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1.異世界転移しました

初めて、悪役令嬢のお話書きます。

よろしくお願いいたしますm(__)m

「カリーヌ・アーレンハイム! お前の悪事は全て掴んでいる。この場で、お前との婚約を破棄する!」


 身に覚えのない断罪を受けて、真っ青になったカリーヌの意識は、段々と遠のいて行きそうになる。

 だが、公爵令嬢として衆目に晒され、無様に倒れることなどできない。目眩を堪え、正面を見据えていた。


 王太子であるアレクサンドル・ベネディクトにペッタリ寄り添うのは、スフィア・ガルニエ男爵令嬢。ふわふわのピンク色の髪で、愛らしい顔立ちは男性の庇護欲を誘う。

 

「お言葉ですが、殿下。悪事など……私には全く身に覚えがありませんわ」

 

 アレクサンドルは、カリーヌに冷ややかな視線を送り、忌々しそうに話を続ける。


「お前は、この優しく可愛いスフィアに嫉妬し、嫌がらせや、下手をしたら命を奪う怪我までさせようとしたではないか!」


「アレク様……」と、スフィアはアレクサンドルの手を取ると、ウルウルとした瞳で見る。スフィアを安心させるように頷いたアレクサンドルは、カリーヌを睨みつけた。


「今日をもって婚約は破棄! お前をこの国から追放する! そして、このスフィアと私は婚約を」


 そう言いかけた時だった。


 ――ドサッ!!


 アレクサンドルとカリーヌの間に、何かが落ちて来た。


「あたっ! くゔー尾骶骨がぁ! お尻が割れるぅ」


 そこには、全身黒尽くめ――口元だけ白いマスクをした、黒髪黒眼の少女が「……イタタタ」と蹲っていた。




 ◆◆◆◆◆◆




 私、山田沙織と申します。


 来週に控えた、文化祭で行われる高校内のアイドル決定戦の最終選考の為、今日もまた夜暗くなってから、黒のサウナスーツに身を包みジョギングをしていました。ご近所に顔バレしないように、マスクもしっかり着用して。


 うちの高校のNo.1アイドルに選ばれると、かなりの確率で芸能界からスカウトが来るのです。一応、演技審査等もあり、わけのわからない台詞の練習もしています。


 べつに、芸能界に興味はありませんが。


 中学時代、ちょっとばかりイジメというやつを体験しました。当時は、今より少しぽっちゃり気味でしたが外見でのイジメではなく、男子絡みのイジメを受けました。

 正直、私は男子に好かれるタイプではありません。大人しいのではなく、勝気なタイプなものでして。


 ある日、仲の良い友人Aが「同じ部活の男子Bが私と付き合いたいと言っている」と言ってきました。友人Aは友達の多い明るい美人さんで、よく人の為に動きます。

 私は断りましたが、その友人Aに少しだけでいいから付き合うよう頼まれ、試しに付き合ってみることに。その男子Bは意外と良いやつで、楽しい日々を過ごしていました。


 そんなある日。


 委員会が終わって誰も居ない教室に入ると――。


 私の机にはぎっしりと、鉛筆で悪口が書かれていたのです。一緒にそれを見てしまった、大人しいタイプの友人Cは、泣きながら消しゴムで消してくれました。


 内容は様々でしたが、男子Bにはお前は相応しくない的な内容がメインだったので、完全なる嫉妬からの嫌がらせだと理解しました。勿論、私がただ泣き寝入りする筈もなく、犯人はしっかり突き止めましたが。


 犯人は友人Aとその取り巻きでした。どうやら彼女は男子Bが好きだったみたいです。


 なら、付き合えなんて言わなきゃいいのに――そう思いましたが。


 Bには自分の良いところを見せつつ、私の悪口を吹き込み、いつの間にか二人は付き合っていたのです。後日、私は彼から振られる予定だったみたいなので、こちらから振ってやりました。


