第六話「願い」
ーキャラクター紹介ー
名前:ちゃびこ
性別:女
種族:人間
役職:短剣使い
使用可能魔法属性(現在分かっている範囲)
無
獣人のぼぼてんと共に旅をしていて
戦闘では先頭に立って戦っている。
割と強気で当たって砕けろ系
「あひるちゃんがアリアーナちゃんにお母さんの事を質問していたんですけど、その質問を聞いて、少し暗くなった気がしたんですけど、お母さん何かあったんですか?」
ルンバは少し俯いた。
「それですか、じつはですね。アリアーナのお母さんは、2ヶ月前に野盗に誘拐されたんです、結構最近の出来事ですからかなり気になってはいるようで」
「え!そんな事が」
「私が助けに行こうかと思ったんですが危険だから駄目だと止められてしまいまして。情報も少ないので場所も掴めていないんです」
その話を聞いてあひるの表情は暗くなった。
「私......聴いちゃいけない事聴いちゃったんだ......」
あひるは手を強く握り、突然宿の方へ全力で走っていった。
「あひるちゃん!?」
「追いかけましょう!」
3人は走って行ったあひるを追いかけた。
あひるはアリアーナのいる宿の中に入って行った、3人があひるに追いつき入った宿の中ではあひるがアリアーナの両手を強く握り、膝立ちの状態で頭を下げていた。
「あひるさん、急にどうしたんですか」
「ごめんなさい! 私、さっき悪いこと聴いちゃった......」
「さっき......あぁ、あの事ですか......ルンバさん言ったんですね?」
ルンバは無言で頷いた。
「謝らないでください!あひるさんは何も知らなかったんですから何も悪くありませんよ!」
「それでも悪いよ......」
「そうです、謝らないでください」
知らない男の人の声が聞こえた、その声と共に二階から1人の男が降りて来た。
「クリスさん帰ってたんですか」
「それ以上謝られると逆に困ります」
「そうですよ、だから謝らないでください、怒りますよ?」
「う......うん......わかった......怒られるのやだし」
「でも私行くよ!」
「え、行くってどこに......」
「もちろん、アリアーナちゃんのお母さんを助けにだよ!」
「お母さんを助けるって......ダメですよ! 危険です! やめてください!」
「アリアーナちゃん、私結構強いんだよ? だから安心して。それに、お母さん意外にも拐われた人がいるかもしれないし、見過ごせないでしょう?」
ぼぼてんとちゃびこは大きく頷いた。
「あひるちゃんなら、どんな奴がいるかわからないけど勝てる可能性は高いし!」
「それに僕たちが一緒に行けば、安心だよ」
「だから安心して! みんなでお母さん助けたら、みんなで明日のお祭りに行こう? ね?」
「うん!」
アリアーナは瞳からひと粒涙を流した、その涙は見た目以上に重く、その涙は希望の涙だった、あひるの決意は強固なものとなった。
ルンバが手を叩いた、その音であひるとアリアーナは静かに驚いた。
「それではそろそろ晩御飯にしましょうか」
「わ、私作ります!」
「それじゃあ、あひるも手伝っちゃおうかな!」
「じゃあ私も手伝う!」
女子3人は台所へ向かった、しばらくしてから料理のいい匂いが漂ってきた。そして、3人が料理をリビングに持ってきてその料理に机に置いた。
「それじゃいただきましょうか!」
「あひるさんちょっと待って下さいねその前に紹介させてください、アリアーナの父親の」
「クリス・フォードです挨拶が遅れてすみません」
「いえいえ! こちらこそお騒がせしてすみません」
「あ! また謝りましたね? 謝らないでって言ったじゃないですかーー!」
「え、えー!」
クリスは今まで暗めだった顔が、明るい笑顔になり小さく笑った。
「アリアーナと仲良くしてもらってありがとうございます、 あ、お名前を聞かせてもらっていいですか?」
「はい! 私はあひるっていいます! そしてこっちが」
「ぼぼてんです、こっちはちゃびこ」
「しばらくの間お世話になります!」
「こちらこそこの宿を使っていただきありがとうございます」
「それじゃいただきましょう!」
フォード親子とあひる達は楽しい食事を過ごした。食事も終わり、日はすでに沈んで外は暗くなったいた。
「アリアーナ、食器をかたしたのならそろそろ寝る準備をしてきなさい」
