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あひるの冒険  作者: ルンバ
7/11

第七話「帰る場所」

ーキャラクター紹介ー


名前:ぽこ

性別:女

種族:人間

役職:剣士

使用可能魔法属性(現在分かっている範囲)

 無、氷


ゼンターニア兵団の中のリゼア部隊の隊長として兵士の指揮をとっている、リゼアの人や兵たちにも人気であり支持されている。

ポコは空高く跳び、剣を天に向け目を瞑った。


 「氷の精霊よ、その力を持って悪しき魔を滅ぼしたまえ!」


 ポコの周りに鋭く尖った氷の氷柱が数えるのが面倒になる程の数が現れた。それに加えて、ポコの剣が氷始めてその氷はどんどんデカくなり、やがて4メートルくらいの巨大な剣になった。そしてぽこは力を解き放つ!!


「アブソリュートゼロフレイム!!!」



 氷柱が次々と魔人に向かって高速で飛んで行く、その氷柱は魔人の至る所に突き刺さる。魔人はなす術もなかった、氷柱を全て撃ち終わるとその氷の大剣を魔人に向け一気に突き刺した。大剣は魔人の胸を貫通し、地面に深く突き刺さった、それと同時に周辺の地面が凍り、雪の結晶の様な模様になった。


 大剣が突き刺さった胸が徐々に凍って行きやがて魔人の全身が凍り、粉々に砕け散った。やがて剣についた氷の溶けていき元の剣へと戻った。


「え、詠唱魔法使えたの!? ポコちゃーん!」


 ポコは大量の魔力を使ったせいで体が動かなく倒れてしまった、しかし意識が飛んでいるわけではなかった。


「隊長! 詠唱魔法を使うからですよ! 大して魔力が多い訳じゃないんですから」

「あはは〜、ごめんごめん」


 いつのまにか周りのグロウズの人間はゼンターニアの兵によって全員捕らえられていた。残るは建物の上にいるスーザだけだった。

 

「同志達よ! 今回は思った通りの結果にはならなかったが、我々は決して敗北した訳ではない!この結果は新たな成功を生み次への力となる! お前達はよく戦ってくれた! ゆっくり休むが良い!」


 すると、急にグロウズの人たちが次々に光となり空へ消えていった。


「なにこれ、どうなってるの?!」


「ゼンターニアの兵達よ、次は成功させる、同志達の意志は俺が受け継いだ! それではまた会おう!」


 すると突然、強力な風が吹き、砂が大きく舞い、スーザはその中に姿を消していった。風が収まり砂も消えた時にはすでにスーザの姿はなかった。


「逃げられちゃった......」

「いやでも、この状態で攻撃されなかったのは助かったかな」

「そうですね、とりあえず今日はだいぶ夜が濃くなっているのでここで捕らえられていた人たちと一緒に野宿をしましょう、夜は危険ですからね、あひるさん、捕われていた人たちを迎えにいってくれますか? 私達はこの場を処理しなくてはならないので」


「わかりました!」


 あひるは、ぼぼてん達を迎えに走った。


「ぼぼさーん! ちゃびこちゃーん!」

「あひるちゃん! 大丈夫? 怪我とかない?」

「全然大丈夫だよ! あ、今日はもう遅いからあっちで野宿するから迎えに来たんだよ」

「そう言うことね、わかった、行こうか」

 

 全員を明るいアジトの方へ戻り皆んなをゆっくり休める場所に移動した。全員分の寝床を確保して晩飯の準備を始めた。すると、すぐそばにいたアリアーナの母、イリーナがあひるに声をかけた。


