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Recollection-84 「継ぐ者」




1月15日。


各雛隊訓練が開始され早5日が過ぎていた。


「うぉい!テメェら去年から言ってンだろ⁉︎早く食っちまってくれよ⁉︎私も片付けして学び舎行かなきゃなンねーンだからな⁉︎」


朝から元気の良い女の子の声がする。


羊の毛を編んだ衣類に身を包み、何だかモコモコして可愛らしい、一際背の低い、口の悪いノーアが吠える。



「、、、すまん。」


そう言うと鴇ノ雛隊隊長のフォエナは急いで口に食べ物を詰め込む。


それを見てオスクロは肩を揺らし笑いを我慢している様だ。



「あ、いやあの、フォエナ隊長さンに言った訳じゃないですから!ゆっくり急いで食べて下さい、ね?」


「、、、ふぉっちら(どっちだ)。」


ぶふぁォッ!


フォエナが急いで頬張りほっぺを栗鼠の様に膨らまして放った言葉に我慢出来ず、オスクロは羊の乳を吹き出し、腕で顔を覆い笑っている様だ。


「あ゛っ⁉︎オスクロさン困るよもぅっ!こンなにしてぇ、、。次やったらグーで殴りますからね⁉︎」


そう言われた彼は苦笑いの表情で右手を頭に当てて声は出さずとも平謝りしている。


ノーアも約半年従事してきたからか、彼等と幾分距離が縮まった様だ。


オスクロはせっせと働くノーアを見つめていた。その黒い瞳は、どこか憂いを秘める。そして彼は一瞬、哀惜(あいせき)に苦しむ表情を浮かべた。


パンッ!


それを見逃さなかったフォエナは残った右目で彼を優しく見つめながら背中を叩く。


大丈夫、お前は悪くない。


悪いのは俺なんだ、と


そんな気持ちでフォエナは親友の背中を叩いた。


オスクロは、はっと我に帰り親友の方を向き口角を上げる。


ごめんね、でもありがとう。


オスクロはそう思いながら無理にでも笑おうとした。


時折フォエナとオスクロがノーアに向ける視線は、どこか優しさと寂しさ、悲しさを混ぜた様に思える。


2人はノーアを見るたびに思い出す人がいた。






「よぅし!朝飯も食ったし朝練の準備しようぜ?」


雛達も食事を終えると雛隊隊長の命の前に準備に入る。


プロディテオやドルチスは元より、残り3人も同様だ。


目的は唯1つ、


「強くなる」事。


各々が其々の想いを胸に1分1秒を大切に使う。


 

「、、、よし、皆準備はいいな。今日は総隊長殿が訓練参観にお見えになられる。皆失礼のない様にな。」


「はっ!」

 

そう。今日は珍しく先生隊長が各雛隊を参観する予定だ。しかしどうやら別の目的もある様だ。


「では、総隊長殿が参られるまで『錬芯(れんしん)』を行え。」


フォエナはそう言うと仮宿舎に行く。


オスクロは雛達と共に訓練に参加する。


錬芯(れんしん)』とは入団当時から行っている普段よりも重い模造刀でゆっくりと型を行う鍛錬法の名称で基礎にあたる。


黙々と訓練に打ち込む6名。


フォエナが仮宿舎から戻ってくると、「ある物」を両手で持ちイグナの前に立った。



「、、、おい、お前は今日からコレを使って錬芯(れんしん)を行え。隊長命令だ。いいな?」


「‼︎⁉︎フォ、フォエナ隊長、これ、、デカ過ぎませんか⁉︎」


イグナが手渡されたのは、通常の3倍はあろうかと言う模擬刀だった。


「、、、ボイドさんが作ってくれたお前専用だ。今日からはこれで錬芯(れんしん)をやれ。」


ズシリ、、、


(、、お、重ぇ、、。こんなん、、、振れんのかよ、、⁉︎)


流石の破天荒なイグナもその模擬刀の大きさと重さに吃驚仰天(きっきょうぎょうてん)の顔を隠せない。


それを見たイェットとシンは顔を見合わせる。


(「あ、あれ、、フォエナさん流の冗談、、かな?」)


(「まさかネ?あんな時間とbdをかけた冗談、流石にないヨ?それにオスクロさんも笑ってなイ。」)



プロディテオとドルチスも余りの大きさに唖然失笑(あぜんしっしょう)した。


(「はは、あれはちょっとリアルにデカ過ぎだよなドリー?」)


(「流石のイギーナにも無理かもですね⁉︎」)



イグナも何故突然こんな大きな模擬刀を使わされるのか分からなかった。


分からなかったが、何か理由があると直感した。理解しようとした。


(く、、、っ⁉︎フォエナ隊長にも考えがある筈だ、、っ!、、「()()()()()()()」と期待してくれたってワケだ!、、よぅし、、モノに、、、してやるぜぇ!)


この日を境に、イグナはその実力を遺憾無く発揮していく。


そして彼は後に、ある二つ名で呼ばれる様になる。





そんな成長過程の雛達の前に2人の猛者が現れた。


鳳凰守護(ほうおうしゅご)八咫烏(やたがらす)にして護衛団総隊長アトレイタス・サイガ・エトナと


シニスタラムの古豪、隻腕のエリーナ・ゴメスだった。






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