第八話「ゼンターニア」
ーちょっこり解説ー
詠唱魔法
・詠唱魔法は妖精に魔力を分けてもらい強力な魔法を発動する魔法、使用者の魔力を大量に使うため、下手したら死んでしまう危険な魔法。詠唱が長ければ長いほど強力になり使用魔力量も増える。詠唱している言葉にはどんな魔法かを要求する言葉とも言われている、なんか文章が勝手に思い浮かぶらしい。
青空の下、そよ風に当たりながら馬車はゼンターニアの中心にある城へ向かう。
「んー! 風がきもちい〜」
あひるは大きく体を伸ばしリラックスしていた。あひると一緒の馬車に乗っていた魔法使いがあひるの杖を興味深く見つめている。
「私の杖がどうかしました?」
「あぁいや! ちょっと素晴らしい形の杖だったもので、見惚れてしまいました」
杖を興味深く見ていた女性の隣にいた別の魔法使いの女性がため息を吐いた。
「この子、杖が大好きなんですよ、たまに敵じゃなくて敵が使ってる杖を見ちゃったりする程で」
「そ、そうなんですか〜 この杖のどこがよかったんですか? 私杖のことは詳しくなくて」
「この杖はおそらく古代の遺産と言ってもいいくらい、私が見てきた中では最高クラスの物ですね、私は職人ではないのでこの杖を完全に理解出来るわけじゃないですが、そうですね、英雄が使っていたと言われる神が残した杖に似ていますね、形自体は違いますが特徴はすごく似ています」
「そんな大層な杖かわからないけどね〜」
「いやいや! 昨日の詠唱魔法を見た限り、ただの杖ではないですよ。杖の主な役割は魔法のコントロールをやりやすくすることです、ただし、魔法の力が大きければ大きいほどコントロールは難しくなってきます、ですがあひるさんは昨日あまり被害を出さないためか、ただ敵に向かって放つ事はせず敵を包むように攻撃し倒しました、あそこまで余裕でコントロールできるのは、あひるさんの能力ももちろんありますが、その杖もかなりのものになります」
「へぇ〜、やっぱりそうだったんだ......」
「やっぱり?」
「練習の時は別の杖だったから、この杖を師匠から貰って初めて使った時、感覚が全然違かったんだよね」
「その師匠さんが大切に使っていた杖だったんでしょうね、あひるさんも大事に使ってあげてください」
「もちろんです!」
「あひるちゃん! もうすぐ街に入るよ!」
ゼンターニアの城下町の門はもう目の前だった。リゼアの時よりも倍デカく、街から聞こえて来る賑やかさもリゼアとは違う賑やかさだった、門を潜る時に横で門番が敬礼をして立っていた、そしてぽこ達が帰ってきたのに気づいた街の人たちの賑わいは増し、その声は歓声に変わった。
「リゼア部隊が帰ってきたぞ!」
「ぽこ様ー! レイ副隊長ー!」
その場にいた人の3分の1がぽこを様付けしているようだった。
「ここでも様付けなんだね」
「隊長はゼンターニアの中でもトップクラスで人望が厚いですからね〜。この国の隊長などは一部の領土の管理を任されているので、他の国での貴族並みの地位があるんです」
馬車がある程度進み街の真ん中にある広場で馬車を止めた
「ここからは各自でやる事を行い終了次第城に戻ってきて」
「「了解!」」
一部の兵達はグロウズに捕らえられていた人たちを連れてそれぞれの家まで送りにいった。
「残った兵はこれから城へ向かうよ!」
馬車は再びゆっくりと進み出し、城へ向かって進んでいった。城の正門に到着し、ぽこが門番と話し、門を開けてもらった。遠くから見ても巨大だった城は近くに来るとその大きさをさらに感じることができた。
「遠くから見ても大きかったけど近くに来るともっと大きいんだね〜これはすごい」
「あひるちゃんはここで降りて、団長の所へ案内するから、レイちゃんみんなの指示よろしく!」
ぽこは兵に自分の馬の手綱を渡した。
「それじゃあ行こうか、ついてきて」
ぽこは城についてる大きな扉に付いてるさらに小さな扉を開けて中に入った、あひるはそれについていく。見たことない大きな廊下を通りどんどん城の奥へと入って行く。すると、廊下を通っていた時通りすぎた部屋の扉よりも少し大きな扉の前にたどり着いた。
