#27
8月も終わりに近づき休みが終わるマールスとロストは王都へアルスは伯爵領へと戻って行った。騎士団はラノイズ村周辺で隠れて訓練をして、魔力の扱いや魔法を習熟していった。そんなある日。
「男爵様!王都より早馬です!」
「なんだと今行く!」玄関まで行くとそこには疲弊した伝令兵が王都からの書簡を携えて待っていた。直ぐに書簡を受け取ると中身を確認していく。
「なんだと!性懲りも無くまたか!」書簡の内容は隣国のダイノス王国が国境の砦前に集結しつつあると知らせてきた。直ぐに返事を書き伝令兵に持たせると伝令兵は疲弊しながらも王都へと戻って行く。
今回は急を要するために上級騎士8名と下級騎士12名の合計20名の騎馬を男爵が率いて向かうこととなった。居残りは下級騎士2名と兵士達となる。
2日後には準備を整えて子爵領へと合流するために出て行った。
子爵領100の兵力と合流した男爵は伯爵領で伯爵領軍500と合流。そのまま国境を守る砦へと向かった。
砦に到着したのはモラニデ村を出てから6日後となった。そこにはトリスタニア王国の諸侯がすでに集まり砦前の平原に陣を敷いてダイノス王国軍と対峙していた。
ノキアノス伯爵とタラノイア子爵・アーナンテ男爵の軍勢はトリスタニア王国軍左翼に配置。トリスタニア軍総勢43000、対するダイノス軍は動員限界と思われる70000の軍勢が展開されている。
「カル、観てみろ敵軍の向かいは魔法師を多く揃えているというリノイガ侯爵軍だな」
「そうでございますね。それにしてもこの配置は」男爵軍騎士20騎は最前列に配置されている。後ろに子爵軍、その際奥に伯爵軍となっている。
「伯爵めこのどさくさで我ら男爵領の騎士をすり潰す魂胆だろうよ」
「カカカ、精々暴れ回りましょうぞ。あれも皆取得して習熟もできておりますからな」
「なんだ確か魔法騎士の初陣か、俺はなんだ」
「マリス様が言うには魔法騎士か魔法剣士だと言っていましたから男爵様は魔法剣士では?」
「魔法剣士か悪くないな。ククク、やるか?」
「やってやりましょうぞ!カカカっ」
「伯爵様あれを観てください」と前方のアーナンテ軍を見る。
「なんだあれは馬から降りているではないか」
「あの田舎者の事です、貴重な馬を惜しんだのでしょう」
「馬鹿な奴らだ。騎士が馬に乗って突進しないでどうする。馬鹿めこれでアーナンテも終わりだ。向かいの魔法師どもに焼かれて終わりだろう。ガハハハ」
しばらくすると両軍からドラの音が聞こえて開戦となる。
「タラノイア子爵殿、儂らは全騎で敵に突っ込む。漏れたものを頼んだ」
「相分かった。安心して行かれよアーナンテ殿」
アーナンテ軍は密集して駆けて行く。身体強化を使い更に足に魔力を重点的に循環させる。その突進力は馬に乗っていたよりも早い。
一気に敵軍との中間まで進むと、
「魔法師隊!詠唱始め!向かって来る敵軍へ一斉射する。用意は良いか撃て」と言う掛け声とともに一斉に魔法がアーナンテ軍21騎へと飛んで行く。
「前方に魔力障壁展開!」とう男爵の掛け声と共に密集したまま前方に魔力障壁を展開。そこへ幾つもの魔法攻撃が着弾。火魔法による火球や岩の塊が魔力障壁に当たり大気を震わせる。辺りは爆風と土煙に包まれるが・・。
その土煙から無傷のアーナンテ軍が飛び出してくる。
「無傷だと!!前衛!盾構え!」の声と共にダイノス軍リノイガ侯爵軍前衛は密集して盾を構える。
そこに横に散らばったアーナンテ騎士達が斬りかかる。勿論、剣に魔力を纏って斬撃に特化した風魔法を纏っている。
その一振り二振りで盾と共に前衛は斬り殺されて乱戦に突入。相手の剣や槍が届く前に魔力で剣が伸びて斬り殺されて行く。一振りで2〜3人が斬られあっと言う間に前衛は瓦解、中衛も浮き足立ち何も出来ずに斬られて行く。開戦してから10分もせずにリノイガ侯爵軍の前衛中衛合わせて2000が殲滅された。
男爵は駆けて剣を縦横無尽に振り前進していく。しばらくすると後衛の魔法師と侯爵の陣が見えてくる。
グンっと加速して跳躍!後衛を守る兵士を飛び越えると魔法師目掛けて駆けて行く。
「これでもくらえ!」と火球が飛んで来るが一閃!火球を剣で真っ二つにすると火球は掻き消える。
「そ、そんな馬鹿な!ま、魔法を斬っただと!」と言うや真っ二つになる。更に横一閃二閃と振って行くと、魔法師達は殲滅された。
そこにアルヴィンとカル爺が追いつき、侯爵の陣へと突入。
アルヴィンとカル爺が護衛の騎士を斬り伏せると男爵が、
「御免!」と侯爵の首を刎ねる。
「リノイガ侯爵討ち取ったりぃ!」と大きな声で叫ぶ。すると侯爵軍は瓦解。散り散りに後方へと逃げていく。
一度騎士達を集めて敵軍本隊側面へと切り込んで行く。徐々に斬って斬って敵軍を削って行く。ここまで21人のアーナンテ軍で5000以上の敵軍を斬っている。通常なら剣が血脂で切れなくなっているところだが魔力で包まれた剣には付着なく切れ味を保持していた。そこに風魔法で斬撃特性を付与している。斬撃特性は特に飛ばしているわけでは無いので只単に剣にまとわりつき切れ味を増していて魔力の消費は無い。更に魔力障壁を常時展開して死角からの攻撃を防ぐ。これも保持しているだけなので魔力消費はない。
30分も経つと敵軍の本陣が見えてきた。騎士達は陣形を変え4人で背を預け合い回転しながら斬って進んで行く。一方的に斬られ倒されている敵は混乱して陣を乱していく。そこを突き進み。
男爵とカル爺、アルヴィンの3人は敵本陣横へと辿り着く。敵軍騎士が30人立ちはだかるが紙屑同然のように斬り伏せる。
天幕を切り裂き中へと侵入!中にいる者達を確認すると、
「御覚悟!」とまずはアルヴィンが護衛の騎士2人を斬り伏せてカル爺が箔をつけるために帯同していた王太子の首を刎ね、男爵が総大将の公爵の首を切り飛ばす!
「総大将の首取ったぁ!!」と叫ぶと外に出て公爵の首を掲げる。それを見た敵軍は戦意を喪失。ダイノス軍が押していた右翼もしばらくすると逃げ出す者が続出して保てなくなり瓦解。
ダイノス軍は敗走。それを追撃してトリスタニア王国の勝利が確定した。
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