Recollection-43 「終わりと始まり」
10月18日
夜も明け、朝日が今日という新たな始まりを告げる。
エトナの民、隻眼の男フォエナ率いる雛隊並びに他小部隊の生き残りは東の前線へと向かいつつ領地奪還の任務に就いていた。
「、、流石に非道いな、、。人はこんな、、こんな事の為に生きて来たわけじゃ、、。」
黒髪で栗皮色の瞳の背の低いドルチスは目を細くし、敵味方入り乱れた屍の群れを見て呟く。
襟足を結った黒髪に鳶色の瞳、がっしりした体型のプロディテオは黙っていたが、ポンとドルチスの肩に手を置いた。
「相手にも理由があったかもしれねぇが、戦争でカタァつけるってぇーのは、やっぱ間違ってるよな、、。」
短髪の黒髪に榛摺色の瞳のイグナも覚悟し、戦い、勝利こそすれど、後味は悪かった。
共に歩いていた翡翠色の髪に不言色の瞳の少年イェットも複雑な表情を見せつつ、共に死戦を潜り抜けた親友に語りかける。
「そうだね、、。もしエトナの秘宝があるとして世界を手に入れていても、こうやって攻めて来られては意味はないよね、、、、それでも、さ、、。」
何かを続けて言おうとしている親友の顔を見るイグナ。
「それでも、僕達は護ったんだ。僕らの国と、、。」
イェットはそう言いながら少し悲しそうな表情だ。何故なら、その両手は血で汚れてしまったから。それでも尚、彼らは護ったのだ。
この国の為に戦った民としての『誇り』を。
グイッ
イグナは親友の肩に腕を回す。
「、、イェット、お前強くなったなぁ!俺ァ喧嘩じゃお前に負けねぇ自信があったが、今はヤベェな!」
そう言いながらもう一方の手でバン!とイェットの胸を平手で叩いた。
「でもな、お前が、俺が、皆が、全員で護ったんだ。この国と城を。俺達は俺達の正義でもって戦い勝ち取ったんだぜ!、、ま、俺はちっぽけな存在、、見習いだがよ?」
そう言ってイグナは苦笑いしていた。
「イグナが見習いの中では誰よりも先に動いてくれたお陰で僕も動けた。ちっぽけなんかじゃない。」
そう言うと、イェットはイグナの胸をバン!と平手で叩いた。
イグナは『赦してくれる友』がいる事に感謝した。
イェットも同感だ。
2人は顔を伏せて、笑っていた。
それを聴いていたプロディテオやドルチス、その他の見習い達も少し笑顔になれた。
「、、、おい。」
人の名前を覚えない、地底から響く様な低い掠れた声がした。
「!!」
その場にいた見習い達が一斉に立ち止まり、真顔で声の方を見る。
鴇ノ雛隊隊長のフォエナが立ち止まりこちらを見ている。
「、、、もうお前達は見習いじゃない。護衛団、鴇ノ雛隊の一員だ。誇りを持ってこれからも国を護る為戦え。いいな?」
その場にいた全員が驚いた。初めてだったからだ。
フォエナが護衛団の一員と認めてくれたのだ。
あんなに走った。
あんなに叩き合った。
あんなに訓練した。
誰かに褒めて欲しくてやってたんじゃない。認めて欲しくてやってたんじゃない。
両手も血に汚れてしまった、、。
それでも、フォエナのその言葉はその場にいた全員にとって最高の賛辞に聞こえた。
お前達は間違っていない!
よくやった!と、、。
そう言ってくれてる気がした。
「「「はっ!!」」」
その場にいた「護衛団員・雛隊」は嬉し涙を堪え、最高の返事をした。
しかしこの戦禍を潜り抜け勝利を齎したのは彼等だけではない。そこには確実にコーポリス国コルメウムの為に戦い抜いた猛者達もまた存在した。
「ム、よくやったな。お前の成長には目を見張るモノがある。」
翡翠色の短髪に一重瞼、閉じているのか開いているのかわからない目で、口を一文字にしている30代前後のエトナの民。
「オッ?そうですか!?隊長、俺ァこれからもっと強くなるぜ!?」
痩せ型だが筋肉質で翡翠色の短髪を逆立て、ギザギザした眉、吊り上がった目に飴色の瞳、額に斜め疵のエトナの民。
「、、、本当はこんな無益な戦いは好まないのだがなっ、、、。」
七三分で少し長めの翡翠色の髪を横に流し、少しだけ下がり眉、二重で鷲鼻、優しそうな顔立ちで枯野かれの色の瞳をしたエトナの民。
「…フン。弱いから死ぬのだ。唯強くあればいい、それだけの話よ。」
鵲ノ雛隊副隊長、バサバサの黒髪に茶色の瞳、長身で体格も良く、その身体には無数の喧嘩傷のある狛犬の様な貌の厳つい男。
(この人はまた心にもない事を言うのだな、、相変わらず気性が荒い。)