「うん、わかった」
アリアーナはカウンター奥の扉に入っていった。
「少しみなさんにお話があります、妻のイリーナについてです」
「奥さんの居所について何か知っているのですね?」
「はい...... どうぞ座りながら話しましょう」
クリスは机に両手を置き、真剣な表情で話す。
「今日妻を拐った集団について大きな情報を得たんです。 その集団の名はグロウズ......奴らは拐った人を売り金儲けをしている集団です」
「奴隷商売......」
「金の為なら何でもするとか......」
「許せない! その集団は今どこにいるですか?!」
「奴らは今、北のリゼア山脈の向こう側に大きく拠点を作っているらしいです」
「山脈の向こう......確かにそこなら目立たずに拠点を作ることができる、それに今まで情報が無かったのは近寄った人間が拐われるか殺されたという事か......」
「それならどんどん被害者が出る前に食い止めないと! 明日の昼から向かいましょう、夜の祭りまでには救い出す!」
あひるは立ち上がり階段を上り、部屋へ向かった。
「あひるちゃん!? もう寝るのかな、それじゃ私も寝させていただきますね、おやすみなさい」
ちゃびこも部屋へ向かっていった。部屋の中ではあひるが何か大きな器具を机に置いていた。
「あひるちゃんなにそれ?」
「これ? これはね、明日に役立ってくれるアイテムを作ってくれる道具だよ」
「アイテム?何のアイテムを作るの?」
「それは明日のお楽しみ」
「ふーん、よくわかんないから先に寝るね、おやすみー」
「おやすみなさーい」
翌日
あひる達は荷物を持って救出に向かう準備をしていた。
「これでよしっと、ぼぼさんにちゃびこちゃん、それにルンバさんまで、ついてこなくてもいいのに、私が勝手にやることだし」
「僕たちが足手まといになると?それに、あひるちゃんだけだとうっかり拠点ごと破壊しちゃいそうだしね」
「私はそんな脳筋じゃないよ!」
「私はアリアーナに恩を返さないといけないですし」
「わ、私は悪党が許せないだけ!」
「わかった......行こう! アリアーナちゃんのお母さんを助けに!」
するとアリアーナが部屋から出てきた、何も言わずにあひるを静かに抱きしめる。
あひるは優しくアリアーナの頭を撫でた。
「大丈夫、安心して。必ず連れて帰ってくるから」
それを聞いてアリアーナは静かにうなずく
「必ず戻ってきてくださいね」
「うん、約束する」
アリアーナはそっと手を離し一歩後ろに下がった。
「気をつけて、無理はしないでくださいね」
「うん、行ってくるね」
あひるは扉を開け宿を後にした。
-リゼア平原北東-
「わりと歩いてきたけどまだなんですか?グロウズの拠点は」
「もうすぐですよ、この山を超えたら見えてくるはずです」
「それ聞いたの3回目ですよ」
「これでも楽なルートを選んでるんですよ? 後少しですから頑張って下さい」
「そういえばここって不思議な山の形してるよね、街を囲うように山ができるなんて」
「皆さんは神話を知りませんでしたね」
「神話?」
「はい、ここは二千年以上前に起こったと言われる、神々の戦争でできた地形なんですよ」
「神々の戦争ですか......」
「ここではジヤンと言う人間を愛する神と人間を嫌う神、ロアンという神が戦った地と言われています、結果はジヤンの敗北に終わったそうです、ジヤンは大きな傷を受けほぼ死にかけの状態でとある人間たちに未来を託し死んでいったそうです。この様な神々の話のことをゼリアル神話と言うんです。」
「そこから色んな宗教とかが出来てるんだ」
「ちなみにアリアーナの名前は愛情の女神、リリアーナから取っているらしいですよ」
「そうなんですね! だからあんないい子に」
あひる達は坂を上り終え下りの坂に差し掛かった。
「そろそろ奴らの拠点が見えてくるはずです、ここから先は敵が現れる可能性が上がるので慎重に行きましょう」
坂を降りていくとルンバが進行方向左側に指を指した。
「見えました、あそこにあるのが奴らの拠点だと思います」
指を指した方向を見ると、一キロメートルくらい離れた位置に木でできた壁がありその中に石でできた建物がある。
あひるはカバンの中から双眼鏡を取り出して様子を見た。
「右側に入口がありますね、門番が2人立ってます、入口は1つしか無さそう」
