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限界突破1回目(5)

 普段から運動習慣のない僕は、ずっと動いていることでだんだんと動きが鈍くなっているのを自覚しつつ、それでも足だけは止めないでいた。しっかりと動かし続ける。


 そうやって長い時間向かい合っていて、ふと疑問に思う。ドッペルゲンガーが徒党を組む理由はなんだろう? 同士討ちをして限界突破したほうがより強くなるんじゃないのか? わざわざ自分より弱い個体を従える意味ってあるのか?


 僕は自分の置かれている状況をほとんど理解できていない。とりあえずドッペルゲンガーを倒すことはわかっているが、最終的な目的も知らない。そもそも限界突破の先になにがあるんだ? 仮に僕がやられたらどうなるんだろう……ただ殺されるだけなのか?


 ……いったいこのゲームはどうやったら終わるんだ? ドッペルゲンガーを全部倒したら……それで終わりなんだろうか?


「お待たせ! リョーくん、今バフをかけるわね!」


 また思考の渦に囚われかけた僕は今度もフォルトゥナの声で現実に引き戻される。


「待ってたよ……ホント、ありがたい」


 フォルトゥナがかけてくれたステータスバフの恩恵で、疲れている体に再び力が漲ってきた。これこれ、この感じ。やっぱり支援効果って絶大だな。


「野良リョーくんたちに負けないように、私達も連携しましょう!」

「そうだね。何度もバフをかけてもらってるんだから、次こそ1体くらいは倒してみせるよ」

「その意気よ、リョーくん! じゃあ、行っくよー!」


 フォルトゥナは羽ペンで空中に模様を描く。光り輝いた模様が野良リョーくんの1体に絡みつくようにグルグルと渦巻いていく。僕へのバフと似たような感じだが……なんだか渦の巡りが逆回転になっている。


「行動速度のデバフをかけてみたわ。ちゃんと効いてるみたい。あの野良リョーくん、かなり鈍足になっていると思うわ」

「そんなこともできるんだ!? だったらまずはそっちから片付けちゃおう!」


 僕はフォルトゥナのデバフに困惑している様子の野良リョーくんに狙いを定めた。微妙に射程圏外だった間合いを一気に詰める。ダッシュしながらの突撃だ。剣を水平に構えてとにかく全力で前進する。


「うおおぉおーーー!」


 僕は雄叫びを上げた。こうすることで少しは早く動けるような気がしたから。


 リーダーリョーくんが僕の突撃に対して迎撃を試みた。デバフを受けている野良リョーくんの前にもう1体の野良リョーくんを割り込ませる。野良リョーくんの動きは素早くはない。一方の僕はフォルトゥナのバフ付きだ。


「させるかよっ!」


 フォルトゥナのバフを受け、僕の筋力は増強されている。今だったら多少無茶な動きでもできそうだ。

 僕は割り込んできた野良リョーくんの前で左足を強く踏み出す。急制動をかけて突撃の勢いを殺した。僕の大減速でタイミングを狂わされた野良リョーくんは、本当は僕がいたであろう対象のいない空間への攻撃を繰り出した。激しく空振り、大きく体勢を崩した。


「そこだぁーー!」


 僕はうしろに引いていた右足に強く体重をかけ、腰を捻りながら右手に持った剣を一気に突き出す。その切っ先は鋭く、バランスを崩して前屈みになっていた野良リョーくんの頭にクリーンヒットした。嫌な手応えとともに野良リョーくんの首から上が胴体から離れて吹っ飛んでいく。そのまま勢いを落とすことなく、次は行動速度デバフを受けている野良リョーくんとの距離を詰める。僕の急接近にリーダーリョーくんの反応が遅れている。ここがチャンスだ!


「これでも喰らえーっ!」


 僕は走ったまま剣を大きく振りかぶる。完全に僕の射程距離の範囲に収まっている野良リョーくんに向けると、ためらうことなく右肩から左腹にかけて逆袈裟に振り下ろした。ズブズブとその体にめり込んでいくにつれて剣の推進力がどんどんと弱まっていく。


 あと……ちょっと!


 僕は歯を食いしばって剣の柄に体重をかけた。今度こそ僕は剣を振り切った。肩口からばっくりと斜めに切り裂かれてた野良リョーくんの上半身が地面に落ちる前に、僕はその上半身目掛けて肩でタックルをした。

 ふっ飛ばされた野良リョーくんの上半身がリーダーリョーくんにヒットする。当たりどころがいい。首から顔にかけてのしかかる邪魔な胴体に、リーダーリョーくんの視界が防がれている。


「フォルトゥナ! もう1回さっきと同じのできるっ!?」

「ええ、任せて!」


 僕からは見えないが、リクエストに応えたフォルトゥナが素早くデバフをかけてくれたようだ。リーダーリョーくんの全身に僕のバフとは逆向きの模様がまとわりついている。


 これで、残すは行動速度デバフのおかげて動きが鈍くなっているリーダーリョーくんただ1体だ。ようやくここまできた。1対1ならなんとかなる。


 ……僕は終わりの見えてきた戦いに油断していたのかもしれない。


 リーダーリョーくんが振り払おうとしていたはずの野良リョーくんの体が光の粒子になり、リーダーリョーくんの手から体の中に取り込まれているその姿を見たことで…………僕は事態の深刻さに思わず息を飲んだ。

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