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Recollection-68 「過去からの昔話」




「それもそうだな、俺も民の面前には出ないタチだからな。知らなくて当然か!」


右眉の古傷を右人差し指で掻きながら笑顔を見せる男。


「イェット失礼よー!ちゃんとご挨拶しなさい。オッズさんよ。」


ユイも半笑いで挨拶を促す。


「おいイェット、お前本気でわからないのか⁉︎おいオッズ、こりゃ最近の若い連中は皆お前の顔知らんぞ?」



飲み過ぎているオルブライトノットも半笑いでその男に問いかける。


イェットは思いだそうとしても誰かわからない。


「うはは、参ったな!まぁ俺はこの国のお飾りみたいなものだからな。若い彼等が知らなくて当然だ。どうも、オズワルド・ワイトキングだ。お邪魔しているよ。」


「オズワルドさん⁉︎初めまして、、イェット・リヴォーヴです。、、王様と同じ名前ですね。」


イェットはまだ気付かない。それもそうだろう。父と母には失礼だが、こんな荒屋に王様が来る訳がない。


大人4人はまだ気付かないイェットを見た後、顔を見合わせて笑い始めた。


「?、、父さん?、、母さんも、、先生隊長も今日はどうしたんですか?」


イェットはキョトンとしている。まだ状況が飲み込めない。


アトレイタスが笑顔と優しい声でイェットに伝える。


「イェット、オズワルド王だよ。ご挨拶しなきゃね。」


「いやいや先生隊長、王様がこんなトコ来る訳ないじゃないですか⁉︎何を言ってるんです⁉︎、、、、、え⁉︎」


イェットは「まさか」と思い始めたが、まだ信じなかった。自分にだけ、そんな特別な事がある訳がない、起きる訳がないと思っている。


しかし、イェットは「エトナの民」に選ばれた時点で、数奇な人生を送る事を余儀なくされた数少ない人間だ。




「娘のシーヤから話は聞いているよ。聞いていたよりずっと強そうだ。オルビー、、いや父さんから技は学んだのかな?」


オズワルドは笑顔で尋ねてきた。その言葉の中には信じられないものを含みながら。


「え⁉︎、、娘のシーヤ、、様の、、、、お父、、さん、、え?マジで⁉︎」


イェットは「まさか」が、その「まさか」だと気付き始める。


「マジで!」


白い歯を見せてニヤリと笑うオズワルド。


「オズッ⁉︎」


イェットは奇声を上げながら片膝を着き挨拶をし始める。と同時に全身に冷たい汗が噴き出す。


「た、大変失礼を!ご無礼をお許し下さい‼︎、、ぼ、、私は(トキ)ノ雛隊所属のイェット・リヴォーヴ・エトナです!以後お見知りおき頂ければ幸いです!」


イェットは無礼な態度、非礼を詫びつつ挨拶をする。


そんな姿を見た母のユイは、いつの間にか息子がしっかりと立場を(わきま)え立派に振る舞っている事に少し感動した。


父もにこりとしながら酒を飲む。


先生隊長もそんなイェットの姿を見て、昔の自分と重ねていた。



「とんでもない!いきなり私がいれば誰だって驚くさ!そうか、君がイェット君か、、。どれ、立ち上がってくれるか?」


「はっ!」


オズワルドは命令通り動き立ち上がったイェットの身体を触り始める。そして足を触った時だった。





「⁉︎、、この足、、やはり『幽霊(ゴースト)』の子は『幽霊(ゴースト)』だな?」


オズワルドはオルビーとアトリーに目配せする。



「、、ああ。俺も驚いたさ。一度『刻削(ときそぎ)』を見たが、既に『纏霞(まといかすみ)』の領域だ。」


父は嬉しそうに言う。


「ただ、無理は禁物ですね。ゆっくり身体を作り練っていかなければ壊してしまいますからね。」


アトレイタスも少しだけ酒を飲みつつイェットの成長過程を説明する。



「おっと悪い、女性のいる場でこういう類の話は失礼だったな。すまないユイさん。」


「いーえー、とんでもありません王様!」


王様と母もどうやら昔から知り合いの様だ。


(な、何で王様がウチに⁉︎?、、父さんと母さんと知り合い、、なのかな⁉︎)


全身に滝に打たれた様な汗をかいているイェット。



「おいオルビー、息子さんにはどこまで話をしているんだ?」


オズワルドはオルビーに尋ねる。


「ああ、エトナの民の出現は『兆候』で、『エトナの呪縛』までだ。、、『エトナの秘宝』は話の途中で邪魔が入ってな、、。」


「、、そうか。オルビー、お前の息子を巻き込んですまないな。」


(「すまない」?、、王様が父さんに謝った?、、父さんと王様はどういう関係なんだ、、⁉︎)