??「あそこのからならバレずに入れそうだよ?」
「ほんとだ、あそこならー......って誰!?」
後ろから知らない声が聞こえて勢い良く振り向くと、一人の女性が中腰で立っていた。
水色の髪に、足にちょっとだけ付いてる鎧、腰には剣を携えていた。するとその後ろからまた女性の声が聞こえてきた。
「隊長ー! ちょっと早いですよ! 置いてくなんてひどいじゃないですか!」
「そう? レイちゃんなら追いつけると思ったんだけど」
「そんなの無理ですよ! いきなり加速スキル使うんですもん!」
あひるは急に現れた2人を見て多少混乱していた
「あの〜......どちら様ですか?」
「そうだった、挨拶が遅れました、私はゼンターニア兵団リゼア部隊、隊長のポコ、よろしくね」
「同じくリゼア部隊、副隊長のレイ・ガドルフです!」
「ゼンターニア兵団!? なんでこんなところに!?」
あひるはゼンターニアがなんなのか分からず首を傾げる。
「ねぇちゃびこちゃん、ゼンターニアって何?」
「ゼンターニアってのは国の名前だよここリゼアはゼンターニアが所有してる土地なんだよ、でそこにいる2人がゼンターニアの兵団の中でもリゼアを仕切ってるリゼア部隊の隊長さんと副隊長さんがあの2人みたい」
「あなた達はなぜこんなところにわざわざ? ここは野盗が出るので危険ですよ」
「レイちゃんは感が弱いな〜、この人達は冒険者で依頼を受けて、向こうにある野盗に囚われてる人達を助けようとしてるんだよ、違う?」
図星だった、あひる達はポカンとした顔を思わずしてしまった。
「あ......あたりです」
「でしょ?だったらさ、一緒に囚われてる人達助けない?」
「隊長!? 目的は一緒だとは言え、一緒に行動するのは......それにここの野盗は手強いと聞きます、この人達には帰ってもらった方がいいかと私は思います!」
「それでもそこの人たちは行くみたいよ?止めても無駄だよ」
「ですが......」
「だったら私達と行動して一緒に行けば安全なんじゃない? 人を守るのも私達の仕事だと思うけど?」
「それは命令ですか」
「命令じゃないよ、決めるのはレイちゃんだよ」
レイ副隊長はしばらく考えた
「わかりました、そこまで言うのであればそうしましょう」
「レイ副隊長ならそう言ってくれると思った。と言う事だからそれでいい?」
「え?あ、まぁいいですけど」
「それじゃあよろしく!お名前は?」
「あひるです!よろしくお願いします!」
「ちゃびこですよろしくお願いします隊長さん」
「羊のぼぼてんですどうも」
「ルンバですよろしくお願いします」
「ん?ルンバさんってどこかで会ったことありますか?」
「え?いや、今日がはじめましてですけど」
「そうですか......あ、あと! 私達には気軽に接してもらっていいからね? 隊長なんてただの肩書きだし、あと名前で呼んでくれると嬉しいかな!」
ポコは笑顔で言う、4人はその笑顔を見て安心したのか、肩の力をが抜けた。
「よろしく! ポコちゃん!」
「うん! よろしく!」
すぐに2人は意気投合した。
「それより早くグロウズの奴らをこらしめないと」
「そういえば2人だけでここまできたんですか?他の兵達は見えないようですが」
「さすがに私達だけじゃないよ、ここから数十メートル後ろで敵の拠点を囲うように待機している、捕まっている人達を助けたら拠点に一気に攻めるって言う作戦なの」
「数十メートルって結構近いね! でも全然見えないや」
「みんなは無属性魔法のカメレオンで保護色になってるからわかりづらいんだよ」
「そんな魔法があるんだ!知らなかった!」
「それじゃ、そろそろ作戦会議をしましょう、あそこにあるグロウズのアジトに侵入するにはどうしたらいいか、正面突破ってのもあるけどそれじゃすぐバレちゃうから、出来るだけバレずに中に入りたいね」
その時あひるは閃いた。
「じゃあさ、私が風魔法を使って、皆んなを警備の薄い側面の壁から侵入させればいいんじゃない?」
「風魔法が使えるんだ! それならそうした方が良さそうだね。じゃあ、私とレイが先頭で索敵をしつつその後ろから付いてきて、壁まできたら風魔法で皆んなを壁の向こう側へ送る形でいいかな?」
「もちろん!」
一国の騎士が2人もいるおかげか、4人は迷わず同意できた。