「あの、あひるさん」

「イリーナさん、どうしたんですか?毛布足りなかったですか?」

「いえ、お礼を言いたくて、本当にありがとうございました!」


 イリーナは深くお辞儀をした。


「そんな! お礼を言われるにはまだ早いですよ、家におくるまでが私達の仕事ですから」

「そうですか......じゃあ何か手伝えることはありますか?」

「手伝ってくれるんですか!それは助かります!」


 数時間後、食事が終わり眠くなってきた頃、ルンバが手帳に何か書いてるところにぼぼてんが来た。


「ルンバさんそれなんですか?」

「ん? あぁぼぼてんさん、今書いてたのは日記ですよ、今日の事は絶対に書いた方がいいと思いまして」

「日記か〜どんな事を書いたんですか?」

「皆さんに出会えたこととかですかね」

「お〜、僕もそれは覚えていたいからメモろうかな」

「いいですね〜記憶は永遠という訳じゃないですから、それじゃあ私は先に寝ますね、おやすみなさい」

「わかりました、おやすみなさい」


 ルンバは手帳を閉じ、布団に入った。


 翌朝、空は綺麗に晴れ旅日和だった。あひるが目覚めた頃にはポコと兵士達はすでに起きて作業をしていた。


「ポコちゃんおはよ〜、早起きだね〜」

「あひるちゃんおはよう、朝のうちに準備しとかないと祭りに間に合わないかもしれないじゃん?」

「ポコちゃんも祭りに行くの!?」

「そうだよ、リゼア部隊の隊長は参加しなきゃいけないんだ〜、団長にも[行ってこい]って言われて」

「へ〜! じゃあさ、私達と一緒に祭り廻らない?」

「残念だけど色々やることあるから無理かも、せっかく誘ってくれたのにごめんね」

「仕事ならしょうがないね、よーし! 祭りに間に合うためにも! 急いで準備しよう!」

「おー! と、その前に朝食です!」

「はーい!」


 朝食を食べ、2時間後町へ帰る準備を整えあひる達は数人の兵を置き、グロウズの拠点を後にした。捕われていた人たちを馬車に乗せて、あひる達も乗りゆっくり町へ移動を始めた。


「どれくらいで到着するんだろう」


 その言葉を聞いていたルンバが答えた。


「祭りには間に合うと思います、徒歩で行った時くらいの時間は経過すると思います。行きと違って遠回りですからね」

「なら安心かな」


 あひる達は馬車に揺られながらリゼアの街へと進んで行った。舗装された道を進み、山を越え、街が見えてきた。するとレイが何かに気付いた。


「隊長何か気配を感じます! 大きくて殺意剥き出しの奴が空からこちらに向かってきてます!」

「嘘!? 全員戦闘態勢! 全力で皆さんを守って!」


 馬車に乗った兵士達は剣を抜き360度で警戒をした。そして一人の兵士が気配の正体を見つけた。


「発見しました! 対象、飛竜! 大きさおよそ十五メートル!」

「飛竜!? なんでここに! 魔法で撃ち落として!」


 魔導士がこちらに向かってきている飛竜に向かって炎の魔法で撃ち落とそうとしたが、炎は弾かれ全く効かない。


「ダメです! 魔法が効きません!」

「炎が効かないなら私が」


 ポコが飛竜に向かって数発氷柱を飛ばしたが飛竜はそれを避け、勢いは消えない、やがてポコ達の前に止まりその大きな口の中が赤く発光し攻撃しようとしている。


「まずい! アイスウォール!」


 地面から氷が生えてきてあひる達と兵士全員を覆った。やがて飛竜は口から炎を放った、ポコが作った氷の壁にはヒビがどんどんでかくなってきていた。


「このままじゃ、みんなが!」

「私がなんとかする!」


あひるが馬車の上に立ち杖を構えた。


「なんとかするって、どうするの!」

「それは、あの鳥を倒すんだよ」

「倒す!? あの飛竜は硬いし、あひるちゃんの風魔法じゃ効かないよ!」

「ポコちゃんは昨日詠唱魔法を使ったから魔力が全然ないんでしょ? なら無理せずに私に任せてよ」


「......わかった、任せる」


 すでに氷の壁は限界で今にも割れそうだった。そしてあひるが魔法を発動し、あひるの体が浮き始めた。やがて氷の壁は割れ火が襲いかかってきた。あひるは風をまといながらその火の中に突っ込んだ。火はあひるの風魔法に吹き飛ばされ消滅していく、あひるは飛竜の火炎放射を完全に弾きそのまま飛竜に向かって飛んで行く。


