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Recollection-80 「奴」




「あれは俺が28か9の頃でアトレイタスもまだ黒髪の頃だったから17、8年前になるか、西側の隣国マヌスデクストラ国まで貿易の話をしにオッズ、、オズワルド王の護衛に就いてたんだよ。その帰りに小競り合いに巻き込まれたんだ。」


うんうんと頷き黙って聞き入るイェット。


「その時はまだ『エトナの呪縛』も関係なく、アトレイタスや四神になる前の彼等も合流する予定でな。どうやらマヌスデクストラの国内紛争に巻き込まれちまったんだ。」


「それから?」


「ああ、どうも現国王の考えに反旗を翻した奴らが傭兵を雇って国を落としに行く途中に出くわしてな。何かそんな事叫びながら、お前達も現国王と繋がるならこの場で殺すとか言い出してな、、。」


「王様と父さんは現国王派?」


「だな。マヌスデクストラ国といざこざが無いのも現国王とオズワルド王の話し合いがしっかりしてるからだよ。、、、それで、反乱軍の一部と俺達が戦う事になってな、、。その時1人、おかしな()がいたんだよ。」


「おかしな()?どんな?」


「齢は俺と同じくらいで、どうやら傭兵らしくてな。俺も含め数十人で乱戦してる中を歩いてたんだよ。まるで散歩でもしてるみたいに、、。変だろ?」


「え⁉︎乱戦の中を、、だよね?」


「そう、、、で、()が真っ直ぐに俺に向かって歩いて来て、クセのある声で言ったんだ。『お前が1番強いな』って。次の瞬間、()が目の前にいたんだよ。一瞬でな。」


「‼︎、、、それって、、⁉︎」


「ああ、、『()()刻削(ときそぎ)』だ。俺も面食らって直ぐに下がったのが幸いしたんだ、、ほら、ここ。」


父はそう言いながら、顎の下の髭の中の傷痕を見せた。


それは喉仏の上から顎先にかけて残っている。


「と、父さん、、『()()刻削(ときそぎ)』って、どう言う意味?」


イェットは言い知れぬ悪寒に襲われた。


「言った通り、()が使った技を俺達が真似て練り上げた技術だ。『刻削(ときそぎ)』ってのも俺達が勝手につけて呼称しているだけだ。アレ、とかソレ、じゃわからんからな?」


「でも父さん⁉︎その時はどうやって戦ったの?そ、そんな()とどうやって⁉︎」


「俺は反射神経と勘がいい。いや、よかったと言うべきか、、。それが引き分けられた要因だ。もう少し長引けば、、、俺は死んでいたかも、な、、。」


「‼︎⁉︎、、、そんな、、。」


「イェット、、立ってみろ。」


「?、、う、うん。」


父はそう言うと立ち上がり、細めの薪を2本手に取り1本を息子に渡した。


「今から大切な事を教えてやる。口じゃ上手く伝わらんだろうから身を以って学べ。いいな?」


「、、、うん、わかった。」


「よし、お前の得意な距離でいいから刻削(ときそぎ)を使って正面から俺に攻撃してみろ。手加減なしだ。いいな?」


「、、、はい。」


息子は返事をすると、後ろへ下がり、一撃の準備をする。


(僕も刻削(ときそぎ)には自信がある、、。父さんは強い、、。本気でいく。)



イェットは中段に構えた。


父は右手に薪を持ち直立している。







シィーーーーーン、、、










ドヴァッ!


ドガァッ!

ズダァン!!


「⁉︎⁉︎?ぐっ、、はぁッ」



イェットは回転しながら横に弾き飛ばされていた。


左肩に激しい衝撃を感じた瞬間の出来事。


「と、父さん、、、何を、、。」



父は最初にいた場所から約1m程下がっていた。正確には、イェットから向かって左後にだ。


「今のが刻削(ときそぎ)の弱点だ。身に染みてわかったろう?、、、ほら、立てるか?」


父は息子に手と肩を貸して起こす。


「、、、俺がやり過ぎたんじゃなく、お前の刻削(ときそぎ)の凄さがそのまま『衝撃・威力』になって返ってくる。いいか、刻削(ときそぎ)は『諸刃(もろは)の剣』なんだ。使い過ぎは厳禁、肝に銘じておけよ?」


「うん、、、わかった、、。」


「それから、刻削(ときそぎ)は武器を使う前提の技術だ。決して素手の打撃に使うなよ?もし使うと攻撃力が上がる分、自分への反動が強く、攻撃に使った手足が脱臼や骨折する恐れがあるからな。」


「、、な、成程、、。」


息子は親友にいつか勧めようとしていたが止めた。


「いいかイェット、これからも小競り合いや(いくさ)は嫌が応にも起こる。()はまだ生きている筈だ。もし()に出くわしたなら、、、()()()。絶対に戦うなよ?」


幾たびの戦火を潜り抜けたであろう父が真面目な顔で「()()()」と言う。それだけ危険な相手なのだと息子も理解する。


「、、、わかった、、、。でも、()だってどうやって見分ければ、、わからないよ?」


「いや、直ぐに分かる。目立つんだ。」


「目立つ?」


「ああ、、奴は()()()だった。」


「‼︎⁉︎赤い、、、髪⁉︎」


イェットはふと、去年末に出会った少女を思い出し考え込んだ。


「?、、、⁉︎まさかお前、赤い髪の誰かを、、、見たことがあるのか⁉︎」


「、、、うん。サングイネンバ川近くの広場で1度、赤い髪の女の子に会ってる。その子、いつの間にか後ろに凄い音たてて倒れてて怪我してた、、、?父さん?」



ぞくり、、、


父は今までに見せた事のない、神妙さと恐怖を混ぜた様な表情だ。


「イェット、その事、アトリーには話したか?」


「いや、まだ話してない。」


「、、、イェット、いいか良く聞け。今すぐに城へ行ってアトリーか側近にその話をして来い。早い方がいい。、、、女の子と言ったな?、、、、、既に奴じゃなく、()()だ、、。」


「⁉︎わ、わかった、今すぐに行くよ。」


父の放つ異様な圧力に押され、城に向かい走り出したイェット。


息子の背中を見送りながら、オルブライトノットは言い知れぬ不安を感じていた。その身体には冬にも関わらず冷たい汗が流れた。



(オッズ、アトリー、、、お前達は一体何をしようとして、これから何と戦うんだ?、、、奴等、、()()()()()()が動いている、、、一体何が起きる⁉︎)

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