Recollection-33 「導かれし者」
ザッ ザッ ザッ、、、
(、、、、い。)
ザッ ザッ ザッ、、、
(、、なさい。)
ザッ ザッ ザッ、、、
(、、りなさい。)
ザッ ザッ ザッ、、、
(護りなさい。)
ザッ ザッ ザッ!
左腰に太陽の描かれた漆黒の鞘を持つ刀を携え城に着いた14歳のエトナの民の少年。
その双眸は座り、何かに導かれる様にただ走る。
秋夜の風は前線の熱とは違い、そこにいる人々の身体を冷やしながら舞う。
城門より右側の広場、昨日シーヤと半エトナの民がいた場所が見習い達の基地になっていた。
闇夜の中、松明の明かりで全てが橙色となる中、それでも色黒と分かる肌に、翡翠色の髪をした30代後半と思しき男が声を上げる。
「ここにある鎖帷子と甲冑を身に付けた者から、各々の隊長の指示に従い、お前達の出来得る限りの力を解放してこい!」
色黒のエトナの民は続ける。
「敵に囲まれて「死」を感じたら逃げ出しても構わない!お前達はまだ若い、戦いながらも生き残る事を最優先に考えろ!」
そう言いながら、彼は若い隊員達に鎖帷子と甲冑を渡していく。
ボイド・ガンス・エトナ。
この国の武器や甲冑の製作、また日常生活の中で使う金属製品を製作している刀工兼甲冑師、いわば職人だ。
以前イェットとイグナが使っていた漁具の筌を製作したのも彼である。
先に到着していたイグナは早速装備を整えていた。
城門方面から親友がやって来る。
「お⁉︎イェット!来たかぁ、早くしろ、お前のも用、、意、、、⁉︎」
ぞくり。
先に来ていたイグナがイェットを見つけ歩み寄るが、不言色の瞳を見た瞬間、何故か背筋に異様な寒気がした。
外套に身を包み、頭巾をしていたイェットの顔は、無反応で無表情、別の何かを見ている様にイグナと目が合わない、、。
それでもイグナは親友の肩に両手を置き、力を込めて身体を揺らす。
「イェット!おいイェット!! 大丈夫かぁ⁉︎ ビビッてんのかぁ⁉︎」
はっと不言色の瞳を見開き瞬きを何度か瞬きをさ、我に帰るイェット。
「あれイグナ、いつからここに、、?」
まるで彼はイグナが今まで目の前にいた事を理解していない様だった。
「おっ⁉︎ 意識戻って来たかぁ! 俺達の初陣だせ⁉︎ やったろうじゃねえか!」
イグナは自分の胸をドンッと叩いた。
「、、イグナも怖いんだね。僕も怖いさ。」
「!!、、おぅ、、まあ、な。 だが、護衛団に入団したってこたぁいつかは通る道だろ⁉︎ ビビッてても始まんねぇ。俺は、、やるぜ。」
イグナは親友が唐突に心の奥底にあった「恐怖」を突いてきて驚いた。
イェットが口を開く。
「父さんが言っていた。殺すという事は、殺されるという事だって。、、僕はそのどちらも怖い、、。」
イグナも口を開いた。
「、、、正直言うとよ、、、俺も怖ぇ、。もし、もしもよ、、俺が誰かを殺してしまう事になったら、、イェットは俺を、、
ドンッ!
イェットが親友の胸を拳で叩いた。
「僕はイグナを赦すよ。、、きっと僕はイグナにもそう言って欲しくてこんな話を、、。」
ドンッ!
イグナが親友の胸を拳で叩いた。
「ッたりめぇだろう! 俺もお前を赦すに決まってる! 、、、ありがとうイェット。覚悟、出来たぜ。」
それを見ていた色黒のエトナの民はニヤリと笑うと声を張り上げた。
「お前達! どんな結果になろうと戦場に立つって事は、俺達も敵も同じだ! 恨みっこナシだからな! 死んじまったらそれまでだ!「先」を見たい、「生きて」帰りたい、「恋人や家族に会いたい」奴は、思い切りやっちまえ! 何せ敵さんが無茶して攻めてきてるんだからな!」
ボイドなりに彼等を鼓舞した。
誰しもが初めて行う事は怖い。未知の領域だからだ。
だが、踏み出さなければ「その先」には進めない。
「未知」は「既知」となり、「知識」や「知恵」となる。
戦わなければ蹂躙され、搾取され、奴隷にされる可能性だってある。
(学べ若造ども。人間とは残酷な生き物だ。秩序がなければ平気で殺し合う生き物、殺らなきゃ殺られるぞ。単純でいい、理由の大小なんて関係ない。若造どもの「正義」でもって戦ってこい!)
ボイドは自分の若かりし頃を思い出していた。
イェットとイグナがボイドから鎖帷子と甲冑を貰うと、直ぐに装備に取り掛かる。
「とうとう出陣だね。準備OKか?イェット、イグナ。」
2人が声の方を振り向くと、先輩のプロディテオが立っていた。
「イェッティリナとイグーンモ、、は、早くじゅ、準備しなななよ、よ?流石にょ、に、甲冑重いな。」
プロディテオの横には、少し大きめの甲冑を装備したドルチスがだらしなく立って震えていた。
「あちゃあ、ドリーさん、こりゃ1番最初に死ぬなぁ!」
「イグナ、冗談でもやめなよ、ドリーさんに失礼だよ。僕も思ったけどさ。」
「絶対間違えてるからボイドさんに確認してきなよ、『これじゃ死にに行く様なもんです』て、ドリー。」
「ちょ⁉︎プロダアーンさんまで!流石にひでぇよ、、。畜生!絶対死なん!」
ドルチスが声を上げると、ボイドが気付き声を上げた。
「おいそこのちっこいの!すまん大きさ間違えた!いやホントすまん、死ぬぞそれじゃ!装備し直せ、な⁉︎」
(しゃ、洒落になってない。)
しかし4人の見習いは少し笑えた。
それを少し遠くから見ていたエトナの民で隻眼の男、今回彼等の部隊長となるフォエナの口元も、松明の灯りの揺らぎのせいかもしれないが少し笑っている様に見えた。
しかしこの後、彼等には確実な
「死戦」が待っていた。