「ちょっと火炎放射長くなかった? そんなズルをする鳥さんにはこれでもくらいなさい!」


 あひるは杖を両手で持ち、前に構えた。


「圧烈弾!」


 杖から見えない弾が放たれ、その弾は飛竜に当たった途端、謎の衝撃が飛竜を襲い飛竜はその反動で数メートル吹き飛ばされ、ポコ達の方には強い風が吹いた。


「なに今の!触れてもいないのに飛竜が飛ばされた!」


 説明しよう! 今の魔法は、あひるが生み出した風魔法の一つで、極限まで空気を圧縮して作った爆弾だ! 触れた瞬間極限まで圧縮した空気が解き放たれ見えない爆発を起こしたのだ! しかし誤爆する危険があるため素早く撃てない弱点があるぞ!


「こう言うめんどくさいモンスターにはスピード勝負が一番!とどめだよ!」


 あひるは怯んでいる飛竜より高く飛び、杖を縦に構えた。


「火の精霊よ、その熱き炎で人々を危険に晒す者を葬りたまえ!」


 するとあひるを中心に赤色の魔法陣が現れた。そしてあひるの頭上には巨大な火の球体が現れた。それをみたぼぼてんとちゃびこは胸が高まった。


「きたきたきた! やっちゃええええええ! あひるちゃーん!」


「師匠秘伝魔法パート1! バージョン2! アトミックアロー!」


 あひるは杖を天に掲げ勢いよく振り下ろした、その瞬間炎の球体から次々に炎の矢が高速で飛竜の方へ飛んでいった、飛竜がこれを避けれるわけもなく、身体の至るところに刺さっていく、その矢の火が飛竜の体を包んだ。


「これでとどめ!」


 炎の球体は四つに分離し飛竜目掛けて飛んで行く、飛竜は避けれずそのまま直撃した、直撃した瞬間大爆発を起こした。やがて飛竜は黒こげになり、そのまま地面に落ちた。


「やったー! さすがあひるちゃん!」


 ポコや他の兵士達は開いた口が塞がらなかった。しばらくして兵士達は歓喜した、誰も負傷者を出さずに討伐したからだ。ポコは勝利した喜びよりもあひるの魔法に驚いていた。


「今のは詠唱魔法......しかも火属性、多属性使いだったんだ......」


 あひるはその後ゆっくりとみんなのところへ戻った。ぽこは馬車から飛び降り、あひるに勢い良く抱きついた。


「ちょっと心配だったけど良かった〜さすがあひるちゃんだよ〜」

「当然でしょ?私はあひるだよ?」

「わけわかんないよ〜」


 するとあひるの元へぽこがやって来た。


「あひるちゃんありがと〜、助かったよ〜」

「私も活躍しないとだからね!」


「じゃあそろそろ行こうか、街も見えて来たし。よし! タジの分隊を飛竜の処理に回して、残った兵は目的を達成させるよ!」

「「了解!」」


 一部の兵達を置いてポコとあひる達は街へ向かった。そしてリゼアの門前まで無事到着した。門番がポコの元へやってきた。


「ぽこさん無事でしたか! 飛竜と交戦してる所が見えたので心配しましたよ! すぐに援軍が出せずすみませんでした」

「いいのいいの! 今回は強力な助っ人もいたしね、引き続き門番の仕事を続けて」

「了解しました!」


 ポコ達は門をくぐり、少し開けた場所で馬車を止めた。

 

「ここからはみんな別行動で行くよ! リゼアの街の人はこのままそれぞれ送り返す、歩くのが難しい人は馬車で近場まで向かいそこから家に送って! 城下町の人たちは兵舎に泊めて、明日城下町に向かうからその準備もしておいて!」