「この扉の奥に団長がいるから、じゃあ入るよ」
ぽこは大きな扉をノックした。
「リゼア部隊隊長ぽこ、ただいま帰還しました、連絡していた客人を連れてきました」
「入っていいぞ」
「失礼します」
中に入ると部屋はある程度広く壁には大剣が立てかけられていた。そして扉の真っ直ぐ先にデスクがありそこで40代くらいの肩幅が広い男が椅子に座っていた。すぐそこに紙が置いてあるところからさっきまで書類作業をしていたようだった。
「ハダルさん、あひるちゃん連れてきましたよ」
「ご苦労、君があひるだね? ゼンターニア騎士団を仕切っているハダル・ベイカーだ、よろしく」
「あひるです!」
二人は軽い握手をした。ぽこがそばにあった椅子をあひるの後ろに置いた。
「あひるちゃんどうぞ座って!」
「うん、ありがとう」
「急に呼び出してすまない。リゼア部隊を助けてくれたと聞いて、直接お礼を言いたかったんだ」
「いいですよ全然! 私はただ旅をしているだけなので、それに本命は私の魔法について知りたいんじゃないんですか?」
「感がいいな、申し訳ないが確かに君の魔法の方が本命ではあるが、もちろん兵を助けてくれたことはすごく感謝している」
「気にしなくていいですよ、みんなの反応を見てておおよそ見当はついていましたから」
「そう言ってくれて助かるよ、お礼は準備が出来次第させてもらうよ、さぁ本題に移ろう、君の魔力が他の人間よりずば抜けて多いことはぽこの報告でよく聞いている、ぽこと違い詠唱魔法を使っても全然元気だとか、しかし正直疑ってもいるところがある、実際に君の魔法を見させてもらいたいのだが、いいか?」
「それは構いませんけどここらへんでやっちゃうと多分いくら抑えても建物とか壊しかねないんですけど」
「その事なら問題ない、どっかの隊長がよく使っては壊しまくってる場所がある、そこを使おう」
「ハダルさん! それもしかして私のことですか!」
「さぁ? 誰のことだろうな」
「だんちょぉ......」
あひるはハダルに案内され、向かった先は城の外にある広い場所だった、そこそこ固そうな土の地面の上で数人の兵士が訓練を行なっている。
「これくらいの広さがあったら問題なく魔法が使えそうです」
「それじゃあ頼めるか?」
「わかりました!」
「おい! お前ら一回訓練やめて、はけてくれ! すぐ終わるから」
「了解しました!」
あひるは広場の真ん中に立ち杖を構えた。
「ちょっとした的って用意できますか?」
「それなら私作るよ!」
ぽこはあひるの前に魔物の形をした氷を一瞬で作り出し設置した。
「おぉ、さすが! ありがとう! じゃぁいきます!」
その場にいた兵達が興味津々な目であひる達の方を見ている、あひるはくるくると回りながら風魔法を使い五メートルほどジャンプし、杖を上に掲げ言い放った。
「炎の精霊よ! その灼熱の炎で大地を焼き尽くせ!」
あひるの杖が赤く光り、頭上に巨大な炎の球体が
「あの杖は......そうかなるほどな」
「師匠秘伝魔法パート1! ラージエクスプロージョン!!」
あひるは杖を振り落とし、氷の的めがけて
炎の球体を落とした。炎の球体は一直線に飛んで行き、やがて氷の的に直撃した、その瞬間氷一瞬で蒸発し、蒸気が勢い良く訓練場に広がりしばらく何も見えなかった。蒸気が消え始め視界が良くなった、そしてあひるの正面にあった氷の的は消え、地面が若干焦げていた、そしてあひるはゆっくりと空中から降りてきた。
「今のが炎の詠唱魔法か、あの巨大な炎を落としたのにも関わらず周りに被害を出さず的だけを消し去ったのか」
「あひるちゃんさすが〜! 蒸気にはびっくりしちゃったよ〜」
あひるの下へぽこが駆け寄るその後ろからハダルもゆっくり来た。
「さすが想像以上だった、周りに被害を出さないように威力を調節するとはな」
「さすがに団長さんの目は騙せなかったですね、さすがです! まぁこんなところで全力を撃っちゃうと皆さんを怪我させてしまう可能性があるので」
