Recollection-36 「実戦」
「コ、コイツ等コーポリス国軍だな⁉︎ いたぞ!こっちだ!」
シニスタラム国軍の若き兵が仲間を集める為叫ぶ。
こちらも雛隊隊長フォエナが指示を出す。
「固まるな!横に広がり敵に囲まれない様にしろっ1人1人なら大丈夫だ俺に続け!」
若き隊長は「先の先」を取る。
それは無口な男、オスクロが取った戦法と同じだ。
ドヴァッ!
ッギイィィン!
「な、何が起きた⁉︎武器が、武ギイ゛ィッ⁉︎手が!手がァ⁉︎」
ガシャァンッ!
次の瞬間、敵は手首から血を流し戦意喪失し両膝をついた。と同時に空から剣が降ってくる。
フォエナは刻削で先頭にいた敵の攻撃が届く間合いギリギリに入り、敵の武器を下から己の剣の鋒にて叩き飛ばした。
『角折』という技。
皆さんは、タオルを鞭の様に前に振り出すと同時に引|き戻して相手を叩いた事はないだろうか?それはまるで「鞭」の様に。
ボクシングの「フリッカージャブ」の方が有名でご存知かもしれない。
そう、フォエナは刻削の勢いのまま、まるで剣を鞭の様に下から上へしならせる感覚で敵の手元、剣の柄を狙った。
剣道でいうところの「巻き上げ」の様な技。これが隻眼の男、雛隊隊長フォエナの得意技だ。
武器を失い動揺した敵の手首を切る。それで決着した。
殺そうと思えば殺せたが、敢えて殺さずに戦況を鑑みて2つの意図を持って挑んだ。
1つ目は敵に「未知の攻撃」を知らしめ、恐怖心を与える事。
2つ目はいきなりの敵の死は雛達が恐怖、萎縮する可能性があるため、殺さない事で攻撃に対する躊躇いを最低限に留める事。
「行けぇ躊躇うなッ!お前達ならやれる‼︎」
隊長は雛達を叱咤激励する。
「ぅオラアァァッ!!」
最初に動いたのはイグナだった。彼は自分から志願して護衛団に入団した。敵を斬る、殺してしまう事に躊躇いは必要ない。
ッギイィン!
イグナは振りかぶり上段から放った斬撃を、敵は左手に装備した盾で防ぐ。
「甘い!」
ブンッ
敵は右手に持った剣でイグナの胴の甲冑の隙間を薙ぎに来た。
ギャリン!
ゾボゥッ!
「何ッ⁉︎ぐっはぁ!」
「甘ぇよ、おっさん!俺は『覚悟』済みだぜ⁉︎」
敵は右脇腹を抑え戦闘不能、イグナの初陣且つ実戦初勝利だ。
シンと幾度となく想定していた動きだった。
上段から斬りかかり、盾を使わせる。そこから可能な敵の攻撃は「突く」か「薙ぎ払う」だ。勿論体当たりも想定した。
今回敵が選択したのは「薙ぎ払う」。これは1番楽な勝利条件だった。
左腕に装備した小型の盾で剣を防ぎ、そのまま間合いを詰めてガラ空きになった胴、腹部へ左手甲についた短剣で攻撃する。今までに町のやんちゃな奴等を散々拳を使った喧嘩で這いつくばらせてきたイグナにとって、それほど難しい事ではなかった。
(凄いなイグナ、、この状況はタフだが俺も何とか生きて帰らなければ!)
プロディテオも自分から敵へ向かって行く。
(か、か、母さん怖いよ⁉︎でも、俺も護衛団の端くれ、父さんも戦ってる、、やってやる!)
ドルチスも震える足を勇気で前進させ戦う。
鴇ノ雛隊隊長フォエナの判断は奏功した。皆自分から仕掛けて行く。彼は更に声をあげる。普段ならば想像できない程に。
「敵は1人ではない!最後まで気を緩めるなよ!」
20歳とまだまだ若い隊長も、誰も死なせたくない、生きて帰りたいと必死なのだ。
周りで戦闘が行われる中、イェットの前に長身の敵兵が立つ。
「お前、まだ若いな。俺は子供は殺したくない。今なら見逃してやるから逃げな。」
イェットは不言色の瞳は閉じずに深呼吸をし、天無絶を中段に構える。そして頭巾を後ろへ下げ、兜の中から相手の格好、装備を自分でも驚く程冷静に観察した。
確認し終えたイェットは、不思議な構えをとる。
ズザッ、、、
右脚を下げ中腰になり、中段に構えていた刀を自分の右側に引き寄せる。
まるで今から横に薙ぎますよと言わんばかりの構えだ。
「、、仕方ねえ、お前がやるってんなら俺も殺るしかねえなあ。」
長身の男が剣を抜こうと構えた瞬間、雌雄は決していた。




