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限界突破1回目(2)

 今回の限界突破で僕のステータスはちょっとだけ上がったとのこと。

 具体的に数値で表現すると筋力が1増えた。これはフォルトゥナのステータスバフと同じ値とのことだ。


 たった1増えるだけでもあれだけやれる気になれるんだからスゴイ。ステータスというのはかなり重要な指標のようだ。僕の元々のステータスがどれくらいか知らないんだけど。


「リョーくんは強くなるのに時間がかかるタイプみたいね」

「いきなりだな、あいかわらず」


 それは限界突破をしたのに筋力がたった1しか増えなかったからか? そうなのか??

 僕は自分の両手をグーパーグーパーと閉じたり広げたりを繰り返した。なんか自分の調子を確認するときってそんな仕草をしちゃうよね。


「限界突破で冒険者レベルが無事に1に上がったから、これからはレギュレーションが変わるのね。格上に遭遇する可能性が出てくるわ」

「もう格上と当たるの!?」

「運が悪ければね。ドッペルゲンガーの総数がわからないから、向こうがどれだけ同士討ちをしているかにもよるの。優先的にリョーくんを狙ってくるとは思うんだけど」

「僕は優先順位高いんだ。ヘイトが高いとかそんなやつなのかなぁ……?」


 ヘイトは嫌われ者としての評価みたいなものだ。オンラインゲームとかで、先頭で盾役を任される騎士とか忍者とかみたいに、攻撃を受けたり避けたりして味方を守るキャラクターが所持する特性とかスキルがそれに当たる。ヘイトが高いことによって敵から優先的に狙われて、防御や回避を駆使して結果としてパーティー全体のダメージを減少するのが大きな特徴だ。あとは回復役とか大きなダメージを叩き出したアタッカーなんかもヘイトが高くなるから、ヘイトの管理が大事とかって話を聞いたことがある。


 戦闘要員が僕ひとりしかいないからそもそもヘイトの概念がないと思っていたけど、この舞台全体で共通化されているということか。ヘイトトップが常に僕。


 ……なんかイヤだなぁ。


「ヘイトというよりはオリジナル度かな?」

「オリジナル度……?」


 聞いたこともない値だ。ステータスの一部なのか?


「さっき話したけど、リョーくん自身もドッペルゲンガーの一部ではあるんだけど、あくまでリョーくんのドッペルゲンガーとしてなの。自分を含んで自分の分身がすべてドッペルゲンガー。その中ではレベルゼロの時点でちゃんとひとつの個体として成立しているリョーくんがオリジナルって感じ?」

「『感じ?』って……そこはハッキリ言ってくれないと不安になるよ」

「ゴメンね。私も完全にすべてを理解しているわけじゃないのよ。サポート役の女神だとすべての権限があるわけじゃないわ。あくまでリョーくんがドッペルゲンガーを倒して限界突破する手伝いをする役割だから」


 フォルトゥナが申し訳なさそうに頭を下げる。また、あやまられてしまった。


「僕も責めているわけじゃないよ。フォルトゥナが知らないことがあるってことを知らなかったから。こっちこそゴメン」

「リョーくんがあやまる必要はないわ。不安になるのもわかるし」


 お互いに頭を下げた結果、ふたりで俯いてしまっている状況はどうなんだろう。

 僕は先に頭を上げた。


「いつまでもこうしていても仕方ないから先へ進もうよ? ね?」

「うん。そうだね」


 僕とフォルトゥナは今度はふたりで並んで先へ進むことにした。


 荒野はあまりにも広い。

 フォルトゥナの感知なくして僕が先頭を歩くことはできない。もし先制攻撃を受けてしまったら、今の僕じゃすぐにやられてしまうかもしれないから。


 大きな岩が陰を作ってくれる。ときどきそこで休みながら、僕達は次のドッペルゲンガーを探した。

 しばらくはなんの変化もなかった。天気も再現されているからかなり暑い。旅装束は日差しを防いでくれるが熱は防ぎきれない。かといって脱ぐこともできない。僕は汗にまみれながら、重くなりつつ歩みを淡々と進めた。


 変化は唐突に起きた。


「来たわね…………でも、どうして……」

「フォルトゥナ、どうしたの!?」


 フォルトゥナが僕に向けた顔からは余裕が消えていた。焦りが見える。

 この暑さの中、僕の背筋を悪寒が走り抜ける。


「さっきまでそんな気配なかったのに…………」


 僕にもフォルトゥナの緊張が伝染する。ゴクリとツバを飲み込んだ。


「私達、囲まれているわ」


 1対多数――素人同然の僕が2戦目で遭遇するにはあまりにも過酷なシチュエーションだ。

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