そこからの流れはスムーズではあったポコとレイが先導し、敵に気づかれないルートに上手く誘導してくれたからだ。そして敵の警備が一番薄い側面の壁へやってきた、壁の高さは7メートルくらいあったが、あひるにはこれくらいであれば造作もなかった。
「それじゃ皆んなを壁の向こうへ運ぶけど、飛ぶ時の注意で、変にバランスが崩れると私でも支えられないから注意ね」
全員が静かにうなずく。
「それじゃ行くよ」
その言葉を言うと、あたりの風が強くなっていく。するといきなり全員の足が浮き始める、すごい勢いで足から地面に向かって風を吹かしているのである。そして周りの風を強くすることによって敵にバレづらくしていた、その行為をポコは気づいていた。
(周りの風も強くなっている? 自然発生なのか、それともあひるちゃんが意図的に風を強くして気づかれないようにしている?だとしたらただの魔法使いではなさそう)
問題なく壁の向こう側へ来れた。
「さすがあひるちゃん! 魔法の腕は世界1だね!」
「それじゃあレイちゃん、お願い」
「分かりました」
レイはゆっくり目を閉じた、しばらくしてから、いきなり開眼した。そのあと周りをキョロキョロしてまた目を閉じる。
「見つけました、行きましょう」
「よし、ありがとう」
「今何したの? 急にキョロキョロして」
「索敵魔法みたいなものですよ。人の気配がはっきりではないんですが見えるんですよ」
「それで、拐われた人を探してもらったの。で、どこにいた?」
「残念ながらここから反対側にいる様です」
「反対側か〜まあなんとかなるでしょ! じゃあレイちゃん、案内して」
「分かりました、ついてきてください」
レイに先導され、見張りにバレない様に移動して行き、なんとか拐われた人たちが居るであろう建物の中に入った。中に入るともう一つドアがあった
「ここに居るはずです」
「早く見つけて脱出しよう」
「待ってください、そこに誰かいます」
??「バレちゃったか、流石は王国の騎士様だ」
物影に隠れていた男があひる達の目の前に現れた。その男は身軽な格好をしていて、短剣をニ本腰に携えている。
「俺は雇われて剣士、オードナーだ、よろしく。お前達はここを通りたいんだろ?」
「そうだけど、どいてくれる?」
「それは無理だな、一応お金貰ってここに居るんだ、仕事はさせてもらう」
オードナーは腰に携えた二本の短剣を構えた。その闘いを受けると言うかのようにポコが腰の剣を鞘から取り出し構える。
「邪魔するなら、私が相手する。みんなは先に行って」
「なら私もお供します」
「レイちゃんはダメ、みんなの案内しないと」
「......わかりました。行きましょう」
あひる達はオードナーを無視して先に向かう。
「隊長さんが相手してくれるのか、楽しくなりそうだ」
「皆んなを止めないんだね」
「俺は戦えればそれでいい」
ーあひる組ー
「ポコちゃん大丈夫かなぁ......」
「ああ見えて一応隊長ですから、心配はいりませんよ。見つけた、皆さんあそこの部屋です!」
レイが指指した部屋は鉄の扉で硬く閉ざされていた。
「鍵が必要なようですね」
「ならこの扉を私の魔法で破壊すればいいんじゃない?」
あひるが杖を構え、魔力を貯める。
「あひるちゃんストーップ! このドア思いっきり破壊したら中の人が怪我しちゃうって!」
「そうだ! 危ない危ない」
「そのドアは私が開けましょうか?」
ルンバは持ってきたポーチを漁りながら言う。
「こんなこともあろうかと用意しててよかった。じゃん!」
ルンバがポーチから出したのはの細くへんな形の棒数本だった。
「それでどうするんですか?」
「これで鍵を開けます、数十秒だけ必要ですけど、これなら安全に開けれます」
そう言うとルンバは鍵穴に棒を刺し、何かし始めた。そしてしばらくすると、鍵がカチャっと開いた音がした。
「よし開いた、これで入れるはずです」
「え!? 本当ですか!」
あひるはドアノブを掴みゆっくり扉を開けた、扉を開けた先にいたのは、ボロボロの服を着た女の人達だった、ぱっと見10人くらいいた。
「あなた達は、誰ですか?」
「私達はー......通りすがりの旅人です!」
一方ポコは......
オードナーの一方的な攻撃を華麗に受け流していた。
(くそっ! 俺の攻撃が入んねぇ、流石騎士様だ。なら!)
