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Recollection-25 「未知」



エトナ祭の準備で忙しそうな大人達を尻目に、少年達3人はコルメウム城へ向かう。


何もわからないかもしれない。でも、それでもいい。


若かりし頃に誰しもが抱いた「好奇心」が彼等を突き動かしていた。

 

イェットは念の為、母から貰った首飾りを持って来ていた。もしかしたら、会えるかもしれない。


しかしそこで、出鼻を挫かれる、、。




「あれーっ⁉︎ イグナにイェットと、、シンじゃン⁉︎ おはよう! 珍しい3人だなぁ⁉︎ どっか行くのかよ?」

 

癖っ毛を後ろで結った、榛摺色の瞳の一際背の低い女の子が声を掛ける。


「イェット君、、。それにイグナ君とシン君もおはようございます。」


艶のある長髪の黒髪に垂れ目で空五倍子色の瞳、そばかすが特徴の女の子が控えめに挨拶する。


ノーア・クリストファーと

マリーアンナ・トト。


「おっ⁉︎おおぉ、、おはようだね君達ぃ。祭の準備かぁ?忙しいだろぅ?」


「なンだよそれ、気持ち悪りぃなぁ!お前らしくねンだよ⁉︎」


ズイッとイグナに近寄り顔を見上げるノーア。約30cmの身長差。


「おっおぉ、、!そうか?そりゃ悪かったなぁ、、。」


イグナ達は今から城にこっそり向かう途中だったが、思い掛けず遭遇した女の子達に戸惑っていた。


つい、本当についではあるが、妹と間違えてノーアの頭を撫でた。


「!、、な、何す、るのよ、、。」


ノーアは急に勢いを無くし、しおらしくなった。


彼女にとってもイグナに頭を撫でられるとは思いもよらず、戸惑い下を向いた。自分で顔が火照るのが分かったからだ。




「こ、これから護衛団の会議があ、あって、僕等で話を聞きに行くんだよ?」


イェットもイグナに加勢しようと奮闘したが、下手過ぎる嘘のせいで語尾が上がってしまった。


「シン君もですか?」


マリーアンナが空五倍子(うつぶし)色の瞳でシンを見つめて質問する。


「、、、。」


シンは何も言わず、いや、言えずに頷く。


「シン君も護衛団に入ったんですか⁉︎」


マリーアンナはシンを見つめたまま質問する。なかなかに鋭い質問だ。


「、、うン、そうだネ。」




(しまったぁ、、嘘がウソを呼んだか、、。シンに悪い事したな。)


イェットは後でシンに謝らなければと思い左手で顔半分を覆う。




この時、イグナだけは気付いてしまった。


シンの耳が赤くなっている事に。


(マ、マジかよぉ、、⁉︎シンお前まさか、、⁉︎)


「マリー、それにノーア、今日はすまないガ、先の用事があるんダ。またゆっくり話ができたら嬉しいヨ。」


(シン上手いぜぇ!)

(今のは上手いよシン!)


2人はシンを一瞥した。


「テメェに言われなくてもそうするよ! ちぇっ、何だよせっかく、、。」


ノーアは小さな身体を更に小さくさせた。一緒に遊びたかったに違いない。


「皆さんは明後日のお祭り行きますか?私も歌い子の仕事が終わったら見て周りたいんですけど、、。」


「うん、行くよ。もしよかったら一緒に行こうよ。」


イェットは普段通り、何気なく「皆で」という意味で言った。、しかし今のマリーアンナには「一緒に」という言葉の意味が、重みが違った。


「!、、本当に⁉︎いいんですか⁉︎」


マリーアンナの空五倍子色の瞳が輝く。


「うん。歌い子の仕事終わったら迎えに行くよ。」


マリーアンナは有頂天になりかけた。思わずイェットに抱きつきたいと思ったが、我慢した。


「マリーの歌、毎年楽しみにしてるヨ。今年モ、、楽しみにしてル。」


シンがマリーの空五倍子色の瞳を見つめ、そう伝えると


「やだぁシン君たら、恥ずかしいですう!」


と言いながら、彼女は先程の高揚から力加減を忘れ右手でシンの左肩を横から叩いた。


シュパァン!


グル゛ン゛ッ!


「⁉︎?!!?」


シンの身体が右脚を軸にまるで独楽の様に一周した。それはもう凄い速さで。


余りの速さにイェットはシンが纏霞を使ったかと思うほど早く一周した。  




「、、、? マリー?肩、、、痛いナ。」


シンの格好は回転前と変わらないが、髪型が9:1になり、涙声になってた(様な気がした。)


「ご、ごめんなさい!つい、、。」


(つい?つい軽く肩を叩いたってぇのか⁉︎ あんな、あんな人がグルンッて、回転するか普通、、⁉︎)


イグナはまだ見ぬマリーアンナの実力の片鱗に触れて変な汗が出た。。


ノーアは今のシンの回転が面白過ぎた様で声高々に笑っていた。


「じゃあ、マリー、ノーア、またね。祭の日楽しみにしてるよ。」


イェットは別れの挨拶を済ませる。


「ン! またなぁ〜!」


「また祭の日ですね!」

  

