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Recollection-39 「誤算」




ザザザザッ! ザザッ!


「コイツは動きが早くない!見掛け倒しだ!予定通り波状攻撃を仕掛けろ!」


シニスタラム軍小隊長のビスタは巨大な戦鎚を持った男を森の中でその動きを捉える。


(ぬぅ、、よる年並には勝てんのう。若人共に囲まれてしまったわい、、。さて、どうしたモノかのう?)

 

玄武のゼンは敵の策、『鯱の陣』に嵌ってしまった。


3人1組の小隊約30組。 その中で今現在ゼンを囲んでいるのは小隊6組約18名。


「行けぃ!!」


ビスタが攻撃命令を出す。


3人小隊の1人がゼン目掛けて短剣で攻撃を繰り出す。それが6方向から同時に来るのだ。


ギャリッ!

キィーーーーン、、!

ガィインッ!!


3名の攻撃が玄武に当たるがゼンは首筋を両腕で庇い隙間は通させず、鎧により刃が生身までは届かない。


ギィィィンッ!

ガキィィン!

ギャリンッ!

 

更に追撃が来る。

 

既に次の者達6名が攻撃準備に入っている。


鯱の陣とは、とどの詰り毎回6名×3回の同時攻撃。1つの小隊が倒されても、直ぐに次の小隊が陣に入り攻撃回数を減らさずに攻撃し続ける布陣だ。


この攻撃が止むのは、相手が死ぬときである。


四神の伝説が本当ならば、彼等は1人当たり40人は倒している筈だ。ではその倍の人数で常に攻撃し続ければ、、!


これがヤクトが考案した『鯱の陣』である。


鯱も捕鯨する際は群れを成し、囲い込み襲う。伝説の男の強さが真実ならば当然の方法だ。


しかし、玄武のゼン含む四神の伝説は捻じ曲がった噂となり巷に広がっている。


実際には、それほどの大人数の敵を倒してはいないのだ。事実と噂には乖離があった。




ビスタは慎重な男だった。


現在鯱の陣は上手く機能している。このまま押し込んでいけば伝説の一角を倒せる、いや、斃せるのだ。


「陣形を崩すな!先の小隊に何かあれば直ぐに後陣が穴埋めをしろ!」


ビスタは慎重な男だった。


確実に、的確な指示を出し玄武のゼンを追い詰めていった。



(ぬぅ、、余り好かんが致し方あるまい。やるしかないのう。)


「ぬぅんッ!」




ズドアアァァンンン!、、




突然、玄武がいた場所に爆発が起きたかの様な砂煙が上がる。



⁉︎?!⁉︎


ビスタは慎重な男だった。


しかし、「想定内通り」に事が進んでいた途中に、「想定外」の事が起きた。


攻撃を加えていた兵達も唖然としている。


何が起きたか理解していない様子だ。




慎重が故に、ビスタは考えてしまった。


(ば、爆薬か?そんな物を装備している様には、、しかも手に入れるにはそれ相応の対価が必要、、まさか、自爆⁉︎)




しかし実際は、如何にも単純な答えだった。


玄武のゼンは、至極単純に、持てる膂力を解放して戦鎚で地面を叩いた「だけ」だった。


砂煙が舞い上がり、辺り一帯は視界が利かない。



ドウッ!



砂煙の中から異様な音がした。


次の瞬間、



ガオンッ!

ガゴオンッ!!

ガッゴォ!!!


ドスッビッゴバッグチッ


ベキベキミシミシィ、、!


ズドドオォンン、、!


「何だどうした⁉︎ 何故木々が折れた⁉︎お前達も何故倒れる⁉︎」



破砕音と同時に木々が数本折れた事により倒れ、同時にビスタの部下達二十数名が悲鳴もあげず倒れた。


いや、悲鳴もあげられず「斃された」。


砂煙が消えていくと、そこに玄武のゼンの姿はない。


「、、ふぅ、好き勝手にやってくれたのう。流石に効いたわ、、。さて、更に反撃といくかのう。」


そう聞こえた方を見ると、玄武のゼンは元いた場所から少し離れた、砕けた岩の横に立っていた。


「⁉︎貴様、、何をした⁉︎」


ビスタは敵に向かってあろう事が無様な質問をした。


「ここ、足場は砂だろう?砂はどうやって出来るか知っておるかのう?」


玄武のゼンは、ビスタの質問とは無関係な話をし始めた、様に思えた。


「⁉︎、、何が言いたい⁉︎」


「ふむ、お主が聞くから答えておるのだ。砂があるという事は、岩があるということよ。岩は、長い年月の間に雨風などの自然の力で砕け、削られ細かくなっていく物だ。」



「!、、まさか貴様最初から岩がある事を⁉︎」


「当たり前よ。森に入り貴様等の逃げ道を可能な限り塞いだのよ。戦鎚など持って森の中で戦う阿呆などおるものか。ま、ワシは別だが、、、のうッ!」


ヴォンッ

ゴドゥァンッ!


ビシッビッゴッガィンッ


玄武のゼンは戦鎚で膂力の限り何度も岩を叩き粉砕し敵めがけて放っていた。


それはまるでガトリング砲、又はショットガンの様な、、。


また二十数名の敵兵が息絶えた。


「コルメウムの四神の伝説は真実、、、いや、、それ以上、、⁉︎」


ビスタは恐怖のあまり立ち尽くした。あろう事か、失禁までしていた。




「おい、ワシからも質問だ。お主、名は何と申す?」


敵兵達も戦意喪失している中、玄武のゼンはビスタにゆっくりと歩み寄りながら問う。


「シニスタラム国軍小隊長、ビスタ・スグシーヌ、、、です。」


ゼンはビスタの目の前まで来ると、最後の一言を放つ。




「貴様、よくもやってくれたのう、、?」




余りの脅威に震え戦くビスタが最後に見た光景は、大男が目の前で戦鎚を自分目掛けて真っ直ぐに振り下ろす場面だった。



ドッヂャアァァン、、、



「それ」を目撃していた敵兵達は目を疑った。


人間とは、あんな風に臓腑を吹き出しながら平らになれるのかと。


敵兵の1人は余りの光景に気が動転し笑ってしまいながら言った。


「ぺちゃんこじゃん。」


玄武のゼンは、その声の方を向き言い放った。


「次、貴様だ。1人残らず殺るからのう。」



、、、、、。


うわああああああ!!!


残った敵兵は僅か二十数名、彼等は可能な限り早く脱兎の如く走り逃げた。


玄武のゼンは本気で追いかける。


これ程鬼気森然なる気を放つ鬼に追いかけられる鬼ごっこをするのは彼等敵兵も最初で最後となった。


そう、この鬼に捕まれば、人生が終わるのだ。





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