「「了解!」」


 ポコは兵達に指示をすると、近場にいたレイに声をかけた。


「レイちゃん、私はあひるちゃん達と行くから、何かあったら飛んできて」

「わかりました、私は兵舎の方へ向かいます」

「お願いね。あひるちゃん、イリーナさんを家に送ろう」

「わかった、案内するね! ルンバさんお願いします!」


「......え?」


 あひるではなくルンバがイリーナとポコを案内した。移動途中でアリアーナの話をたくさんした、イリーナはその話を聞いて、肩の力が少し抜けたのをあひるは感じた。


 ようやくあひるとイリーナ達はクリスとアリアーナのいる家までたどり着いた、建物から溢れでている窓の光はイリーナにとって、とても暖かく、まるで何年も経ったかのようにすごく懐かしくも感じていた。


「それじゃ、入りましょうか」

「はい......」


 あひるはゆっくりと扉を開けた、玄関やすぐそこのリビングには誰もいなかった、すると宿の受付の扉が開いた。ドアノブを掴んでいたのはクリスだった、クリスとイリーナはすぐに目が合った。


「イリーナ......?」


 クリスの後ろからアリアーナがイリーナの前に姿を現した。


「アリアーナ!」

「お母さん!」


 アリアーナはイリーナの言葉で自然に体が母イリーナの方へ走った、イリーナは走ってきたアリアーナを両手で受け止め強く抱きしめた。アリアーナとイリーナは静かに涙を流し、そして2人を包む様にクリスが抱き寄せた。


「無事でよかった......もう会えないかと......」

「2人とも元気そうで良かった......」


 あひる達は家族3人の時間を見守った。

しばらくしてクリスが立ち上がりあひるの方へ向きお辞儀をした。


「皆さん、ありがとうございます。どうお礼をしたらいいか」

「お礼なんてそんな! 気持ちだけで十分ですよ!」

「いえ! そういうわけにはいきません」

「でも......」


 後ろの方にいたポコがあひるの近くに寄り耳もとで小さく言った。


「あひるちゃん、貰っとかないと逆に失礼かもだよ?」

「じゃあ、頂きますね」


 お礼として全員の宿代はちゃらになった。

そしてクリスはポコの方へ向いてかしこまった表情で言う。


「ポコ様、捕らえられた人たちを救出に向かったと聞いております、今回は本当にありがとうございました!」


 クリスは深くお辞儀をした、それに続いてアリアーナとイリーナもお辞儀をした。


「そんなかしこまらないでくださいよ、それにもっと早く行けたはずなのに遅れたこと、すみませんでした」


 ポコも深いお辞儀をした。


「そんな! 頭をあげてください! あなた様はこの街の英雄なんですから!」

「ん? ポコちゃんが英雄?」


「あひるさんは知りませんでしたか。ポコさんはゼンターニア王国の国土の中にあるこのリゼアを守る騎士なんです、この街を仕切る領主としても仕事をしてるんですよ」

「そして、この街を幾度も救ってくれたお方でもあります」


「あ! だから英雄って言ったんですね!」

「さすがにそこまで言われると照れちゃうよ〜」


「そうだ! お昼も近いしポコちゃんも一緒に食べない?」

「あひるちゃん流石に忙しいから無理なんじゃー......」


「別にいいよ!」


 即答だった、今回の昼食はアリアーナとイリーナが作ることになった。母のいない空白の2ヶ月をかき消す様に2人の止まっていた時間は進んでいく。人数分の料理を作り終わり机の上に並べ、昼食の時間をあひる達は過ごした。


