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44.助けに行きます

 宮廷のいつもの研究室に到着するが――ステファンの姿は無かった。


「あれ? ステファン様は……居ないわね?」


『この時間は、いらっしゃる筈ですので探して参ります』


 そう言うと、リュカからシュヴァリエに戻って姿を消した。


(……どうやって、姿を消すのかしら? いつも不思議に思うのよねぇ)


「それにしても、サオリ嬢の魔道具と研究室が直接繋がっていたとは……。あの魔道具は、兄上が作られたのですか?」


「そうなのよ。お義父様にお願いしたら、ステファン様が作ってくださったの。ただ、あの魔道具はその場に残ってしまうから、いつもは寮の自分の部屋から転移してるのです」


「え……!?」


 アレクサンドルは表情を強張らせ、沙織を見る。


「で、では……! あの場に、貴重な魔道具がそのままなのですか!?」


「いえ、まさか! 侍女のステラに頼んで回収してもらっている筈です。帰りの時間もステラと決めて来ましたので。その時間に合わせて転移するつもりです。いくらアレクサンドル殿下とはいえ……女子寮内に勝手に入ったら、変態扱いされてしまいますもの」


「た、確かに……入れば、厳重注意はされるでしょうが。なぜ変態に……?」


 アレクサンドルは腑に落ちないものを感じた。


〈女子寮に忍びこむ=変態〉沙織の頭の中ではそうなっていた。


 そんな、どうでもいい話をしていると、ステファンが何かを持ってやって来た。


「アレクサンドル、サオリ様。そろそろいらっしゃる頃だと思っていました。オリヴァーの件ですよね?」


「「どうしてそれをっ!!」」


 思わず同時に言ってしまった。


 ステファンは、ドサッとテーブルに積み重なった服らしき物を置く。


「シモンズ領が、色々と大変な事になっている様ですね。少し前に……隣国レイジーナで水害が起こり、飢えに苦しんだ民が暴動を起こしたそうです。その暴徒の一部と、隣国の兵が国境門に流れていると報告が入りました」


「……暴動? 学生であるオリヴァーを呼び戻す程、大変なのですか? シモンズ辺境伯なら……そのくらい、対処出来るのでは?」


 アレクサンドルの言葉に、ステファンは首を横に振った。


「それだけではなく――森に異変が起こり、魔物が溢れ出しているそうです。同時に対処するには、人手が足りなさ過ぎるのです。今、軍を向かわせるかどうかを、アーレンハイム公爵が、陛下や領に騎士を持つ貴族達、各機関に掛け合っています」


「……え!? 直ぐ助けに行けないのですか?」


「公爵は、そうしたいのですが……。自分達の領地から兵を出すのを、渋っている者もいるようです」


(何だそれっ! いつも、大変な役目をしてくれているオリヴァーの家を助けないなんてっ。貴族って……)


 怒りでプルプルと拳が震えてくる。


「それなら、私が助けに行きます!! 絶対に、行くので止めても無駄です!」


 アレクサンドルは目を見開き、ステファンはハァと溜息をついた。


「……でしょうね。サオリ様なら、そう来ると思ってました」


「「え?」」


 沙織とアレクサンドルはポカンとする。


 さっきの積み重なった服の上に、ステファンはポン!と、手を置き言った。


「これは、国から支給される耐久性に優れた軍服です。シモンズ領へ行かれるなら、こちらを着て行ってください。これを着ていれば、シモンズ領の者が国からの援護だと理解し、間違えて攻撃する事も無いでしょう」


「流石だわ、ステファン様! 早速、着替えて向かいます!」


「こちらに、三着用意してあります。一着はサオリ様の女性用。一着はサオリ様の護衛で、シュヴァリエに。もう一着は……アレクサンドルは、どうしますか?」


「勿論、行きます。国の為でもありますが、オリヴァーは大切な友です」


 アレクサンドルは、迷いなく軍服を受け取った。


 このまま直ぐに向かえるように、学園や寮に居る従者や侍女――沙織達の帰りを待っているステラにも、ステファンが連絡をしてくれた。


「ねえ、ステファン様……」

「何でしょうか?」

「強化とかの魔法って、物にも付与って出来るのかしら?」


 沙織は首を傾げながら質問した。


「かなりの魔力を使いますが……出来ますね。例えば、剣の強度を増すとか、速度を上げるとか……なぜですか?」


 ステファンは嫌な予感がした。


「その軍服貸してください」と、男性用の二着を受け取ると、床に並べて両手をつく。

 沙織は、目を閉じ集中する。魔力を流し出すと、軍服が一瞬光り輝き――元に戻った。

  

「はい、出来上がりです!」


 ステファンと、アレクサンドルは瞠目した。


「……サオリ様。貴女はいったい、何をされたのでしょうか?」


「え? 結界コーティングと、重力操作機能?」


「「はいぃ――??」」


 今度は、ステファンとアレクサンドルが同時に叫ぶ。


「えっと、着る結界って感じです。前から、魔力障壁に結界を組み合わせてみたくて。色々とイメージしてたのを、試してみました。空は飛べませんが、かかる重力が多少なりとも減ってくれたら、跳躍力が上がる筈です。逆に、重力が掛かれば打撃のパワーがあがるので、着る人がしたい方にイメージすれば良いのです」


「貴女と言う方は……、どれ程の魔力があるのですか。これは、もう服ではありませんよ?」


 ステファンの顔が引き攣る。


「うーん、時間があればもっと凄いの考えたいのですけど、今回はこれで我慢してください」


「「もう、十分ですっ!」」


(……え? そうなの?)





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― 新着の感想 ―
[一言] ミシェルとステラのやり取りに 宮廷に渦巻く腹黒いあんにゃもんにゃを 感じました(≧∇≦)
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