女の子2人を背に、再度コルメウム城へ向かう3人。




小高い山頂にあるその城は、麓から約2〜30分も歩けば着いてしまう。入り口までは一本道となっており、その道筋には等間隔でいわゆる石灯籠が置かれている。道の両側は木々が生茂り、夜ともなれば石灯籠に灯りがあってもランタンは必需だ。


多くの城の場合、山上の城は軍事施設として使われ、普段の居住地は山麓の平地に構える事が多い。


山上に城を据える理由は「攻められにくく、守りやすい」からと言われている。


コルメウム城も一見それらを踏襲している様に見えるが、一般的な「それ」とは違っていた。


飾り気のない外観、城壁は15m程と高く城を一周している為、城自体は外からは見えない。


城壁の外周は結構な距離があり、はっきりとした数字はわからない。城壁の外側は意外に開けており、アトレイタスの稽古場があったり、公園の様な場所があったり、本当に一般的な城とはかけ離れている。


唯一目を引くのは、「城門」である。


城門は高さ約10m。幅約6m。とても1人では開けられそうにない。そしてそれに描かれている太陽と思われる絵と、球体を持つ女性。その足元にも球体がある。


城門正面左側に人1人が通れる出入り口が付いている。どうやらそれ以外にも出入り口はあり、護衛団が不審者が侵入しないか監視している様だ。


本当に謎の多い場所なのだ。城と言うには少々脆弱な、、。



3人はエトナの秘宝について何か分かるかもと来ては見たものの、そんなに簡単には情報は得られないのは当然だった。


途中、数名の護衛団に会うが、特に咎められる事もない。それは幸運にもイェットが「エトナの民」で見習い隊員であり、イグナも見習い隊員として認知されつつあったからだ。

 

「高ぇ城壁だなぁおい!まるで中は見えんぜ。本当に城なんてあるのかぁ?」


イグナが訝しげに呟く。


「城自体はあるはずだよ、赤ん坊の頃、父さんと母さんは中に入ったみたいだからさ。」


「もしかしテ、『エトナの民』だけ集められたって言ウ、あノ?」


「そう、それ。だけど僕全然覚えてないんだよね、、。」


「そりゃそぅだろ?だってお前まだ生まれて5ヶ月位って言っ


その時だった。




公園の様な場所に2人の男女がいた。


「「「!?」」」


3人は思わず木陰に隠れた。特に理由はないが、身体が何故かそうさせた。


「(おい!イェット、あれは、、!)」


「(こんな所に⁉︎)」


「(意外な所で会うものだネ。)」




そこにいたのは、半黒半銀(はんこくはんぎん)の美しい髪に唐紅(からくれない)色の瞳をした、イェットとイグナが「天使の様な」と形容した事のある女の子。




もう1人の男は、、。


「(な、何だよアイツ、、ありゃあどういう⁉︎)」


「(何だ?どうなって、、どうして⁉︎)」


「(ある意味、俺やイェットよりも目立つネ、、!)」



そこにいたのは見た事のない、、、いや、「存在しているのが不思議」な出立の男だった。


乱れ髪が左右で翡翠色と黒髪に分かれている。


3人から見て正面右手側が翡翠色、左手側が黒色の髪。目は髪で隠れて見えない。


(エトナの民、、、なのか⁉︎)


イェットは何故か言い様のない気味悪さを覚えた。




乱れ髪の「半エトナ」の男は、その手に2色の花を持っている。


3人が隠れた木々の隙間からは、微かながら声が音として届くが、内容は分からない。


男は王女様に花を渡して何か言っている。その花は赤とピンクのゼラニウムと言う花だった。


その花言葉は

赤は「君がいて幸せ」

ピンクは「決意」


王女様は後ろ姿で表情は分からないが、何か話声と笑い声が聞こえた。


(、、、!)


イェットは、何とも言い様のない焦燥に駆られた。と同時に、「エトナの呪縛」とは違う、胸が締め付けられる様な感覚、、。


ポケットに入れてある首飾りを握りしめ、イェットは何故か怒りにも似た悔しさに苛まれた。




「(イグナ、シン、、、帰ろう。)」


「(お、おいイェット? どうしたんだよ⁉︎)」


「(イグナ、今日の所は帰ろウ。)」




3人はゆっくりと、音を立てない様にその場を去った。

 

イェットがいた場所には黄色と真紅のゼラニウムが咲いていた。


その花言葉は、、。




「ありがとうハイオーン。今日はアトレイタスも四神も用事があってさ、私の護衛頼まれてごめんね。」


「いえ、王女様の為なら何時何処でも馳せ参じます。」


「いつも堅苦しいなあハイオーンは。」


シーヤが笑って花を見ている間、男は翡翠と黒を掻き上げた。


(アイツらは見習いの、、?何をしに来たのだ?)


黒い右目と赤支子(あかくちなし)の左目の三白眼の男、ハイオーン・メディウム・エトナは彼等の後ろ姿を、その鋭い眼差しで捉えていた。




「その日」まで、あと十数時間。












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