「どうぞ、二人でお幸せにっ!」と。


 ちなみに、友人Cは今でも親友です。


 それから私は、人を見る目を養うようにと、人間観察や自分磨きをしまくりました。結果、高校に入りアイドル最終選考に残ったわけです。


 ――そして。


今日も日課であるジョギング中に、想像を絶する事態が起こったのです。


 いつもの広い公園を走っていると、急に足元が光り、円陣みたいな物が浮かび上がったと思ったら、そのまま吸い込まれてしまいました。


 吸い込まれた次の瞬間には、落下していき……突然の着地。それもガッツリお尻から勢いよく。


 で、今に至ります。




 ◆◆◆◆◆◆




「あぁ、痛かった」


 お尻を摩りながら顔を上げると――。


 そこは豪奢なシャンデリアがキラキラしていて、まるで御伽噺にある、お城の舞踏会が行われるような場所だった。


 正面には、驚愕に目を見開く王子様的な存在と、それに寄り添うぶりっ子風な女の子。後ろを見れば、真っ青で震えている綺麗な女の子が。

 周りには貴族みたいたな格好をした、若者がたくさん居た。向こう側のちょっと高い所に座っているのは、王様っぽい風貌をしている。


(……なにこの状況? 私はジョギングしてたはずよね?)


 よく見ると、友人Cがど嵌りしていた『乙女ゲーム』のキャラたちに酷似しているではないか。


(私の記憶力は頗る良い!)


 自分ではプレイしたことはないが、友人Cがよくやっていて、隣でさんざん解説された記憶があった。王太子の攻略法やら、特別アイテムやら。色々な攻略者のルートもあったはず。


(これって、もしや最初の断罪イベントってやつじゃぁ!?)


 まさかと思うが、それ以外考えられなかった。


「おっ、お前は誰だっ!? 不吉な黒髪に黒い目、黒尽くめの変な格好をして! もしや……悪魔かっ!?」


(不吉……しかも悪魔って)


 ――カチン。


 いかにも王子様っぽいキャラ名は、確かアレクサンドルだった。隣に立っている女の子は、ヒロインで光の乙女のはず。なのに笑顔と一致しない、嫌な目つきをしている。

 バサっとフードとマスクを外して、アレクサンドルに冷たい視線を送った。


(私のアイドル審査用の演技を、とくと見よ!)


「わたくしは……訳あって、他の世界より遣わされし者なり。王太子アレクサンドルよ。隣に寄り添う光の乙女との浮気を誤魔化す為に、公爵令嬢を陥れるなど言語道断っ!!」


「なっ!? 浮気など、していない! それに、嫌がらせの証拠だってある!」


「ほほう、左様ですか。身分の高い人間が、婚約者でもない女性と触れ合っておいて? まさか、その繋いだ手は、他の人間には見えない魔法でもかかっているのですか?」


 慌てて手を離す二人を、周りも少し怪訝そうに見た。


「ちなみにっ! 証拠ってのは、こちらの公爵令嬢が何かしたのを現行犯として捕まえたのですか?」


 背後のカリーヌは、否定するようにプルプルと首を横に振っている。


「まさか! アレクサンドル殿下ともあろう方が、その乙女の言葉と、曖昧な物的証拠だけで仰ってはいませんよね?」


「……っく!」


 アレクサンドルは、苦虫を噛み潰したような表情になった。


(はぁ、まさかの図星とはね)


「わ、私は確かにカリーヌ様に嫌がらせを受けました!」


「へぇ。では王直轄の影の存在に、嘘偽りの無い証拠を見つけていただいてはどうでしょうか? それから、貴女がプレゼントした(高感度アップ)お菓子の内容成分の検証もお勧めします。その恋心……魅了の媚薬などの影響が入ってないと良いですね」


 ニッコリと笑みを向けると、真っ青になるスフィア――。


「ち、ちがっ、薬なんてっ」


(あー、これ完全に入ってたな薬。うーん、なんて名前のアイテムだっけ)


 思い出そうと悩んでいると、その場に居た王家の近衛や従者がスフィアを取り囲む。慌てたアレクサンドルが、スフィアを守るように立ちはだかった。


(今のうちに!)


 バッとカリーヌの手を取ると、沙織はその場から走り出す。


「やめろっ! そ、それより、あの悪魔をっ……えっ? い、居ない!?」


 遠くでそんな声が聞こえたが、当然無視だ。

カリーヌは理解できず、引っ張られるままドレス姿で走る。


「ちょ、ちょっと……お待ち……ください、ませ」


ぜぇぜぇとしながら、カリーヌが話しかけてくる。


「話はあとで! もうちょっと頑張って!」


 広い廊下の向こうから、ひとりの男性が手招きしながら叫ぶのが見えた。


「こっちへ! 早くっ!」


 知り合いの居ない世界で、自分の勘だけを信じてその男性に駆け寄ると――。

 またも魔法陣らしきものが発動し、今度は三人で転移していた。


お読みいただき、ありがとうございました!

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