表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
88/226

Recollection-88 「世界」




喧騒とする学び舎の授業後。


皆と談笑しつつ、マリーアンナは窓際のイェットの方を気にしていた。



(イェット君、ここ数日変だな、、。お話しても上の空っていうか、、。何かあったのかな?)



「ねぇマリー聞いてるー⁉︎でさでさぁ、、」


「え⁉︎あ、あぁうん聞いてるよ?イノーキの水平手刀、首にメリ込んだよね?凄かったよね、、、。」


「そうそう!本当マジガチ超ボンバイエだったよねぇー?」


「ぅ、うん、超ぼんばい、、え、、。」


(ぼんばいえ⁉︎、、何?どういう意味だろ?)


ボンバイエとは、ある国の言語で「Boma ye」、彼等の国の言語だと「やっちまえ」という意味だ。そう、この際どうでもいい。



マリーアンナは空五倍子(うつぶし)色の瞳をイェットに向けて想いを馳せる。



(イェット君の家、久しぶりに遊びに行きたいな。先に言わないと怒られるから、ちゃんと言わなきゃ。)




イェットはそんなマリーアンナの考えとは裏腹に肩肘をつき顎を掌に乗せて学び舎の中から外を眺めている。



「、、、。」



彼は少し後悔していた。



(、、、あの日、城に行った時つい断ってしまったけど、、強がらずに会えば良かったな。)




あれから既に1ヶ月余りの時間が経っていた。


普段と変わらない日常、、、の、筈だったが、今日のイェットの返事次第で生活は一変する。







…2日前



「イェット、ちょっといいかい?」


「?、、はい。」


その日の授業後、先生隊長に呼ばれた僕は、ある話をされた。


それは1月1日にも聞いた『エトナの呪縛』の範囲の測定と訓練を兼ねた旅の具体的な決定事項の話だった。


各護衛団雛隊から選ばれた10名が参加するとの事で、(トキ)ノ雛隊からは僕とオスクロさんが声を掛けられた。


オスクロさんはどうやらこの旅に参加する事を決めた様だ。



「あの、先生隊長、、出発はいつなんですか?」


「出発は3月1日を予定しています。、、、期間は1年以上、、、長くなる筈です。直ぐには帰れないでしょう。行く行かないは君が決めてくれて構いません。2日後に返事を頂ければ幸いです。では、検討しておいて下さいね?」


先生隊長はにこりと笑顔を見せながらそう言うと城に戻ろうとした時だった。



「あ、これはあくまで私の独り言、、 神成越流(かむなりえつりゅう)にはまだまだ技術、技があります。誰か習得してくれないでしょうか、、ねぇ?」


先生隊長は空を見上げながら唖然とする程下手な独り言を言う。と、言うか、独り言になってない、、。



「2日後には、、必ず返事をします。」


僕は少し笑いながらも即答出来なかった。きっとそれは余りに僕の中で予想だにしなかった事、突拍子のない提案で戸惑っていたから。


先生隊長は再度にこりとすると振り返らずに城へと向かう。



(もし旅に出たら、、、皆とは当分会えなくなる、、。)


それが単純に僕が即答出来なかった理由。


今までそんなに長い間、家族や友達と離れて生活をした事がなく想像がつかなかった。


そして、皆の中には、勿論彼女(シーヤ)も含まれる。



でも、僕は考えた。


何故僕は選んでもらえたのか。


先生隊長がいつか僕に言った言葉が胸に鳴り響く。




『君は君が思う以上にこの世界の重要人物になりつつある』




僕は何者になれるのだろう?


この世界はどれだけの世界なんだろう?

 

そして、先生隊長の言葉の本意とはなんだろう?



『真実』はなんだろう?




僕は、知りたい。



自分の事。


世界の事。


君の事。




強く、護れる様になれば真実に近付ける気がした。



この時、旅に参加する決意が芽生えたんだ。




そして返事をする期日の今日。


学び舎から外を見て、先日あった事を思い出していたイェットは立ち上がり先生隊長の元へ向かう。



「先生隊長!」


「!イェット、決まりましたか?」



「はい、、。行きます。行かせて下さい!」


イェットは決意と覚悟を不言(いわぬ)色の瞳に宿し伝えた。



先生隊長は満面の笑みで喜ぶだろうと


そう思った。




しかし実際は、何故か少しだけ悲しそうな表情を見せた。



「、、ありがとうイェット。君なら行くと言うと思ってました。後日、君の自宅へ挨拶に伺いますよ。」


「先生隊長、それなら大丈夫です。僕が父さんと母さんには話しておきます。先生隊長にご足労かけるのも申し訳ありませんので、、。では、宜しくお願いします!」



イェットはこの任務に就く事を誇りに思った。



イェットがそう思ってくれている事を表情から感じ取っていたアトレイタスはイェットの肩に手を置いて言う。


「わかりました。ではお言葉に甘えて君にその件は任せますね。、、ありがとう。」



普段通りにこりと笑顔を見せて振り返り、アトレイタスは城に向かう。


その表情は、良心の呵責(かしゃく)に耐えられない様な、歯を食い縛って耐えている様な、、。


彼は本当は謝りたい気持ちがあった。しかし今更言えない代わりに「ありがとう」と言うしかなかった。



(私はエトナの民として、鳳凰守護(ほうおうしゅご)八咫烏(やたがらす)として、天無絶(あまのむぜつ)を手にしたその日から決まった運命、不文律を全うしましょう、、、たとえどんなに残酷であろうとも、、。)
















評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