Recollection-67 「再会」
暮れなずむ城下町。
皆それぞれの思いを抱いて帰路に着く。
天召式も含め、生者も故人も心残りはない。
また明日からは新しい1日、何か楽しい事が起こるかもしれない。
そんな風に楽しめた祭になった。
マリーアンナは着替えてから帰る為、エーキスとトーラと共に一度楽屋へと向かった。
シンやワッキ、ヤクーとは家が逆方向だったので舞台前にて解散した。
イェット、イグナ、ノーアは少しずつ終わりゆく祭を雰囲気で感じつつ3人並んで歩いていた。
「、、、マリー、歌上手かったよなぁ!アイツ1人でよく練習してたからな、、。努力家だよな。」
イグナが沈黙を破り会話の取っ掛かりを掴む。
「、、へぇー、お前よくそンな事知ってんな⁉︎何で1人で練習してたの知ってンだ?」
ノーアは少しだけ嫉妬しつつも、可能な限りそれは面に出さず、両手を頭の後ろに組み質問する。
「いやな、夏場は夕方水浴びに行くんだけどよぉ、時々マリーの奴、サングイネンバ 川で1人歌の練習してんの見かけて、と、言うか聴こえて来てたんだよ。それでな。」
イグナは嘘をつかず、本当の事を話していた。しかし先日のマリーアンナとの『はんけち』の話はしなかった。
やましい事があった訳ではない。だけど、ノーアには話さない方が良いと仄かに感じていた。
「ふーン、そっかぁ、、あ!今日さぁ前にも胡椒を譲ってもらった『やくざいし』?のおっちゃンに、「かれー」とか言う香辛料譲って貰ったからよ、近々朝の訓練の時作ってやるよ!楽しみにしてろよな⁉︎」
「か、『かれー』⁉︎何だそりゃ?初めて聞く食いもんだな?イェット、知ってるか?」
イグナは片眉を上げて質問する。
「あ!この間母さんが確か作ってくれたよ。母さんも『やくざいし』とか言う職業?の人から買ったって。凄く旨いよ!」
「本当か⁉︎じゃあ楽しみだな、ノーア料理上手だしなぁ!」
イグナは思った事を素直に言った。その言葉がノーアの心を揺さぶるとも知らず。
「なっ!、、、何言ってるのよ、、。そんな事、、、ないよ?」
「いや上手だろ?フォエナさんなんか泣いてたぞ⁉︎なぁイェット?」
「うん。ノーアの作る料理はどれも旨い。楽しみだよ。」
この言葉を聴いたノーアは口を波線の様に閉じ、みるみる頬を紅潮させて、2人から顔をそらした。
「私の料理、美味しいのか。、、そっか、、、そっか!」
大好きな人に料理上手と言われ、普段の男勝りな喋り方も影を潜める。
「じゃ、私こっちだから、またね!」
ノーアは今までに見せた事のない笑顔を2人に見せる。そして足早に自宅へ駆けようとする。
「おい!1人じゃ危ねぇよ、俺が送るから待てよ。イェット、またな!シンと3人で1から頑張ろうぜ!」
「うん、また!2人とも気をつけてね。」
駆け寄ってくるイグナをずっと見つめるノーア、右手を胸に当てている。
2人はイェットに手を振ると一緒に並んで歩いていく。
イェットは手を振り返しながら考えていた。
(あんなノーア、初めて見たな。ノーアはきっとイグナの事、好きなのかな?、、、会いたかったな、、、シーヤに、、。)
そんな事を考えながら家路を急ぐ。
イェットが玄関前まで来ると、室内から騒がしい声が聞こえる。エトナ祭恒例の『後夜祭』、正確には、大人が酒を飲む口実だ。
毎年父のオルブライトノットは近所の友人を連れてきては酒を酌み交わしていた。
(毎年恒例だなぁ父さん、、。)
ふふっと笑いながら玄関を開けてお客さんに挨拶をしようと台所へ向かう。
わいわいと話し声がし、母も時々笑っている。
(あれ、、この声って、、⁉︎)
その中の1人の男の声には聴き覚えがある。
「先生隊長⁉︎」
イェットは驚きを隠せず大声で呼んでしまった。
びっくりする大人4人は同時にイェットを見て、口に指を当てる。
「お邪魔してますよ、ただ、私達がここに来ている事は内密に、ね!」
先生隊長が笑顔でそう言うが、イェットの頭がついていかない。
「なん、なん、なんどぇ⁉︎」
意外な来客に、たった3文字を発するのに噛んでしまった。
「うははは!オルビー、お前の息子デカくなったなぁ!なかなか会えなかったからな。よう、イェット君。俺の事覚えてるかい?」
「⁉︎、、あの、、どちら様、、ですか⁉︎」
イェットは見た事がある様な、ない様な男性にしどろもどろになる。
右眉と左顎に疵痕のある、胡桃色の瞳に黒い髪を後ろに流し口髭を蓄えた男性が、そこに座っていた。




