Recollection-32 「秋夜の悪夢」
シニスタラム国の策士・参謀のヤクト・シュナイドと軍隊隊長のエリーナ・ゴメスの侵攻と時を同じくして、『エトナの呪縛』範囲際で1人のエトナの民が剣を振るい敵を屠っていた。
片手に一振りずつ剣を持ち戦いに身を投じている。いわゆる二刀流だ。
乱れ髪で右が黒、左が翡翠色の髪、黒い右目と赤支子の左目の三白眼の男
18歳の、2番目に若いエトナの民、ハイオーン・メディウム・エトナ。
敵を斃しながら、彼は後退していく。
(あと少し、、もう少し引き寄せられれば奴等の戦いが見られる可能性がある。それまでは命令とやらに従おうか。)
木々を抜け少し視界が広がった場所へ出る。
月と星が人々の争いと生死の狭間を見下ろしている。
そこへハイオーンを追い、4人のシニスタラム兵が彼を死に追いやろうとする。
「いたぞ!こっちだ!」
「1人だ!他にはいない!」
「どけ!俺が殺る!」
そう言うとシニスタラム兵の一人は剣を構えた。
ハイオーンは両の剣をだらりと下げ俯く。
「ぅおらあぁ!」
敵は恐怖を紛らわすため喚き声をあげ、上段の構えから三白眼の半エトナの頭を狙う。
ゾボッ
敵の剣は空振りとなり、地面に突き刺さる。
ハイオーンはただ一歩、左に動いただけだった。
ゴキャアアァァン!
三白眼の半エトナは、地面に突き刺さった剣の腹を横から足裏で蹴り、敵の手から武器を剥がす。
本当は敵が空振りし、剣が地面に刺さった時点で殺せていた。
首を突くなり、切り落とすなり、甲冑の隙間を抉るなり、、。
しかし敢えて半エトナの彼はそうしなかった。
剣を蹴った半エトナの行動に一瞬だが他の敵も呆気にとられた。
その一瞬が命取りになるとも知らずに。
半エトナは剣を蹴った瞬間、おかしな構えをとった。
左手に持った剣を左肩に担ぐ様にし、右手の剣も同じく左肩へ担いだ。
ドヴァッ!
彼は両剣を左肩に担いだ状態で一瞬左側に身体を捻る。と同時に『刻削』で武器を失った敵の正面へ間合いを詰めた。
その勢いのまま、身体を右へ回転させ左手の剣で首を、右手の剣で胴を薙いだ。
あまりの速さと威力で、切断された首と胴はまだその位置に留まり血は吹き出ない。
三白眼の半エトナはまだ止まらない。
そのまま回転のスピードを殺さず、今度は身体を背中側に曲げ、下から上へと既に骸と化した肉塊の股間から頭にかけて切った。
『捻鎌鼬』という技の応用だ。
『捻鎌鼬』は『刻削』の勢いを利用して振りかぶった剣を身体を軸に回転させ斬り伏せる技である。
剣の刀身の根本から鋒までの距離を最大限に利用する。そうする事で薄めの甲冑や鎖帷子ならば切る事が可能な技である。
しかし、振りかぶる必要があり、太刀筋を読まれやすい弱点もある。
それを補ったのが「剣を蹴る」事だった。
相手の注意を一瞬引く。その一瞬が敵の隙となり、半エトナに攻撃態勢を取らせてしまったのだ。
それでもまだ終わりではなかった。
ドチャッ! ドチャァッ!!、、
半エトナは6当分された肉塊を剣の腹で敵目掛けて数回打ちつけた。
血と内臓、汚物が入り混じった肉塊の雨を浴びた敵達は悲鳴を上げる。
それは彼等にとって断末魔の間際に見た悪夢だった。
ハイオーンは彼等の悲鳴を聞きながら、ゆっくりと残り3人の敵兵を殺した。
「はぁ、、弱いのに向かって来るから無駄に命を落とすのだ。愚かな、、。」
「本当だね。」




