Recollection-79 「陰りゆく文明」
城下町は白く彩られたまま空は青く澄み渡り、凛とした空気が鼻先を心地良く撫でる。
1月1日。
年も明け、皆酒を酌み交わし新年を祝う、、、と、言う訳ではなかった。
まだ彼等の時代には「これ」といった信仰や慣習、文化がなく、各々がやるべき事を行う、、といった感じだ。
この頃の時代背景が見えないのは、「エトナの民」の影響が少なからずあるのかもしれない。
存在しない「エトナの秘宝」の噂の所為で戦争が度々起こり、その度に幾つかの文献が紛失・焼失・盗難に遭い残らなかったのも原因だ。
また、言葉を読み書き出来ない者も多くおり、口伝で正確に伝わらなかった事も要因の1つだろう。また、古い時代によく起きた、ある1つの事態も大きく関わる。
それ程に彼等の時代の存在は歴史から遠ざかり、漠然と霧のかかった様な情報しか残せなかった。所謂、「失われた文明」と言っても過言ではないだろう。
それでも、その時代を精一杯生きる者達がいた。
カアァーーーーン、、
カアァーーーーン、、
何処からともなく薪を割る音が響く。
冬は乾燥するため、薪も乾燥し硬くなるので春先等に用意するのが一般的だが、彼は鍛錬も兼ねて薪割りに勤しんでいた。
カアァーーーーーーン、、
(ふぅ、だいぶ慣れてきた。腕の力は斧を持ち上げる時だけ。振り下ろす時は斧の重さを活かして真っ直ぐ落とす感じだ。)
ガゴッ!
「あだっ⁉︎」
(調子に乗るとコレだ、、僕の悪い癖だな、、。)
イェットは家の裏側にいくつかある切り株の上に薪を置き、斧で器用に薪を割っていた。
しかし今回ばかりは力み過ぎたのか、彼の振り下ろした斧は角度が悪く薪に当たりはしたものの、斧が薪の途中で止まっていた。
カッ!
薪のついた斧を再度切り株へ叩きつけ両断する。
パタパタと切り株の両脇へと倒れ込む薪達。それ等を家の裏側に常設してある薪置き場へと運ぶ。
「お、ありがとうなイェット。疲れたろ、少し休め。俺が代わるよ。」
父のオルブライトノットが木筒に入った白湯を持ってくる。
「ありがとう父さん。、、動くのをやめた途端に寒さを感じる、、寒っ!」
イェットは震えながら近くの切り株を椅子替わりにし座り、白湯を飲み身体を暖めながら一息つき、父の薪割りを眺める。
オルブライトノットは片手で斧を持ち、ゆっくり振りかぶると
シュッ
カアァン!
尋常ではない疾さで振り抜くと薪が真っ二つになる。
イェットと大きく違ったのは、薪が倒れずに、そのまま切り株上に立っていた。まるで斬られた事を知らぬが如きだ。
「、、凄いね父さん。薪の割れ方が僕とは違う。それどうやってるの?」
イェットは父の特技の秘密を知りたかった。
「ん、あぁ、、、こう、疾さでしゅっと、、落とす?と言うか、、、まぁ、慣れだな!」
父は相変わらず教えるのが下手だ。
「父さんは幾つから剣術を学んだの?それに、『神成越流』の基礎を作ったのは父さんだって先生隊長から聞いた。」
「ん?『かむなりえつりゅう』?何だそれ?、、、俺は確か、、お前と同じ歳位だったぞ?」
父は聞き慣れない言葉の音に首を傾げた。
「ほら、、刻削を基礎として纏霞や爪剥、粋案山子とか作ったんでしょ?それらの技を極めていくのが神成越流剣術って名前になったんだよ。」
「へぇ、アトリーめ、そんな洒落た名前付けたのか⁉︎あ、待てよ、、多分それ、オッズが考えたな?アイツの考えそうな名だなぁ⁉︎」
(父さん質問の答えになってないよ、、。)
イェットは困り顔ながら笑顔でいた。
「、、、お、そうだな、どうやって技を作ったかだったな、、。余り良い思い出ではないんだが、あれはお前が産まれる少し前の頃だったかな、、、。」
父は辺りを見渡し誰もいない事を確認する。特に母がいない事に気を配っていた。
確認し終わると父も切り株に座り、昔話をしてくれた。




