Recollection-77 「プレゼント」
「、、、ぅ、、、、、、ぅう、、、、、、ぅ、、、、、はっ⁉︎、、っく、、、はぁっ、、」
ガバァッ!
眠っていたのであろう彼は酷く魘されたのち、上半身を勢いよく起こす。
全身には嫌な冷たい汗が纏わり付き、不快極まりない。
そして、その瞳からは何故か涙が溢れていた。
「はぁっ、、、はぁっ、、、、、、クソッ、、、。」
まただ、また同じ『夢』だ。
ここの所、同じ『夢』を何度も見る。
時間はまだ真夜中だろうか、ふと窓の方を見る。
カーテンの隙間から覗く窓の外は闇で覆われ、数える程の星が見えた。
明日も天気は良さそうだ。満月は街を薄く照らして見守る。
(、、、オレはどうしちゃったんだ、、、、クソッ!)
彼はベットから足を床に下ろして座り、涙を寝衣の裾で拭うと両手で顔を覆った。
少し怒りを覚えている肩は、荒い呼吸に合わせて上下に揺れていた。
この『夢』は、小さい頃から見ている気がするが、年齢を重ねるにつれて何故か、得も言われぬ感情に取り憑かれた様な気分になる。
(何なんだコレ、、、この『夢』を見るたびに涙を流し、虚しく切ない、どうしようも無い気持ちになる、、。心に『黒の穴』でも空いた様な、、。底無しの、、、穴が、、、。)
そんな事を考えた瞬間、肩が少し震えだし、笑い声が漏れる。
「はは、、は、。」
(何考えてんだオレは?、、『黒の穴』とか、厨二病じゃあるまいし、、、。クソッ!馬鹿馬鹿しい、、、。)
いつもこの感情に苛まれている間に、夢の内容は朦朧とし始め、殆ど忘れてしまう。
薄らと思い出せるのは、岩が点々としている広野に立っている事。
知らない男性がオレの前で何かを言い片膝をつく、、、。何を言っているかは分からない、、、。
(これだけが、ぼんやりと記憶にあるだけだ、、。)
彼は眉間にシワを寄せ瞳は閉じたままふふっと再度笑う。
自分の胸内、心にある『黒の穴』の意味が分からず、怒りを込めて笑うしかない。左腕を膝の上に乗せ、右手は顔を覆ったままだ。
ふとベットの宮棚に置いてあるスマートフォンが気になって手にとる。
眠る前に誰かと連絡を取り合っていた事を思い出し、スッ、スッと指先で触り確認する。
7月17日(土)
起きておるか?
寝てる。
起きておるな。
明日の試合頑張る
が良い。
了解。
なんだ?私からの
連絡は嫌か?
別に。
オイどこの女優
気取りだ。
しかも古いのう。
古いね。
でもありがとう。
頑張るよ。
うむ。応援して
おるぞ。
では、おやすみ。
(次あいつに会った時、ちゃんと面と向かってありがとうって言わなきゃな。)
スマートフォンを宮棚に置き、座った状態からバフッと後ろに倒れ込む。
(、、、こんなんで、試合に集中できるのかよ、、オレ。)
時計を見ると、夜中の2時12分。
彼は再度ベッドに潜り込み、瞳を閉じた。
明日は6時には起きて、試合会場に向かわなくては、、。
(またアイツと当たったら、次は勝ちたい、、。勝てたら、、、どんな、、気分、、に、、、。)
スー、、、スー、、、
再度眠りの谷底に転げ落ちてゆく彼の髪と瞳は、この国の世間一般の常識からはかけ離れていた。