「なるほど、妖精の力に振り回されず魔力のコントロールとは、さすがその杖を持ってるだけはある」
「その杖? もしかして! この杖を知ってるんですか!?」
「その話は部屋に戻ってからにしよう」
三人は団長の部屋へ戻った。
「その杖はどこで手に入れたんだ?」
「この杖は私の師匠から譲ってもらった物です」
「その師匠ってのはリブ・ザレイじゃないか?」
「はい、そうですけど知ってるんですか?」
「え! リブ・ザレイってあの!?」
「ぽこちゃんまで知ってるの!?」
「何も知らずに弟子になったのか......」
「そういえばあまり聞いてなかった昔のこと」
「知らないの!? 三十年前世界を破滅の危機から救った七人の英雄の一人だよ!」
「リブちゃんが英雄?」
「その杖は世間では天使の杖と呼ばれているものだ、それは知ってるか?」
「え? リブちゃんがこの杖はメモリアルロッドって」
「メモリアルロッドっていうのは、リブが英雄と呼ばれるようになった後につけた別の名前だ、なんで名前を変えたのかは分からないが」
「は、はぁ......」
あひるは混乱していた、リブが7人の英雄の一人で今まで使ってたこの杖の本当の名前が天使の杖であったり、あひるには少し整理する時間が欲しかった。
「最初は当時とは見た目が若干違かったもんだから気付かなかったが、あの魔法と杖の光を見たらピンときた。その杖は遠い昔、神に支えていた天使の一人が使っていたとされる物だ、その杖の力は強力でな、ある日リブが油断してその杖を盗まれたことがあってな、その盗んだ奴がその杖で魔法を撃とうとした瞬間、急に奴は血を吐き出し死んだんだと、まあリブが君にその杖を渡したんだったら、君に資格があると思ったんだろう」
(リブちゃん隠し事多すぎて全く話に追いつけない〜)
「どうやら一気に説明しすぎたようだな、今日はここまでにしよう、俺も仕事が残っててやらなくちゃいけないからな、ぽこ、部屋まで案内してやってくれ」
「はーい、あひるちゃんついてきて」
「うん」
あひるはぽこについて行く、案内されたのは、割と広めのベットと丸い机、それを囲って3つの椅子が置いてあるかなり豪華な部屋だった、そこにある全ての物が高価な物の様な見た目をしている。
「今日はここに泊まっていって」
「こんな広い所に!?」
「あれ? もしかして嫌だった?」
「んー嫌じゃないんだけど......なんか慣れないっていうか落ち着かないっていうか」
「そういうことね、じゃあ慣れるまでお話ししよっか! まだ聞きたいことが沢山あるからね」
「え? ぽこちゃん仕事は大丈夫なの?」
「仕事? あぁ大したことないやつだし後回しでいいかな、そうだ、紅茶でもどう?」
「紅茶いいね! お願いしちゃおうかな」
「わかった、じゃあちょっと取ってくるね」
そう言うと、駆け足気味に部屋を出て行った。
「天使の杖に、7人の英雄か〜、急にややこしくなっちゃったなー、まだ旅初めて一週間くらいしか経ってないのに」
「紅茶持ってきたよ」
今度はゆっくり扉を開けて入ってきた。
「ずいぶん早かったね、一分経ってなかったよどう考えても」
「まあ細かいことはなんちゃらっていうじゃん?」
ポコは机にティーカップとティーポットを置き、紅茶を注ぎ始めた、あひるは椅子に座り紅茶を入れているのを眺めた。
「客人に紅茶を出すのは本当は他の人の役割なんだけどね、だから美味しくなかったらごめんね」
「大丈夫だよ、匂いで美味しいことは伝わってくるもん」
「ありがと、でさ、さっき団長が言っていたことの詳しい説明を任されちゃったからここでさせてもらうね」
「お願いします!」
「まず最初にその杖についてなんだけど、その杖は大昔に天使が使っていたとされる武器の一つで強力な力を持っているの」
「天使の武器の一つってことは、これ以外にもあるって事?」
「そう、その天使の武器は世界各地に眠っているとされてて、どれくらいあるのかわからないの、突然目の前に現れたりそこら辺に転がってたりする謎が多い武器」
「リブちゃんはどうやってこれを手に入れたんだろう」
