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Recollection-48 「おかえり」




マリーアンナとノーアが町に戻ってくると、丁度シンも戻って来た様だった。


「おいシン⁉︎大丈夫なンかよ頭⁉︎」


「イグナの突きに比べれば何て事ないヨ。」


「シン君、イェット君のおじさまと話は終わったんですね。」


「うン、、。あの人には感謝しなきゃネ。、、ア、2人ならサングイネンバ川へ行ってル。俺も誘われたけド、この怪我だシ、、。」


「テメェつべこべ言うンじゃねぇよ! 何てコトねンだろ⁉︎ 一緒に行くぞ⁉︎」


「シン君!行きましょう⁉︎」


ノーアとマリーアンナはシンの背中を押して無理矢理サングイネンバ川方面へ押す。


「分かっタ!分かったから押さないでヨ⁉︎、、特にマリー、力強いヨ⁉︎」


「シン君女子に対して失礼です!」


「ゴッゴメン、、、」


シンは前を向きながら2人に言った。照れ臭そうな、はにかんだ表情だ。



3人がサングイネンバ川に着くと、今回の戦いで疲れた身体を癒しに、又は傷を洗いに来ている者が数十名いた。


(どこ⁉︎イェット君は⁉︎)


マリーアンナは大きな胸に両手を当てて左右を見渡す。


「本当にイェットは分かり易いネ、ほラ。」


そんな落ち着きのないマリーアンナにシンが助け舟を出す。右手で指をさしてあげた。




そこに、イェットとイグナはいた。2人とも木桶で水を浴びている。





思わず駆け出した。


精一杯走った。


そして、早く顔を見たい。


バシャバシャバシャバシャ!


「イグナアァァァ!!」


ノーアが叫んだ。


「お⁉︎ノーアの旦那ぁどうし


ドンッ

ぎゅううぅ、、、!


「な⁉︎おい⁉︎ど、どうしたん


「やだよ⁉︎やだよぅ⁉︎お前がいなくなっちゃったら、、私、、私、、!」


ノーアは周りの目など一切気にせず、想いの様をイグナにぶつけた。泣きながら抱きついて離れない。


彼女もその一際小さな身体に強い想いを隠していた。きっとそれはマリーアンナの「それ」と一緒だ。


「、、、その、なんだ、心配かけたなノーア。ありがとう、な。」


イグナは優しくノーアの頭を撫でた。


ドンッ!


ノーアは少しだけ強くイグナを押して突き放した。


「バ、バァーカ!調子のンなよお前⁉︎他に心配してくれる、、人、、、」


ノーアは照れ隠しに突き放し、イグナの普段通りの返答、やり取りをしようとしていた。


しかし、そこにいたのは少年のイグナではなかった。ノーアは彼に見惚れた。


「心配かけたなノーア、待っててくれてありがとうな。」


水面の光が反射したイグナの顔は「大人」だった。



ドキンッ



ノーアはずっと気付いていた。だけど、皆の、いや、イグナとの関係が壊れてしまうんじゃないかと怖くて胸にしまい込んでいた。


でも、もう隠し切れない、隠したくない。


(あ、やっぱり私イグナの事大好きだ。)



「、、うン、おかえり。」


「何だよノーアの旦那ぁ⁉︎らしくねぇなぁ⁉︎もっとこう、、こいよ⁉︎なっ⁉︎」


そう言われたノーアは精一杯普段通りに振る舞おうと怒った様な笑顔で足元の水をイグナにかける。


「うひょお! そーでなくっちゃなぁノーアの旦那ぁ⁉︎」


「お前!いい加減その『旦那』てのやめろ!バァーカ!」




それを見て笑っている翡翠色の髪を濡らしている少年。


いや、この少年「だった」ものも、以前とは身体つきが変わっていた。


いつの間にか、細いながらに筋肉質な、しなやかな色白の身体。



「、、イェット君!」


本当はマリーアンナも抱きつきたかった。ノーアに先を越されだが、何れにせよ彼女には出来なかった。


「私だって、私だって心配したんですからね!でもその、、おかえりなさい。」


「ただいま。、、マリー、心配してくれる人がいるのは嬉しい。、、」


バシャ、、バシャ、、


イェットはマリーアンナに近付いた。


「⁉︎、、え⁉︎」


マリーアンナには唐突で、意外な、予想外の出来事。


「本当にいつもありがとう、マリー。」


イェットは自分より少しだけ背の高いマリーアンナの頭を撫でた。


「!、、!!、、!!!」


ブンッ! 


ガッ!


バシャ!


「⁉︎、、あっ私⁉︎」



(な、何だ今の動き⁉︎)


(生まれつきだよナ?凄い才能だネ、、、。)


イグナもシンも目を疑うが、2人はマリーアンナの未知の力には薄々気付きつつあった。



マリーアンナはあまりの嬉しさに、普段は隠している素の自分を出してしまった。


左上段回し蹴り。


しかし、イェットは右腕でしっかりと受ける。


普段とは違い、バランスを崩して転びそうになったマリーアンナの右手首を左手で掴むイェット。


「危ないよ、マリー。足元が水じゃなければ当たってたかもね?」


そう言うとイェットはにこりと笑顔になった。


もう1人、「大人」になった者がいた。


「や!わ、私、恥ずかしい!!」



シュパァン!


グル゛ン゛ッ!


ザバアァァァァッ!!