「美味しかった〜!」

「久しぶりに作ったので不安でしたけど、そう言ってもらえると嬉しいです」


 食事が終わり一息ついたところでポコが椅子から立ち上がった。


「私そろそろ兵舎に戻らないといけないからここでお暇しますね、料理美味しかったです!」

「ポコ様ありがとうございました!」

「それじゃあ祭りでまた会おうね!」


 ニコっと笑いこの場所を後にした。

するといきなりアリアーナが大きく手を叩き何かを思い出した。


「そうだお祭り! 忘れかけてた! お母さん! お祭りの準備しよう!」

「祭り? あぁ世命祭のことね、もうそんな時期なのね、忘れてた。そうね! 準備しましょうお粧ししなくちゃね!」


「ならあひるさん達も祭りに似合った格好をしたほうがいいですね」


 とルンバが問いかけた。あひる達は首を傾げ自分に指を刺した。


「私たちも?」

「そうです、激しい戦いがあった後で今の服はかなり汚れていますからね、これを機にお出かけ用の服を買うなんてのはどうでしょうか」

「そういえばそんなに服を持っていなかったね」

「そうだね、旅に出てからあんまそういうのは気にしてなかったからね」

「おしゃれか〜でもそんなにお金に余裕ないよ?」


 ルンバはニヤリと笑った。


「実は服屋の店主で一回店の経営がピンチなところを助けた奴がいまして、そこなら心良く安くしてくれる筈ですよ、今じゃそれなりにいい店になりましたし」


「え、いいんですかそれ......」

「いいんですいいんです、もし割引かれなかったらその分は私が払うんで安心してください」


「でも......んー......罪悪感が若干ありそうだな〜」

 

 ぼぼてんは腕を組みながら悩む。


「ルンバさんがいいって言ってるんだったらいいんじゃない?」

「じゃあ決まりですね! 準備をしたら向かいましょう!」

「え? あ、はいわかりました」


 結構強引に買い物へ誘われて行くことになった4人は準備を済ませ、ルンバの言う店へと向かった。


 向かったお店は大通りから比較的近い位置にあり高すぎず安すぎない店構えをしていた。窓から中を見ると明かりは点いているが誰も見えない。


「着きましたここです」

「なんか言っちゃ悪いかもだけど平凡って感じだね」

「まぁそれは店主も言っていましたね、どうしても平凡になるとか」

「なんか呪いみたいだねそれ」

「それよりもその店主さんがいないようですが......」

「多分奥にいるんでしょう、とりあえず入りましょう」


 ルンバが木でできた扉を開き店の中に入った、それに続いてあひるたちは中に入る。

開いたと同時にドアについていたベルが鳴った、すると店の恥にある扉が開き店主と思わしき男が現れた。格好は綺麗でザ・服屋な服装をしていた。


「いらっしゃいませ! ......ってルンバさんじゃないですか、久しぶりですね」

「店番くらいちゃんとしてなよ泥棒入るぞ?」

「すみません、ちょっと探し物があって。ところでそちらのお方々は?」


「あーそうそう、あひるさんとぼぼてんさんとちゃびこさんだ、俺を助けてくれた命の恩人様たちです!」

「そんな大した事してなかったけどね」

「そうでしたか! あ、申し遅れました私はウリウスと言います。この店の店主をしています」


「今日の夜、祭りがあるじゃん? それでちょっと色々あって今の服が汚れちゃって、それで折角だから新しくしませんか? って事で連れて来ました〜」

「そういう事ですか、それなら普段着れておしゃれな服がいいですね」


 と、ここで服を選び始めたところですが、私にはファッションセンスというものが無いので服装がどう言ったものになったのかを説明しようがないので皆さんの御想像にお任せします。