「さぁ? それは本人に聞いてみないと」
「そういえばリブちゃんは七人の英雄の一人って言ってたけど英雄って何したの?」
「結構昔、30年くらい前だったかな、その時にこの国に大量の魔物と魔族が進軍してきたの、それでゼンターニアは全戦力を投下して戦った、でもすぐに壊滅的な状態になった、兵士たちの士気は絶望しかなかった、だけどその絶望はすぐに希望へ変わった、なんでだと思う?」
「七人の英雄、リブちゃん達が現れたから?」
「そう、兵士達の前で諦めず未だに戦っていたのは、七人の天使の武器を持つ色んな種族の人達だった、その戦いっぷりに兵士は希望を持ち始めた、兵士達の士気は上がっていき、魔物をどんどん倒していきやがてゼンターニアは勝利した。この戦いをきっかけに七人の戦士達は英雄と呼ばれるようになった。だけどその七人の英雄はバラバラになり表の場面に現れなくなった、死んでしまったんじゃないかとか途方もない旅に出たとか、いろんな噂が出てたの」
「その英雄がリブちゃんがその一人ってことは、もしかしてなんだけど、イグルドさんもその一人だったり? 夫婦だしもしかしたらなんだけどね」
「!?......まさしくその通り......もうなんだか慣れてきたかも」
「やっぱり! でも天使の武器っていうよりか普通の大剣使ってたような」
「そうなの? 持ってないなんておかしいと思うけど、どこかにしまい込んでいたとかかな?」
「そういえば英雄の説明の時いろんな種族って言ってたけどどんな種族がいたの?」
「そうだねー五つの種族のうち魔族を除いた集まりって言われているね」
「五つの種族って人間に獣人、エルフとかだっけ、あと竜人と魔族」
「そうそう、それは知ってたんだね」
「これはぼぼさんに教えてもらったからね、でも詳しいところはわからない」
「んーっとね、人間族は種族の中で一番人口が多くて国を作って暮らしている、獣人族は人間とは違って数十人の集落で暮らしている人間との関係は結構良くて、街に普通にいるくらい、そして体の一部が獣の種族、エルフ族は寿命が長い種族、エルフ族は二十〜五十人の集落で暮らしていて、みんな弓の扱いが上手い種族、最も戦いを好まない種族って言われてるね。次は竜人族、竜人族は滅多に人の前に現れない種族で、種族人口もそんなに多くないと言われてるね、山奥で密かに暮らしているみたい、竜人族の特徴としては、体の一部をドラゴンの様な体に変えることができるんだって、ドラゴン自体にも変身できるらしいよ」
「もしかして私が倒したドラゴンが竜人族だったりしないよね?」
「それは可能性低いと思うよ、竜人族は基本的に人の姿で活動するらしいし、それに人間と竜人は敵対関係じゃないし」
「なら少し安心できるかな」
「それで最後の種族は魔族、魔族は今最も恐れられている種族で、とても魔力量が多くて厄介な種族、竜人よりも謎が深くて魔族同士で扱って生活してないから戦いに行こうにも戦えない感じなんだ〜、だから守りを固めるしかないんだよね」
「30年前みたいにまたくるかもしれないってことなんだ」
「そうそう、それで守りを強化したらね、なんとリゼアの街に魔物の軍勢が攻めてきたんだよね」
「そうなの!?」
「守りを固めたお陰で30年前ほどの損害は出なかったんだけど、それでも被害はでかかったんだ、これが1年前の話」
「ぽこちゃんはその戦いに?」
「そう、その時はまだ隊長じゃなかったんだけどね、みんなまた七人の英雄が来てくれると信じて戦ったんだけどね、集結しなかったんだ、その戦いはなんとか勝てたんだけど、その戦いに魔族の姿はなかった、正直魔族がいたら負けてたんだよね。
ごめんねこんな暗い話しちゃって」
「ううん、むしろありがたいよ色々知ることができて、それに私ね......記憶がないんだ......」
「記憶が......ない」
「そう、リブちゃんが私を拾う以前、1年よりも前の記憶がないんだよね」
「一年前かー結構最近だね」
「あんまり驚かないんだね」
「ん? あ〜、実は私も記憶喪失でね」
「えー! ぽこちゃんも記憶喪失してたのー!?」
