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23.客観的に見て

お読みいただき、ありがとうございます。

評価、ブクマ登録していだき感謝しております。

今回は、シュヴァリエの視点です。


 シュヴァリエにとっても、久しぶりの学園だった。


 ステファンが生徒だった時も、学園内で密かに護衛をしていた。三年間、主人と共に過ごした学園は、勝手知ったる場所だ。

 とはいえ、顔を貸すシュヴァリエは生徒ではないので、影として人前に出ることはなかったが。


 今日から主人の命を受け、学園生活を送る沙織とカリーヌを見護ることになった。





 シュヴァリエは今日一日、沙織に関わる人物たちを観察した。その様子からわかったのは――。


 先ずは、セオドア・エヴァンズ侯爵令息。

 沙織に一目置いている。

 実技実習をとても真剣に行っている沙織を、眩しい存在でも見るかのように、事あるごとに手を貸していた。


(彼のお陰もあってか、魔力障壁や結界も上手く作れるようになったみたいだ。サオリ様は、魔力の多さを必死で隠しているようだが……全く隠せていなかったな)


 次にオリヴァー・シモンズ 辺境伯令息。

 明らかに沙織に好意を持っている。

 とにかく近くに行っては話しかけていた。色々と自分をアピールしているが、沙織の反応は至って普通。自然に、彼を褒めては躱している。どうにかデートに誘いたくて、色々と悩んでいる様子だった。


(並のご令嬢なら、とっくに落ちているだろうが)


 担任のデーヴィド・ミッチェルは――。

 時々、周りに気付かれないよう、熱のこもった視線で沙織を見ていた。

 それは、明らかに生徒を見る目ではない。セオドアとオリヴァーの気持ちに気づているのか、二人が沙織に近づき過ぎないよう、上手く立ち回っていた。


(――サオリ様は、彼らの想いに気づいていないのだろうか?)



 それから、ミシェル・アーレンハイム公爵令息は、カリーヌの弟であり――侮れない人物だ。


 かなりのシスコンであるミシェルは、アーレンハイム公爵の右腕と言える。将来は、国にとっても重要な役割を担う役職に就くだろう。

 以前のミシェルは、姉にしか興味がない様子だったが――沙織に対してだけは、何かが少し違っていた。


(サオリ様の前では、自然でいられる……そんな感じだ。――そういえば、アーレンハイム公爵も、サオリ様には気を許している様に見受けられた)



 ステファンの想い人、公爵令嬢カリーヌは――。

 以前からよく見てきた。ステファンがカリーヌによく会いに行っていたため、シュヴァリエも自然と目にしていのだ。


(本当に、彼女は完璧な公爵令嬢だ)


 そして、優しく健気なカリーヌは、()()王太子の婚約者。ステファンは、二人が幸せになることだけを望み、偽りの身分のまま見守ることを選んだ。呪いを解く方法まで見つけたというのに。


 あれ程、頑なに拒んでいたが、まさか王太子の画策した断罪によって、呪いを解く事ができる人物を転移させることになってまうとは。全くの想定外だった――。


(私は、主人に生きていてほしい。カリーヌ様を落とし入れようとした、偽の光の乙女は許し難いが……。主人がサオリ様を呼ぶことになったきっかけだ。正直に言ってしまうと、あの偽物に感謝している。――勿論、誰にも言えないが)





「それで、シュヴァリエはどう思う?」


 沙織は温かいミルクティーを飲みながら、シュヴァリエ意見を求めてくる。


(多分、ステファン様との日課……学園での情報共有を、いつもしていたのだろう)


 リュカの毛並みが好きなのか、沙織は話しながら首や背中を優しく撫でてくる。


(この姿で撫でられるのは、確かに気持ちいいのだが……)


 自分の正体を知っている沙織に撫でられていると思うと、シュヴァリエは複雑な気分になってしまう。


『そうですね。今の学園内には、カリーヌ様に害を成そうとしている者は居ないかと』


 今日、見回った感想を述べる。


「そうよねぇ。スフィアの取り巻きだった三人も、今はカリーヌ様とも仲良くなっているしね。少し変わってるけど、案外いい人達で良かったわ」


(――ああ、やはり気づいていない。いつかは、元の世界に帰られる方だから……それでいいのかもしれないが)


「もう、この学園が安全なら……。国王との約束の方へ行こうかと思っているの。アレクサンドルの行方は気になるけど」


『……!! それは、ステファン様の……』


「そう。時間もどのくらいかかるか想像出来ないしね。早い方がいいと思って。ただ、その前にやってみたい事があるのだけど」


『やってみたい事ですか?』


「私の魔法がどの程度の物なのか、実戦で試したいの。例えば魔物と戦う、とか?」


『……それはっ。ステファン様に、相談させていただいてもよろしいでしょうか?』


「ええ、よろしくね。シュヴァリエ」


 そう言って、沙織はニッコリ微笑んだ。


(どうやら、彼女は口先だけではなく、本気で私の主人を助けるつもりだ。実技実習を真剣にやっていたのも、全てその為だったのか……)


 沙織の力になりたい――シュヴァリエは、純粋にそう思った。

 




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