オードナーはポコへの攻撃を一旦やめた。
するとオードナーが高速で部屋の中を飛び回り始めた。その速さは肉眼では追えない程の速さである。
「加速系のスキル、これは厄介」
オードナーは加速状態でポコに連続で攻撃をする、ポコはギリギリで防御出来ている。
「流石にきつい......なら」
ポコはまぶたを閉じた。そしてその状態でオードナーの攻撃を防御し始めた。その行動を見てオードナーは動揺せざるを得なかった。ポコはその一瞬の動揺を見逃してはいなかった。
「そこ!」
ポコの剣がオードナーの二本の剣に鋭く当たり、剣は天井へ向かって飛び突き刺さった。
(攻撃弾き(カウンター)だと!?)
オードナーは弾かれた勢いで尻をついた。ポコは倒れたオードナーにすかさず剣を向けた。
「どうする? まだする?」
「......はぁ降参だ、俺の負けだ。やっぱり強いな、あんた」
「あなたもね、ちょっと本気出しちゃった」
「嘘つけ、あんた魔法すら愚かスキルすら使って無かったじゃないか。完敗だよ、煮るなり焼くなり好きにしてくれ」
「別に何もしないよ、あなたには伸び代がたくさんある。いつでも挑戦してきて良いから、その時は喜んで挑戦受けるから」
「わかった、もっと強くなってあんたの本気をだせるように頑張るよ」
「それじゃ、私はみんなと合流しなきゃだから」
ポコはあひるたちのところへ急いで向かった。
一方あひるはイリーナを探していた。
「この中にイリーナさんいますか?」
すると、部屋の奥から1人の女性が出てきた。
「私がイリーナです。」
「あなたの娘さんが待っています、今すぐここから出ましょう」
「アリアーナが?」
「はい、皆さんも逃げましょう! さぁ急いでください!」
あひる達が脱出する準備を始めるとちょうど良く、ポコと合流した。
「ポコちゃん!よかった無事で」
「当たり前でしょ? それよりそれで全員?」
「うん、これから脱出するところ」
「じゃあ急ごう、結構音立てちゃったからすぐに駆けつけてくると思う」
するとポコが言った通りに沢山の足音がこちらに向かってきているのがすぐに分かった。
「私は前、レイちゃんは後ろから皆さんを守って」
「わかりました!」
「開けたところに来たら私が信号弾を射って、皆んなを呼ぶから、その時はあひるちゃんが先頭に立って安全なところまで皆さんをお願い」
「わかった!」
あひる達は急いで出口に向かう。建物の出口が見えた時、その出口から剣を持った敵が出てきた。
「侵入者だ!捕まえろ!」
ポコは剣で敵をためらいなく斬っていく。だが、死に至る程刃は入っていなかった。
あひる達が外に出るとグロウズの軍団が次々と向かってきている。ポコは外に出てすぐに腰につけていた銃の形をした物を上に向け、引き金を引いた。銃からは風船が割れた様な音と共に、光る弾が空へ打ち上げられた。その弾は空高くへ飛んで行きやがて消えた。グロウズの一部の人間にはそれが何のためのものか分からなかった様だったが、一部は気付いていた。
「なんだぁ? どこに射っているんだ?」
「馬鹿野郎! 奴らの援軍が来るぞ! 備えろ!」
「もう遅いんだけどね」
ポコが笑顔でその言葉を発したその瞬間、グロウズの砦の門が爆発し吹き飛んだ。そして大人数の兵士が門を突き破り入り込んでいった。兵士達は次々とグロウズを倒して行く。
「あひるちゃん、作戦通りみなさんを連れて安全な所まで行って」
「あひるさん任せました」
あひるはうなずくと、壊れた門へ向かった。門を出ても安心は出来なかった、強力な魔法の流れ弾が飛んで来たのである。あひるはその事に気付いていなかった。気付いていたのは最後尾を走っていたぼぼてんとルンバだけだった。
(今あひるちゃんに教えても間に合わない、ならまだ活躍出来てない僕がやらなきゃ!)
ぼぼてんは杖を構え、魔法を発動する態勢になる。
「皆んなを守ってくれ! 大自然の守り(プレジディウムネイチャー)!」
すると地面から大きなツタが生えてきて、どんどんあひる達を覆った。飛んで来た炎の弾はツタにぶつかり消滅した。
「でき......た......? できた、やった!」
「すごいじゃん! やっとできたんだ!」
「喜んでないで早く行くよ!」
一方その頃リゼア部隊は、グロウズを圧倒していた、作戦はスムーズに進んでいく、ポコは違和感を感じていた。
(なに? 急に魔力の流れが変わった?)
