Recollection-82 「異物」
バタン。
(出発は3月1日、、。長らく皆に会えなくなる、、か。)
イェットは先生隊長から告げられた「旅」について考えていた。
指揮官部屋前にいた護衛団員に一礼し、城内より外へ出ようとした時、ある男が出入口左側で腕を組み、目を閉じ、壁に背をもたれさせ立っているのに気付く。
(!、、この人はあの時の、、。)
乱れた黒髪と翡翠色の髪が左右で別れた、不思議な風貌の男。
その右目が開き黒い瞳がイェットを捉えると、組んでいた両腕をだらりと下ろして彼に向かい歩を進めてくる。
カッ、カッ、カッ、、、
目の前まで来た不思議な男、身長はイェットより10cm程高いだろうか、開かれた黒い右目と赤支子の左目の三白眼の眼差しが彼を見据えながら口を開いた。
「君、、もしかして、イェット君?」
「⁉︎、、は、はい。」
「名を全てと所属は?」
「はい!鴇ノ雛隊のイェット・リヴォーヴ・エトナです。」
「あー、、ペカトムさんの部隊だね。、、、リヴォーヴ、、、覚えておくよ。」
そう言うと三白眼の男はにこりとする。
「あの、、大変失礼ですが
、お名前を伺っても宜しいでしょうか?」
「あー、私はハイオーン・メディウム・エトナ。所属は、、特になし。宜しくね。」
彼はそう言うと背を向けて出入口に歩き出し、その扉を開ける。
「今日は1月1日なのにご苦労様。また何かあれば報告しに来てね。」
「はい。ありがとうございます。では、失礼いたします。」
イェットは一礼し、寒さを紛らわす為に外に出ると走って城壁の出入口まで走る。しかし、理由はもう1つあった。
(、、、あの人、、何故僕の名前を知っていたんだろう。それに、、「怖い」、、。口調は穏やかだったけど、何だろう、、身体が早く彼から去れって訴えてくる様な怖さだ、、。)
走り去るイェットの背中を見つめるハイオーンの三白眼は、先程のそれとは違った。
(、、アイツか、、、リヴォーヴ、、。気に入らない名前だ。俺の邪魔になる様なら、、。)
そこに1人の護衛団員がやって来てハイオーンに報告する。
「ハイオーン様、恐れながら、副隊長がお呼びです。至急指揮官部屋までおいで下さいます様、宜しくお願いいたします!」
ハイオーンは振り向きながら笑顔でその男に近付き右手を男の右肩に置いた。
「、、、お前、俺に報告する際は片膝を付けよ?」
グンッ!
ガグシャ!
「‼︎⁉︎あイ゛ッ、、っ!」
その護衛団員はハイオーンの右手の膂力により強制的に跪かされ、右足があらぬ方へ曲がった。
そしてハイオーンはしゃがみ込み、脂汗を顔に滲ませる男に少し傾けた顔を近付け優しく語りかける。
「私は見たよ。濡れた床に足を滑らせ転んでいたね。君、大丈夫、、、だよね?」
男は痛みと三白眼の男への恐怖から目を力強く閉じ何度も頷くしかなかった。
「気をつけてね、ここ滑るから。医務室に行くといい。あと、、」
左手をポンと男の右肩に置くと、笑顔で更に続けた。
「余計な事を口走ったら殺すからな、お前。」
「、、はい、、。」
男は激痛に耐え震えながらそう言うしかなかった。
ハイオーンはポンポンと震える男の肩を叩くと立ち上がり指揮官部屋へ向かう。
(ミカミめ、この俺に指図などしやがって、、。俺より弱いクセに頭がキレるだけで副隊長とは、、。甘いものだな。)