「わぁ!すごいおしゃれになった!」

「みなさんお似合いですよ」

「あ......お支払いの方は〜......」

「あぁ、もちろんルンバさんの借りを消費して半額にさせて頂きますよ。あ、でも半額ですからね? 私の店も決して儲かっておるわけではないので」


「でも良いんですか? 本当に」

「遠慮しないでください、別に無料ってわけじゃないですから」

「そこまで言うんだったら遠慮なく買わせていただきます!」


 あひるたちは会計を済ました。あひるたちは新しく買った服で店を後にした。店の外に出るとすでに日は沈み始めていた。あひるたちは宿に戻った。


 扉を開け中に入るとアリアーナが迎えてくれた。アリアーナもあひるたちと同様にめっちゃおしゃれをしていた。


「みなさんお帰りなさい! あ! お洋服新しくしたんですね! 皆さんすごく似合ってます!」

「ありがとう、そう言うアリアーナちゃんも綺麗で似合ってるよ?」

「そ、そんなことないですよ!」


 アリアーナの顔が赤くなり頬に手をあてて満更ではなさそうだった。そしてクリスとイリーナがリビングに出てきた、2人とも祭りに着ていく服装で現れた。


「クリスさんイリーナさん、2人ともお似合いですね」

「ありがとうございます、みなさんもお似合いですよ。ルンバさんは着替えなくて良いんですか?」

「あぁそうですね流石にずっとマントってのもあれですね、じゃあ着替えて来ますね」


 と言うとルンバは二階に上がって行った。


「もうそろそろ祭りに始まります、ルンバさんが来たら行きましょうか」

「祭りでは色んな屋台とかが出るんですよ!」

「屋台か〜アリアーナちゃんはどこか行くところとかあるの?」

「もちろんありますよ! 楽しみ〜。あ、そうだお金忘れてた」


 アリアーナは駆け足気味でお金を取りに行った。


「なんかアリアーナちゃん元気になりましたね」

「そうですねすごく明るくなりました、不安や心配の重さが一気に吹っ切れたんでしょう」

「私も離れていた時間を取り戻せるように頑張ります」


 すると二階から着替え終わったルンバが降りて来た、服装は若干おしゃれになり汚れ気味だった服装から綺麗な服に変わっていた。ルンバが降りてくると同時にアリアーナも戻ってきた。


「おまたせしました、それじゃあいきますか?」

「行こーう!」


 フォード一家は3人で手を繋ぎ、フォード家あひる一行は祭りへと向かう。

空や周りの建物は夕陽に染まり、美しく輝いていた。祭りの行われる場所は街の中央広場、そこに近づくに連れて人数が増えていく。そして7人は広場へとたどり着いた。その時には日は沈み街の景色は夜景に変わった。


 そして広場は賑わっていた、建物が並んでる中で一番高級そうな建物がある、そして広場の外周に屋台が数多く並んでいる。


「お〜すごい広い! 広いよちゃびこちゃん!」

「そりゃ広場っていうくらいだからね〜」

「お母さん! あそこ行こう!」

「そんな急がなくても時間はあるのよ?」


 アリアーナはイリーナの手を引き小走りに何処かへ向かっていった、クリスはその後をついて行った。


「家族ってやっぱりほっこりしますね」

「全く同感ですね」


 ルンバとぼぼてんはほっこりした。


「私たちも祭りを楽しみましょうか」

「行こう行こう!」


 そのあとあひるたちはフォード家とは別行動で祭りを堪能した、色々な屋台があった、料理を出してる屋台もあれば、中古品を扱っている店やお菓子を売っている屋台もあった。そんなこんなであっという間に一時間も過ぎていた。そしてフォード家とも合流出来た。


「みなさん! 探しましたよ〜」


 アリアーナが手を大きく振りこっちへやってきた。あひるもそれに反応して大きく手を振った。


「祭りは楽しんでますか?」

「もちろん! すごく新鮮な体験をさせてもらってるよ」

「それはよかった〜、そうだ、みなさんにプレゼントがあるんですよ、じゃあまずはルンバさん」

 

