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Recollection-34 「天命」




城内地下に籠り身の安全を確保されている王と王女。


オズワルド・ワイトキングは横長の椅子に座り、隣で眠ってしまった娘の枕として彼は自分の太腿を使わせていた。


娘の頭を撫でながら胡桃(くるみ)色の瞳で彼女の寝顔を見つめている。


その寝顔は、今は亡き妻、イリヤに瓜二つだ。


(もう少しだけ、、もう少しだけでいい。シーヤと笑って過ごしたい。『約束の時』までは、好きな様にさせてやろう。イリヤ、いいだろう?)


娘の自由奔放な行動は、父の考えがあっての事だった。


娘が以前サングイネンバ川に遊びに行った事も、雨の中イェットの家に行った事も、学び舎に訪れた事も知っている。


アトレイタスからの報告を受けて尚、王はアトレイタスを咎めなかった。何故彼がそうしたかを理解出来るからだ。




(明日はこの子の誕生日だ。折角の誕生日、成長を祝って、、、やらなければな、、。)


そんな風に考える、楽しい催し事の筈なのに、父の表情は少し曇っていた。





外からの音は殆ど聞こえない。岩で出来た階段を長く降りてきた場所にあるこの地下の部屋。


地下は更に深く深く続いている、、。


その先にあるものとは、、、。



いつ・誰が・何の為に建てたのかは定かではない。



城と言うよりは、まるで『神殿』の様な、、。





だが、王は知っている。


ワイトキング一族に伝わる門外不出の書

六合紡文書(りくごうぼうもんじょ)』。


明日10月19日、この地下に再び訪れなければいけない父は、心の底から願う事があった。


(神様、、お天道(てんと)様、、どうか、このまま時を進めないで下さい、、。どうか、、、どうか、、。)


そう心底懇願する今も尚、時は刻む事をやめはしない。






「ゼン、ゴウ、ここはサイとユウに任せてお前達は外へ行き敵の殲滅にあたってくれ。コルメウム城は何があっても陥落される訳にはいかない。頼む。」


王は四神の内2名に任務を与えた。


「「はっ!」」


玄武と朱雀は王の命令に一点の曇りもない返事をし、敵を殲滅すべく戦地へ赴く準備に入る。






時を同じくして、隻眼のエトナの民、フォエナは隊長としてイェット達10名をを率い戦地へ向かおうとしていた。


人の名前を覚えない彼の地底から響く様な低い掠れた声が響く。


「、、準備をしろ。行くぞ。」


「はっ!」


戦闘経験者から見習いまで合わせて返事をする。


しかし、今からはもう見習いではない。


プロディテオ、ドルチス、イグナ、そしてイェット。


護衛団として初陣、出陣である。


皆兜を装備していて表情は読めないが、きっと不安な顔をしているに違いない。




「フォエナ、待ちなさい。」


アトレイタスが声をかける。


「あなた達は北側に向かいなさい。私は東側の劣勢区域に向かいます。フォエナ、必ず彼も一緒に帰って来るのですよ。」


「ッ‼︎、、、はっ!」


フォエナはこの時、総隊長の優しさに目が潤みそうになった。何故なら親友が最前線からまだ戻っていないからだ。それを知っていた総隊長の計らいは、フォエナに充分な士気を与えた。


アトレイタスはそう言うとにこりと笑顔を見せ、1人で激戦区へ向かう。


これから死戦を繰り広げるには相応しくない笑顔だった。


しかしそれが何故か彼等を安心させた。



「、、ありがとうございます、アトレイタス総隊長。」  


隻眼の男は、誰に聞こえる訳でもない声量で感謝の言葉を述べていた。


「、、、これより我ら『(トキ)ノ雛隊』は北へ向かい負傷者の救助及び占領支配下地区奪還の任務にあたる!出陣だ!」


雛隊隊長フォエナが叫んだ。


「はっ!!!」


イェット、イグナ、プロディテオ、ドルチス、他6名が声を上げる。




果たして雛達は生還できるのか?


雛より成長し、何になるのか?





(護りなさい。)



誰だろう、、?この頭の中に響く声、、。


知っている様で知らない声、、。


そうだ、、護るんだ、、。





(ディチェーテヴィータを護りなさい。)





ディチェーテヴィータ?




何の事だ?、、いや、


初めて聴く言葉なのに、もう知っている。


知ってるんだ。


それは僕が「エトナの民」だから。




、、、そうか、、。


それを護るのが僕がここにいる理由。運命なんだ。




虚ろな不言(いわぬ)色の瞳は閉じられた。


その瞳は強烈な意志と自覚を持って輝き再び開いた。


「、、護る。」




髪が翡翠色になった時から定められた運命は『約束の時』に向け動く。




決して止まる事なく。














 














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