掃、洗濯、料理と一通りこなせるらしく、もう少し様子を見たら侍女としての振る舞いやマナー、お茶の淹れ方、出し方などを指導していくという。思いの外早く侍女としてマリスの所へ行かせられるかもということらしい。
このことから孤児院から有望な子を侍従・侍女見習いとして数人育てるのも良いかと辺境伯と話しているのだとか。商人や貴族家から雇った者ではこうは行かないらしい。まぁ順調そうで何よりだ。
では温泉の地へ急ごう。
急いだせいもあり1時間ほどで到着。昨日作った温泉施設は問題ないようだ。
さて10畳程度の小屋を作る。配置や間取りを考える。まずは土台を下水を流す水路を作りながら作成する。土魔法で石に変えて土台は完成。もちろん下水路も完成。
木を切り出して魔法で乾燥させる。土台に木の柱を取り付けて4隅に柱を立て屋根まで完成させる。外側に板で壁を貼る。内側に木で段ボール状に魔法と錬金術で加工した物を重ねて断熱材にして貼り付けて内側に板を貼る。小川沿いに水回りを設置。垂れ流しになるが簡易な水洗トイレを作成。便器は錬金術と土魔法で洋式便座を作成。トイレ内上に貯水槽をつけて水が流れるようにする。便器の下のパイプは匂いが上がって来ないようにクルリと一回転しており水が溜まり蓋になる。これは銅を加工してパイプを作り接続した。
竃はなく流しと作業台を作成。水源は無し生活魔法で対応する。火は試しに作った魔導コンロを使う。まだ試行錯誤中で温度を変える事ができない。温度を弱火・中火・強火にするアイデアはもう出来ているので近々作成予定だ今回はこれで我慢する。
窓は3箇所作りガラス窓とした。もちろん雨戸も取り付けて中から閂で施錠もできる。適当な壁際に試作で作成した、小型の鉄のストーブを設置して煙突管を外に出す。早速収納から薪を出して火をつける。
次はドアを加工して作成して銅で蝶番を作成して取り付ける。木で取手も付けることも忘れない。中から閂も取り付けて中から施錠できるようにした。
昼食も食べずに作成して居たようで帰りに寄る所があるので今日はここまでで戻ることにする。
戻る途中でゴムの樹の樹液を回収してから戻る。大分採れた。
離れに戻り風呂を沸かして入る。風呂上がりに冷たい水を飲む。美味い。
風呂に入っている間にストーブの熱が部屋全体に行き渡り暖かい。
さて今日の夕食は何にしようか?うん、あれにしよう。
まずはジャガイモの皮を剥いて擦り下ろす。擦り下ろしたジャガイモを綺麗な布で包み木のボールに水を入れて、水の中でもみ洗いをする。
洗い終わったら濾し布を絞り、ジャガイモを擦ってもみ洗いをした水は、でんぷんを沈殿させる為に15〜20分置いておく。時間が経ったら茶色い上澄みを捨てて再度放置。これを数回繰り返す。最後に水魔法で乾燥させると片栗粉の完成だ。
次にラックバードのモモ肉を一口サイズに切りフォークで穴を開ける。ボールに切った肉を入れて、擦り下ろした生姜・擦り下ろしたニンニク・白ワイン・醤油・塩を揉み込んで、揉み込んだあとは30分程放置して味が染みるのを待つ。味が染み込んだところで竃に火をつけてフライパンにオリーブオイルを入れて熱する。
180℃位まで温度が上がったら放置した肉を片栗粉をまぶしてジックリ揚げる。熱したオリーブオイルに片栗粉をまぶした肉を入れるとジュワーと音がする。揚げ加減を見ながらひっくり返し火が通ったところで皿に出して油を切る。
ラックバードのカリカリ唐揚げの完成だ。
さて実食だ!フォークで刺すとサクっと音がする。それを口に運び歯を立てるとサクっカリっと音がして肉を噛むとジュワーっと肉汁が溢れる。そこに醤油の香りとニンニク、生姜の風味が交わり口の中が最高のハーモニーを奏でる。美味い。これこそ至高だ。
もうそこからは止まらない。熱い唐揚げをハフハフと食べて完食!最後にライムを絞った炭酸水を飲んで口の中の油を洗い流す。口の中はサッパリだ。
これでビールでも飲めれば最高だろうな。まぁ無理か5歳だしな。
明日はまた温泉の地に行って家具を作り設置かな。机に椅子とベッドかな。年末と年始はそこで過ごすつもりだ。
よく考えたら魔物がいるから塀で囲むかな。明日現場に行ってから考えよう。まぁ年末までにはあと数日あるしな。
と言うことで今日はここまで、魔力枯渇して就寝。
おやすみなさい。
ウルーク帝国、帝都ウラルクにある帝城内。
「ダイノス王国は失敗したか・・。7万の軍を率いて4万3千のトリタニア王国に負けるとはな。どうしてだ?宰相」
「こちらの物見の斥候の話ではトリスタニア王国のアーナンテ男爵軍が魔法師団を抱えるダイノス王国の侯爵軍を打ち崩した後に、ダイノス王国本隊を側面から攻撃これを打ち破り、ダイノス軍本陣を強襲して総大将である公爵と帯同していた王太子をも討伐。これにて軍は瓦解して敗戦となったようです」
「アーナンテ軍の戦力は大きかったのか?」
「いやそれが俄かには信じられませんが、たったの20騎余りでの戦果だそうです」
「それは誠か?信じられんな」と呆れたような顔を宰相へ向けるが、
「それが複数の者の話なので確かなようです」と苦虫を噛んだような顔をする。
「アーナンテの所領はトリスタニア王国の何処にあるのだ?」
「我が帝国の魔の森を挟んだ反対側になります」
「ほう、それでは魔物を抑える力は元々あるのだな。だがそれが理由とはならんだろう。我が領地にも魔の森に隣接する地はあるが故な。多少の他の領地より戦力が強いとは思うがそれが2万5千もの兵力差を覆すだけの力があるとは思えん」
「そうですな」
「情報が足りなすぎる。アーナンテ領へと複数の密偵を放ち情報を集めろ」
「はっ、畏まりました」と言うと部屋を出ていく。
「思い通りには行かんか・・」と皇帝イヴァン・ウルークは1人呟く。
お読みいただきありがとうございます。
明日からは1日1話に戻ります。
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