「あひるちゃんほど最近じゃないけどね、私は3年くらい前になるかな〜、私も拾われた身なんだよね」
「なんだか私達似た境遇だね、ぽこちゃんはどうして記憶喪失したか、しってるの?」
「知らない、私も拾われた感じ、街の外で倒れているのを兵団に助けられたって、そっからはずっと兵団にお世話になってる」
「へ〜、じゃあ三年で部隊の隊長になったんだ、それって凄いんじゃない?」
「まぁ色々な出来事が重なってって感じなんだけど、私の面倒を見てくれた人、まぁ私の師匠かな、その人が前のリゼア部隊隊長なんだけど、1年前の戦いで死んじゃってね、副隊長だったチダさんは、兵団から抜けちゃってそれで団長の決定で私が隊長に、なんかあひるちゃんから色々聞くはずが自分語りになっちゃったね」
「全然ウェルカム! 出会ってまだ日も浅いのに色々教えてもらっちゃったな〜、ありがとう!」
「そういえばなんかあひるちゃんに会ったとき初めてな気がしなかったんだよね〜」
「確かに! それ私も感じた!」
「もしかしたら記憶を失う前から会ってたりしてね」
「でもどっちも忘れてるんじゃ記憶探しのなんの手掛かりになんないよ〜」
あひるはぽこと女子会を楽しんだ。
翌朝
あひるは部屋のでかいベットでぐっすりと眠っていた。あひるは体を揺さぶられて目が開く。
「あひるちゃん起きて〜!」
「んぁ? ぽこちゃん? おはよう今何時?」
「10時だよ〜、今日は街探索するんでしょ?」
「あ! そうだった! ちょっと待っててすぐ準備する!」
「ゆっくりでいいよ、急ぎじゃないんだし」
「そうも言ってられないよ、記憶の手掛かりがもうどっかに行ってるかもしれないし!」
「早く行ってもすれ違ってるかもよ? どっちかっていうと早く街に行きたいだけでしょう?」
「そうかもね!」
あひるの準備が終わり、街に行く準備が整った、あひるとぽこは城の正門の脇にある小さな扉から出て街へと入っていった、街はリゼアの街とはまた違った賑わいがあった。
「いい街だね〜リゼアとはまた違った良さがありそう」
「まぁそれはゼンターニアの中でも一番でかい街だからね、違いはでるよ」
あひるとぽこが街を少し歩いていると、街の人たちがこっちを見て何か話しているのにぽこが気付いた。
「なぁ、あそこにいるのリゼア部隊隊長のぽこだよな、隣にいるのってもしかして......」
こんな声も微かに聞こえ、ぽこが少し警戒したが、敵意があるようには感じなかった。すると、街の人間があひるの元へ駆け寄ってきた。
「あのすみません! もしかしてあひる様ですか?」
「様はついてないですけどあひるですよ、なんですか?」
「やっぱり! 私の娘があなたに助けてもらったと、あなたが奴らから助けてもらわなければ、ドラゴンを倒してくれなければ、私は死んでいたと言っていたんです! 娘を助けてくださりありがとうございます!」
「いえ! 私単身だったら皆さんを助けてあげることはできなかったと思います!」
その話を周りが聞いてか、続々と人があひるたちの元へ寄ってきた。
「噂のドラゴンを倒した詠唱魔法の使い手ですよね!」
「あなたがこの街に来てくれて嬉しいわ!」
「今度うちの店に来てくれ!」
どんどん人が押し寄せてきて囲われてしまった。
(このままじゃ探索どころじゃなくなる!)
「あひるちゃん逃げるよ!」
「え? わぁ!」
ぽこはあひるの手を強く握り人の頭を軽々超えてそのまま走って路地に入り人気を避けていく。しかし、T字の角でローブを着てフードを深く被った子供と勢いよく衝突してしまった。ぶつかった勢いでぽこは転んだ。ぶつかった子供もぶつかった衝撃で転倒した。
「いたたた......」
「ぽこちゃん大丈夫!?」
「私は大丈夫、そっちの子は」
「君大丈夫後頭部とかぶつけてない?」
あひるは子供の元へ行き声をかける、子供は体をゆっくり起こした、体を起こすと同時にフードも外れた、その少年の右側のおでこには一本の黒色の角が生えていた。
「ま、まさか......魔族......?」
続
次回「敵と味方」