表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/80

39.後始末が完了して

 宮殿に戻り、証拠として持ち帰った大量の葉を差し出すと、宮廷の専門機関で正しく処理され全て焼き払われた。


 スフィアと男は、脱獄不可能な牢屋で厳重に監視され、自白剤で全てを喋った。あの葉を使った媚薬の流通ルートや、密売組織の情報も。

 それらは、ガブリエルによって隣国に伝えられ、一網打尽に出来たそうだ。


 更には、そのお陰で隣国とも無事に友好関係が結べ、晴れて友好国となった。

 友好国になった証に、保護した獣人の子供達を好きにして良いと言われたそうだ。隣国の言い方はあれだが、奴隷制度のある国に連れて行かれなくて本当に良かった。


 そして――。話し合いの末、スフィア達をどちらの国で処分するかが決まったそうだ。


 隣国が自国の王太子を陥れようとした、許し難い犯罪者達を引き取り、即刻極刑に処した――そう、ガブリエルに報告があった。


 アリスとレオは、アレクがこの国の王子アレクサンドルであると知り、とても驚いていた。


 後日。


 二人には、ガブリエルとアレクサンドルから今後についての話が伝えられた。

 もしも、アレクサンドルの従僕と侍女になる気があるのなら、厳しいがしっかりと教育を受けられる場を与えてもらえる――と。

 アリスとレオは「アレクのためなら頑張る!」と言って、その提案を嬉しそうに受け入れたそうだ。


 王族の従者に獣人が居れば、ほんの少しかもしれないが、差別という芽を摘んでいく改革の第一歩になるかもしれない。


 他の小さな獣人達は、国が所有している孤児院に入り、この国で責任を持って育ててもらえる事になった。


 アレクサンドルは今回の功績が認められて、契約紋を消されて学園に戻ることが許された。


 ただ、アレクサンドル自身は――。学園を退学して、直ぐにでも国の為に市井に行きたいと言ったそうなのだが。国王が「学園を卒業する迄は駄目だ」と認めなかったらしい。


 学園に戻る前に、アレクサンドルはガブリエルに頼み、カリーヌに謝罪の場を設けてもらった。

婚約は、カリーヌに落ち度が無いと分かるように、細かい手続きし白紙に戻された。


 優しいカリーヌは謝罪を受け入れ、今回の出来事を知って、アレクサンドルに同情したそうだ。ただ、カリーヌには最初から恋愛感情は全く無かったので、同情が愛情に変わることも無かった。




◇◇◇




 そして。


 アレクサンドルが学園に復帰する日がやって来た。


 沙織とカリーヌとミシェルのいつものメンバーで、今日から復学するアレクサンドルについての話をしつつ……学園へ向った。


「アレクサンドル様、大丈夫かしら?」


 カリーヌは心配そうだ。


「そうですね、良くない噂がだいぶ広まっていましたから……。カリーヌ姉様は、殿下と会うのは辛くないですか?」


「ええ、私は大丈夫よ。ありがとう、ミシェル」


「まあ、アレクサンドル殿下もかなり男らしくなってましたし、きっと大丈夫でしょう!」


(……アレクの時は自分を俺と呼んで、なかなかカッコ良かったわ)


その一言に、ミシェルの耳がピクッと動いた。


「……サオリ姉様? 何故、殆ど会ったこともない殿下が()()()()()()()と分かるのでしょうか?」


 ミシェルの瞳が、氷のように冷たい光を放っている。


(ヒャッ……! お義父様ったら、ミシェルには今回の件を伝えていなかったのねっ!? ヤバイ……これは、絶対に何かに勘付いているわ)


 全身から冷や汗が噴き出してきた。

 言葉に詰まり返事が出来ない沙織に代わって、カリーヌがおっとりと説明した。というか……言ってしまった。


「ミシェル、それは……今回の事件は、アレクサンドル殿下とサオリ様が解決したからなのですよ。サオリ様は本当に凄いですわ」


カリーヌは高揚し誇らしげに言う。


「…………へぇ。お二人で?」

「えっと……いや。あの、影も一緒だったわよ!」

「まさか、()()()()ですか?」


(ひえぇ……! 何が地雷だった!? ミシェルの目が完全に据わっている……。なんで、そんなにシュヴァリエを目の敵にするのかしら? でも、ステファンのことだけは絶対に内緒だし。あー……、早く学園に着いてえぇぇ!)


「お、お義父様に頼まれて、三人で頑張りましたのっ!」


 ホホホ……と、取り敢えず言い訳しておく。


(まぁ……半分は事実だし。お義父様、後のフォローはお任せしますっ!)




 ようやく学園に着くと、ミシェルと別れて教室へ向かった。教室内を見回すが、アレクサンドルはまだ来ていない。


 少しして、アレクサンドルが入って来ると、教室はしん……と静まり返った。


 カリーヌと沙織は、早速アレクサンドルに挨拶に行く。アレクサンドルは二人と言葉を交わすと、硬くなっていた表情が和らいだ。


「カリーヌ嬢、先日はお時間をいただき感謝します」


 アレクサンドルは、カリーヌだけに聞こえるように、お礼を言った。


「サオリ嬢、学園で会うのは初めてですね。貴女と学べるのは、とても楽しそうだ」と、クスっと笑う。


「ふふっ、私も楽しみです。また、色々と新しい結界を考えますわ」


「……色々ですか? それは……また……頑張ってくださいね」


(ん?)


 なぜかアレクサンドルが、笑顔のまま固まっている。


 そんな意味深な会話を聞いてか聞かずか、オリヴァーとセオドアもやって来た。


「「殿下!」」と、二人は嬉しそうに話しかけた。


(うん、男の友情って何か良いな……)



 この日から――。

 沙織、カリーヌ、イネス、オリヴァー、セオドアのグループにアレクサンドルも加わって、とても賑やかになった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