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Recollection-35 「帰還」



前線から戻ってきた1人のコーポリス歩兵が出陣前の総隊長の元にやって来て片膝を着く。


「アトレイタス総隊長、敵は『境界線』を突破しました。現在東側地域にて敵の侵攻が続いており占領地区を押し上げられています。」


「わかりました。頼んでいた報告ありがとう。『境界線』まで引き付けてくれて助かります。これで私達が自由に動けると言う事、後は任せなさい。」


総隊長はにこりと笑顔を見せると、その歩兵の肩に手を置き労った。


『境界線』とは即ち『エトナの呪縛』の事である。


さも当たり前の様に振る舞い、たった1人で戦地へ赴かんとするアトレイタスの背中を目で追いながら、その歩兵は思わず声をかけた。


「あ、あの!、、恐れながら、、こんな事を言っては大変失礼、、語弊を承知でお伺いいたしますが、、お、お一人で向かわれるのですか⁉︎」


アトレイタスは僅かに振り返り笑みを絶やさず言う。


「心配してくれているのですね、ありがとう。私なら大丈夫。」


そう言うと城側から来た2人を見つけ更に続ける。


「ほら、あの2人が来てくれました。これで100人、、いや、200人力ですね。」


歩兵がその2人を見つける。


全身に鎧を纏った大男2人がこちらに歩いてくる。


1人は兜に玄武が彫られており、その手には蛇の柄に見た事のない形状の亀の様な形をした巨大な鎚、戦鎚を持っている。


もう1人は兜に朱雀が彫られており、その手には長い柄の先に両翼が斧となっている鳥の様な形の刃をした巨大な戦斧を持っている。


「アトレイタス総隊長、お一人とはつれないですぞ!私もご一緒(つかまつ)りたく!」


ゼンが総隊長に願い出る。


「そうですよ隊長!私達も連れて行った方が得策では?」


ゴウも同様、隊長に願い出た。


アトレイタスは2人に命ずる。


「ゼン、ゴウ、解りました、途中までは許可します。但し、最前線である程度敵を退けたら直ぐに北へ向かい手薄な地区の敵を殲滅して欲しい。頼めますか?」


「「はっ!」」


玄武と朱雀は総隊長の指示通り、先ずは押されている東部を目指す。




ザッザッザッザッ、、



同時刻、フォエナ率いる小部隊・(トキ)ノ雛隊は北へ急ぐ。


本当に敵が攻めてきているのかと思う程、木々や夜空は静けさを歌う。



その時だった。



先頭のフォエナが肘を90度に曲げ、拳を握って右手を挙げる。


「静止」の合図だ。



冷風を口ずさむ木々の中に人影がある。



ゆっくりと、こちらに向かって来る。




数名の雛達が慌てて剣に手をやる。


フォエナが掌を開き後ろ側に向け、腕を真横に向ける。


「待て」の合図だ。



どうやら1人の様だ。


月明かりが彼を照らすまで雛隊は動かない。




そして、彼は帰ってきた。



「、、、オスクロォ!」



あのフォエナが、感情を剥き出して咆哮した。


雛達は初めて目の当たりにする隻眼の男の感情。




オスクロは生きていた。


無口な男は親友の顔を見て安心したのか、がくりとその場に両膝をつき、血脂のついた剣で身体を支える。


隻眼の男は足早に駆け寄り無口な男に質問する。


「これは⁉︎お前の血か?そうなのか⁉︎」


無口な男は首を横に振る。


「怪我は⁉︎どこか痛めた箇所はあるか⁉︎」


無口な男は首を横に振る。


「敵はこの近くまで来ている可能性はあるか?」


無口な男は頷いた。



オスクロは戦い、逃げ切り、親友の元に帰って来た。


「おい!そこの2人!オスクロを城前基地まで連れて行け。これも任務だ。頼む。」


そういうと、フォエナは2人を指差した。


指を差された2人は返事をし、オスクロを連れて一時基地まで撤退する。


すると無口な男は人差し指と親指で輪を作り口に運んだ。




ピュゥッ!




口笛を吹くオスクロ。


フォエナはオスクロを見る。すると無口な男はニヤリと笑い親指を立てた拳を隻眼の男に見せた。そして雛達にも向けていった。




俺はやったぞ。お前達にもやれる。頑張れ!




そんな風に言ってくれている気がした。



「、、まかせろ。俺の鍛えた雛はそんなにやわじゃない。」


フォエナはニヤリと笑って親指を立てた拳を無口な男に見せた。





雛達2人がオスクロの両脇に立ち城へ向かい始めると、フォエナは早口で言った。


「、、、敵は近い。戦える準備をしておけ。武器を構えるまでの隙を狙われるぞ。」


シュラッ


そう言いながら、フォエナは剣を抜いた。


雛達も剣を抜く。


イグナは他の者達よりも短い特注の剣を持っていた。そして彼の左の小手も特殊だった。


拳の甲部分から20cm程の剣先があり、拳から肘までは盾になっている。


彼なりに編み出したのであろう戦い方の結果だ。



スォンッ


イェットも父から譲り受けた『天無絶(あまのむぜつ)天道(てんどう)』を抜刀した。月光を帯びて金銀に輝くそれは、驚くほど軽い。


アトレイタスがある者と共にその骨子を練り上げた技術、後に『雷越流(らいえつりゅう)』と呼ばれる様になるこの剣術では基本として盾を装備しない。可能な限り避け、躱すのが基本だ。勿論防御に天無絶を使う場合もある。その剣術は各雛隊に惜しみ無く伝えられており、各々が昇華させている。



プロディテオにドルチスも各々の矛と盾を持つ。


全員が武器を装備し終えると、フォエナは皆に背を向けると肘を曲げた腕を挙げ、今度は掌を開けた。


「進め」の合図だ。



雛達は約3ヶ月間ほぼ毎日訓練をしてきた。今日その成果が問われる。


結果如何によっては命を落とす危険がある。しかし、ここにいる雛達は皆自分から志願してきたのだ。


若き血が騒ぐ者。


恐怖に負けそうな者。




皆それぞれ胸に去来した本心はあったが飲み込み戦地へ向かう。


、、、、、、、、、、


、、、、、、、、、、(ガシャッ  ガシャッ)


ガシャッ ガシャッ ガシャッ、、、





北の森の中か今までになかった、明からな武装が擦れる音がする。




そして、



シニスタラム兵と遭遇する。その数約10名。




雛達の戦いは唐突に始まる。






























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