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Recollection-63 「重ねて、足して」




「じゃ、俺は弟達と妹達の世話があるから、またな!祭、楽しんでこいよドリー、イェット、イグナ、シン!イグナは町で他の雛隊と喧嘩するなよ?」


プロディテオは7人兄弟の長男だ。両親はおらず、祖父母と彼で面倒を見ている。彼が稼いだbdの殆どが兄弟達の為に使われている。彼の面倒見の良さはそこから来ているのかもしれない。


「プロダッちゃん、またね!、、俺は一度帰って父さんの様子を見て、祭には行けたら行くよ。昨日の戦で少し怪我したみたいでさ、流石に心配だからね。じゃ!」


ドルチスの父は護衛団員として働いている。恥ずかしいのか彼は父がどの隊に所属しているかまでは言わないが、その父を尊敬し、弱虫ながら父の様に強くなる為に護衛団に入団した。


「んじゃ、俺等も1回家に帰るかぁ!」


「そうだね、僕も一度帰ってbd取ってくるよ。何かいいものが手に入るかもしれないしね。」


「、、、俺ハ、行けたら行くヨ。サニカ先生の所に行かなきゃ行けないシ、、。」


シンは少しだけ暗い顔を見せる。


「ア!でモ、マリーの歌は必ず聴きに行くヨ。夕刻には合流したいナ。じゃア!」


そう言うと、シンは自宅の方へ走り出した。


「イグナ、シンは頭の怪我の薬を買いに行くって訳じゃ、、ないよね。もしかして、、。」


「、、あぁ、前に少しだけ聞いたんだけどよ、シンの母さん、胸が少し悪ぃみたいで、、。お前に話すと変に気を遣うから言わんかったんだよ。わりぃ、、。」


「何も悪くないよ。イグナは本当、ぶっきらぼうに見えて人の事考えられる奴だよね。、、そうか、、シンの母さん、、。」


イグナは照れ笑いを浮かべながら先程殴られた箇所を摩っている。


自分には自分の、皆には皆のやるべき事がある。イェットも例外ではなかった。エトナの民としての責務が彼にはあった。






「ただいマ、母さン。」


城下町東部にある小さな家。そこでシンと母は慎ましく暮らしていた。


「アらシン、オかえり。護衛団への入団は出来たの?」


美しく長い金髪に一部白髪が混ざる、み空色の瞳の美しい女性。サクラ・テナ。18歳でシンを出産したので、まだ32歳という若さだ。


「あア。多分大丈夫だヨ!今の仕事の手伝いもしつツ、護衛団員の仕事に就けばbdも稼げるしネ。母さんには心配かけないヨ。」


シンは笑顔で母に近況報告をする。


「ソう、、最近あなた、ヨく笑う様になったわね。オ友達でも出来たの?」


サクラは最近のシンの表情が明るくなった事に気付いていた。


「うン。いい人達なんダ。昨日も友達の父さんが俺を助けてくれテ、、。多分、俺は自分から心を閉ざしテ、勝手に嫌な奴等だって決め付けてたんダ。」


「フフフッ、アなた、ヨく話す様になったわね、母さん嬉しい!ア!今日は祭でしょう?ホら、コれ持って友達と一緒に楽しんでいらっしゃい。」


そう言うとサクラはシンにbdの入った袋を手渡した。


「⁉︎母さン⁉︎こレ、凄いじゃないカ?どうしたノ?」


「祭で売ろうと思ってた刺繍入りのハンカチや洋服を数人の町人が来て、全部買ってくれたの。シかも倍の金額で、、。ナぜか「すみません」て言いながら、、。ナんだったのかしら?」


サクラは不思議そうな顔で首を少し傾げながら息子に話す。


(イェットの父さんが石を投げた町の人に言っテ、買いに来たんダ、、。母さんには黙っておこウ。)


「きっト、母さんが綺麗だから見に来たついでに買ってくれたんだヨ。良かったネ、これで今年の年末は安心だネ!」


「ソうね、綺麗かどうかは別として、、、イつもより贅沢出来ちゃうわね!」


テナ家族は笑った。久しぶりに心から笑っていた。


「じゃア、俺サニカ先生の所で薬買ってくるヨ。母さんも無理しない様に今日はゆっくりしててネ。」


シンは母にそう告げると外へ出て行った。


(アの子、、ヨく笑う様になった。少しでも私、長く生きられれば嬉しい。アなた、マだそちらには行けないわ。モう少しだけ、アの子と一緒に、、。)


サクラは目を閉じ微笑んで座っていた。


その左肩にはマツが手を置き「大丈夫だ。」と言ってくれている気がした。


サクラはそっと右手を左肩に置き微笑みを絶やさなかった。






夕方、城下町の一角には舞台が設けられ、その周りは数人の護衛団員が紐を持ち舞台を取り囲み距離を保つ様にしていた。


祭の締めくくりとなる、その年の歌い子が弦楽器や打楽器と共に歌を披露する。


今年もマリーアンナが歌い子として舞台に上がる。彼女も普段は年相応の、可愛らしい声をしている。


彼女が歌う時の声は、深い海と高い空から響く様な、得も言われぬ温かみのある声で低・中・高音域を歌い分ける技術がある。


ここ数年の歌い子としての彼女の地位は不動のものになっていた。


しかし、そんな彼女も思春期を迎えて悩みを抱える年頃だ。


マリーアンナは、「歌う事しか出来ない私」と思っている。天賦の才を持って生まれても、何かが足りないと感じていた。


人は、1つ持っていれば十分だ。1つも持っていなくても生きていけるし、生きていっていい。誰に咎められる理由も必要もない。




世界の何処かで誰かがきっと言っている。


(マイナス)からスタートしても、1つ何かを得れば(マイナス)と1を重ねて「(プラス)」になる。


辛い時に、一つ何か良い事があれば辛いに一を足して「幸せ」になる。


1つずつ、一つずつ、足して重ねていけば「(プラス)」であり、1や一の力が重なり「(じゅう)」の力となる。


そんな思いを胸に、マリーアンナは今日精一杯歌おうと決心していた。


(私は一人で舞台に立ち歌います。あなた1人だけでいいから気持ちが伝われば、私には「十分」です。届くといいな、私の歌、、。)







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