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57.色々バレてました

 ――国王への謁見後……大きく事が動きだした。


 エーヴは、直ぐに連絡をしたステファンの養父が迎えに来て、彼の領地へと向かった。ずっと、エーヴを想い続けていた幼馴染みの魔道士は、きっと彼女を幸せにしてくれるだろう。


 ステファンについては、『病弱だった為に、専門施設で隠して育てられた第一王子が、病を完治し王太子として戻って来た』と、王国内に大きく噂を広められた。

 近々、お披露目を兼ねた大規模なダンスパーティーが催されるようだ。


 現王妃のアレクサンドルの母は――。

 王太后が亡くなる怖ろしい瞬間を目にした時から、王族同士のいざこざには何があっても関わらないと決めたらしい。

 だから、ステファンが王太子になろうとも、全く気にしないのだとアレクサンドルは教えてくれた。


 シュヴァリエは、容姿をずっとステファンが借りていた為、そのまま変わらず魔導師として受け入れられている。

 ただし、新しい王太子の名が『ステファン』なので、魔導師ステファンは魔導師シュヴァリエに改名。そう登録し直して、宮廷内の関係者に周知を図った。

まあ、身代わりでいつも仕事をしていたので、だれも別人になったとは思わないだろう。


 そして、沙織は――。


 ガブリエルとアーレンハイム公爵邸に帰り、カリーヌやミシェルと感動の再会を果たしたのだった。


「うーん。さて、どうしたものかしら?」


 公爵邸の庭園で、一人で悩んでいた。突然消えたリュカの存在を、カリーヌにどう説明したら良いのかと。

 王太子になったステファンや、身代わりの居ないシュヴァリエは、宮廷から離れられない。


 それにも増して、王太子になったステファンに、どうやってカリーヌを会わせたら良いのかが大問題なのだ。


(……やはりここは、お義父様に相談かしら?)


「サオリ姉様、何を悩んでいるのですか?」


 庭を眺めつつ真剣に悩んでいると、ミシェルが声をかけて来た。

 カリーヌは今日、友人のお茶会に呼ばれていて留守をしている。沙織も誘われたが、流石に疲れているからと遠慮させてもらった。


「実は、リュカが居なくなってしまって……。カリーヌ様に何て言ったら良いのかと……はぁ」


(まあ、嘘じゃないし)


「あんなに懐いていたのに、不思議ですね。きっと、……()()()として忙しいのでしょう」


「……うぇっ!!? な、な、何で、それをっ!」


 ミシェルは、チラリとこちらを流し目に見た。


「どう考えても、王命で行くのにリバーツェは連れて行かないでしょう? 姉様が向かわれた後、全て父上にお聞きしましたよ……ステファン殿()()の事。彼方此方で第一王子の噂を広めたのは、僕ですからね」


(あゔっ! そうだった、ミシェルはお義父様の片腕として動くんだった! ……忘れてたわ)


「じ、じゃぁ、今の魔導師が……」

「彼が、あの影だったとは……。シュヴァリエでしたっけ?」


(ああー……、完全にミシェルの瞳の中が吹雪いてるわ)


「よくもまぁ、色々と隠していましたね。サオリ姉様?」

「…………すみません」


「でも、宮廷魔導師になったら……そう簡単には姉様には近付けませんね。僕的には、もう邪魔されなくて良かったです」

「邪魔って? いったい何の……」


 沙織には意味がさっぱり分からなかったが、ミシェルは怖いくらいにこやかだ。


 それはさておき――。


「あっ! ミシェルがそこまで知ってるなら、協力してほしいの!」


「……協力? 今度は何を企んでいるのですか?」


(企むとは、失礼なっ)


 ムッとしつつも、ステファンとカリーヌに素敵な出逢いを演出したい、と話を持ちかけてみた。


 ミシェルは、度が過ぎるシスコンではあるが……カリーヌの幸せを心から願っている。そうでなければ、アレクサンドルとの婚約なんて、疾うの昔に潰していた筈だ。

 だからこそ、誰よりもカリーヌの幸せを願うステファンになら、ミシェルも協力してくれるだろうと思った。


「ステファン殿下と……」

「ええ、お義父様も呪いが解けたら良いと言ってくれました。この件も、ご相談したいのだけれど」


 ピクっと、ミシェルの眉が動く。


「この件も? ……やっと影が離れたのに、次から次へと」と、ぶつぶつ呟いた。


「え? 何か言った?」

「いいえ」


 ミシェルはそう言うと、突然――グイッと沙織の腰を引き寄せた。


(なっ――!?)


 焦る沙織にお構いなしで、ミシェルは甘い声で耳打ちする。


「……こんな、演出はどうですか?」と。


 ミシェルは、ある事を提案してきた。

 その案には賛成だが。いくら内緒話だとしても、この近過ぎる距離にどぎまぎしてしまう。話が終わると直ぐにパッと離れた。


 そして、早速宮廷へ向かおうとすると。


「僕も行きます」

「はい?」

「僕がシュヴァリエに会うのに、何か問題ありますか? まだ、隠し事とかあるのですか?」


 ニコニコの笑顔が少し怖い。


「……ありません」


 仕方なく、ミシェルも一緒に研究室へ転移した。


 転移陣は起動すると光るので、シュヴァリエは沙織が来ると分かっていたのだろう。

 でもまさか、ミシェルも一緒に現れるとは思わなかったのか、驚いた様子だった。


「成る程、此処に転移していたのですね」


 ミシェルはキョロキョロと周りを見渡し、正面に居たシュヴァリエをじっと見る。


「君が、影だったシュヴァリエか……。僕の知っているステファン様そのものだね」と、ミシェルは正直な感想を言った。


「シュヴァリエ、突然ごめんなさい!」


 ミシェルの態度も気になったが、先に急な訪問を謝った。


「サオリ様、どうされたのですか?」

「実は、シュヴァリエにお願いがあって……」

「ぜひ、君に協力をしてほしい。カリーヌ姉様とステファン殿下の為に」

「ステファン様の……。ミシェル様、お話し下さい」


 それから――三人である計画を立てた。




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