イェットは少々狼狽気味だ。



「いや、いいんだ。俺の足がこんなじゃなければアトリーと共に『ディチェーテヴィータ』を護る為に戦えたんだかな、、。俺の替わりに息子がやってくれる。な、イェット。」


父は少し真面目な顔で息子を見る。


「!!父さん『ディチェーテヴィータ』を知ってるの⁉︎、先生隊長、王様、ぼ、、私は昨日その言葉が女の人の声で、、、頭の中で聞こえたんです、、。『ディチェーテヴィータ』って、、シーヤ様の事、、ですよね?」


イェットは昨日からの疑問をぶつけた。


「、、その通りだ。我が一族に口頭で語り継がれている言葉で、君達エトナの民は共通認識としてある日突然知る情報、、それはまるで呼吸をするのと同じ様に当たり前にね。アトリーも聴いているよ。」


オズワルドは優しくも真面目な顔でイェットに説く。


「私も聴きましたよ。ただ、シーヤ様がそれというのは理解出来るのですが、言葉の意味はわかりません、、。不思議な感じです。」


博識のアトレイタスも左手を顎に当てて真面目な表情だ。

 

「父として後伝えられるのは『エトナの秘宝は存在しない。』って事だな。、、それ以上は俺は知ってはいけない、、踏み込んではいけない領域だ。だろ?オッズ?」


父は少しだけ淋しそうな表情だ。


「、、すまないなオルビー。ここから先は俺とエトナの民の仕事、、。しかし、それでもお前の力を借りなくてはならないかもしれない。、、頼む。」


オズワルドは深々と頭を下げて懇願した。


己に課せられた宿命に親友の息子を巻き込んでしまった後ろめたさもあったのかもしれない。



「オッズ、頭なんか下げなくたっていいさ、俺とお前とアトリーの、、鼻くそ飛ばしあった仲だろ?それに、俺の息子はそんなにヤワじゃない。、、だからアトリー、さっきの話、頼むぞ。」


父はそう言いながら酒を一気に飲み干した。


「、、、ありがとうオルビー、恩に着る。」


「オルビーさん、ありがとうございます。出発日が決まったら、また伺います。」


オッズとアトリーが父にお礼を伝える。



「こちらこそわざわざ来てもらって、、嬉しいよ、またこうやって酒が飲めて楽しかった、、ありがとう。息子の事、宜しく頼む。」


そう言いながら父は立ち上がり、2人に頭を下げた。




「、、それにしても、俺たちがチビの頃は本当に阿呆な事ばかりしてたよなぁ、、確かアトリーが15.6歳の頃、女にフラれて初めて酒飲んだ時覚えてるか?こいつ酔っ払って、「トヨさん、ぼかぁ君の事がぁ君の事がぁ!』って凄い泣いてな、、うははは!」


「ちょっ⁉︎オッズさん⁉︎本当やめましょう?そんな昔の事言うの!本当、悪い人ですよアナタは!」


そう言いながら酒を一気飲みするアトレイタス。


「わはは!あったなぁ!アトリーはあの頃は1番背が低かったのに、17.8位でいきなり背が伸びて、抜かれて、モテ始めやがったよな⁉︎」


「ちょ⁉︎オルビーさん、「モテ始めやがった」って酷いですね⁉︎私なりに努力したんですよ⁉︎、、、あ、思い出した。そう言えばオルビーさんとオッズさん、2人でのぞ


「「待て待て待て待て」」


オッズとオルビーが同時にアトレイタスの話を遮る。


母はそれを見て楽しそうだ。


イェットは今までに経験した事のない汗をかいていた。


(昨日といい、今日といい、凄い2日間だな、、。頭が追いつかないや、、。)


こうして、『エトナ祭』は何事もなく無事に終わりを迎える。






時を同じくして、隣国シニスタラムでは、ある事件が起きていた。


それは、アギ王が何者かにより惨殺されたのである。その殺害方法は残酷極まりなかった。


直接の死因は心臓への一突きであろう、相当な殺意からか肋骨を容易く貫通し、急所を一撃にて死に至らしめていた。


ベッドに仰向けになった状態で屍となっていたアギ王の両眼は鋭利なものでくり抜かれ、その眼球は口にねじ込まれた状態だ。


睾丸は引き抜かれ、くり抜かれ穴の空いた両眼に詰め込まれている。


陰茎は短剣であろうか、何度も何度も振り下ろされたのであろう、腹部まで木っ端微塵になり股の間に肉片として転がり、最早原型を留めていない。その傷口からは大腸が露わになり悪臭を放つ。


白い布は赤黒い血溜まりで染まり、その凄惨さが際立つ。


執拗に行われたのであろうその行為は、何らかの恨みが強く現れている。


アギ王の死により無法地帯となり始めたシニスタラム国に、ある者達が介入する事になる。


そして、やがて訪れる『忘れ去られし、忘れられぬ在りし日』に向けて時は動き始める。





イェットにとっても、この二日間は今までの人生の中でも1番記憶に残る経験となった。


しかし2年後、彼にとって1番記憶に残る出来事は塗り替えられ、起こる。









『約束の時 ムータレストリートゥス』まで、後2年。

















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