アリアーナはルンバに青い色の腕輪を渡した。


「ぼぼてんさんにも腕輪です」


 アリアーナはぼぼてんに緑色の腕輪を渡した。


「ちゃびこさんにはこれです」


 アリアーナがちゃびこに渡したのは、赤色の指輪だった。


「そしてあひるさんにはこれです」


 アリアーナが手に出したのは、ピンク色に輝く宝石をつけたネックレスだった。


「これ、もらって良いの? 結構したんじゃない?」

「今渡したのは皆さんの旅の無事を祈っての、お守りみたいなものです、持っておいてください」

「お守り......じゃあありがたく貰おうかな、ありがとう! アリアーナちゃん、つけてくれる?」

「もちろん」


 アリアーナはゆっくりネックレスをあひるの首に付けた。


「あひるちゃん似合ってるよ!」

「ありがとう、照れちゃうな〜」

「アリアーナちゃん、ありがとうね」


 するとなにか高級そうな建物の方が騒がしくなってきた、その騒ぎは次次と連鎖しあひるの耳にも入って来た。


「ぽこ様だ!」

「ぽこ様〜!」


 街の人達が大きな声でぽこの名を読んでいた、全員が向いているのは、あの目立っている建物だった。あひるたちはその方向を向いた。するとポコが二階のバルコニーに立っていた。


「ぽこちゃんだー! なんであそこに?」

「毎回祭りの途中でああやって出て来て挨拶をするんですよ」

「そっか! ぽこちゃんはこの街の町長的な存在だったね」


「みなさん、祭りは楽しんでますでしょうか、この祭りはこの街の安全を願う祭りとしてダダリオ前隊長が二十年前に始めた祭りです、そしてこの祭りは二十年間一回も欠かしていませんでした。しかしこの二十年間ずっと安全だったわけではありません、ここまで続けられているのは皆さんがいつも諦めずに一緒に戦ってくれてるからです! 私たちだけでは残念ながらこの街を守ることは出来ないでしょう、ですが! みなさんと協力すれば何倍もの力になります! 今までありがとうございました! そしてこれからもこの街を守るために協力してください!」


 ぽこは、深くお辞儀した。


「あたりまえだ!」

「私たちも一緒に戦うわ!」

「この街は私たちの手で守る!」


 広場全体の人たちの歓声がこの街を包み込んでいた。


「みなさんありがとうございます! それでは! この祭りを盛り上げてましょう!」

「あひるさんくるよ!」

「くるって何が?」


 すると広場から離れた位置の屋根から光の玉が上空へ何個も飛んでいく。やがてその光達はは上空ではじけて色んな色の光の粒になって花のように美しくかがやいていた、その光はすぐに消え次々に新しい花が咲く。街の人はみんな魅了されていた。そしてあひる達も。


