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Recollection-65 「届け」




夕刻、マリーアンナ・トトの歌を聴きに大勢が城下町の中心部に足を運ぶ。


エトナ祭の締め括りとして歌い子の美声を聴き、皆気分良く帰るためだ。現代の様に夜に祭を行うのは稀で、彼等の時代では明るい内に楽しみ、夜は友人達と酒を酌み交わす。これが楽しみで(たしな)みだった。


秋ともなると日が落ちるのは早い。そろそろ始まりそうだ。




「凄い人だ、、。皆マリーの歌を聴きに来てるんだね。なんだか不思議な気分だ。」


昨年より人が多くなった様に感じたイェットは驚きを隠せない。実際、聴衆は約1.3倍に増えていた。


友達、幼馴染の歌を聴きに人が集まっている事実に、ほんの少しだけ誇らしさと淋しさを同時に感じていた。


「僕の幼馴染は歌い子なんだ。」そんな誇らしさ。


そして、遠い存在になってしまった様な淋しさ、、。


そんな風に感じながらもイェットは周りを見渡して誰かを探している様に見えた。




「本当に凄ぇ人集りだなぁ!マリーの奴、巡業したら儲かるんじゃね⁉︎」


「確かにね。歌うために世界中を旅するなんて出来たら凄いよね。」


イグナが現実的な事を言う。確かにその通りだ。


「いたいタ、イェット、本当に君は見つけ易いナ。もう特技の域だネ。」


シンは迷わずイェットとイグナを発見した。何せ翡翠色の髪の人はそうそういない。


「シン!来てくれたんだね!シンも同じ位見つけ易いよ。同じ特技だね。」


「お前等2人が目立ちすぎるんだよ!俺もモヒカンにしようかなぁ⁉︎したら目立つよな⁉︎」


そう言うと3人は笑う。


「おーい!いたいた!イェットとシンが並ンでるとすぐに分かるから便利だな!探す手間がないよな⁉︎」


「あれ⁉︎イグナとイェットと、、シン君⁉︎珍しい顔ぶれじゃない⁉︎」


「わかるー!珍しいよね⁉︎この間めっちゃケンカしてなかった⁉︎」


ノーアと、エーキス、トーラも合流する。


「君達は同じ学び舎ノ、、。エーキスとトーラだネ。話すのは初めてだよネ、宜しク。それからノーア、薬草ありがとウ。」


シンは照れ隠しに頭を触りながら挨拶する。


「おぅ!ここにいるってこたぁテメェも大丈夫ってこったな。大したコトなくてよかったなぁ!」


ノーアは無邪気な笑顔をみせる。


「シン君、宜しくね!普段あまりお話した事ないから、これから沢山お話出来たらいいね!」

(ヤバイヤバイヤバイ超カッコ良くない⁉︎憧れの人が目の前にいるーヤバくない⁉︎超アガるんですけど⁉︎)


エーキスは少しだけ普段の自分を隠し、瞳を輝かせて挨拶する。乙女心がそうさせた。


「だよね!声すらも初めて聴いた気がする位だもんね!宜しくね!」(はあぁぁ、、!スッゴい色男!声も素敵、、、95、否、96点!)


トーラは開いているのかいないのかわからない目でシンを見つめている。



「シン先生って、意外に人気あんだな⁉︎イェット君、どう思うー?」


イグナは何故か口を尖らせて悔しそうだ。


「まあまあ、、シンはどう見ても男前だからね。それに優しいし、、いやイグナ君、決して君が男前じゃなく、優しくないって言ってるワケじゃないよ⁉︎」


「、、んだよそれイェット君よぉ⁉︎失礼じゃないかい⁉︎」


イェットの首に手刀を喰らわすイグナを見て皆笑っている。



「や!皆来てたんだ!イグナ、イェット、最近ツレねぇぞ⁉︎、、や?シンじゃん、珍しいな。」


「ややっ⁉︎シンさんではありませんか?これは珍なる方がお見えですね。」


久しぶりにワッキとヤクーも合流する。


「ワッキにヤクーだネ。なかなか話す機会がなくテ、、宜しくネ。、、チ、珍なル?」


シンは照れ笑いしながら挨拶する。


「や、、笑った?シンが、、、ワロたで⁉︎ワッキ見た⁉︎今シンが、、」


「ヤクーさん、シンさんだって笑いますよ?同じ人間ですからね?」




確かにそうだ。




ワッキのこの言葉は皆に大切な事を気付かせた。そう、髪の色や瞳の色は違えど同じ人間なのだ。


お互いに相手を警戒する余り、距離を置いていたのは自分達だったのかもしれない。話してみればなんて事はない、同年代の気のいい奴。


唯一人間だけが使う『言葉』があるからこそ分かる事もある。



(今年も、来てないのかな、、。昨日の今日だからかな、、。)


イェットは談笑する友人達を見つつ、周りを見渡す。




彼が本当に会いたい人、、。



今朝見た夢が印象深すぎて、左手に残った感触が余りに現実的で、何故か無性に会いたかった。




うおおおぉぉぉ、、、!!



その時、舞台の方から地響きの様な歓声が上がる。



マリーアンナ・トトが美しい翡翠色の着物に身を包み、普段とは違う髪型と化粧をして見目麗しい姿で舞台に凛として上がる。




うおおぉぉぉぉぉぉっっ!!



「改めてスゲェな!こんなに沢山の人が声を上げてるぜぇ⁉︎」


「ああ!マリーの人気がわかるよね!」


「凄いネ、、凄イ!来てよかったヨ!、、綺麗ダ、、!」


舞台に立つマリーアンナ。


その瞬間、喧騒としていた場が静寂に包まれた。




大きく深呼吸をし、彼女は歌いだした。




♫♬♪♬♪♩♫♬♪♪♫


その場にいた全員が、その歌い子の美声に心と眼を奪われた。


マリーは歌いながら、周りを見渡していた。


(いつも通り歌えてる。私、大丈夫だ。ここにいます。あなたは、どこ?)




♩♫♬♪♩♪♫♬♪♬♩


マリーは歌う。皆が喜んでくれているのが嬉しい。それでも、あなたに歌いたい!


(おい⁉︎今目が合ったよ俺⁉︎)


(俺も!絶対目が合った!)


あちこちから言葉が小さく聞こえる。




♫♬♪♬♪♩♫♬♪♪♫


そして、マリーは一箇所を見つめて歌い始めた。




♩♫♬♪♩♪♫♬♪♬♩


(見つけました!聴いてくれてますか?届いて欲しいな、、、届いて!、、、届け!)


マリーは心から、本当に、一生懸命に歌った。天賦の才を持つ彼女は努力を重ねて、今ここに立ち、この時を歌う。


















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