年齢は20歳前後、身体つきは申し分ない。少しだけ長く乱れ気味の七三分けの黒髪に茅色の瞳、少々への字口。そして彼の放つ雰囲気は皆の知る誰かに酷似している。
「隊長!私達生き残れた!生き残れましたよ!?」
美しく長い黒髪を前と後ろで合わせて4箇所で結い、その眉は吊り上がり奥二重で三白眼、栗皮色の瞳、笑っていても怒り顔の女性。よく「怒ってる?」と言われるのが悩みだ。
「そうだよ姉様!これもモンストさんのお陰かもね?、、、アタシ達、ちゃんとお礼言わなきゃだね!?」
美しい黄褐色の髪は顎先までの長さ、襟足で結い、前髪はその頬と青色の瞳を隠す。姉に似て美しい顔立ち、「レムス」「ロームルス」と名付けた双短剣の使い手の若い女性。
「、、、確かに。私達はあの人に対して借りでは済まない恩がある。また必ず礼を伝えるのもですが、私達が人間らしく礼儀を慮る事が出来るのが1番じゃない?」
長身で肌は褐色、その右目には黒い眼帯、美しい黄褐色の髪を馬の尾の様に結い、その眉は大きな目と同じ幅で二重、厚い唇に鼻筋が通り左目尻に黒子がある蒼い瞳で裸足の女性。
「全く命を無駄に奪い去りおって、、これだから争い事は好かん、、馬鹿どもめが。」
左頬に斜疵があり白髪混じりの黒髪を短髪にし、口髭を蓄えた黒い瞳にその風貌からは歴戦の猛者を感じざるを得ない厳つい中年男性、鵐ノ雛隊隊長。
「誰にもこの国は落とさせぬ。我がいる限りコーポリス国は永遠に不滅、未来永劫この国へ我が命を捧がん。」
少し癖のある翡翠色の髪を後ろへ流し、まるで彫刻の様に彫りの深い顔は威厳と畏怖を他人に与える。その金糸雀色の眼光が見据える物は唯この国の平和・平穏・平安を願う心優しき最強と謳われるエトナの民。
この国、そして民達の為、そしてまだ知られざる真実の為にその命を捧げる者達が存在する。そんな彼等彼女等がこの国を一丸となり護りぬいたのだった。
、、!、、!!、、!
その時、進行方向から何やら騒ぎ声が聞こえてきた。
「敵兵だ!囲め!」
「ま、待ってくれ!決着はついた!本当だ!そっちの隊長がこちらの隊長を討ち取ったんだ、、信じてくれ!」
どうやらシニスタラム軍の兵士が逃亡中にコーポリス軍に捕まった様だ。
「嘘をつけ!、、貴様適当な事を言ってこの場を凌いで逃げ果せると思うなよッ⁉︎」
コーポリス軍の一団員が敵兵を言葉で責めたてる。
「ま、待ってくれ!俺達の負けだ!お前達の隊長の、、ほら、あの長身長髪の変わった髪色の男がエトナの秘宝は存在しないと言った!それが分かったい、今、戦う理由もないだろう⁉︎な、信じてくれ!」
、、、!⁉︎
ざわっ
(、、どういう事だ?エトナの秘宝は『存在しない』?)
イェットはまだ半信半疑ではあった。敵兵が逃げる為についた嘘かもしれない。しかし、話の流れと、敵兵の表情から、確実な嘘という確証は得られない。
「戯言を!何を訳の分からん事を!貴様には捕虜となってもらうぞ、来い!」
敵兵は両脇を掴まれ、引き摺られながら城方向へと連行されてゆく、、。
イェットはこの時、イグナの言葉を思い出していた。
(「『エトナの秘宝を手にする者は、世界を手にする。』って事は、コーポリス国の王様が秘宝を持ってるハズだから、王様が世界を手にしてるって事だよなぁ?その割にゃあ、世界を動かしてるって感じはないぜ?」)
(火の無いところに煙は立たない、、。何か、、何か隠してるのか?)
漠然とした疑問。
(もしかして、、、。)
「、、もしかしてよぉ?」
イグナが口を開く。
「『エトナの秘宝』って、、王女様、シーヤ、、なんじゃね?」
「!、、イグナ、僕も今同じ事を、、。」
14歳の少年達がそう思うのも無理はない。
シーヤの見た目の不思議さ。
四神の警護。
エトナの民の存在。
しかし、
この時ばかりはイグナの鋭さも的を外していた。そんな些末な事ではない。
人智など到底及ばない事象だと分かるのはもう少しだけ先だった。
『エトナの秘宝』は存在しない。
では、何が『存在』するのか、、?
そして、シニスタラム国軍がコーポリス国へ進軍したこの戦禍の中、誰にも気付かれずこの行末を木の上から傍観していた5人がいた事。
あのアトレイタスすらも気付けなかった者達。
いつからそこに存在していたか定かでは無く、闇に紛れ込み、木の葉や枝を模した迷彩服、現代で言う「ギリースーツ」を装備し戦況を静観していた。
其々がその任務を終えると北へ向かい始める。その動きは人の「それ」を凌駕していた。




