Recollection-91 「集いし者達」
コーポリス国北部国境より更に遥か北、カプット国側山岳地帯の森林部。人里離れた、とても人など住める環境にないその場所。
無駄な明かりが灯らないこの世界では、夥しい数の星々が空を美しく埋め尽くす。
2月上旬静寂の中、時々風が草木を揺らし寂しげな曲を奏でる。
月が夜の散歩をする頃。
パチパチッ、パチッ、、、
焚き火を囲む数名。
皆で狩ってきたのであろう兎や蛇を食す。
ある者は時々薪を焚べ、炎が絶えない様にしている。
ザッザッザッ、、、
焚き火を囲み座っていた3人の男女が足音に気付き、その方角を意識している。
「見つけるのに、手間取った。」
頭頂部で赤い髪を束ねた灰色の瞳の彼、No.2を司るツヴァイフが暗闇の中から現れ焚き火の灯りの元へやってくる。
「久しぶりだねツヴァイフ、今日は1人、、!、、ではないよね。」
赤い髪を首元で結った、灰色の瞳の美青年No.8.9.10を司るヤクトがツヴァイフと、その後ろに気配なく立つ男に話しかける。
「クフフ、ワンダは相変わらず掴みどころがないね、、ボスと良く似てる。」
嫌な笑い方をしながらヤクトは言う。
「、、、。」
No.1を司るワンダは少しだけ気怠そうにしつつ、何も言わない。
「トロイス、ヨンザは?」
バキ、、メシメシ、、パキ、、
ツヴァイフは無心で兎を骨ごと砕きながら食べている男、No.3を司るトロイスに問う。
「あa、ヨンザならまだシニスタラムかもna。俺も詳しくは知らn。」
トロイスはそう言うと、酷く並びが悪い歯で再度兎を噛み砕き始める。
「確かヨンザも今日来る筈だよ。シニスタラムからここまでクソ遠いから、も少し時間掛かるかな。」
赤く長い直毛で毛先はギザギザとしている。瞳は灰色で鼻筋は通り唇は厚めで美しい顔立ちをしている少女、No.5センクが伝える。
「Hey 子猫ちゃn! 相変わらずヨンザの話となるとよく喋るna?huh?」
トロイスが酷く並びの悪い歯を見せながら爬虫類の様な笑顔で普段通りセンクを揶揄う。
「、、、FUCK OFF!、、テメェはクソでもして死んでろ。」
センクは中指を立ててトロイスを睨みつける。
「ヤクト、君アギ王を、、。」
ツヴァイフが風の噂を耳にし、ヤクトに問う。
「私も自らを犠牲にして国を動かした。あれは彼に対する代償、贖罪だね。、、、それとある種私の性、、ま、人それぞれだよ、クフフフ、、。それにしてもボスはいつ
ゾクッ、、、
ヤクトは全身に鳥肌が立つと同時に毛穴という毛穴が開き汗が出るのがわかった。
振り返ると、黒いフードを被り、黒いマントに全身を包まれた男が、座っていたヤクトの直ぐ後ろにいつの間にか立って彼を錫色の瞳で見下ろしていた。
「、、クフフ、、ボス、人が悪いよ、、。」
(この人といい、ワンダといい、流石『亡霊』と言われるだけあるね、、。)
冷たい汗をかきながら苦笑いするしかないヤクト。
フードを左手で後ろに流すNo.0を司るボスと呼ばれる男。
露わになった癖のあるやや長めの真朱の髪に、錫色の瞳で耳飾りを着けた長身の男は視線をヤクトから外すと、ワンダの方を見る。
「ワンダ、お前と弟さんまでまで巻き込んで悪いねぇ。あと、『首』の確保も助かったよ。」
「いいんだニヒゼル。ツヴァイフも自分の意思でここにいる。また何かあれば俺達に言えよ。」
ツヴァイフはニヒゼルの目を見て頷く。
ワンダはそう言うと、ニヒゼルと呼ぶ彼の肩をポンと叩いた。
ニヒゼルは笑みを浮かべつつ頷き、周りを見て口を開く。
「、、、ヨンザはまだ帰ってないみたいだねぇ、、。シニスタラムに介入して『術』をかけると言っていたからねぇ。、、後はNo.6.7、、か。」
ニヒゼルは普段から眠そうな瞳を閉じる。
「アイツの『術』は多人数だと時間がかかるみたいですからne。」
ドンッ!
その時、空から人が降ってきた。
背は少し低い、前髪が目にかかり、その灰色の瞳を隠している若い男。彼が立ち上がりながら言う。
「今帰りましたよ。少々『術』に手間取ったよ。」
「おかえりヨンザ!兎と蛇あるよ?食べる?」
センクは先程とは違い明るい表情でNo.4を司るヨンザに歩み寄る。
「ありがとう助かる頂くよ。、、、、やっぱりNo.6.7は帰ってないみたいだし、、。」
ヨンザは貰った蛇を頬張りながら周りを見渡す。
「アイツにはまだ仕事があるからね、、それに極度の捻くれ者だから。今はここにいる7人だね。」
ヤクトは薄ら笑いを浮かべそう言いつつ座ったまま少しずつ兎肉を手でちぎりながら食べる。
ニヒゼルはゆっくりと瞳を開けて、普段はにこやかで飄々としているが、真剣な眼差しを向け他の6名に命令する。
「『約束の刻』は今から約1年と8ヶ月後の10月19日だ。それまでは各々これまで通り頼む。得た情報は必ず共有しろ。、、、1つ言っておく。その時まで『ディチェーテヴィータ』には何があっても一切手を出すな。いいな?」
「了解、ボス。」
皆がそう言い頷く。
「我々『ヒジュラの民』の末裔が、その『真実』を知る時まで残り僅か、、。皆頼んだからねぇ。」
そう言うと彼は空を見上げ月を見た。いや、正確には睨みつけていた。その錫色の瞳には明からな『憤怒』が滲み出ている。
普段通り、皆を平等に見守る月。
しかしニヒゼルには『あの日』からそれが違って見えている。
それに気付いているのはワンダただ1人。
〔我々が生まれ存在する理由、、、人は思い通りにはならない。、、、、後は持つかどうかだねぇ、、、。あと少し、あと少しだ、、、。〕
ニヒゼル・ブローク・ヒジュラ。
そして彼等『ヒジュラの民』の存在。
彼等もまた、その運命、天命の螺旋に飲み込まれていた。




