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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

人斬りと活人剣

作者: gairu

「キャー!」


闇夜に妖刀五月雨が迸る。


「ヌんっ」


間一髪、女子に当たる前に刀で防いだトイチ。


「止めてくれないなら、手合わせ願おうか」


トイチは町道場で一番の腕前を持つが、人を真剣で斬ったことはなかった。

鍔迫り合いの最中で均衡が保たれる。


「お尋ね者の人斬りだろ。なぜ人を斬る?」


「趣味だ」


「他にやることはないのかよ」


無表情のまま刀を見る人斬り。


「お前震えているぞ。数十秒後に潰れた蛙の様にびくびく震えながら、息絶えていくんだ」


「やり直せよ」


「捕まったら打ち首の刑にあうだけだ」


「お前は覆面をしているから、顔なんてしらんさ。うちで子供に剣を教えてくれないか?」


疲労の色が見え始めるトイチ。

人斬りは涼しい顔でトイチをまじまじと見て言った。


「それが最後の遺言でいいな」


人斬りは天涯孤独の身、狂気が育み、地獄のような修羅場が鍛えあげた。

人斬りからは沢山の友、恋人、生徒に慕われているトイチが眩しかった。

はやく、こいつを消したいと手が疼いている。


トイチは人斬りを救いたかったが、力の強さの根源を知りたかった。

天賦の才、トイチには到底至ることができない境地。

危険だと分かっても、触れることを避けるのはできなかった。

全てを手にしているかのようで、心には隙間風が吹いていたのだ。


死地が目前に迫っても不思議と落ち着いている。


「おっかぁ。先行く死を許してほしい。あんた来世では幸せになれよ」


お互いの獲物が弾き飛び、間合いをつめ、刀と刀の斬撃が空中で交錯する。

胴を深々と斬られ、トイチは崩れ落ちた。

人斬りの腕から鮮血が飛ぶ。

子供の頃、以来に付けられたかすり傷がドクドクと疼いた。

自らに一太刀いれた強敵が息絶えるのを人斬りは最後まで見ていた。

亡骸に四つ葉を添えて、人斬りは風と共に漆黒へ消えていった。

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