「なにこれ、すごい綺麗」


 ふとあひるがみんなの方を向くと、ルンバが微かに涙を流しているのを見た。


「ルンバさん、ハンカチいりますか?」

「あぁ、いやすみません大丈夫です。これと似たものが故郷でありましてね、思い出しちゃったんです、すごく懐かしい」

「確かに、どこか懐かしい感じがしますね、もしかしたらこれを見るのは初めてじゃないのかも」


「それあひるちゃんも思う?」


 いきなり後ろから声をかけられ、あひるは勢い良く振り向いた。するとそこにいたのはさっきバルコニーにいたぽこだった。ぽこはマントをつけフードを深く被っている。


「ぽこちゃん!?どうしてここに?さっきまで向こうで」

「端っこにいたからすぐに見つけてね、走って来ちゃった」

「自由だね〜そのマントはバレないため?」

「まぁね、バレちゃったら身動き取れなくなっちゃうし」


「愛されてるよねぽこちゃんもこの街も」

「そうだね〜でも私はまだまだだよ、隊長の方がもっと慕われてた」

「隊長ってさっき言ってたダダリオって人?」

「そうだよ、隊長は短い間だったけど私の師匠みたいな人だった」

「だった?」

「そう、だった......まぁこの話はまた別のとこでしよ! 祭りはまだ終わってないよ!」


 そこに副隊長のレイが現れた。


「隊長見つけた! もう逃しませんよ! やることあるんですから!」

「やばい! 見つかっちゃった! それじゃあひるちゃんまたね!」



 ぽこは追ってくるレイから逃げるように何処かへ行った。


 その後あひる達は祭りを存分に楽しみ、宿へ戻ってきた。


「楽しかったね〜色々買っちゃったし」

「そういえばあひるさん達はいつリゼアを出発する予定ですか?」

「僕とちゃびこはもうちょっとこの街に残ってもうちょっとこの街を探索するよ」

「ルンバさんはどうするんですか?」

「私は明日の朝からハジメ村に向かおうと思います」

「あひるさんは?」


「私はどうしようかな〜まだ決まってないんだよね〜」


 すると宿のドアが急に開いた。


「それなら良かった!」


 そこにいたのはぽこだった。


「ぽこちゃん!? なんでここに」

「あひるちゃんに用があってね〜」

「私に?」

「ゼンターニア兵団団長ハダル・ベイカーがあひるちゃんに会いたいそうだよ」

「私が団長さんに?」

「色々あったからね〜、それにあひるちゃんの魔法についても知りたいことがあるし、あでも、拒否権はあるからね?」


「呼ばれてるんだったら行くよ? 特に行くとこもないしね〜」

「じゃあ決まり!明日の朝に迎えに行くから準備しといてね! それじゃあ私はここで、また明日〜」


 ぽこは若干駆け足気味で去っていった。


(ぽこちゃん忙しいんだろうな〜)


「じゃあ明日の準備をしなくちゃね!」

「そうしよーう!」


 あひる達4人は部屋へ向かい準備を始めた。その後雑談などをしたのち就寝した。


 翌朝......


 時刻は8時、天気は晴れ雲が気持ちよく泳いでいて絶好の旅日和である。あひるとルンバは玄関に荷物を置き、朝食を食べた。


「美味しかった〜、今日いい天気だし最高!」


 すると昨日言っていた通りぽこが迎えにやって来た。


「おはようございます〜!あひるちゃん迎えに来たよ〜」

「ぽこちゃんおはよう待っててねすぐ準備するから」

「急がなくても大丈夫だよ〜時間はあるからね」


 あひるは荷物の整理をして、それと同時にルンバも大きな鞄を背負って準備は完了した。宿の代金を払い、後は出発するのみとなった。


「それじゃあひるちゃん出発しようか」

「アリアーナちゃん、クリスさん、イリーナさん泊めていただいてありがとうございました! またこの街にきたときによろしくお願いします! ルンバさんにぼぼさんとちゃびこちゃんもまたどこかで会おうね!」

「もちろん!」

「また会えるよ!」

「はい、また会いましょう」


「それじゃぁまたー!」


 あひるはみんなに1時の別れを告げ、ぽこと共に集合場所へと向かった。集合場所はグロウズの出来事のあと、帰りに通った門の前だった。馬車がたくさん並んで出発を待っていた、ぽこは自分の白馬に乗った。ぽこは先頭で隣にレイが黒い馬に乗っている。そして見送りにたくさんの人が


「あひるちゃんは馬車でいい?」

「馬車でいいよ〜」

「じゃあそこの馬車乗って〜」


 あひるは馬車に乗った、馬車には女性の魔法使いが並んで乗っていた。


「それじゃ、みんな帰るよ!」

「「おー!」」


 兵士たちは拳を高く掲げ、気合を入れた。あひるも混ざって拳を上げた。見送りの人達は手を振り送り出す。馬車はゆっくり進み出した。


 そのあとは順調に進んでいった、馬車に乗っている人たちと雑談し、楽しみながらゼンターニア王国を目指す。途中モンスターとの遭遇しても、大したダメージを受けずに進んでいった。そしてあひるとぽこ達はゼンターニアが見えてくる位置へと近づいていた。


 城下町はリゼアの何倍もの大きさで、その城下町の隣に大きく立派な城が建っていた。


「おおお!!! でかい! お城なんて初めて見た!」


「あひるちゃん、ようこそゼンターニアへ!」


続く......


次回「ゼンターニア」

今回も読んでいただきありがとうございました!

とりあえず今回で序章が終わった形になりますね、それでこの序章のことはアリアーナ編として呼んでいこうと思います。


次回もお楽しみに〜

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