#26
アラーム音で起床する。朝4時半。
広場で15分程素振りをして顔を洗いモラニデ村へ戻る準備をする。ある程度荷物を纏めたら朝食を食べる。皆はもう食べ始めている。
朝食を食べ終わると行きと同じ編成で出発だ。カル爺とアルヴィンが何やら一言二言交わすと出発。
アルヴィンと兵士が見送ってくれる。
「達者でなアルヴィン」
「マリス様もお元気で」とアルヴィン。その後は問題なく進みラノイズ村で一泊して翌日にはモラニデ村へと着いた。ここまででもマッピング範囲が増えたお陰でマッピングも進んだ。
モラニデ村に入ろうとした時に、
《レベルが9になりました。マッピング半径が256mになりました。付帯スキル・機能、収納スキル容量100ℓ、古代錬金術スキルが解放されました。》
オートマッピングが9レベルになったかと思った瞬間。かなりの量の情報が頭に流れてくる。
「うっ」と馬車の上で蹲り意識が遠のいていく・・・「マリス様!」と遠くで聞こえる。
気がつくと領主館の一室で目を覚ます。ここは何処だと初めは焦ったが意識が無くなる前の事を思い出して落ち着く。
少し意識を向けると膨大な錬金術の情報があるのが分かる。それにこれは一般的な錬金術とは違うようだ。まぁ検証は後だ。
体に問題ないことを確認すると部屋を出る。すると気が付いた侍女が、
「マリス様!」と声を掛けたと思うと何処かに駆けていった。そのまま廊下を進むと、
「おお、マリス様お気づきで!大丈夫ですか?何処かに異常は?」とカル爺が忙しなく聞いてくる。
「ああ、すまんカル爺。どうやら疲れが溜まっていたようだ」
「そうですか。儂らもマリス様がまだ5歳だということを失念していました。申し訳ございません」と深々と頭を下げる。
「大丈夫だ。問題ない。僕も自分の体力を見誤っていた。良い経験になった」
「もしお身体に問題なければアリオナ様の所まで来て頂けませんか?」
「分かった。行こう」とカル爺の後についていく。
執務室の前に来るとノックをして入って行く。そこには父、アリオナ・アーナンテ男爵が執務机に向かい何か書類を書いている。
「気が付いたか。そこに座れ」と言われてソファーに座る。少しすると男爵も向かいに座る。カル爺は俺の後ろに立っている。
「カルから色々と聞いた。儂もカルに習って試してみた。この技術は凄いな。良くやった」と少し間を開ける。
「この事は我と騎士団。後はお前とアルス、ロストだけの秘密とする。マールスは勿論ノラスにもまだ教えん。何処で伯爵家に漏れるか分からんからな。それとマリス、お前の今後の処遇だが勿論後継には出来ん。それは許してくれ。だがアリスとの約束もあるからお前には独立してもらう。その時には後ろのカルとアルスを付けるつもりだ。もう了承は得ている。8歳の時に開拓村を任せようと思っておったが事は急を要するかもしれん故、来年の夏7月にコルニデ村の先に開拓村を作る責任者として赴いてもらう。初めは苦労するかもしれんがその辺はこちらでも十分に協力するつもりだ」
「追放とか厄介払いというわけでは・・」
「そうではない。最悪お前に能力があると判れば暗殺される可能性がある。伯爵家との間はそういう事だ。王に覚えがめでたい我らをなんとかして削らんとしてくる。マリアもその一環だ。その意味ではまだマールスもノラスも信用できるとは思えんのだ。それでお前を厄介払いと見せかけて遠く魔物の脅威はあるがそれはなんとでもなるから安全な場所にいてもらおうというわけだ」
「分かりました」
「カルとアルスの他にも何人か信頼の置ける者をつける。安心しろ」
「はい」
「では疲れているだろう。今日はもう休め」
「はい」と言うと部屋を出て久しぶりの離れへと向かう。
離れに入り着替えて簡単な夕食を久しぶりに収納から出して食べる。美味いね、安心する。
今日はこのままベットに直行。
そうか父には疎まれてはいないのか。良かった。そして来年には新たな開拓村かレベルも上げたいし丁度いいかもな。カル爺も一緒なのも安心だ。
でもまだ一年近くある。新たなスキルも得たみたいだし色々試してみよう。
疲れたな。魔力を枯渇して寝ます。おやすみなさい。
「ふぅ納得してくれたようだ」
「私も安心しました」
「カル、来年だが頼んだぞ」
「それは勿論です」
「それにしても我らが魔法を使えるとはな・・」と遠くを見つめて感慨深く呟く。
「そうですな。明日からはまずは上級騎士から教えて行き、下級の者にもアルスとロストにマリス様が教えたやり方で試してみようと思います」
「くれぐれも内密にな」
「分かっております」
「それにしてもマリスはどうやってこの技術を得たのだろうな?」
「それにはマリス様は多くは語りませんでしたがどうやら文字化けスキルを授かり、マリア様に離れへと押し込まれ、毒を盛られそうになり食事も与えられずに自力でそれらを一つずつ解決していく過程で取得したのでしょう。初めの魔力感知と魔力操作の取得はたまたまと仰っていましたから」
「そうか、マリアは自分で自分の首を絞めたというわけか自業自得だな」
「私からはなんとも言えませんが結果的にはそうなのでしょうな」
「皮肉なものよのう」
「まさしく」
「この技術をなるべく早く習熟させよう。何があるか分からんからな」
「今の所、何かあるとは思えませんが急いで習熟させましょう」
その力を振るう機会は殊の外早く訪れる。
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