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Recollection-53 「試験と試練」




フォエナ・ペカトム・エトナが地底から響く様な低い掠れた声でその場にいた者達に指示を出す。


「、、、準備をしろ、と言いたい所だが帰れ。」


「はいっ!エッ⁉︎」


シン以外の4人は同時に同じ反応をしていた。


それを見ていたオスクロ・ルークスは顔を腕で隠して笑いを堪え肩を震わしている。


「、、、総隊長の指示だ。今日はお前達は休め。以上、、、解散。」


そう言うとフォエナは背を向けて帰ろうとする。


オスクロも皆に右手を上げて、また!といった感じで手を振る。



「、、、あノ!」


シンがフォエナを呼び止めた。


隻眼の男は首だけ横にし、残っている右目でシンの身体つきを見る。


(、、、ほう。)


「、、、誰だ?」


「はイ!城下町東部に住んでいるシン・テナと言いまス。俺も入団したくて挨拶に伺いましタ。そノ、、宜しくお願いしまス!」


シンはそい言うと、フォエナに深々と頭を下げた。


フォエナは頭を下げた時のシンの背中を見ていた。そして口を開いた。


「、、、お前、表に出ろ。」


「⁉︎、、ハ、はイ!」


フォエナは何故かその圧力を増してシンに表に出る様促した。


(プ、プロディさん⁉︎何が始まるんすか⁉︎)


(プロちゃん、、さ、流石に殴りあい、、なんて事ないですよ、、ね?)


イグナとドルチスが小声で伺う。


(俺にも分からない、、。少し様子を見ようドリー、イグナ。)


プロディテオもこの状況は初めてだった。


(フォエナさん、圧力はあったけど、「怖さ」は無かった、、。)


イェットも今から起こる事が予測できずに冷たい汗が出る。




仮宿舎を出ると、フォエナはいつもの丸太に座る。そして親友に頼む。


「、、、オスクロ、疲れている所悪いが武器無しの格闘術で相手してみてくれ。」


オスクロは頷くと、上着を脱いだ。その身体は20歳にしては完成された、しなやかな筋肉を帯びている。


「フォエナさん⁉︎、、シンは昨日頭を


イグナがそこまで言うとシンはイグナを手で静止した。


「ありがとウ。でもきっとこれは俺の事、試してくれてるんだヨ。見ててくレ。」


シンも上着を脱いだ。この「入団(仮)試験」に受かる為に。


14歳にしては大胸筋、僧帽筋、三角筋、腹筋が発達していた。特に目を見張ったのが広背筋だ。




(シン、あんな凄い身体つきだったんだ。普通じゃ、ああはならない、、!)


イェットも固唾を飲んで見守るしかない。


「な、何が始まるのかな⁉︎流石に緊張するね⁉︎」


身体は小さいが、ドルチスも戦い生き残る実力がある男だ。


「黙って見ていよう。多分だけど、フォエナさんはシンをテスト、、「試す」つもりだドリー。」


プロディテオは少し落ち着いていた。




「、、、おい金髪の。本気で行けよ?」


フォエナが右目で睨みつける。


「はイ、、。可能な範囲デ。」



「、、、2人共、構えろ。」


フォエナがそう言うと、2人は構えをとる。


オスクロは拳は握り込まず、開き気味の両手を身体の前、顎より下に置く。脇を閉め、攻撃・防御のバランスが良さそうな構えだ。


シンは軽く握った拳を目の高さに置き、脇を閉めて少々前屈みだ。右脚を引き、軽く膝を曲げている。頭部の防御を意識した構えに見える。




ドォンッ!


フォエナが地面を踏み抜いた。


「開始」の合図だ。


オスクロは少しずつ摺り足で間合いを詰める。


シンも同様だ。


次の瞬間



パァンッ!


何かが弾けた様な乾いた音が響く。


オスクロが左手を鞭の様にしならせてシンの顔面を手の甲で弾いた。が、高く構えていたシンの左腕に、その攻撃は阻まれた。


ドシッ!


「⁉︎ッ!」


防御後間髪入れず、重い、砂袋を叩いた様な音が鳴る。


ガクンッ!



その瞬間、オスクロが片膝を着いた。


右下段回し蹴り。


シンは防御した瞬間、オスクロの前に出た左脚の大腿部、太ももを右脚で蹴った。


まるで狙い澄ましたかの様に。


シンは右脚を引いた状態に戻し、左腕を伸ばした状態でオスクロの頭に向ける。右拳は掌を空に向け右脇に添える。


「残心」という、相手の次の攻撃に備える構えだ。


(つ、強ェ、、!シンの野朗、俺との時は本気じゃなかったのかよ⁉︎、、畜生、、凄えな、、!)


イグナは素直に歓喜した。親友が、強いと噂される先輩を一撃で行動不能にしたのだ。


下段回し蹴り、ローキックはまともに太ももの急所に入ればいとも簡単に相手を倒せる技である。


オスクロは正直先日の疲労があり思う様に動けなかったが、恐ろしいのは「相手の技を知らぬ事」だった。正直シンを「嘗めてかかって」しまった。様子見が裏目に出たのだ。


昔は「蹴る」事自体が稀、尚且つ脚を狙うのは想定外だった。





「、、、そこまでだ。」


フォエナはそう言うと上着を脱ぐ。


(‼︎、、これハ、半端ないネ、、!)


その身体は隆々と筋肉が盛り上がっている。到底普通の攻撃では歯が立ちそうもない。



「、、、『クァラーテ』だな。お前、シニスタラム生まれか。」


フォエナはそう言うと、オスクロに近寄り肩を貸す。


「、、、無理させたな、すまない。本気のお前なら負けない。だろ?」


フォエナは小さな声でオスクロに耳打ちした。


トンッ


オスクロはニヤリと笑い右拳でフォエナの胸を軽く突いた。


「、、、オスクロが「次は負けない。」だそうだ。、、、次は俺だ。」


「、、はイ、宜しくお願いしまス。」


シンは先程と同じ構えをとる。



フォエナは構えをとらず、両腕をだらりと下げたまま、シンに歩み寄る。




金色(こんじき)の狼と翡翠の獅子が、相まみえようとしている。




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