「レイちゃん、ここやっぱり何かある.....」
「流石に気付かれてしまったか、流石ゼンターニアの騎士だ!」
「誰だ!」
レイが鋭く言う。
すると、砦の中で一番大きな建物の屋上からガタイのいい1人の男が出てきた。背中には大きな大剣を背負っている。
「俺の名前はスーザ、このグロウズのリーダーだ。ちょっとお前らゼンターニアにプレゼントをあげようと思ってな」
「プレゼント?」
「そうだ、受け取りな!」
その時、地響きが鳴り、空気中の魔力が騒ぎ始めた。すると、スーザの後ろから突然光り始めた、その光は柱の様に天高くまで発光した。しばらくするとその光は弱まり消えて行った。しかし光り始めた場所から魔物でもなく人間でもない謎のオーラがその場所から強く発せられている。
「なにこの気配......まさか!」
「そう! そのまさかだ! 楽しんでくれよ!」
そのオーラが発せられた場所から大きなものが飛び上がりポコ達の前に着地した。その物体は立ち上がり、その物体の正体がわかった。形は人間の様だが身長は3メートルを超え、頭には角が二本生えていてまるで鬼の様な見た目だった。
「魔人!?」
「そうだ!俺たちは長い間魔人を生み出すために血と大量の魔力、元となる肉体を用意してようやく完成した!」
「それで人を拐って血と魔力を取って行ったっていうわけね」
「そうだ、奴隷商売をしていたのは必要な資金を集めるためだ。さぁ! 存分に楽しめよ!」
魔人は近くに刺さっていた木の棒を抜き自分の武器にした。
「レイちゃん行くよ!」
「はい!」
あひる一行はと言うと、安全な所まで移動し終わっていた。
「私様子見てくる」
「あっちはポコちゃんがいるから大丈夫でしょ?」
「大丈夫だと思うんだけど、さっきの光、ただの魔法じゃなかった、向こうで何かあったんだと思う、ぼぼさんは怪我した人の治療をしといて」
「あひるちゃん! 行っちゃった、大丈夫かなぁ」
ポコ達は魔人の素早い攻撃で押されていた。
「こんな巨体なのに隙がない!」
「それなら私の魔法で足を止める!」
ポコは剣を地面に刺した
「凍って!」
剣の刺さったところから魔人のいる方へ地面が凍っていく。そして魔人の足を氷で地面に固定した。しかし魔人の力は凄まじく、すぐに氷を砕いてしまった。
「そんな......動きを止めれば一撃で倒せるのに」
と、そこに様子を見に来たあひるがやってきた。
「ポコちゃん大丈夫!?」
「あひるちゃん! なんでここに」
「心配で様子を見に来たの、今どう言う状況?」
「グロウズのリーダーが魔人を召喚して、今戦ってるとこ、動きを少しでも止めれれば倒せるんだけど、強くてなかなか倒せないの」
「少しでも足を止めれればいいんだね、それならとっておきのアイテムがあるよ! こんなこともあろうかと昨日調合しといたこのアイテム!」
あひるはふところからガラスのビンを出した中には何か変な色をした気体が入っている。
「なに?そのアイテム変な色してるけど」
「ふふーん、これはね〜ONARA爆弾です!」
「オナラ? え、なんて?」
「ONARA爆弾だよ、オリジナルナスティーライジング爆弾の略だよ、これを食らったらひとたまりもなくて尻をつくだろうね、その時に決めれる? ポコちゃん」
「う、うん。それくらい出来るのであれば」
「よし! それじゃ早速飛んでけー!」
あひるはONARA爆弾を思いっきり魔人の顔面狙って飛ばした。ONARA爆弾は真っ直ぐ飛んで行き、魔人の顔面に直撃した。直撃した瓶は割れ、中にあった気体が魔人の顔面の周辺まで広がり止まっている。
ONARA爆弾の匂いを魔人は嗅いだ。数秒後魔人は鼻を押さえ苦しみ始めた。
「やった! 効いてる効いてる!」
魔人はやがて苦しいあまり尻を地面に突いた、魔人が気付いた時には遅かった。ポコは空高く跳び、剣を天に向け目を瞑った。
「氷の精霊よ、その力を持って悪しき魔を滅ぼしたまえ!」
ポコの周りに鋭く尖った氷の氷柱が数えるのが面倒になる程の数が現れた。それに加えて、ポコの剣が氷始めてその氷はどんどんデカくなり、やがて4メートルくらいの巨大な剣になった。
「アブソリュートゼロフレイム!」
続く......
次回「帰る場所」
読んでいただきありがとうございます!
今回は結構長めに作っちゃいましたw
次の話もそんなに時間をかけずに投稿できるように頑張ります!次回もお楽しみに〜