イェットの身体が右脚を軸にまるで独楽の様に一周した。それはもう凄い速さで。流石に避け切れなかった。


その回転のせいでまるで噴水、シャワーの様に水が皆に降り注ぐ。


「マ、マリー?痛いよ?」


「きゃああごめんなさいすみません!!あああ⁉︎私何てコトを⁉︎」


その余りに綺麗なイェットの回転と水飛沫が、その場にいた者に先の戦いの疲れを忘れさせた。


皆が笑顔になった。




(正直敵わないナ、、。マリーが気を遣わず話をしてル。少し『ジェラシー』を感じるネ。)


シンは昔馴染み同士達の楽しそうな笑顔をみて心底羨ましく、自分も仲間にはいりたかった。


その時だった。


4人がシンに向かい近付いてきた。




「な、何、、かナ?」


「おいシン聞いたぜぇ?町の馬鹿がお前に石を投げたんだってな?大丈夫か?何だか悪ィな、、。」


「イグナが謝る事じゃないヨ。俺は大丈夫。大した傷じゃないかラ。」


イェットも口を開く。


「その時、マリーとノーアを庇っててくれたんだよね。ありがとうシン、本当に格好いいよ。」


そう言いながらイェットはシンの肩に手を置いた。


「?、、イェット、、何の事?、俺ハ、、。」


「ハァ⁉︎テメェ照れてンのか⁉︎あン時石喰らって血ぃ出てンのに、私達を身体と両手で庇ってたろ⁉︎、、その、、、ありがと、な!」



「そうですよ!石の飛んできた方に直ぐに身体向けて、両手広げて盾になってくれました。あの時のシン君、格好良かったです!本当に、、ありがとうございます!」


「⁉︎、、、。」


シンは自分でも驚いていた。あの時、自分が無意識にそんな事を、、。


(1人はイグナの事が大好きな女の子。もう1人はイェットの事が大好きナ、、、俺の好きな女の子。


その女の子に「格好良い」と言ってもらえタ。今はそれだけで嬉しイ、、嬉しいんダ。)


「、、正直、、覚えてないんダ、、。無意識デ、、。」


「無意識かよ!正直見直した!イグナと殴り合いした時は、なンだこの野朗と思ったけど、テメェ男だな!」


ノーアが真っ直ぐな言葉をシンに向ける。


「私も最初は誤解してました!でもあの状況で私達に心配りができるなんて、、普通なら出来ません!素敵です!」


マリーアンナも心からの笑顔を見せる。



シンは自分で顔や耳が紅潮するのが分かった。でも、今日はいい。いいんだ。


「ところでよぉシン、傷は本当に大丈夫なんだよなぁ?」


イグナが何故か問う。


「?全然大丈夫だヨ。」


シンがそう言うと、イグナとイェットは顔を見合わせて頷く。


「イェット!足持て足!」


「任せて!イグナ脇から両手でね!」


「おうよ!いくぜぇ⁉︎」


2人はシンを持ち上げると一気に川まで運ぶ。



「チョ⁉︎ エッ⁉︎、何?何スッ⁉︎」


ザッパアアァァン!



2人はシンを川の浅瀬へ放り投げた。


プハッ!


「ナ、何するノ⁉︎俺泳げないんだヨ⁉︎もう10月も後半だヨ⁉︎」


「えっ⁉︎そうなのか⁉︎意外な弱点だなシン先生よぉ?ん〜と、、?『ニゴイ』みたいな顔してるぞ?ははは!」


イグナはケタケタと腹を抱えて笑っている。


「先生ってのやめロ!あと『ニゴイ』って下手だナ!イェットまでこんな事しテ⁉︎、、まあ気持ちいいけどサ⁉︎」


シンは苦笑いしながら川の中で両手をついて座っている。


「でしょ⁉︎ここ最高なんだよ。シンも折角なら楽しまなきゃね!そのぉー、、『アメンボ』みたい、に?」


「『アメンボ』って、、それ水に浮いてるじゃン!喩えが下手すぎだヨ!ハハハ、『アメンボ』テ、、ハハハハ!」


シンは笑い出す。


その場にいた者達も笑い出した。


イグナがシンに手を差し伸べる。


「悪ぃな、泳げねぇのは知らなかったからよ!立てるか?」


シンはイグナの手を取る。


「まあネ。得手不得手は誰にでもある、、サ!」


手に取ったその手を思い切り引っ張る。


ザッパアァン!


「ハハハハ!イグナ隙だらけだヨ!友達にこんな事するかラ!」 


ザバァ、、


水中から身を起こしてイグナは言う。


「お前は友達じゃねぇ。」


「、、、!」




「『親友』だろ。」


「そう、『親友』だろ僕達。」


イェットは濁りの無い笑顔で真実を伝えた。


イェットもイグナも笑顔でありながら、その瞳は力強く『親友』を見つめる。


ノーアとマリーアンナも嬉しそうに川の中に入ってきた。



「、、あア、、そうだネ。、、それも悪くなイ。」


シンは強がってそう言いながら、


もしかしたら今日が「人生最高の日」なのかもと感じている。


シンが空を見上げると、清々しいほどに高く青い空が広がっていた。こんなにもこの空の様に心が晴れた気分はいつ以来だろう?


頬にはまた涙が溢れていた。だけどサングイネンバ川が秘密にしてくれた。


(父さン、、俺、、頑張ってみるヨ。俺モ、、護衛団員になル。)








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